Another IS ―もう一つのIS― 作:colorless
週が変わって月曜日。一夏とオルコットの決闘の日。
織斑先生の手回しで、今日の明日の二日間アリーナを一つ貸し出してもらって一夏とオルコットの試合。その勝者と俺の試合を二日かけて行う。
二試合くらいなら一日で終わらせることもできなくはないが、一試合目で消耗した相手と戦うのはフェアじゃないということで、一日の休養時間が与えられたというわけだ。
そんなわけで今日は暇な俺は、周りに誰にいない観客席の一角で今日の試合を見学することにした。
オルコットはすでに青い専用機を身に纏ってアリーナの中央付近の上空で対戦相手を待っている。
イギリスの青いIS……確か第三世代ISの『ブルー・ティアーズ』という機体だったはずだ。
イギリスが開発している射撃主体の機体で、第三世代兵器《ブルー・ティアーズ》の試作運用機……だったはず。
「あの機体って普通のIS適正の他に、BT適正とかいうのが必要なんだっけか」
それを専用機として与えられているということは、オルコットはIS適正だけでなくそのBT適正も高いということなのだろう。適正だけで全てが決まるわけではないが、これは面白い戦いになるかもしれない。
そんなことを考えていると、ピットから白いISをまとった一夏が飛び出してくる。
ISの名は『白式』。倉持技研という機関が開発した――ということになっている機体だ。
実際のところ、束さんがいじくり回したのを倉持がISとして完成させたので、半分以上は束さんの手によって作り上げられたものである。
「あれは一夏の機体だったのか……」
よく考えれば束さんがいじってる時点でわかってもよかったかもしれない。
あのごく限られた人間以外どうでもいいと考えている束さんがいじくり回した機体。それが、そのごく限られた人間のためのものだということに。
まあ、あのときはまだ一夏がISを動かせることを知らなかったのだから仕方ないといえば仕方ないだろうが。
「…………そういえば」
白式が一夏の専用機になったということは……篠ノ之はどうなるのだろう。
束さんは妹である篠ノ之を溺愛している。一夏にだけ専用機を作って、その妹には何もない。そんなことがあの束さんに限ってありえるだろうか。ありえるわけがない。
ということは……やっぱり、“アレ”なんだろうな。
白式と違い、最初から最後まで束さん自身が作り上げたIS。全てのISを超えるIS。
高性能すぎて誰が使うのか見当もつかなかったあのIS。アレしかない。アレが篠ノ之の専用機になるのだろう。
「……いろいろ、面倒なことになりそうだな」
白式といい、アレといい、どこの国も黙っているわけがない。どちらも他のISにはない力を持っている。そしてどちらもどこかの国に所属していない。あの二つのISを自分の国のものにしようとする国はいくつも出てくるだろう。俺は巻き込まれないことを願おう。
……今はそんなことよりも、目の前の試合だ。この試合の勝者と明日戦うことになるのだから、一応二人の戦い方や実力は把握しておこう。
結果を端的に言えば、試合はオルコットの勝ち、一夏の負けで幕を下ろした。
しかし、試合の内容で言えば、一夏の実力は想像以上のものだった。
代表候補生相手に武装が近接ブレード一つという状況での奮戦。しかも試合のほとんどを初期状態で戦っていたというのだから驚きだ。
そして最後はオルコットの第三世代兵器《ブルー・ティアーズ》を四つ斬り落として追い込んだ。オルコットに斬りかかる寸前でシールドエネルギーがなくなったため負けることになったが、あれさえ通っていれば勝ちは一夏のものだったかもしれない。
あいつは、そう遠くないうちに化けるかもしれないな。
「だが……」
それに比べて、オルコットは――予想以下だ。
一夏のことをあれほど馬鹿にしておいて、慢心しまくり、結局ギリギリまで追い込まれた。はっきりいって、失望に値するほど。
何とか勝てたからよかったものの、一秒、一夏のシールドエネルギーがなくなるのが遅かったら負けていたかもしれない。そんな試合内容で、よくもまあ自分はエリートだとか恥ずかしげもなく言えたものだ。
「あの様子では、明日の俺の勝ちは揺るがないな」
慢心するつもりはない。最初から全力でオルコットを叩き伏せる。よほどのことがない限り、俺が負けることはないはずだ。
初心者に追い込まれてボロボロになったあいつのプライドを、圧倒的敗北という事実で粉々に砕いてやる。
あのプライドの塊ともいえるオルコットが、プライドを粉砕された姿。それが、明日見られるだろう。
「明日が楽しみだな……」