スピードスター森崎   作:AMDer

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書くのに半日かかった。他の投稿者さんには頭が下がる思いです。


第三話 急がば回れ

 より速い結果を出す方法はなにか。その答えの一つがスマートであることだ。余分なものを極限までそぎ落とす。寄り道をせず、回り道をしない。故に森崎が行動を起こすときは常に最短距離を走る。しかし確認はしなければならない。その道には危険があふれているかもしないし、一科生と二科生が魔法合戦を行ってるかもしれない。

 

3話 急がば回れ

 

 森崎は午後の授業が開始する10分前に目的である闘技場に足を踏み入れた。大変な混雑が予想されていたからである。まあ性分でもあるわけだが。既に人がまばらに集まりつつあるなか、少し後に来た団体に見知った顔を見つける。

 

「おい、レオ!」

「?」

 

 団体がこちらに振り向き、その中にもう一人見覚えがある存在がいた。

 

「駿か」

 

 一番大柄な青年がこちらに気付き笑みを浮かべている。実はこのご一行、ここに来る前食堂で一科生との間にひと悶着起こしていた。そのせいか2人の女性には一科生である森崎にわだかまりのようなものが見て取れる。

 

「あー、はじめまして、1-A 森崎駿だ。」

 

 そんな空気を感じてか、森崎は一団に近づくととりあえずと自己紹介をする。

 

「1-E 司波達也だ。昨日ぶりだな」

「同じく、千葉エリカ、よろしくー」

「同じクラスの柴田美月です。よろしくお願いします」

 

 各々が自己紹介を済ませる。率先して達也が自己紹介を返し、少し怪訝な雰囲気を漂わせていた女子生徒も、森崎の態度と男子生徒2人が知人である様子から、和やかに自己紹介を返す。

 

「さっき言ってた俺の隣で居眠りしていたブルーム様だぜ。な、いいやつっぽいだろ」

「あれは狸寝入りしてただけだから、決して居眠りしてたわけじゃないから」

 

 ニヤニヤとしながら皮肉を投げつけるレオに反論する森崎。

 

「たしかにウィードよりたくましそうね」

 

エリカも楽しそうに合いの手を入れる。

 

「あの、達也さんは森崎君と知り合いなんですか?」

「いや、挨拶を交わしただけだな」

 

 美月の疑問に達也は端的に答える。ほとんど他人のようなものだが先ほどのように親しげに自己紹介したのは、美月とエリカの警戒を解すためであったらしい。そんな達也を森崎はまじまじと見る。

 

「?どうかしたか」

「いや、総代の司波深雪さんって」

「ああ、妹だ。ついでに言うと双子じゃなく年子だ」

 

 何度となく繰り返される質問にそつなく答える。

 

「しかしよくわかったな、あんまり似ていないのに、苗字だってありふれてる」

「入学式の2時間前に来る理由なんて限られてるからね。妹さんに付き添ってたんだろ」

「その通りだ」

 

 ニヒルな笑いを浮かべる達也を森崎は内心警戒する。こいつは俺より先に講堂に入ることもできたはずだと。もっとも目立つのを好まない達也がそんな真似をするはずがない。初対面といっても過言ではないこの状況で、森崎がそれをわかるはずもないが。

 

「俺は開校時間、3時間前に来てたもんね」

 

 よくわからない言葉を返され、達也も少し困惑する。

 

「たしかにそんな早い時間に登校する新入生なんてわけありか張り切って空回りしてるやつだけだろうな。一番乗りだって息巻いてたくせに実はそうじゃなかったっていうだけで露骨に落ち込むようなやつとかな」

「そういうレオはなんで俺の隣に座ったのか聞きたいな」

 

 この男、森崎に話しかけるときはいつもニヤニヤしている。おそらく内心虚仮にしているのだろう。実に面白くない。なのでこちらもお返しをする。

 ここにきて一科生と二科生の隔たりを森崎は感じていた。そんな中で好き好んて一科生の隣に二科生が座るとは思えない。そんなことを考えてのいじわるな質問だった。

 

「そりゃ、俺が一番最後だったからよ」

 

 悪気もなく答えるレオに森崎はこのことについて考えるのを辞めた。

 

