Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第一話 邂逅

 今日はIS学園の入学式。入試は別のところでやったからここに来るのは初めてだが、かなりでかい。さすがは世界で唯一IS操縦者を育成するための学校ってところか。

「お前が須藤明宏か?」

「はい?」

 IS学園の大きさにすこし圧倒されていると、突然声をかけられる。

 声のしたほうを見ると黒のスーツにタイトスカートを身にまとい、すらりと伸びた長身で狼を思わせる鋭い吊り目の女性が立っていた。

「お前が須藤明宏かと聞いている」

「はい。そうですけど……。まさか、あなたは……」

 実際に会ったことはないが、俺はこの人を知っている。いや、知らない人間はほとんどいないだろう。

「私はお前のクラスの担任になる織斑千冬だ。束から話は聞いている。ついて来い」

「あ、はい」

 やっぱり。この人はかの有名な、織斑千冬さんだ。

 織斑千冬さんと言えば、第一世代ISの元日本代表だ。しかも公式試合の戦歴は無敗。ところがある日突然、引退して姿を消す――で途中経過は分からないが、この学園の教師をしているようだ。

 あの社会不適応者の束さんが誰に話を通した相手が誰かわからなかったが、この人か。束さんとは幼馴染らしいから、会話も成立するのだろう。

「篠ノ之博士からいろいろうかがっています」

「ああ、あいつとは幼なじみだからな」

「とても楽しそうに話していましたよ。あなたと、それに織斑一夏と篠ノ之箒についても」

「あいつらもか。ふん、あいつらしいな」

 本当にあのときの博士はとても楽しそうだった。たぶんあの人の中で一番幸せな時間だったんだろう。というか、あの人が誰かのことを話すのなんてこの三人ぐらいしかない。

「ところで、お前は専用機を持っているらしいな」

「ご存知でしたか」

「束に聞いた。なんでもあいつが直々に開発したと言っていたが」

「仰るとおりです」

「あいつの作ったものだから、突拍子もない機能でもついているんじゃないだろうな?」

 さすがは幼なじみ。あの人のことをよくわかっている。

「いえ、俺のはそこまで大した機能はありませんよ。せいぜい第三世代あたりです」

「それならいいがな。……着いたぞ」

 織斑先生に言われて立ち止まりクラスを確認してみると、一年一組。ここが俺のクラスか。

「男子は同じクラスにまとめることになったから織斑もこのクラスだ。呼んだら入って来い。いいな」

 有無を言わさず教室に入っていく織斑先生。自分の弟を苗字で呼ぶということはかなり仕事熱心の人のようだ。

 なにやら教室から織斑先生の自己紹介や、大勢の女子の歓喜の悲鳴やら、何かが硬いもので叩かれたような音が聞こえてきた。

 悲鳴はおそらく織斑先生の登場に対してだろうが、もう一つの音のほうはわからない。いったい何が起きているのだろうか。

「今日からこのクラスで一年間生活していくことになるが、急遽この学園に通うことになった編入生を紹介する。須藤、入って来い」

 今日が初日だから転入生なのか微妙なところだけど、まあいいか。とりあえず織斑先生の指示に従い、教室に入る。

「須藤明宏だ。ちょっとした事情でこのIS学園に編入することになった。一年間よろしく頼む」

「きゃ……」

「ん?」

「キャーーー!!!」

 鼓膜が破れそうになった。あわてて耳を手でふさぐ。

 なんだ? どこか変だったか? そりゃ学校の自己紹介なんて初めてだから勝手がわからないのは事実だが、そこまで変なこと言ったか?

「男子よ! 二人目の男子!」

「綺麗な髪! 綺麗な目!」

「織斑くん以外にISに乗れる男子がいるなんて!」

 ……どうやらただ単に男子が珍しいだけのようだ。一番前の真ん中に座っている織斑一夏であろう男子も目を見開いて呆然としている。

「ちょっと待て。一つ勘違いしてるようだから訂正しておく。俺が操縦できるのは俺の知り合いが作った『ISのようなもの』であって、正確にはISじゃない。そのあたりは誤解しないでくれ」

 一応、束さんの名前は伏せておいた方がいいだろう。いつかはばれるかもしれないが、あの束さんが製作したことがばれたらうるさそうだし。

「「「???」」」

 案の定クラス全員がちゃんと理解できていないようだ。まあ、理解されなくても事実だからどうしようもないけど。

 沈黙が数秒間流れたかと思うと、一気にクラスがざわめきだす。頭おかしい人だと思われてなければいいけど。

 しかしそんなざわめきを織斑先生が収めると、チャイムが鳴る。タイミングいいな。

「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で染みこませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

 なんと言う鬼加減。ただし実力は本物なので誰も反論しない。

 改めて教室を見渡すと、当たり前だが俺と織斑以外は全員女子。

 クラスの生徒三十一人中二十九人が女子、先生にはあまり見えない頼りなさそうな緑髪の副担任らしき女性、極め付けが鬼教官のような担任。

 束さんの無茶振りになれている俺だが、若干不安になってくる。

 このクラスで、俺はやっていけるんだろうか。

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