今回はお別れの季節のお話ですよ!
それでは是非最後までお楽しみくださいませ。
3月に入って暖かくなってきたというのに、道の端にはまだ残雪が目立っている。
カレンダーを見ると、木曜日。俺とあいつが話さなくなってからもう一週間になっていた。
口喧嘩は日常茶飯事な俺達だが、3日もすれば仲直りしていた。なのに今回はいつもならそろそろ謝ってきても良い頃なのにあいつは一向にそんな気配を見せないのだ。
「んだよあいつ…」
別にいいんだけどな、あいつが謝ってこねぇなら俺は他の奴とつるむだけだし。
ただ、あいつは俺と違って他の友人に声をかけるでもなく、ひたすら難しい顔をして本と向かい合っていた。
それがとても気に食わない。
俺と話している時に見せる顔はいつだって笑顔だった。
あんなに嬉しそうに、楽しそうに笑えるあいつが6日も7日も独りであんなに真面目な顔をし続けているのは正直見ていてつらかったんだ。
あいつからすれば余計なお世話かもしれない。
確かに俺の勝手だ。
それなら今回は俺から謝ってみようかとも思ったが、出来なかった。なにせ俺からあいつに謝ったことがないものだから、どうすれば良いか判らなかったのだ。
「くっそ…どうしたってんだよ…」
他のクラスメイトといくら楽しい話をしても、俺は全く楽しいと思えなかった。
午後四時過ぎ。あいつのいない帰り道は俺1人だ。
とうとう今日も俺達は一言たりとも話すことはなかった。
このまま3日後も話せないままだったらどうしよう…もう、卒業なのに。
俺とあいつは中学三年生。3日後には卒業式が控えていた。
俺はちょっと偏差値が低めの高校にスポーツ推薦、あいつは進学校の特色選抜に合格。
進路が違うから、このままでは本当に一生話せないままになってしまうかもしれない。
後悔することになるというのは馬鹿な俺にもよく解っていた。
ため息をついて下を向くと、足下には相も変わらず少し土で汚れた雪がうっすら積もっていた。
その日から俺はよく眠れず、とうとう卒業式の日を迎えてしまった。朝は少し瞼が重たかったが、ちゃんとあいつに話しかけることを決めていたから緊張してしまったのだろう。少し早めに学校に着いた。
教室で待つこと3分程度。
案外早くあいつは教室にやってきた。
「よ、よう。おはよう」
俺が少しぎこちなく挨拶をすると、あいつは驚いたように目を見開いて…でもすぐにいつものふにゃっとした笑顔を見せた。
「うん、おはよう」
ちょっぴり眠たそうな声で、でも楽しそうに。
俺が声をかけてくるのを待っていたみたいにあいつは今までになかった程に多弁になった。
「ねぇ、健太」
あいつが俺の名を呼んで、またふにゃっと笑った。
「話しかけてくれてありがとう、僕、君を信じて待ってて良かったよ」
…どうやらこいつには全てお見通しらしい。
今回は自分から話しかけなくても俺から声をかけると解っていた様な口ぶりだった。
「お前には適わないよ」
思わず笑ってそう言うと、
「えへへ」
なんて女々しい笑みが返ってきて俺はまた吹き出した。
それにつられてあいつも笑う。
どのくらいそうしていただろう。あいつが唐突に切り出した。
「ははは…っあー、健太、卒業おめでとう」
そうか、折角仲直りしたのに、もう今日で卒業なんだ。
そう思うと胸がじんと痛んだ。
「おう、お前もな、おめでとう」
「あれっ、健太泣いてんの…?」
「……気のせいだろ」
「気のせいじゃないよー…うぅ…」
「んだよお前も泣いてんじゃんよ…」
今度は2人揃って泣き出した、俺達の零れて落ちた涙が冷たい雪を消し去ったのだろうか。
窓から小さな緑が芽生えているのが見えたんだ。
高校生な碧兎の先輩もご卒業の季節です。
寂しいですね(´•ω•` )
こんなところで、ですが、ご卒業される全ての皆様へ、おめでとうございます。
どうか悔いだけは残されませんことを。