「混んできたな」

 

 達也のつぶやきに周りを見回す。たしかに少し話しているうちに大分混んできた。最前列に陣取る達也たちにはあまり関係なかったが。

 

「妖精姫の名前は有名だからな」

 

その容姿も相まって、ファンクラブもあるという話だ。

 

「森崎君もその口?」

 

 エリカが面白そうに聞いてくる。この中を一人で見学しようとしていた森崎を訝しんでのことだ。

 

「俺は九校戦でスピードシューティングの出場枠を狙ってるからな。そうでもなくても十氏族嫡流の実技だ。興味を持つなっていうのも無理がある」

 

 ここにきて他の面々は少し森崎を見直した。いや、一科生二科生分け隔てなく接する彼には好感が持てていたのだが、言動が少しばかりずれていたのでいささか侮っていた。彼は単純に己を磨くためにこの学校へ来たのだ。ちっぽけな優越感と馴れ合いのためではなく。そして確たる目標も持っている。今まで突っかかってきた一科生と同じとは思えない。

 

「見えない」

「おい、なんで補欠が前にいるんだ」

 

 そんな感慨をぶち壊す言葉に面々は現実に引き戻される。もっとももう慣れたのかその罵詈雑言を無視し、始まった3年生の実技に目を移す。しかし達也だけは悪態をつく一科生のさらに後方の気配に気づき若干居心地悪そうにしていたが。

 

 

 

 

 幼稚な一科生との交流に深雪の心はささくれだっていた。昼食だってご一緒したかったのに、本当だったら見学だって。そんな望みも叶うべくなく、気づかれないように嘆息する。

 他の一科生に提案され闘技場に来たはいいが、この集団において決定権を持つ深雪がさしたる指針を持っていなかったのに加え、集団の大きさも相まって闘技場に着いたときには既に場所も空いてなかった。

 そこで先頭集団に二科生が混じっていることに気付いた同級生達の幾人かは文句も口にしていた。そんななか、深雪はその二科生の中に最愛の兄が居ることに気付いた。楽しそうに学友と見学している兄を。その兄に向かって罵詈雑言を並べ立てる同級生に敵意が向く。もっとも表面上は何事もなく微笑を浮かべていたが。しかし徐々に彼女の周りに変化が現れる。気にするほどでもないが、彼女の魔法が暴走し気温が下がっているのだ。

 そしてその一団に同級生が居ることに気付く。自分と同じ立場であるはずなのに最愛の兄と仲良さそうに見学している森崎を。彼が他の一科生からよく思われていないことも彼女は認識していた。

 その類稀な容姿に加え、最愛の兄に相応しくあろうと完璧をこなしてきた彼女は思う。自分ももっとわがままに過ごせば良かったのだろうかと。例え他の皆に見捨てられても最愛の兄は彼女を見捨てないだろう。そうすればもっと思い通りに過ごせたかもしれない。そう思いながら彼女は微笑を深め、周りは肌寒さを感じていた。

 

 

 

 

「さっきは結構暑かったのに、涼しくなったな。うん、いい塩梅だ」

「…ああ」

 

 これだけ人でごった返していると空調が効いている室内とはいえ蒸し暑さを感じる。先ほどまで空調が効いていなかったかと思うほど涼しくなっていく室内に森崎が感想を漏らす。その原因に気付いている達也は相変わらず居心地悪そうに相槌をうつ。

 

「あ、会長さんです」

 

 美月が真っ先に会長を見つける。メガネをつけているのに目はいいらしい。もっとも現代の医療では視力を簡単に取り戻せるのだが。そして一時期吉田一門に属していた森崎はその理由もあたりをつける。

 今回の授業は射的だ。会長は端末に的の設定を入力し立ち位置につく。

 

「小っさ」

「最初から最高難度のコースを選択したみたいだな。」

 

 エリカの呟きに達也が答える。表には出せないが彼もこの競技は得意だ。そして的の小ささと数からコースを的確に判断する。因みに森崎も小さいと思った。身長が。

 

「いいところ見せようってか。いや実力は微塵も疑ってないけど」

「始まりますよ」

 

