Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第二十八話 謝罪 そして――

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね」

 織斑先生に目で促され、山田先生が冗談交じりにそう宣言する。

 一夏には悪いが、ここは一夏に押し付け――もとい、引き受けてもらうことにしよう。

「……ん、んんっ! それでですわね。クラス代表対抗戦に向けて、もしよろしければ、わたくしが一夏さんの訓練のお相手を差し上げてもよろしいですわよ」

 クラス代表が一夏に決定したところで、オルコットがそんな提案をする。

 一夏はISに関しては初心者だ。専用機持ちは全学年通しても数名しかいないのでクラス代表も多くが専用機持ちではないはずだが、機体の性能だけで勝てるほど甘くない。実力の差で機体性能の差がひっくり返されることだって十分ありうる。

 それを避けるためには一夏をIS操縦に慣らせるしかないのだが、代表候補生のオルコットが指導してくれるのなら心強いだろう。戦闘スタイルは全く違うが、基本の操縦技術などならこのクラスの誰よりも教えるのは容易いはずだ。

 一夏も同じようなことを考えていたようで、その提案に乗ろうと口を開く――前に篠ノ之が口を開いた。

「あいにくだが、一夏の教官は足りている。私が、直接頼まれたからな」

「あら、あなたはISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何か御用かしら?」

「ら、ランクは関係ない! 頼まれたのは私だ」

 何やら言い合いを始める二人。どうやら二人とも一夏の指導をしたいようだが、理由がいまいちわからん。一夏に惚れているのか? いや、この前まで一夏に敵意剥き出しだったオルコットに限ってそれはないだろうし、篠ノ之も一夏に好意があるようにはあまり見えない。

 まあ、おそらく篠ノ之は幼馴染、オルコットは代表候補生という立場から何か使命感を感じているのだろう。

 ついでにオルコットの言っていたランクというものは、訓練機で出したISとの適正値のランクだ。だが、適正値はISのコアによって微妙に異なるため、あくまで指標でしかない。

 ちなみに一夏はB。今の会話からすると篠ノ之はC、オルコットはAらしい。俺はISに乗れないから計れなかったが、一応、神王で測定したBランクという値が俺のISランクということになっている。

 というか、二人ともそろそろやめておいた方がいい気がする。これ以上騒いでたら――

「座れ、馬鹿ども」

 ほら来た。元日本代表にして第一回世界大会の覇者、織斑千冬先生が。

「お前達のランクなどゴミだ。わたしからしたらどれも平等なひよっこだ」

 そりゃあ、あなたからすればそうでしょうね。

 織斑先生に注意され、一応大人しくなった二人だが、未だに互いに睨み合っている。いたたまれなくなったのか、一夏は俺の方に向き、言ってきた。

「明弘、ISの指導頼めないか?」

「お前この状況で俺に振るな。二人が鬼の形相で俺のこと睨んでいるだろうが」

 睨み合っていた二人が、一夏の言葉を聞いて俺に視線を向けている。なんだ、一夏にクラス代表を押し付けた報いか?

「まあ睨んでいる二人は置いておいて、悪いがそれはできない。二人に頼め」

「何でだよ? セシリアに勝ったんだからお前が一番ISの操縦は上手いんだろ」

「あれはちょっとした小細工をしたから勝てただけだ。実際の操縦技術はオルコットの方が上だろうから、オルコットに頼んだ方が賢明だぞ」

 俺の言葉に、のほほんさんと織斑先生を除いたクラス全員が驚く。まあ、あれだけの試合をしておきながらこんなこと言っても説得力はないか。だが、事実である以上こう言うしかない。

 一夏の提案を受けられない代わりに、一夏の助けをしておこう。

「ISの基本技術はオルコット、近接戦闘に関しては篠ノ之に教えてもらうようにすればいいんじゃないか。篠ノ之とオルコットも、それなら文句はないだろう。模擬戦なら付き合ってやるから、それでいいな?」

 俺の折衷案に篠ノ之とオルコットは渋々といった様子で妥協してくる。それでも、互いに視線で釘を刺しあうのはやめない。まったく、懲りない奴らだ。

 

 

 

