Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第四十五話 のんびり買い物

 臨海学校を目前に控えた週末。俺はのほほんさんと更識の二人とともに、駅前のショッピングモール『レゾナンス』にやってきた。水着や、その他諸々を調達するのが大きな目的だ。

「悪いな。無理矢理連れ出して」

「……別に、いい。私も行くつもりだったから」

 のほほんさんに引っ張られる形で、会長の要望通りに――本人には教えていないが――連れてきた更識に謝罪をすると、案外あっさりと許してくれた。

「……ただ、あとで相談したいことが、ある」

「打鉄弐式に関してか? 別にかまわないが」

「……なら、いい」

 五月の襲撃事件の直後に知り合ったばかりのときに比べると、更識はずいぶん話しかけやすくなった。あのときは周囲に対して常に壁を作っているような感じだったからな。今もほとんど変わってないが。

 俺が更識と話せるようになったのは、更識の専用機『打鉄弐式』がきっかけだ。のほほんさんから更識の専用機がまだ完成していないという話を聞き、少し話をしてみたのだ。

 打鉄弐式の開発をしていあ倉持技研が、突如舞い込んできた一夏の白式の完成に注力しすぎたせいで打鉄弐式はまだ完成しておらず、更識は自力で自らの専用機を完成させようと試みている。そんな更識の話はとても興味深かった。

 特にマルチロックオンシステムを用いた四十八連装ミサイル《山嵐》。同時に複数のロックオンを行えるということは、同時に複数の対象にとる兵装に応用することができるのはとても面白い話だった。

 更識はどちらかといえば設計者に近い感性の持ち主なのだろう。一夏たち他の専用機持ちとは、ここまで深く語り合えることはない。

 それからというもの、打鉄弐式に関して交流が少しずつ増えていき、更識から相談を持ち掛けられることもあるようになった。といっても、俺よりも更識の方が知識も豊富だから、別視点からの考察を述べる程度だが。

「ほらぁ、二人ともはやく~」

 俺たちが話している間に先へ進んでいたのほほんさんにせかされ、俺たちも歩を進める。

「とりあえず、水着買ってしまうか」

 最初に一番の目的を達成してしまおう。そんな俺の提案に二人とも了承してくれたので、さっそく水着売り場へと向かう。

 夏間近ということで、大きな水着売り場はすぐに見つかった。女尊男卑のこのご時世なので、当然のごとくほとんどが女性用水着のコーナーだ。

「じゃあ、いったん別れるか。終わったらここに集まることにしよう」

「え~、すーくんに選んでほしいなぁ」

「いや、水着なんて全然知らないんだが」

「見たままの感想でいいよ~」

「まあそれならいいか」

 見たままの率直な感想でいいのなら知識も必要ないし大丈夫だろう。

「じゃあさっさと水着買ってくるから、その間に決めておいてくれ」

「あ~い」

 ゆるーい敬礼をして、のほほんさんは水着売り場へとトテトテ歩き去って行った。残されたのはのほほんさんの提案についていけなかった更識。

「別に更識までやらなくていいからな」

 無理にやることでもないので更識にそう告げて俺も水着売り場へと向かう。

 適当なのを見繕えばいいだろう。そんなことを考えていた俺の目に留まったのは、藍色のトランクスタイプの水着。髪の色と同じだしちょうどいいので、それを買うことにした。

 あとは適当にタオルなどを買って、売り場を出る。二人と別れてからほとんど時間たってないが、あっちは目ぼしいものは見つかったのだろうか。女性の水着売り場は広いから探すのにも多少時間かかるはずだからちょうどいいかもしれないが、決まってなかったら俺が待てばいい話だ。

