弱いから誰かを守ってはいけないんですか? 『完結』 作:ちゃるもん
ゆうかりんまじてんし
では、どうぞ!!
目の前に迫る尻尾を掴んだ。
力を受け入れ、優しく包み込むように。
そして、掴む時には力強く。
「反撃……開始ですよ」
僕は藍様の意識が戻ってくる前に握っている尻尾を一気に引き寄せる。
まだ事情を理解できていない藍様はなんの抵抗もなく倒れ混んでくる。そして、倒れ混んできたところを、脚で腹を蹴りあげる。
これであれば、絶対的な実力差、性能の差が有ったとしても多少なりともダメージが入るはず。
「ラァア!!」
「カハッ!!」
いつになく声を荒げ、全力で蹴りを放つ。
腹の少し上の部分、鳩尾に僕の蹴りが突き刺さり、藍様の体は宙へと浮いた。
だが、宙を浮く時間は少しの間。それも当然である。何故なら僕は未だに尻尾を離していないからだ。むしろ、僕がこの尻尾を離してしまったときが僕の敗北が決まった。と、言っても過言ではない。
掴んでいる尻尾を握ったまま背負い投げの要領で投げる。勿論尻尾は掴んだままだ。
バァアアン!!
「カハッ」
叩き付けたときの大きな音と、その音に掻き消されるように聞こえる藍様の声。
僕は逃げられないように手に力を込めた。
「……よくもまぁ……やってくれたな、なあ?」
「これは実戦形式での修行ですよね?想定外の事に対応できなかった藍様がいけないのでは?」
ゆらりと立ち上がった藍様に皮肉を込めて、笑顔でそう答える。
「ああ。そうだな。これは『実戦』なんだ……お前が修行中に『不運』な『事故』で、死んでしまっても……文句は無いんだろう?」
「ええ。出来れば……ですが」
相手を見下すかのように、小さな笑みを浮かべ答える。
瞬間、藍様の体からバンッ!と大きな音と共にとてつもない量の妖力が溢れ出る。
瞬間、藍様の体からフッと溢れ出ていた妖力が霧が晴れるように消えた。
僕の手中には……一枚のお札。
だが侮るなかれ。これは八雲紫様が直々に作られた魔封じのお札なのだ。
たとえ相手が八雲紫様の式だろうと、わざわざ頼み込んでまで作って貰った代物。効果はてきめんだったようで安心する。
尻尾を下に引き、体制を崩したところで背中に回り込み地面に押し付ける。
そして、両手両足に札を張り付ける。こちらも紫様に作って頂いたお手製のお札。相手の行動を押さえ付ける効果がある。しかもそれを四枚。
正直ここまで上手く行くとは思ってはいなかった。年のために後三つほど手を隠していたのだが使わなくてホッとしている。
「藍様。僕の勝ちで宜しいですかね?」
「クッ!!」
後ろ手に手を組ませ、手首を両手で押さえる。もう既に動けないだろうが念のためだ。
だが、そんな状況でも藍様は激しく暴れる。それでも僕の力でも押さえ付けられる程度なのだが。
「貴女が負けを認めないと言うのであれば……僕も容赦はしません。僕だって負ける、負け続けるわけにはいきませんので」
袖口から黒色の御札を取り出す。こうやって考えると、このように道具を用意したりする事が出来たのは運が良かったのかもしれない。
そんな事を考えながら、藍様の首筋に御札を張ろうとする……ところで、腕を止められた。
「紫様?」
「そこまでしなくても良いわ。朝香くん」
「紫様!?申し訳ありません!!このような者に遅れを取るなど……!!」
藍様が僕に押さえ付けられたまま紫様に言葉を綴る。
「それはどうでも良いのよ。ただねぇ……私が気に入った子を死にかけまで追い詰めるのは……ねぇ?
むしろ……彼に助けられていたのを知らずに痛め付けるばかりで……本当に八雲藍なのかしら?相手の可能性すらも分からないなんて……実は別の存在だったりしたりするのかしら」
紫様の言葉に一気に顔色を悪くする藍様。
「本当に、彼に感謝しなさい。出なかったら……今頃消し炭にしていたわよ。私はね、家族を無意味に虐めるのが大嫌いなの。今の悪はどちらなのでしょうね?」
藍様の体から力が抜ける。
そこにどんな感情が渦巻いていたのか僕には分からない。
けれど……僕は負ける、少なくとも……紫様に見放されるわけにはいかないのだ。
「朝香くん。そろそろ精神も体も限界でしょう?ほら、治療してあげるからこっちに来なさい」
手招きする紫様に付いていく……前に、まるで死人のように動かない藍様から御札を剥がし、近くの部屋へと運んでおいた。
そして、限界が訪れる。
気が付けば僕は藍様の隣に寝るように倒れていた。
目の前には藍様の顔。
そして、意識が薄れていくなかの最後の光景は―――
―――地面を覆うほどの赤だった―――
お読みいただき有難うございます!!
勝っちゃたよ……この子……
紫様は朝香くんも藍様も自身の子供のように思っています。
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
朝香くんの見た赤。
それは一体ナニの赤なのか……
では、また次回~