星くずWaltz   作:碧兎

11 / 15
お 遅 刻 !

おはこんにちばんわ!碧兎ですよ!

書けましたがお遅刻です!ごめんなさい!!
頑張ったから許して下さい!((違う

今回は少し流血表現がありますので苦手な方は回れ右お願いしますっ。
他の読んでくれると嬉しいな…♪((

それでは、最後までお付き合い下さい……っ




中庭の桜

俺には3つ下の妹がいる。素直で純朴で、俺なんかにも懐いてくれる可愛いやつだ。

 

「おーいさくら、起きろー」

俺はこうやっていつもこいつを起こしてから学校に行く。目を開けずにちょっと頬を膨らませるこの顔も毎朝恒例だ。

 

「あー…うー…もうちょっとだけ……」

「だめだ、もう7時半だぞ。学校遅れるんじゃねぇの?ほーらー」

「うぅぅ…」

 

しっかり掴んでいた羽毛布団から引き離され、小さく唸るさくらに目覚まし時計を見せる。

 

「あああっ、ホントだ!お兄ちゃん何でもっと早く起こしてくれなかったのー?!」

「いやちゃんと起こしたから」

「どのくらい?!」

「…目覚ましのスヌーズくらい」

「5分おきじゃんごめんお兄ちゃん!!」

 

そう言いながらもばたばたと身支度を整えていく妹が制服を手に取った。

「着替える時言えよ、出てくから」

「え?なんで?」

「なんでじゃない。もう年頃なんだから少しは気にしろ……ってうわっ」

 

俺が小さく驚くと、さくらは既に制服の袖から出していた手でピースを作り、にっと笑って言った。

「いいじゃん、たった1人の兄妹なんだから」

「お、おう……っていやそれは関係ない!」

 

俺の妹にしては眩しすぎるその笑顔と切ない台詞に一瞬謎に納得しかけたが、お兄ちゃん負けない。騙されないぞ。

 

さくらがたった1人の、なんて強調して言うのは、「たった1人の兄妹なんだから、助け合いなさい」なんていう死んだ母さんの口癖が移ったんじゃないかと俺は密かにそう思っている。

 

母さんは三年前、事故に遭って死んでしまったが、昔から母親っ子だったこいつが母さんに影響を受けているのは至極当然のことで、たった1人の兄妹なんだから、と笑うこいつが母さんに被って見えることも多かった。

 

「…取り敢えず急げよ、遅れるぞ」

 

母さん譲りのその優しい笑顔は、同じく母親っ子だった俺の胸に、いつも小さく傷を付けていった。

 

「用意出来た!ご飯は?!」

「そんな時間ねぇよ!コッペパンでもくわえてろ!」

「そんなぁ…!」

「ほらあと5分でバスくるぞ!」

「コッペパン下さい!!」

 

いつも通りのばたばたした朝、いつも通りの笑顔の妹。

俺は、こんな日がいつまでも続くと信じて疑わなかった。

いや、そんなこと考えてもいなかった。

 

「いってきまーす!!」

 

でも、普通って、いつも通りって、諸行無常なんだ。

 

「ちょっ、まて!さくら……!!」

 

がんっ、と鈍い衝突音と耳を劈くような高い音、少し離れた所から聞こえる隣のおばさんの、さくらを呼ぶ声。

 

「おい優護、救急車呼べ!早く!」

 

ゆうご、優護…?俺、俺のことだ。

真っ白になりかけていた俺の頭を貫くように、親父の声が飛んだ。

我にかえった俺は目の前の真っ赤に染まった妹を助けようと、すぐに携帯端末に手を伸ばす。

 

「お、兄ちゃん…ごめ…ごめん…ね…」

 

消え入りそうな声で、何か、赤い、さっきまでさくらだったものが喋る。

 

「喋るな!じっとしてろ!……もしもし!救急です!場所は…──」

 

怖い、怖い。どうなっているのか解らないのが怖い。赤く染まった妹の姿が怖い。何よりもその妹を失うのが怖い。

頼む、死なないでくれ……。

そう祈りながら、俺は救急車の到着を待った。

 

 

ピッ、ピッ、ピッ、と電子音が鳴り響く白い部屋に、妹が寝ている。

その隣でそれを見つめることしか出来ない俺は、静かに唇を噛んだ。

ごめんな、さくら。お兄ちゃん、何も出来ないよ。

いつもそうだ、大事な時に限って、いつだって俺はこいつに何もしてやれない。

護るって、母さんと約束したのに、護れてない。

さくらも、約束も、護れていないんだ。

 

「ごめんなぁ…駄目なお兄ちゃんで…」

 

自然と呟きが漏れる。頬には冷たいものが伝う。

俺は、弱くて、情けなくて……どうしようもない兄だ。

ごめんな、さくら。痛いよな、苦しいよな…。

護ってやれなくてごめんな……。

 

「お兄ちゃんは悪くないよ……」

 

霞んだ視界を手で擦って声の主を見やると、さくらが目を閉じたまま、俺の方を向いていた。

毎朝恒例の、あの表情。

 

「私は、大丈夫だよ…こんな私をいつも、いっつも、心配してくれて…ありがとう…」

 

小さく聞き取りづらい声も寝起きのそれで、言ってることは優しいいつもの妹のそれで。

 

「…太陽の光、入れようか」

 

溢れる感情を押し殺して、病室のカーテンを開くと、目の前には病院の中庭が広がっていた。

 

「ほら見て、中庭…桜が咲いてるね…!」

 

目を開いて外を見たさくらが俺に笑いかけた。

 

…こいつの笑顔は胸に来るが、同時に癒してもくれる。

素直で真っ直ぐな、眩しい笑み。

 

「……ああ、綺麗だ」

 

それは、今俺の前に広がっている桜の大木のように綺麗で、美しく、可憐で、力強い。

 

母さん、あなたの娘は、名前通りの人間に育ってるよ。

俺も、自分の名前に恥じないような人間になるから。

優しく、護りたいものを護れるような人間に。

だからお願いです。それまではちゃんと、見守ってて下さい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。