Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第三十一話 パーティー

「というわけでっ! 織斑くんクラス代表決定おめでとう!」

「おめでと~!」

 その言葉に合わせて、いくつものクラッカーが乱射される。

 今は夕食後の自由時間。場所は寮の食堂。ここで今しがた『織斑一夏クラス代表就任パーティー』なるものが始まった。

「わざわざ食堂を貸し切ってやるほどのことか、これ」

「まあ、何だかんだ言ってみんな騒ぎたいのよ。パーティーは、騒ぐ大義名分ってところね」

 パーティーの中心である一夏たちから少し離れたところで女子たちのワイワイやっている様子を眺めながらの呟きに、両手にジュースを持ったクラスメイト、鷹月静寐が答えた。その隣にはのほほんさんと夜竹さゆかの姿もある。

「それだけのためにご苦労なことだな」

 彼女からジュースを一つもらい、再度パーティーの中心を眺めながら、気になったことを尋ねてみる。

「なんだか人数が多い気がするんだが、気のせいか」

「それはぁ、他の組の人たちも参加してるからだよ~」

「やっぱりそうか。どうりで何度も嫌な視線を向けられるわけだ」

 そう言っている間ですらチラチラ向けられる嫌な視線を無視しながら、中心で騒いでいる一夏や篠ノ之、セシリアたちを眺める。

「……三人は、あっちに混ざらなくていいのか?」

「私はあまり騒がしいのは好きじゃないから」

「んー、わたしも」

「すーくんを一人にしちゃ、かわいそうだしね~」

 順番に鷹月、夜竹、のほほんさんが答える。三人がいいのならそれでいいが……のほほんさん、俺はそんなさみしがり屋じゃない。

「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君と須藤明宏君に特別インタビューをしに来ました~」

 パーティーも最初の騒がしさから少しは落ち着いてきたころ、そんな言葉とともに一人の女生徒がやってきた。リボンの色から二年生だということがわかる。

「あなたが織斑一夏君よね? 私は二年で新聞部副部長やってる黛薫子。よろしくね。杯これ名刺。えっと、あとは須藤君……あ、いたいた」

 中心にいた一夏を難なく見つけた女生徒は、次に俺を見つけると小走りで近づいてくる。

「私は二年の黛薫子。新聞部副部長やってまーす。はい、名刺」

 と、半ば無理やり渡された名刺を見てみる。画数の多い名前だな。書く本人は大変そうだ。

「ちょっとインタビューしたいんだけど、織斑君と一緒にやりたいからちょっと来てくれるかな?」

「……面倒くさそうなのでお断りします」

 どうせ主役は一夏で、俺のはゴシップ狙いだろう。すでに学園中――一年一組除く――から嫌われているので一つ二つのゴシップなどはどうでもいいが、あれこれ過去を詮索されたくない。それに他クラスの面々が集うところに好き好んで足を踏み入れる気はない。

「へぇぇ……じゃあ、皆にばらしてもいいのかな? 君の専用機が、あの篠ノ之束博士お手製の機体だってこと」

「っ……!」

 他の人には聞かれないように耳打ちで伝えられたその事実に、俺は思わず息をのんだ。

 その事実を知るのはこの学園では教師だけのはずだ。しかも教師全員には箝口令が敷かれているはず。一介の生徒が知るはずもないのだ。

 もちろん俺は誰にも言っていないし、当の束さんが誰かに言うなんてあり得るわけもない。まさか……いやないな。

「……どうしてそれを?」

 小さな声で問うと、黛先輩はにっこりと笑みを浮かべて答える。

「情報提供者がいた。それだけのことだよ。提供者との信頼問題になるから誰とは言えないけど、先生じゃないから安心して」

「…………そこまでして俺のゴシップが欲しいですか?」

「ううん、勘違いしないでほしいな。君をインタビューしたいのは、単純に君がどんな人物か知りたいから。いろいろ噂は飛び交ってるけど、私はそんなのに左右されたりはしないよ」

「………………」

 先輩の言うことが嘘でなければ、本当にこの人はただ単に普通のインタビューをしたいということになる。

 それを鵜呑みにすることはできないが、そういうことであれば出てもいいかもしれない。

 それに先輩言った事実が公表されれば、また女子から妬まれる要因が増える。『男のくせに篠ノ之博士と知り合いなんて』とかな。それだけならともかく、場合によっては束さんの評判さえも悪くしかねない。それだけは避けたいところだ。