 男が女性水着売り場に入るのは少々勇気がいるのかもしれないが、もう三か月も女子ばかりのIS学園で過ごしてきた俺にとってはそこまで気にすることではない。

 と、そこで俺の目に入ってきたのは、何やら見覚えのある三つの後ろ姿だった。

 金の丹念に手入れがされた綺麗な縦ロール、茶色のツインテール、銀の無造作に伸ばされた長髪。

 しかもどうやら普通に買い物に来た雰囲気ではない。まるで誰かを尾行しているかのような……。

「……よし」

 見なかったことにしよう。たぶん、関わっても碌なことにならない。

 そう考えてこの場を離れようとしたとき、俺の気配に気づいたのか三人がこちらを振り向いた。

「あら、明弘さん。奇遇ですわね」

 口を開いたのは、三人の中で比較的――というか一人は全くと言っていいほどない――交流の多いセシリア。

「ああ奇遇だな。じゃあ、俺は用事があるから」

 すぐさまこの場を後にしようと三人に背を向けて歩き出そうとするが、何か強い力に両肩を抑えられて叶うことはなかった。

 頭だけで振り返ると、凰とボーデヴィッヒが俺の両肩をつかんでいた。

 ボーデヴィッヒは真剣そうな表情をしているが、それに対して凰は笑っていた。目は全く笑ってないが。

「先月ガチの戦闘したって聞いたのに、仲いいな」

「利害の一致だ」

「見られた以上、ただで帰すわけにはいかないわね」

「お前たちがコソコソしてるってことは、どうせ一夏が篠ノ之かシャルロットと一緒に水着買いに来たのを追ってきたんだろ。放せ、俺は人の色恋沙汰になんて興味はない」

 この面子が揃っているということは、十中八九、一夏絡みだ。そして、女性水着売り場にいるってことは、ここにいない篠ノ之かシャルロットのどちらかと買い物に来た一夏を尾行しているのだということは容易に想像がつく。

 何が面白くて人の色恋沙汰などを見なければならないのだ。そんなことよりも、のほほんさんとのんびり過ごしている方がよっぽど有意義だ。

「誰にもお前たちのことは話さないから手を放せ。お前たちをかまっていられるほど俺は暇じゃない」

「もしそうだとしても、なんでアンタがこんなところにいるのよ。ここは女性の水着売り場よ」

「一夏と同じだよ。違うのは連れが二人ってことと、お前たちみたいな尾行がついてないことだ」

 軽く皮肉を交えながら答えると、三人のこめかみがピクッと動いた。遠まわしに馬鹿にされたことに気づいたのだろう。

「二度言ったからな」

 一瞬だけ神王の一部を展開し、肩をつかんでいる二人を振り払う。

「まったく、なんなんだお前たちは。尾行するほど気になるなら、一緒に行けばいいだろうに」

「それができたら苦労はしないわよ」

 じゃあ苦労しないだろうが。喉もとまで出かかった言葉を何とか飲み込む。こんなことを言ったら話がこじれるのは目に見えている。

「面倒くさい奴らだな。セシリアと凰はまだしも、ボーデヴィッヒなら簡単だろうが。転入早々、一夏の頬を引っ叩いてんだから」

 アレに比べれば、今回のことなんて些細なことでしかないと思うのだが、女の考えはわからん。

「私はそのつもりだったのだが、この二人がな」

「ただ突撃するだけなら動物にだって出来ますわ! こういう場合は、まずしっかりと一夏さんとシャルロットさんの関係を調べてから、行動指針を決めるのが得策ですわ」

 行動指針も何もないだろう。もしシャルロットが一夏と付き合っていたとして、それでこいつらが諦めるとは思えない。

「得策だと思うのなら勝手にやってろ。一夏たちに会っても、お前たちのことは言わないでおいてやる。だから俺を巻き込むな。以上だ」

 こいつらにかまっているほど俺は暇ではない。多少の余裕を見積もっていたが、こいつらの相手をしたせいで無駄な時間を費やしてしまった。俺が待つのはいいが、のほほんさんを待たせるのは避けたい。

