Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第七話 舌戦

「くだらないな」

 感情を出さないように、つぶやく様に、それでいてその場にいる全員に聞こえるように言う。

 俺の言葉を聞いて、俺の近くにいたやつから順番にこちらに顔を向ける。一夏も、先ほどまで騒いでいたオルコットもだ。

「……今、何とおっしゃいましたの?」

「くだらないと言ったのが聞こえなかったのか。立場をわかっていないのはどこの誰だ? あそこまできれいに勘違いをしていると、呆れるのを通り越して笑いそうになってくる」

 そう言って、わざとらしく鼻で笑ってやる。見る見るうちにオルコットの顔が怒りに染まっていくのがよくわかる。

「わたくしが……勘違い、ですって……?」

「ああ。お前は言ったな。お前は代表候補生で、日本は極東の島国、そして日本人は極東の猿だと」

「それが何ですの? あなた方には極東の猿がお似合いですわ!」

 またも侮蔑してくるオルコット。俺はそれに反論せず、無視して話を進める。

「では、代表候補生という肩書きは、何のおかげでもたらされたものだ?」

「そんなこと決まっていますわ! わたくし、セシリア・オルコットの実力以外に何がありますの」

「まあ、それは否定しない。イギリスがよほどの人材不足でない限り、お前も一定基準以上の実力は持っているだろう。だが、それよりも根本的なものがある。――インフィニット・ストラトス。それがなければ、お前は代表候補生という肩書きを得ることはできなかった」

 そう言われればそうだ、といった表情になるクラス一同。織斑先生は特に表情に変わりはないが。

「だからなんですの?」

「ここまで言っても気づかないのか? お前が今、こうやって偉そうにしていられるのはIS……お前の言う極東の猿が作った兵器のおかげだということが。お前は極東の猿のおこぼれをもらってるに過ぎないんだよ」

 まあ、実際は束さん一人の功績であって日本全体の功績ではないのだが、世間的にもISは日本が開発したという認識はよくされている。

「それに気づかず、日本のことを馬鹿にしきった発言。挙句の果てには、自分の国を悪く言われたら怒る? 相手の国を侮辱して、自分は許されて一夏には許されないってか? ふざけるのも大概にしろ。そんなにこの国にいるのが苦痛なんだったら、お前の大好きなイギリスに帰れ。イギリス軍にもIS専門部隊くらいあるだろ。そこでISの修練を積めばいい」

 オルコットが何か言い返そうとするが、何も言えない。もし言ってきても、そのときはもう一度説き伏せてやる。

「言っておくが、軍の訓練のほうは優しくないぞ。ここみたいに一から教えてはくれない。基本的なことなんてわかっていて当然とされているからだ。できないことがあっても、そんなこと関係なしに訓練は進む、わざわざ一人のために時間を割くことはない。できないことがあるのなら、一人で自主トレするのが常識だ。何よりも、お前みたいな自尊心が無駄に強くて、協調性のないようなやつは徹底的にしごかれるし、最悪、部隊訓練に参加させてはもらえない。軍では唯我独尊がご法度だからな」

 ついでに退路も塞いでおく。自尊心の塊ともいえるこいつがそんな逃げるようなことをするとは思えないが、念のため。

「わたくしが……日本人の、おこぼれを……?」

「反論があるのなら言ってみろ。俺の言い分が間違っているのだったらな」

「……っ!」

 鋭い目線で睨んでくるオルコット。だがまったく怖くない。睨まれたところで、何かされるわけではないのだから。

 数秒の間、俺のことを睨み続けたあと、オルコットは俺に向かって指を差し、口を開いた。

「決闘ですわ!」

 いきなり何を言い出すのかと思ったら、そういうことか。かかされた恥は、俺を実力でたたき伏せることで晴らそうと。自分の実力に自信を持っているこいつらしい考えだ。だが――

「断る」

「なっ!?」

 俺の返答が予想外だったのか、オルコットは驚きの声を上げる。しかし、その直後、余裕の表情へと変わっていく。

「なるほど。わたくしに勝てないことをわかっているのですね。あそこまでわたくしを侮辱しておきながら、いざとなると怖いのですね」

「お前ごときのどこを怖がれと言うんだ? 俺が決闘を拒む理由は“戦う価値がないから”だ。お前は勝てば鬱憤が晴らせる。だが俺は勝っても何の得がない。得がないのに、なぜ戦わなければならないんだ?」

 勝っても何もなく、万が一負ければ今以上の侮辱の言葉が飛んでくる。そんな戦いを、なぜやらなくてはならないのだろうか。

 オルコットが悔しそうな表情を浮かべる。決闘に持ち込ませられれば、自分が負けることなんてありえないのに、その決闘に俺を持ってこさせられない。そんな自信ゆえの歯がゆさ。

 だが、そこでオルコットにとっては嬉しい助けの言葉が入ってきた。

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