Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第二十七話 クラス代表決定

 やっと打ち解けたクラスメイトたちと他愛のない雑談をしていると、朝のHR開始のチャイムが鳴り、織斑先生と山田先生が教室に入ってきた。

「皆さん、おはようございます。……須藤くんもクラスに馴染めたようでよかったです」

 クラスの雰囲気を読み取ったのか、山田先生がそう言う。

 先生たちからしても、クラスの空気は良いに越したことはないだろうからやはり少し敏感になっているのだろうか。

「さて、皆さん知っているはずですが、昨日一昨日の試合の結果からこのクラスの代表は須藤明弘くんに決定したいと思いますが、皆さんいいですか?」

 山田先生の言葉に、クラスの至るところから異議なしという意の言葉が返ってくる。

 少し不本意そうだったが、オルコットも勝負の結果ということで黙って頷いた。このまま行けばこのクラスの代表は俺に決定するだろう。だが、俺はそんなことをするなんてまっぴらごめんだ。

「先生、申し訳ないですが、俺は賛同しかねます」

「え? ……えぇぇぇっ!?」

 俺の返答に山田先生が素っ頓狂な声を上げる。俺は最初からやりたくないと言っていたんだから、そこまで驚くこともないと思うのだが。

「え、えっと……」

 山田先生が困った顔で織斑先生を見る。どうやらこの人、予想外のことには頭が混乱して対応できなくなるタイプのようだ。しかも悪いことに、この人にとってはちょっとしたことでも“予想外”に分類されてしまう。難儀な人だな。

 そんな難儀な先生に助けを求められた織斑先生は、一つ深いため息を吐くと俺の方を向く。

「須藤。前にも言ったが、推薦された者に拒否権はない。個人的な意見での発言ならお前の言い分は却下するが、それでも何かあるか?」

「はい。俺がクラス代表になった場合、他のクラスの生徒たちはいい気分はしないでしょう。俺はこの学園の生徒に嫌われているようですから。そのときに謂れのないことを言われるのが俺だけならいいですが、このクラスの皆にまで被害が及ぶ可能性がある以上、俺はクラス代表になることは賛同できません」

「…………」

 織斑先生が一瞬沈黙する。やはり教師という立場上、クラスの生徒全員にまで話を広げれば、無視しづらいだろう。クラスメイトを利用しているようでいい気分ではないが、まあ今までの分のお返しということで勘弁してもらおう。のほほんさんや一夏にはあとでちゃんと謝っておく必要はあるだろうが。

「お前の言うことは一理ある。だが、だからといってお前をクラス代表から外す決定的な理由にはならない。お前自身もわかっているはずだ」

「ええ」

 答えながら、心の中で舌打ちをする。予想はしていたが、やはりこのくらいで認めてはくれないか。山田先生ならもしかしたらいけたかもしれないが、織斑先生に限って認めるわけがない。この人、そういうの嫌いそうだからな。

「やはり推薦され、代表決定戦にも勝った以上、お前にはクラス代表になる責任がある」

「ですが、クラスの代表になるからにはそれなりの人格が必要だと思います。自分で言うのもなんですが、俺はクラスの代表になれるような模範的な人間ではないですよ」

「……自分でそれを言うか」

「事実ですから」

 呆れたような織斑先生の言葉に、頷く。こればかりは事実だからしょうがない。

 俺がそれ以上何も言わないのに織斑先生も無言で俺を見続ける。はっきり言ってかなりの圧迫感があるが、俺も視線をそらさずに見つめ返す。

 それからゆうに十秒を超える時間の後、織斑先生は小さく息を吐くと口を開いた。

「確かに、先週の言動からお前が集団をまとめられるとはあまり思えない。適性のない生徒に代表を務めさせるのは褒められることではないな。……ではオルコット。お前にクラス代表を務めてもらいたい。お前は自ら立候補してきたから不満はないだろう?」

 俺からオルコットへと視線を移動させ、織斑先生が告げる。

 あの鋭い視線を向けられながら、言葉とは裏腹に強制力を孕んだ問いをされたオルコットは、驚くほどに冷静に、微笑を浮かべてそれに答える。

「……いいえ」

 それは今までの尊大な口調からは考えられないほど穏やかな声だった。

 その声と同じように穏やかに、そして優雅に席を立つとオルコットは再度口を開く。

「誰かの施しでクラス代表の地位を手に入れても、それは恥でしかありません。わたくしは自ら勝負を挑み、そして負けました。そんなわたくしがクラス代表になることは、わたくしのプライドが許しませんわ」

 そうきっぱり言い切ったオルコットは、視線を一瞬だけ一夏へと向けてすぐに織斑先生へと戻して言う。

「ですのでわたくしは辞退し、クラス代表は織斑一夏さんに、というのがわたくしの意見です」

 そう言うとオルコットは着席する。クラス全員の視線がオルコットに集まった瞬間、俺は見た。

 織斑先生が微かに、本当に微かにだが、確実にその顔に笑みを浮かべたのを。

 だがそれも一瞬のこと。すぐにいつもの表情に戻ると、オルコットには何も言わず、視線を一夏へと向ける。

「織斑、何か言うことはあるか」

 それは、一夏からすれば「何か言い残すことはあるか」と聞こえたことだろう。

 いきなり話を振られた一夏が何を言えばいいのか悩み、口ごもったところで織斑先生は一夏の考えがまとまるのを待たず、口を開く。

「特に何もないようだな。ではクラス代表は織斑一夏に決定だ。何か異論のある者はいるか」

 誰も何も言わない。それどころか一夏以外の全員――俺も含む――が拍手をしたのが決定打となった。

 一夏が何か言おうとしても、自分以外が拍手をしているこの状況ではなんとなく口ごもってしまう。

 このクラスの代表が、一夏に決定した瞬間だった。

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