星くずWaltz   作:碧兎

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あけましておめでとうございます!

毎週頑張っていきますので、今年もよろしくお願いします!

それでは最後まで御付き合い下さいませ。






小さな鳥居

「この鳥居って……」

 

1月1日お正月。私は、屈んでギリギリ通れるくらいの小さな鳥居の前で立ち尽くしていた。

 

1月1日から3日までの三賀日。

その3日間の間、山の麓の何処かにある、氏神様を祀った小さな神社に毎日通うと4日の日にどんな願いだって叶う。

私の住む街にあるそんな馬鹿げた言い伝えを思い出していたんだ。

 

「氏神様氏神様、あけましておめでとうございます」

 

手を合わせて挨拶をする。

 

「……なんてね」

 

勿論あんな言い伝え、私だって本当に信じていた訳ではない。

でも本当だったら面白いなって、そんなほんの少しの遊び心で私は3日間通ってみることにした。

 

 

1月2日。

あんな言い伝えをやってみようと思っているなんて誰にもバレたくなくて今までにないくらい朝早くに家を出た。

山の中は朝霧で曇っていてちょっぴり見えづらい。

 

「あ、あった……」

 

今日もちゃんと手を合わせて挨拶。

 

「氏神様氏神様、おはようございます」

 

そう言った瞬間に朝日が昇って私の背中を照らした。

気温は低いけど暖かくて…うむ、早起きも中々気持ちがいい。

 

私はもう一度手を合わせてから家に帰った。

 

「まいちゃん、何処行ってたの?朝ご飯出来てるわよー」

 

家に帰るとお母さんが朝食を用意してくれていた。

 

「…はぁい」

 

朝ご飯を食べながら考える。

もし、もしも。あの言い伝えが本当だったとしたら。

4日の日に、私は何をお願いしようか。

 

可愛くなりたい。お金持ちになってみる?運動神経がよくなるのもいいな。勉強出来るようになるのも素敵。彼氏が欲しい…?それもありかも。

 

どうやら私の中は除夜の鐘でも消しきれない煩悩に溢れていたようで。

一つきりの願い事はご飯を食べ終わるまでの短い時間ではとても決めきれなかった。

 

 

1月3日。

今日も早起きして氏神様に御挨拶。

 

「氏神様氏神様、おはようございます」

 

結局昨日は願い事を決めることは出来なかった。

今日中に考えなきゃ……っていやいや。

ちょっと試すだけだもの。別に決めなくてもいいんだって。

 

 

家に帰ってぼうっとしていると、がたんと大きな物音がした。……何の音だろう。

 

慌てて物音がしたキッチンへ駆け込む。

 

「え…っお母さん……?お母さんっ?!」

 

そこにはお母さんがうつ伏せで倒れていた。

突然のことで頭が真っ白になる。

お母さんどうしちゃったの?なんで動かないの?お母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さん…!!

 

「まい!お母さんどうしたんだ」

 

慌てる私の後ろからお父さんの低い声がした。

見た目には判らないがお父さんも焦っているようで、声は震えている。

 

「お父さん!お母さん倒れちゃってて…それで…それで…!」

 

 

1月4日。

昨日、お父さんの緊急連絡で救急搬送されたが、お母さんはまだ目を覚まさない。

病院のベッドで横たわったままピクリともしなかった。

 

「お母さん……」

 

…少し、信じてみようかな。

私は藁へもすがる思いでお母さんの手を握っていた手を離し外へ飛び出した。

 

走って、走って、走って。

ようやく辿りついた鳥居の前で、私は膝を付いて祈った。

 

「氏神様氏神様、もし願いを叶えてくれるなら…どうかお母さんを助けて下さい…!」

 

もう何分こうしていただろう。

ポケットに入れていた携帯端末が音を立てる。

お父さんからの着信だった。

 

「もしもし…」

 

「まい!まい!今どこにいる?!」

 

「お、お父さん?!どうしたの?!」

 

「お母さんが、お母さんの様態がよくないんだ!」

 

目の前が真っ暗になった。

やっぱり神様なんていなかったんだ。

 

すぐに病院に向けて走り出したが、私の視界は霧もかかっていないのにとても不明瞭だった。

 

 

病院には珍しく取り乱したお父さんがいた。

 

「まい!お母さんに話しかけるんだ!」

 

「お母さん!お母さん!」

 

「お父さん娘さん!もっと話しかけて下さい!!」

 

お父さんと2人で叫び続ける。

 

「お母さん!!」「おい!起きろ!!」

 

「……ま…い……?あなた……?」

 

「お母さん……!!」

 

喉が枯れ始め、声が出なくなってきたその時、お母さんが意識を取り戻した。

 

後で聞くと、お母さんが大きな川を渡ろうとしていたら小さな女の子が現れて、お母さんを止めると引き返すように言ったらしい。

 

「ここらの氏神様が守ってくれたのかもねぇ…」

 

「え?」

 

「女の子のお姿をしてるらしいよ」

 

どうやら氏神様は私のお願いをちゃんと叶えてくれたらしい。

 

 

1月5日。

 

「ありがとうございました」

 

私は手を合わせて、お正月の奇跡にお礼を言った。

 

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