 茶々をいれる森崎を美月が遮る。見かけによらず胆力もあるらしい。

 そんな中真由美は一射目を放つ。それと同時に次々と現る極小の的を危なげなく打ち抜いていく。それどころか乱舞を始める的もたちどころに射ち抜いていく。彼女の実技を見学できた幸運な生徒達は皆息をのむ。目で追うのもやっとな動きであるのに、気づいた時にはそれらが射ち抜かれていくのだ。そして終了のブザーがなる。結果はパーフェクト。

 

「すごい…」

 

 誰かが漏らしたのと同時にそこここに喧噪が起きる。

 

「まだまだ余裕って感じだったな」

「速すぎてどんな魔法を使っているのかわかりませんでした」

「なんか小さい礫が飛んでたのは見えたんだけど」

 

 感嘆するにレオに、美月は疑問を口にする。エリカは今のが見えていたらしい。こいつも只者じゃないな。

 

「ドライ・ブリザード、空気中の二酸化炭素をドライアイスに圧縮して射ち出す収束・発散・移動の系統魔法。会長のはそれを素に七草家が創った『魔弾の射手』という魔法だ。オリジナルと違うのは発射口を自在に設定できる点だな」

 

 達也の解析に頷く。こいつは見た目どおり博識らしい。七草家はこの魔法は秘匿していない。むしろそのフレキシブルな威力設定と広告塔の長女を用いてアピールしていた。ただし調べればわかる程度だが。

 

「それと同時に知覚系魔法マルチスコープも用いて照準をあわせていたな」

「なんだそれ」

 

 聞きなれない言葉に今度は森崎が質問する。

 

「物体を多角的に知覚する魔法というよりスキルに近いものだ。生身であの射撃は難しいからな。因みに入学式の時も使っていた」

 

 人の悪い笑みを浮かべながら達也は答える。その中の聞き捨てならない科白に森崎は一瞬目の前が真っ暗になった。

 

「お前の寝顔もバッチしだな」

 

 やはりこいつだ。レオがすかさず茶化す。

 

「俺は風紀委員長だけでなく生徒会長にも目を付けられているのか…」

「あっは、入学式でお叱り受けてた一科生って森崎君のことだったんだ」

 

 途方に暮れていた森崎の独白にエリカが食いつく。

 あの時野次馬が何人か居たが、あの風紀委員長は気にもせず尋問してきた。素直に恥ずかしくて俯いてだけですと答えたが信じてくれたかどうか。尋問の途中からなんか変な匂いがしたが、目の前の麗人から漂っているのかと考えると興(ry。

 まああの始終が広まっていたらしい。

 しかしこの時森崎は気づいていなかった。彼が一科生のプライドを逆撫でし、深雪には言いようのない敵意を向けられ、担当教諭には目を付けられていることに。二科生とも関わりがないだけで彼に好意を向けるものは居ないだろう。それなりに評価しているのは入学式の朝に挨拶をした上級生ぐらいである。彼は挨拶にしても一科生二科生関わりなく挨拶し、それを上級生は好意的に受け止めていた。

 森崎は身の振り方を改めないとと考えながら他の先輩達の実技に目を向ける。

 

「ふふ、やっぱり仲がいいのね、面白い子」

 

 ある上級生が一人ごちる。

 

 

 

 

「さて次はどこに行くか」

 

 3年生の実技が終わり、レオが意見を求めた。会長の実技が終わった時点で退室する失礼なやつも居たが達也達は最後まで見学していたのだった。どうやらあの煩い一科生どもは興ざめしたらしく、同じくらいのタイミングで退室していたのだった。おかげで妹には悪いが達也はリラックスした気分で見学をしていた。ところどころで挙がる質問にもそつなく答えていた。

 

「俺は朝に工房は回ったからなー、お前らは?」

「あたしたちもよ」

「この女のせいでつまみ出されたがな」

 

 エリカの答えにレオが抗議を入れるが、すかさずエリカがレオの足を踏む。

 

「となると」

「体育館ですか」

 

 レオの苦鳴を無視し、森崎は話を続ける。それにしても俺って体育会系に見えるだろうか。美月の答えに若干の心地悪さを覚える。まあ家業もあるので鍛えてるとは思うが、ごのグループにはさらにごついやつが二人もいるので、何とも言えない気分になる。もしこの時達也が答えていたならば美月はこう返しただろう。

