弱いから誰かを守ってはいけないんですか? 『完結』 作:ちゃるもん
大切な人に、『ただいま』。って言ってみよう。
そうしてらきっと、『おかえり』って返ってくるだろうから。
では、どうぞ!!
「惜しかったな。彼処でもう少し慎重に、そして貪欲に勝ちを狙いに来ていれば勝てていたかもしれなかったな」
「即決し過ぎましたか」
「まあ端的に言えばそうなる。ほれ、腕を出してみろ。治癒に回す妖力も残っていないのだろう?」
「アハハ……お願いします」
藍様に左腕を見せる。藍様は爛れた腕に触れ治癒術を行使してくれ、数秒ほどで腕は完治。さっきまで酷い怪我を負っていたとは到底思うことが出来ない。
「さて……もう一戦やるとしようか」
「はい!よろしくお願いします!!」
「の前に……ちょっと良いかしら?」
「紫様?」
僕たちが正に拳を突き合わせようとしたとき、突如として訪問してきたのは主である紫様だった。
確かに紫様が修行中に来ること自体は珍しくはない。だが、こうして修行中に話し掛けてくることは殆ど無かった。話し掛けて来ても大体は藍様に話があったりなので僕は何時ものように一歩下がろうとする。
「ああ、今日は藍じゃなくて朝香くんに話があるのよ」
「僕にですか?」
一歩下がろうと左足を後ろに下げたとき、紫様から声を掛けられる。
僕に話?一体何だろうか?
慌てて左足を戻し紫様の前に移動する。逆に藍様が一歩後ろに下がった。
「ええ。そろそろ頃合いだと思ってね……貴方との約束を守るのに」
「…………本当、ですか?」
「こんな所で嘘を付いて私に特があるかしら?」
と、言う事は……言う事は……ようやく……帰れる。少ない時間だろうけど……会えるんだ。
胸の中は喜びに叫びたいのに、声から出てくるのは掠れる声だけで。
気が付けば僕は泣いていた。
今までただがむしゃらに走り続けた。
自分の命を省みない時だってあった。
立ち止まろうと、座り込んでしまおうと……何度も、何度も思った。
ここで死ねればどれだけ楽なのだろうか……
でも、諦めなかった。諦めきれなかった。
目の前にちらついて消えなかったその姿に、声に励まされて、例えゆっくりでも前に進もうって。
それが今……報われたのだ。喜びはすれど泣く通りはない。
なら、どうして……僕は泣いているのだろうか?
ああ、そうか……これが嬉し涙と言うやつなのか。
そう理解した瞬間、僕は空へと大声を上げ泣き続けた。
・
里の墓所。そこには上井朝香と書かれたお墓があった。
自分の墓を生きているのにこうして見ることになるとは……少し複雑な気持ちである。
紫様はどうしてここに僕を連れてきたのだろうか?どうせなら彼女の家につれt
カランッバシャッ
乾いた木材の音、水がこぼれた音がほぼ同時に鳴る。
そして、理解した。紫様がどうして僕をこの場所に連れてきたのか。
ゆっくりと後ろを振り替える。
大人びた姿に、五年前の面影を残した彼女。
口元を手で覆い目の端に涙を溜める彼女。
僕の大好きで、愛している彼女、柊香住の姿がそこにはあった。
だが、僕の体は動かなかった。
今更、今更ながらに考えてしまったのだ。
五年も待たせてしまったのに、何か言う権利が有るのだろうか?もう、愛想を尽かされて終っているのではないか?
そんな事が脳裏を過る。
しかし、それは杞憂であった。
何故なら香住さんは、口元から手を離し何かを待つように涙を流しながら静かに佇んでいたのだから。
ああ……なんて馬鹿な事を考えていたのか……
もう、さっきまでの恐怖はない。
僕は彼女の目を確りと見つめ―――
―――ただいま―――
彼女は涙でグシャグシャになった美しい笑顔で―――
―――おかえりなさい―――
HAPPY END
おかえりなさい
END
お読みいただき有難うございます!!
取り敢えず完結……ですかね。
一応別ルートが何個か残っていますので、『赤ずきん』と投稿ペースを切り替えて書いていこうと思います。
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
そしてまた、『いってきます』が始まって『ただいま』になって、『おかえり』が返ってくる。これが一つの家庭の姿で、世界の姿なんだ。
では、また次回~