Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第二十二話 反撃

「っ…………」

 セシリアは明弘の目の奥に暗い闇があるのを気づいた。

 いや、“ある”のではない。何も“ない”のだ。

 目を奥に広がるのは、虚無。何の感情も、思いも見受けられない。ただ虚無が広がるのみ。

 例えるなら、底の見えない深い穴。一度落ちてしまったら、永遠に落ち続けるしかない奈落。

 そんな虚無の目に、セシリアは戦慄すると同時に既視感を感じた。

(あの目……どこかで……)

 記憶の糸を手繰り寄せる。だが、目当ての記憶を掘り起こす前に、セシリアは自分が今明弘との試合中だということに気がついた。

 さっきから、戦闘中だというのに気が散ってばかりだ。目の前のことに集中しなければ。そう自分を戒めた。

 

 

 ……セシリアの動きが止まった。

 さっきから降り注ぎ続けていた弾雨が止み、俺は回避行動を止めてオルコットを見上げる。

 何かあったのか。動きが止まる前に一瞬だけあいつと目があったが、それが原因だとは思えない。だが、それ以外に何も思い当たらないも事実。

 まあ、ちょうどいいといえばちょうどいいか。

「おい」

「……何ですの?」

 俺の呼びかけに、オルコットが静かに答える。

「ご自慢の第三世代兵器を使ってこいよ。お前の攻撃は当たらない。本気で来い」

 指で「かかってこい」と挑発しながらそう告げる。見る見るうちにオルコットの顔が真っ赤に染まっていく。怒りの沸点に近づいているのが手に取るようにわかった。

「そう言ったこと、後悔させてあげますわっ!」

 怒気を込めた叫びとともに、今まで使われなかった四機の自立稼動兵器《ブルー・ティアーズ》がそれぞれ宙を舞い始める。

「後悔なんてしないさ」

 その呟きをかき消すかのように四機の《ブルー・ティアーズ》からレーザーが発射される。

 四方向から迫り来るレーザーを瞬時加速で真上に飛ぶことで回避。

そして上空からオルコットと《ブルー・ティアーズ》を見下ろす。

 数の上では五対一。圧倒的不利な状況だ。だが、こうでなければ面白くない。

 それらを見下ろしながら、俺は両手にそれぞれ武装を展開する。

 左手にはアサルトライフル《アトランティス》。右手にはレーザーライフル《アヴァロン》。神王の遠距離装備の二つだ。

 近接戦に持ち込めば簡単に倒せるだろうが、それでは意味がない。

 本気のオルコットを、あいつの得意分野で叩き潰せなくては、意味がない。

 

 

 そこから先は、試合らしい展開だった。

 さっきまで俺が一方的に攻撃されていた状況から、撃っては避ける。避けては撃つという銃撃戦が繰り広げられている。

 それが始まってから十分ほど。俺もオルコットも一発も被弾してはいないが、試合らしい展開にはなっている。

 観客であるほかの生徒たちを楽しませる義理はないが、織斑先生が見ている以上試合らしい形にしておいたほうがいいだろう。

 それ以上に、俺の完全勝利のために必要な過程だというのが大きいが。

 俺は今まで左手の《アトランティス》しか使っていない。《アヴァロン》は一度たりとも使ってはいない。

《アヴァロン》は高威力のレーザーライフルだ。決定的な一撃を撃ち込むために温存している。

 その一撃を撃ち込むのも、すぐそこだ。

 のほほんさんが試合を見ているピットのほうに一瞬だけ視線を向ける。

「よく見ててくれよ。のほほんさん」

 そうつぶやき、《ブルー・ティアーズ》の攻撃を回避。そのまま《アトランティス》をオルコットに向けて発砲する。

 それを予測していたのであろう。オルコットは余裕の表情で俺から見て左に回避し――

 

 そして回避した先で、《アヴァロン》のレーザーに直撃した。

 

 それを両腕を交差させた状態で眺めながら、俺は周りの《ブルー・ティアーズ》に意識を向ける。

《ブルー・ティアーズ》はオルコットの命令がなければ動かない。今の被弾でオルコットからの命令が一時的に切れて、四機の《ブルー・ティアーズ》は地面に落下する。

 後方の憂いがなくなったのを確認して、俺はオルコットに向かって突撃した。

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