 

「いや、図書館だ」

「賛成だ」

 

 達也がすかさず同意する。珍しく乗り気のようだ。本当は一人で調べものでもしたいのだがこれも良い機会と達也は思っていた。図書館に着くと達也は手近の端末を操作し目録を高速でスクロールしていく。

 

「悪い、俺は地下書庫の方に行く。時間はどうする?」

「ホームルームまでここで調べものしてもいいんじゃない」

 

 達也はどうやら地下書庫にいくらしい。機密文書があるから連絡手段が限らている場所だ。エリカが返答し他の面々も異議は無いようだ。思い思いの方向へと散っていく。森崎も個室ブースに入り、モータースポーツに関する書籍を読みふける。集合時間10分前に集合場所に向かう。しばらくして全員が集まる。

 

「今日はここまでだな、じゃあ俺は教室に戻るわ」

「ああ、またな」

「バイバイ」

「さようなら」

「また今度」

 

 レオ、エリカ、美月、達也の別れの挨拶を受け取り、森崎は教室へ向かう。

 

 

 

 

「速いな」

「あー、競歩でもしてんのかあいつ」

 

 どんどん遠ざかる森崎の背に達也が感想を述べ、レオが返す。エリカと美月は笑いを堪えていてそれどころではなかった。

 

 

 

 

 

 やっと帰れる。これでは足取りも軽くなろうというもの。あの面々との時間はなかなかのものだったが、今この瞬間にはやはり敵わない。教室に入り、すでに集まっていた生徒達の刺すような視線を屁とも思わず、端末を立ち上げ…、そしてテンションが駄々下がりになる。

 

 

 

 

 放課後、森崎は担当教諭に呼び出されていた。今朝のことは露ほども出さず教諭は本題を切り出す。

 

「風紀委員ですか?」

「ええ、成績も申し分ないですし、ご実家のこともあります。教員全会一致で今年の風紀委員にあなたを推薦することになりました」

「はあ、わかりました喜んでお受けします」

 

 少し戸惑いながら返事をする。予想外である。はっきり言って実りがあるとは思えない。しかし断ったら家名に瑕がつくし、何より自分はこの教諭には目を付けられているのだ。

 

「風紀委員になるのですから、言動には注意をしてくださいね」

 

 ほら、釘をさしてきた。

 

「はい、家名もご考慮されてのことなら猶更です。それと今朝はすみませんでした。」

 

 頭を下げ、担当教諭が頷きその場はお開きとなる。そのまま森崎はブルーな気分で校門へと向かう。

 

「いい加減に諦めたらどうなんですか? 深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挟むことじゃないでしょう」

「僕たちは彼女に相談することがあるんだ!」「そうよ!司波さんには悪いけど、少し時間を貸してもらうだけなんだから!」

 

 校門へと向かう道の往来で何やら諍いが起こってる。聞き覚えのある声を筆頭に見知った顔が雁首並べていた。邪魔なことこの上ない。無視だ無視。あっ、どっかの馬鹿がCADをかざしてそれをエリカが棒で払った。レオは手で取ろうとしていたが何考えてんだか。今度はエリカとレオの二人が諍いをはじめた。やつらなら司馬懿すら引き出せるであろう挑発っぷりである。勿論それを見た一科生は

 

「この」

 

 魔法を発動させようしたその時、森崎は集団の端の左脇へと足を踏み入れた。ちょうど諍いの中心線に足を踏み入れたとき同級生達の魔法式が砕け散り、サイオンの輝きを横目にさらに歩を進める。

 

「止めなさい!自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!そこの君も持ちなさい!」

 

 反対方向から勇ましい声が聞こえ固まる。集団のところから一歩踏み出した時だった。えっ、誰かいるの?と周りを見回すが

 

「森崎君、君のことだ」

 

 風紀委員長の呆れた声が聞こえる。仕方ないので姿が見える諍いの中心点へと戻る。なんか主犯みたいな空気だ。俺全然関係無いのに。

 

「あなたたち、1-Aと1-Eの生徒ね。事情を聞きます。ついて来なさい」

 