 三人のことはもう忘れることにして、のほほんさんたちを探す。

 だが、女性の水着売り場は存外広い。男物の方に比べて五倍はあるのではないだろうか。

「連絡を取った方がいいか」

 闇雲に探し回るよりはその方が賢明だ。水着選びに水を差すようで悪いが、合流に時間がかかったり、最悪行き違いになる可能性を考慮すれば、仕方がない。

 携帯を取り出してのほほんさんの番号に電話をかける。……その前に、後ろからかけられた声に遮られる。

「須藤君、こんなところで何してるのかな?」

 あまり聞き覚えのない声。だが、聞いたことがないわけではない。

 振り返るとそこにいたのは金髪の女子。背は女子にしては高い。髪色といい日本人でないことは間違いない。今のご時世、特に珍しくもないが。

 見覚えがある。学園の中で……確か、凰と話しているのを見かけたことがある。

「凰の知り合いか」

「あら、知ってたの?」

「学園で見かけた。凰ならそっちの方にいるぞ」

「あ、鈴も来てたんだ。私との約束すっぽかしたくせに」

 凰と一緒だったわけではないらしい。大方、凰と約束していたが、一夏がシャルロットと出かけたのを知ってドタキャンしたのだろう。

 それよりも……。

「…………」

「あ、自己紹介まだだっけ。ごめんごめん」

 俺の視線に気づいたのだろう。女子は一応、といった様子でたたずまいを直し、自らの名を告げた。

「私はティナ・ハミルトン。鈴のクラスメイトでルームメイトだよ」

「そうか。……で、何の用だ」

 同じ学園の生徒だとしても、用もないのに友達でもない相手に声をかけることはふつうないだろう。

 それに凰のクラスメイトということは、こいつは二組の人間だ。クラスメイトである一組の面々ならともかく、それ以外の奴らを俺は好ましく思っていない。

 直接謝罪をしてきた一組以外の奴らは自らの過ちに対して目を背けている奴らばかりだ。むろん、過ち自体を起こしていない人間も少なからずいることはわかっているが、大多数が過ちを起こし、知らぬ顔をしていることは事実だ。

 そんな俺の警戒を感じ取ったのか、ティナ・ハミルトンは流暢な英語で短く告げた。

「I’m from the U.S.A. Do you understand?」

「……I see.」

 とても簡単な英文。その一言で、俺は大まかな事情を把握した。

「何か通達でもあったのか。……国から」

 俺の予想を告げると、面白そうに目の前の女生徒はそれに答える。

「That’s right! さすがだね」

 やはり、か。

 俺がIS学園に入学することになったのは、入学当日まで秘密にされてきた。神王――『ISでありISでない』という謎の代物と、その操縦者の男である俺の存在をできる限り秘匿するべきだという意図だったのだが……なるほど、そのことを知って、すぐさま通達を出したのか。アメリカ政府が、アメリカ国籍のIS学園生徒に。

 アメリカ政府は俺と束さんの関係を知っている。俺といざこざを起こして束さんとのつながりを失いたくなかったのだろうな。

 その迅速な行動は正しかった。情報が公になった日、入学当日に俺は学園生徒ほぼ全てを敵に回したのだから。通達が遅れていればアメリカ国籍の生徒が俺に喧嘩を売っていた可能性だって十分あった。その可能性を摘み取ったというのは、アメリカ政府としても意義のあることだったのだろう。

「ついでに言えば、私はナターシャさんと顔見知り。とはいっても、少し面識がある程度だけど」

「俺と敵対しないように言われたか」

「国からは、ね。あの人はそんなこと言わなかったわよ。その代わり、君がどんな人物かは教えられたけどね」

 どんな内容か気になるところだが、今は置いておこう。

「ちょうどいい機会だったからご挨拶をと思ってね。そんなわけで、以後よろしく。そっちはよろしくしたくないかもだけどね」

「……いや、別にかまわない」

 今の話を聞く限り、俺に敵意を抱いていなかったのは事実のようだ。通達の件も彼女の件も、確認を取ればすぐにばれるような浅い嘘を吐くはずがない。つまり、こいつの言うことは事実で……ならば、敵対する理由もない。

「要件はそれだけか。だったら失礼するが」

「あ、誰かとデート中だった? ゴメンね、邪魔して」

 デートではないのだが……まあ、女性水着売り場にいればそう思われても仕方ないか。

「じゃあね」

 小さく手を振って、ハミルトンは先ほど俺が指差した方へと去っていった。凰のことでも探すのだろう。

 予想外のアクシデントで時間を食ってしまった。とっとと二人と合流してしまおう。水着の山の向こうの学友たちと、何故かはわからないが聞こえる先生方の声は聞こえないことにして。

 

 水着とは何だろうか。俺は考えざるを得なかった。

 水泳などを行うときにつける衣類。それはわかる。水泳を行うときに動きやすいよう、多くの水着が着用者の体との間に空間ができるようにはできていないと俺は思っている。俺の買ったトランクスタイプなどはその限りではないが。

 なぜ、俺がこんなことを考えているのかというと――

「のほほんさん、それって水着なのか?」

 合流したのほほんさんが手に持っていた水着……だと思われるものが、俺の中の水着のイメージとかけ離れているからだ。はっきり言って、のほほんさんが寮の中で着ているきぐるみのような部屋着と同じに見えた。強いて違いを挙げるなら、部屋着がネズミで、こちらはキツネだ。