「わかりました。受けますよ。ただし、少しでもゴシップ狙いととれる質問や言動があった場合、問答無用で終了する。それでいいですか?」

「うん、もちろん。じゃあ早速始めたいから来て」

「ええ」

 のほほんさんたちにインタビューを受ける旨だけを伝えて、一夏たちの方へと向かう。のほほんさんは普通についてきてるが、別にいいだろう。

 一夏たちのところに着くや否や、一組以外の生徒から無遠慮な視線をぶつけられるが、慣れたことなので――気分は決して良くはないが――無視して一夏の左隣に座る。

 一夏の右隣りにはセシリアが、そのまた隣には篠ノ之が座っている。俺の左には当然のごとくのほほんさんが座っている。

「ではではインタビューを始めたいと思います。まずは織斑君! クラス代表になった感想を、どうぞ!」

「えーと……まあ、なんていうか、がんばります」

「えー。もっといいコメントちょうだいよ~。まあ適当にねつ造しておくからいいとして」

 よくないだろとは口にせず、のほほんさんと菓子をつまむ。

「次は須藤くん! しかもオルコットちゃんに勝ったらしいけど、クラス代表にならなかった理由は?」

「俺なんかがなるよりは一夏がなったほうがいろいろいいと思ったからです。他クラスの評判的に。……学内で『女子に手を挙げた』だのなんだの噂されている俺よりは、一夏の方がいいでしょう?」

 嫌な視線を投げつけてくる奴らに軽く視線を向けながらそう答える。

「まあ、新聞には『一夏により多く、充実した経験を積ませ、彼の進歩を促進させたいと思ったから』とでも書いておいてください」

「ん、了解」

 次に黛先輩はセシリアの方にマイクを向けた。

「ああ、オルコットちゃんもコメントちょうだい」

「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ありませんわね」

 そんなこといいながら、結構やる気満々じゃねえか。

「コホン。ではまず、どうしてわたくしがクラス代表を辞退したかというと、それはつまり――」

「ああ、長そうだからいいや。適当にねつ造しておくから。よし、織斑君に惚れたからってことにしておこう。写真だけちょうだい」

「なっ、な、ななっ……!?」

 顔を真っ赤するセシリア。面白いな、図星疲れて慌ててるって感じだ。

「何を馬鹿なことを」

 馬鹿はお前だ、一夏。セシリアのこの態度を見てわからないのか。

「え、そうかなー?」

「そ、そうですわ! 何をもって馬鹿としているのかしら!? だ、大体あなたは――」

「はいはい、とりあえず三人で並んでね。写真撮るから」

「あ、はい」

 そういわれて席を立ち、少し広いスペースに移動する。

「注目の専用機持ちだからねー。握手とかしてくれるといいかもね」

「三人で握手って、どうすればいいんですか?」

「いや、俺はパスさせてもらう。俺は一夏の隣で立ってるから、握手は一夏とセシリアでやってろ」

「んー……ま、須藤君がそれでいいならいっか」

「あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」

「そりゃもちろん」

「でしたら今すぐ着替えて――」

「時間かかるからダメ。はい、さっさと並ぶ」

 そんな会話を交わし、黛先輩が一夏とオルコットの手を引いて、握手させる。

「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は~?」

「え? えっと……2?」

なんで2だよ。

「ぶー、74.375でしたー」

パシャッとデジカメのシャッターが切れる。そして、

「なんで全員入ってるんだ?」

 恐るべき行動力をもって、一組の全メンバーが撮影の瞬間に俺たちの周りに集結していた。篠ノ之も。のほほんさんは……ごく自然に俺の隣に写っている。みんな大した行動力だ。

「あ、あなたたちねえっ!」

「まーまーまー」

「オルコットだけ抜け駆けはないでしょー」

「クラスの思い出になっていいじゃん」

「ねー」

 まさかクラスの全員が同じ行動に入るとは思わなかった。しかも、事前に打ち合わせでもしてたのではないかと思うほどの手際の良さだった。

 ともあれ、この『織斑一夏クラス代表就任パーティー』は十時を過ぎまで騒がしく続いた。

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