Another IS ―もう一つのIS― 作:colorless
「はいこれで今日の仕事は終わりよ。お疲れ様」
「ふぇ~、疲れたぁ……」
IS学園にある生徒会室。そこに、二人の少女の姿があった。
一人は、布仏本音。須藤明弘から“のほほんさん”と呼ばれている、彼のクラスメイト。入学して二日目にして、生徒会書記に任命された少女だ。
しかし、本音の能力が決して高いというわけではない。それでも彼女が生徒会の役員に任命されているのは、偏に彼女と会話をしている水色の髪の少女のおかげである。
「まったく、私や虚ちゃんはいつもこれ以上の量をやってるのよ? これくらいで参ってたらこれからやっていけないわよ」
更識楯無。それが水色髪の少女の名前だ。二年生にしてIS学園の生徒会長を務めている。
普通の学校であれば、今の時期はまだ三年生が生徒会長を勤めているはずである。
IS学園の生徒会長は『学園最強の生徒』が務めることになっている。ゆえに、二年生の彼女が生徒会長を務めていても何ら問題はない。
「でもぉ、入学して二日目からこれはないですよ~。お姉ちゃんはどこか行っていないし」
「虚ちゃんは外での仕事があったからそれを片付けてもらってるの。時間的にはそろそろ戻ってくると――来た来た」
楯無の言葉を待っていたかのように、生徒会室の扉が開く。その向こうから、眼鏡をかけた知的な雰囲気の少女が静かに中へと入ってくる。
布仏虚。本音の姉にして生徒会会計の少女だ。
「お嬢様、任された仕事は全て滞りなく終わりました」
「そう。お疲れ様。前から言ってるけど、お嬢様はやめてよ」
「すいません。つい癖で」
そんなやりとりをする楯無と虚。それを机に突っ伏したまま眺め、本音は力なく口を開く。
「もっと早く戻ってきてよ~、お姉ちゃん~」
「あなただって生徒会の役員なのだから、それくらいはこなせるようにしなさい」
「ふぇ~ん。二人がいじめるよ~」
わざとらしく泣きまねをする本音。それを見て小さくため息をついた虚は、改めて楯無のほうへと向き直る。
「一つ報告が」
「何かしら?」
「先ほど数人の生徒が話しているのが聞こえたのですが、一年生が三年生を模擬戦で倒したそうです」
「へぇ、面白いわね。信憑性は?」
「絶対とは言い切れませんが、話していた生徒のグループは一つではなく、それに時間的にもおかしいところはないところから、真実かと」
今日から一年生も放課後にアリーナを使用できることは、生徒会の人間――いや二、三年生なら誰でも知っている。去年、一昨年は自分たちがそうだったのだから。
アリーナを使えるようになった一年生がいきなりやらかした。特別おかしいところはない。
「確かにそうね。で、その一年生って誰なのかしら?」
「名前は出されていなかったのでわかりませんが、『男子の癖に生意気だ』と言っていたので、織斑一夏か須藤明弘のいずれかでしょう」
「だったら~、それはすーくんだよ~。おりむーはIS初心者だし、そんな悪口言われるのすーくんだけだよ~」
虚の言葉に、机に突っ伏していた本音が続ける。
「すーくん、というのは須藤明弘のことでいいのかしら?」
「はい~。須藤だから、すーくん」
なぜか自信満々に言う本音。どうやら、自分がつけたあだ名を誇らしく思ってりるようだ。
「彼は専用機持ちだったわね。所属はわからないけど。それだったらある程度の技術も持っているでしょうね。三年生に勝ってもおかしくはない、か」
そこまで口にした楯無は、あることに気がつく。
「そういえば、虚ちゃん。さっき言ってたわよね。『男の癖に生意気だ』とか。まさか、彼って……」
「はい。須藤明弘は学園の生徒に敵意を向けられていたようですね。昨日から、様々な悪い噂が流れています」
「私は知らなかったなぁ。それで、今回の一件で彼の評判はどうなるかしら?」
「悪くなるでしょうね。彼が昨日、何か問題を起こしたという話も聞きませんから、今までの噂も、おそらく彼を気に食わないと感じた生徒が流したものでしょう。今回の件も、『須藤明弘が女生徒に手を上げた』といった噂で流れるでしょう」
淡々と告げる虚。それに本音は「すーくんは何も悪いことしてないのに~……」と文句を垂れる。
その二人の言葉を聞いて、楯無はため息を一つついて、どこか遠いところを見るかのように視線を明後日の方向へと向けて呟く。
「何をしても悪評が流れる。可哀想ね、須藤明弘君は」