 風紀委員長の有無を言わさぬ気迫にしかし、森崎は足掻こうと試みる。

 

「あの俺、」

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

 

 そこへ達也が割って入る。実は達也は森崎が学校から出てきていた時から気づいていた。他の面々はヒートアップして全然気づいていなかったが。森崎の性格から考えて避けて通るかと思ったが彼が早足でこちらに近づいて来たのをみて、仲裁を期待した。してしまった。そして集団脇を通り抜けようとしたときに落胆した。いや、改めて実感したというべきか。だから達也は決めた。森崎を巻き込むことに。

 

「悪ふざけ?」

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学の為に見せてもらうだけのつもりだったんですが、あんまり真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました」

 

 この野郎、巻き込みやがった。CADを弾かれたのは俺じゃない。どう考えても無理がある。しかしここで否定すれば話が余計にこじれる。…仕方ない。

 

「はい、家訓は抜くときは殺れです」

 

 そうして横を向き、クイックドロウの反復練習を始める森崎。派手なパフォーマンスで目を引き付け、その間にCADを弾かれたやつはそそくさとCADを拾っていた。くそが。そこからなにやらまた問答を始めているがイライラした心を落ち着けうるために無心に反復練習を行う。その華麗なCAD捌きに当事者の幾人かはこちらに目が釘づけになっている。

 

「……会長がこう仰られていることでもあるし、今回は不問にします。以後このようなことの無いように」

 

 どうやら話がまとまったようだ。当事者たちは姿勢を正し一斉に頭を下げる。そこで森崎はささやかな抵抗をしてしまった。一人無視して反復練習を続行したのだ。シュッシュッ、子気味良い音が無音に鳴り響く。いつまでも立ち去らない会長達に一年生は訝しく思うが、すぐに何が起こっているか理解した。後ろの馬鹿は謝罪していないのだ。いや、たしかに当たり前だが空気を読んでほしかった。そんな中、生徒会長は笑みを絶やさずに、しかし不穏な空気を醸し出す。風紀委員長はごみを見るような目でこちらを見ている。あ、なんだろうゾクz(ry。

 そこで意を決して達也が頭を上げ森崎に振り向く。殺気をこめながら。野郎の殺気に当てられ、森崎は反復練習をやめ向き直る。

 

「すみませんでした!」

 

 手に持っていたCADを手品のようにしまいながら謝罪をする。それを見届けると会長と風紀委員長は溜息をついて踵を返す。が、一歩踏み出したところで足を止め、背中を向けたまま問いかけを発した。

 

「君の名前は?」

「1-A 森崎駿です!」

「違う君じゃない」

 

 呆れたように振り返り、達也へと目を向ける。頭を下げたままの森崎にはわからないことだが。

 

「1-E、司波達也です」

「覚えておこう」

 

 

 

 

「うーん森崎君か、面白そうだから期待していたんだけどなー」

 

 まあ態度に難があるとはいえ、一科生二科生分け隔てなく接していたように見えた森崎に好意を持っていた真由美はぼやく。

 

「あいつは風紀委員に教員側から推薦されているんだ、全く頭が痛いよ」

 

摩利はまたも溜息をつきながら愚痴をこぼす。

 

 

 

 

「すまないな、巻き込んで。まあ罰は無かったんだ。結果オーライだな」

 

 真っ白に燃え尽きた森崎に達也が声をかける。近くに居たことに気づいた時は心の中で薄情者と叫んでいた二科生も、今の森崎にかける言葉が見つからない。達也以外は。

 

「司波さん、こちらも熱くなって、その、すまない」「ごめんなさい」

 

頭も冷えた一科生も各々謝罪の意を述べる。まだ納得はできないもののこの場でまた言い争いをするつもりも無かった。気に入らないとはいえ森崎があまりに不憫で。そんな中おさげの少女は意を決して達也達に告げる。

 

「……駅までご一緒してもいいですか?」




会長の魔法の説明繰り上げー、まあ九校戦で描写はないでしょうし。
図書館ではマカロニウエスタンの絶版小説を手に森崎がテンションをあげる話も考えていましたが、100年後の図書館のイメージが湧かなかったので無難に済ました。

それではお読みいただきありがとうございます。
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