「え~、ちゃんとした水着だよぉ」

 タグを見せてもらうと、確かに水着のようだった。話を聞くに、脱水性が高く、乾きやすいのだそうだ。

「確かに、のほほんさんに似合っているとは思うが……」

 それで泳げるのか? 着衣水泳とほとんど変わらないと思うのだが……まず、のほほんさん自身が泳げるのか定かではない。こういっては何だが、のほほんさんはそこまで運動神経が高くはない、というか低い。全体的に動きがのんびりなのだから当たり前といえばそうなのだが。

 無論、のんびりなだけで何もできないわけではない。五〇メートル走はもちろんマラソンも、タイムが限りなく遅いというだけで完走はしている。筋力や体力は平均を大きく下回っているが。

 そんなのほほんさんなのだから、泳ごうとして水かきをしようとしている間に沈んで行ってしまうのではないか。そんな心配をしてしまうのだ。

「まあ、のほほんさんがいいのなら俺は何も言わないが」

「じゃぁ~けって~い」

 そう言ってのほほんさんは手にしていた水着を足元に置いてあったかごに入れた。かごの中には、すでに海で遊ぶのに使うのであろう物であふれ返っていた。

 海、という場所で遊んだ経験が全くない俺からしたら何に使うのかよくわからないものばかりだが、のほほんさんが欲しいというのなら別にかまわないか。どうせ、俺の金で買うのだ。のほほんさんの負担にはならない。

「更識の方も、水着は決まったのか?」

 のほほんさんの水着も決まったので、もう一人の同行者である更識に問いかける。

「……これ」

 黒を基調とした……ワンピース水着、というやつだったか。大人しい更識の雰囲気に合っていると思う。水着、特に女性ものについての知識が著しく欠如している俺の認識が世間一般と同じという保証はないが。

「いいと思うぞ」

 あくまで俺個人の意見だけどな、と付け足すと、簪は「……そう」と小さく呟き、水着をかごに入れる。その顔にほんの僅かにではあるが、笑顔を浮かべていたのはおそらく俺の気のせいだろう。もしそうでないとしても、きっと、気に入った水着を批判されなかったことに安堵しただけだ。

「何か他に買うものとかあるか?」

 のほほんさんからかごを受け取りながら二人に尋ねる。これで終わりなのだったら早いとこ会計を済ませてしまいたい。

「……え?」

 何に対してなのか、小さな驚きの声を上げた更識に俺の方が「え?」と声を漏らしそうになった。俺、何か変なこと言っただろうか。

「あなたが……払う、の?」

「何を?」

「それ」

 更識の指差す先にあったのは俺の持つ買い物かご。……ああ。

「そういうことか。気にしなくていいぞ、いつものことだ」

 二人の水着――プラスα――の代金を俺が払おうということが気になったようだ。のほほんさんと買い物する時はいつもそうだったから思い当たらなかった。

「女子に金出させるのも男としてどうかと思うし。どうしても俺なんかに払われたくないっていうのなら仕方ないが」

「……それ、ずるい」

「ああ、自覚はしてる」

 更識の非難めいた視線に、俺は頷いて答える。

「どうせ、こういうことくらいでしか金使わないから問題ない」

 俺の出費なんて本くらいだ。食費光熱費等はIS学園が負担してくれているため、ほとんど金の使いどころがない。ならばこういうところで使うのが一番だろう。女子なんていろいろ出費もかさむらしいし。

「……本音」

「えへへ~」

 俺から非難の視線をのほほんさんへと向ける更識に、のほほんさんは少し居心地悪そうに笑った。

 のほほんさんの名誉のために言っておくが、彼女が俺に金を払わせていた、ということはない。

 むしろ俺が日頃の感謝として始めたことだ。当初はのほほんさんも遠慮していたが、半ば無理矢理俺が押し切り、三ヶ月たった今ではのほほんさんも諦めたらしく、当たり前の光景になっている。つまり、俺が原因なのだ。