「ちょっとよろしいかしら?」

 長かったHRが終わり、一時間目の授業が始まるまでの間、のほほんさんや一夏、近くの席の女子と談笑をしていると不意に後ろから声がかけられた。

 なんだか先週もこんなのあったなと思いながら、振り返るとやはりそこには金髪ロールの女子――オルコットが立っていた。

 だが、先週と違うのはオルコットの雰囲気が高圧的なものではない、ということであった。

 その言葉を向けられているのは……俺と一夏。

「ん、なんだ?」

「……何か用か?」

「少しお話がありますの。お時間よろしいかしら?」

「構わないが、ここでいいならここで話してくれるか。そろそろ授業が始まる」

 一夏にもそれでいいかと目で問いかけると、一夏もそれに気づいて頷いてくれた。

「ええ。こちらはお願いしている立場ですので。では――」

 そこまで言うと、オルコットは「んんっ」と一拍息を入れ、俺をまっすぐ見据えて……優雅に頭を下げた。

「この度は、本当に申し訳ございませんでしたわ」

 その瞬間、俺とのほほんさんを除く、グループの全員が驚きの声を漏らした。

 俺からしても少々意外だったが、顔には出さないように気を付けたから平気だったが、のほほんさんは全く驚いた様子もなくいつものようにのんびりとした笑顔を浮かべている。さすがだ。

 そんなことを考えていると、オルコットは言葉を続ける。

「この度のわたくしの失礼な発言の数々、お詫びいたします」

「……それは、物珍しいだけの極東の猿とか、後進的な国とか言ってたアレのことか?」

「そうですわ。あの時はわたくしも感情的になってしまったとはいえ、あのような暴言の数々。簡単には許されるとは思っていませんが、それでも謝罪をしなければわたくしの気が――」

「あー、もういい。許す。だからもう謝罪なんてする必要ないぞ」

「……はい?」

 オルコットが素っ頓狂な声を上げる。言っていることがわからないのか?

「だから、許すって言ってるんだ。実を言うと俺は特に日本に思い入れがあるわけでもない。あの時はお前の態度が気に入らなくてああ言ったが、一言謝ってもらえればそれで十分だ」

 そんな俺の言葉に、その場にいた、いやそれを聞いていた全員が意外そうな表情を浮かべる。なんだ、お前たちは俺が愛国主義者だとでも思っていたのか。そんなわけあるか。

「一夏、お前は?」

「お、俺!? 俺は……まあ、一言謝ってくれたから俺としては十分だけど」

「そういうことだ。これで一件落着だな」

「ですが……」

「本人がいいって言ってるんだからいいんだよ。それでも気になるっているのなら、これ以降発言には気をつけること。それでいいか?」

「…………はい」

 煮え切らない様子だが、オルコットは渋々了承した。というか、発言には気をつけろって俺が言えたことじゃないな。

「話はそれで終わりか?」

「あ、いいえ。もう一つありますの。……須藤さんに」

「俺に?」

 一夏にではなく俺にとは、いったい何だろうか。さりげなく姿勢を正し、オルコットと向かい合う。

「一つ、宣言させていただきに来ました。……わたくしは、あなたに負けました」

「だから、さっきも言ったが昨日のは俺が小細工をしたから勝てただけだ。実力だけで言えば、おそらくお前の方が勝っていた」

「ええ。昨日の敗北はわたくしの慢心によるもの。ですが、それを除いてもきっとわたくしは負けていたでしょう。勝負は実力だけでは決まらない。あなたには目に見える実力とは違う、底知れぬ何かを感じましたから」

「……過大評価だな」

「そうかもしれません。ですが、それでもわたくしは宣言させていただきます。わたくし、セシリア・オルコットは、あなた、須藤明弘さんをいつの日か完膚なきまでに倒してみせることを」

 それは明確な宣戦布告。しかし、以前の決闘の申し込みとは違い、そこに悪意はなく、確固たる決意があった。

「あなたが何を仕掛けてこようともわたくしの力だけで叩き潰し、あなたに圧勝して見せますわ」

 そう言うオルコットの目にも、言葉同様、決意の炎が燃えている。そんな決意に対して雑多な態度をすることは、俺にはできなかった。

「……その言葉、確かに受け取った。だが、簡単にいくとは思うなよ。お前が強くなるよりももっと俺は高みに上ってやる。覚悟しておけよ」

 そう返す俺に、オルコットは不敵な笑みを零し、

「もちろん。そうでなくては面白くありませんわ。明弘さん(・・・・)

「そうか。せいぜい頑張れよ。セシリア(・・・・)

 同じように笑みを浮かべる俺と視線をぶつけ、オルコットは優雅に振り返って、席に戻っていった。




今日で2012年も終わりですね。

今年はあまり更新が進まず、大変申し訳ございませんでした。

来年は原作の8巻が出るそうなので、それを励みに頑張っていきたいと思います。

4月に発売らしいので、それまでには7巻の内容を……というのは無理だと思いますが、まあまあ話を進めていきたいです。

それでは皆様、よいお年をお過ごしください。
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