 そのことを更識に説明し、誤解を解く。更識は深いため息を一つついていたが、一応、理解はしてくれたようだった。

 そんなことを経て、会計を済ませた俺たちは水着売り場を後にする。これで、今日の最大の目的は達せられたわけだが。

「この後どうする?」

 時刻は昼を過ぎたあたりだ。このまま帰るというのもありだが、外出しているのだから昼食でもとってから帰るのでもいいだろう。

「私行きたいところあるんだ~」

 そう提案するのはのほほんさん。

「前に言ってたでしょ~。すーくんと食べに行きたいところがある~って」

 そういえば、そうだった。シャルロットの騒動の時、のほほんさんがそう言っていた。

 おそらくこのレゾナンスの中、もしくはすぐ近くの店なのだろう。距離のある場所を提案するようなこと、のほほんさんはしない。

「せっかくだから~、かんちゃんも行こ~?」

「……うん、お言葉に甘えて」

「今回は何の店なんだ?」

 今まで行ったのは……パフェ、ジェラート、パンケーキ、その他諸々。甘いもの好きののほほんさんが行きたがる店だけあって、どれも美味しかった。

「カップケーキだよぉ」

「カップケーキか。アメリカにいた頃にも何度か食べたな」

「あ~、すーくん、アメリカにいたんだっけ」

 この話するのは初めてのはずだが、のほほんさんは知っているのか。会長が俺の情報を掴んでるんだし、生徒会役員ののほほんさんが知っていても不思議ではないか。

 ここで生徒会……特に会長の名前を出すと更識が気にするから口には出さない。

「一年程度だけどな。ある人のツテでアメリカ軍のIS部隊で一緒に訓練させてもらった時期があったんだよ。その時に、部隊の人がたまに持ってきてたのを食べたってわけだ」

 規律の厳しい軍とはいえ、IS部隊の隊員は部外者の俺を除けば全員女性。それも下は俺よりも年下の少女から、上は三十に届くか届かないかの若い面々である。訓練の後や休日などにお菓子を持ち寄って食べることなど珍しいことではなかった。俺だけを仲間外れにするのは気が引けたのか、俺の分まで用意してくれたのはとても感謝している。

 ただ、アメリカのスイーツというのはどういうわけか、異様にカラフルなものが少なくない。着色料満載で、どうしてそのままの色では駄目なのだろうかと疑問に思うことも多々あったが、そこはその国の特色なのだろうと自分を納得させたのも懐かしい思い出だ。

「それまでは自己流で訓練してたから、軍の規則正しい訓練はとてもためになった。模擬戦の相手もそれまでは一人だったからな」

「……それって」

「そういえば更識には話したことあったか。あの時にも話した俺の家族だよ。俺よりも器用で、IS兵器の造詣も深い。今は経験の差で俺が勝ってるが、すぐに追い抜かれるだろうな」

「へぇ~、その人もIS操縦者なの~?」

「ああ。今はさっき言ったアメリカのIS部隊で訓練してる。本当だったら俺もまだそっちにいるはずだったんだが、急遽IS学園への入学が決まってな」

 そろそろあいつも日本に戻ってくる頃だろうか。俺がIS学園に入学して、あいつはアメリカってのもなんか変だし、今度束さんに聞いてみるか。

「今の俺の実力の半分はアメリカで培ったみたいなもんだな。小細工もあっちで生み出せたものも多いから」

「……『消失』や『弾丸撃ち』?」

 さすがは更識。その法則に気づいたか。

「ご名答。アメリカに行く以前に考えたのは『朧』みたいに日本語読みだ。アメリカで編み出したのは、更識が今挙げたやつみたいに英語読み。アメリカの師に当たる人がどうせならって、英語読みの名前を提案してきたんだ」

 特にこだわりもなかったのでその案を受け、今のような法則分けが生まれというわけだ。

「と。こんな話はここまでにして、のほほんさんの言うカップケーキの店に行くか。休日で混んでるかもしれないから」

 先ほども述べたが、のほほんさんの行こうとする店はどれも美味しく……つまり、人気がある。それはすなわち、混みやすいということでもあり、あまりここで時間を浪費するのはいただけない。

「そうだね~。でも、持ち帰りできるからぁ、そこまで混んではいないと思うよ~」

 テイクアウト可能なのか。確かに店舗で提供するのに比べて回転効率は良く、混みにくいだろうが、逆に回転が良すぎて品切れになる可能性が高くなるということだ。やはり、時間を浪費している場合ではない。

「ではでは~、れっつごぉ~」

「おー」

「……お、おー」

 のほほんさんがのんびりと腕の振り上げり、俺と更識も――更識は恥ずかしそうにだったが――同じように腕を振り上げた。




新キャラ(ティナ)登場と、なくても構わない様なアメリカとの関係を出す話。

主要キャラが日本人ばかりなので、一人くらいは外国人を登場させてみました。今後、少しは出番が増えると思われます。
ナターシャとのつながりは、完全にオリジナルです。どこかでこの設定も生かせるといいなぁ……。

もう一人か二人ほど登場させたいのですが、それなりに設定がわかっているキャラで誰かお勧めのキャラがいましたら、教えていただけると嬉しいです。
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