スピードスター森崎   作:AMDer

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実は5話と合わせて一話になってたんですけど、区切りが多すぎたので2話にわけることにしました。
それではどうぞ。


第六話 先例

 先導者とは時に傲慢である。己が歩んだ道を是とし、はみ出すものには容赦しない。そう、先導者とは先駆者にとって大敵そのものである。

 

6話 先例

 

「達也、今日も委員会か?」

 

 勧誘週間も終わり、帰り支度中の達也に、鞄を手にしたレオがそう訊ねた。

 

「今日は非番。ようやく、ゆっくりできそうだ」

 

「達也も森崎も大活躍だったもんなぁ」

 

「少しも嬉しくないな」

 

「今や有名人だぜ、達也。魔法を使わず、並み居る魔法競技者レギュラーを連破した謎の一年生ってな」

 

「『謎の』ってなんだよ……」

 

「鷹の目を持つゴキブリってのよりはましだと思うぜ」

 

「…、森崎のことか?」

 

「ああ」

 

鷹の目はわかる。3日目からは屋上で監視していたからだ。しかし、ゴキブリとはいったい…。

 

「そういえばあいつは今日も風紀委員会だったな」

 

 

 

 

「こ、これは」

森崎の目の前にロボットじみたパワードスーツがそびえ立つ。

 

 今日も委員会の森崎は風紀委員室へと来ていた。そこへ辰巳と沢木が入室してくる。風紀委員の通常業務を教えてくれるとのことだ。

 

「森崎君」

 

「はい」

 

「まず君には風紀委員として洗礼をうけてもらう」

 

 辰巳の言葉に緊張がはしる。集団リンチでもされるのだろうか。

 

「ついてこい」

 

 そういって、風紀委員室の近くの倉庫へと連れられた。倉庫に入るが、中は暗くて周りがよく見えない。そこで明かりがついた。

 そこにはロボットじみたパワードスーツがそびえ立っていた。顔の部分には一本のバイザーがあり口の部分は空いている。まるい頭の上にはパトランプが乗っており、全体的に丸みを帯びた装甲は動きの邪魔にはならないが、正対したものに十分な威圧感を与える。胸には筆文字で”風紀”と書かれていた。

 

「こ、これは」

 

「当校の2代前の生徒会長と風紀委員長が、風紀委員の士気高揚のために開発したパワードスーツだ。途中で予算不足に陥り、残念ながら完成にはいたっていないがそれでもかなりの性能を持っている」

 

 にやけながら辰巳が説明をする。余程誇りに思っているのだろう。いつもよりしゃべり方もかたい。沢木は先ほどから仏頂面で時折頬をひくつかせている。彼も緊張しているのかもしれない。

 

「今日君にはこれを着用して取り締まり活動を行ってもらう。これは栄誉だ。そして風紀委員としての誇りを胸に刻んでもらいたい」

 

「サーイエッサー」

 

 思わず敬礼をしてしまう。電源を入れると装甲が開いていく、両足からいれ次いで腕を空洞の中に押入れる。背中を合わせると、装甲が閉じ空気が抜ける音とともにサイズがフィットする。脚部に重点が置いてあるのか目線もいつもより高くなり、辰巳と沢木を見下ろす格好になる。

 

「巡回ルートは自由だ、部活棟の方は部活連が担当するので君は校舎の方を巡回してきたまえ。それでは健闘を祈る」

 

「了解しました。発進!」

 

そういって森崎はサスペンションが効いた音を奏でながら倉庫を出ていく。しばらくして

 

「ぶ、あははははははは、あいつ、まじで着ていったぞ、ははははは」

 

「はーはー、辰巳先輩、純真な入学生のぷくっ、笑うのはっくくくくく」

 

「発進!ははははははは」

 

辰巳と沢木の爆笑が倉庫にこだまする。

 

 

 

 

「じゃあ、私そろそろ部活行くね」

 

「うん、じゃあねーエイミィ」

 

 乗馬部へ向かうべく、明智英美が教室の扉を開けると

 

「……」

 

 目の前にロボットが横向きに立っていた。ロボットもこちらに気付き顔を向けてくる。一本線のバイザーに口元は空いている。取りあえず勢いよく扉を閉める。

 

「どうしたの、エイミィ?」

 

「うーん、廊下に変なロボットがいたんだよね」

 

「なにそれ」

 

目頭を押さえながら答え、意を決してもう一度扉を開ける。

 

「い」

 

 目の前にロボットが正対していた。ロボットはこちらに視線を下すと口元にニタァっとした気色悪い笑みを浮かべ、バイザーをあげる。

 

「やあ」

 

「いやあぁぁぁぁぁ」

 

 

 

 

「姐さん、じゃあ俺たち帰りますわ」「お疲れ様です」

 

 今日も風紀委員に顔を出していた摩利に辰巳と沢木があいさつをする。二人には森崎の教育を命じていたんだが

 

「あれは逸材でさあ姐さん」「自分もあれほどの人物は見たことがありません」

 

 そういい教えることはもうないから、先に帰ると言ってきた。

 二人が帰ってしばらくして、廊下の方からガッシャンガッシャンという音が近づいてくる。そして風紀委員室の扉が開けられる。

 

「お疲れ様です、委員長。早速違反者一名、検挙しました」

 

「きゅー」

 

 ”あれ”を着こんだ森崎が女子生徒を肩に担いで見下ろしていた。摩利の目から光が消え失せる。

 

「……、それをどこで見つけた森崎」

 

「はっ、辰巳先輩と沢木先輩がはじめての巡回にはこれを着けるものだといい、大変な栄誉であることを教えてもらいました」

 

「そうか…、そうか…」

 

 摩利は何かをため込むように項垂れた。

 

 

 

 

 昨日は大変な目にあった。どうやら自分はあの二人にからかわれたらしい。今頃はお星様となっているであろう二人の先輩に心の中で別れの敬礼をする。俺にびっくりして魔法をはなってきた明智さんもお咎めなしだった。

 

「いいか森崎、風紀委員は威圧してはいけない。いつも校舎には我々が居ることを認識させ、行為を踏みとどまらせる。それが本来の風紀委員の役割だ」

 

 そういい今日も”まともに”取り締まりを行えと命令され、俺は現在1-Aに潜伏中だ。

 風紀委員があらゆる現場に居ることは不可能だ。だから違反者達には常に自分たちが監視されていると錯覚させねばならない。居ないのに居る……。ならば潜伏して網をはり検挙するのが一番だと思い、現在俺は教室の隅っこでアンパンをかじりながら段ボールのなかに居る。

 しばらくして、男子生徒が入ってきた。妙にそわそわして見るからに怪しい。ある席に近づいていく。

 

(あれは司波さんの席)

 

 そこで男は意を決したようにかがみ、司波さんの椅子に顔をこすりつけはじめた。

 

(へ、変態さんだー!)

 

 この時、森崎は一瞬迷った。風紀委員の取り締まり対象は魔法の違反。犯罪行為は生徒会の領域だ。しかし黙って見過ごすことは森崎にはできなかった…。急いでアンパンを食べ、段ボールはねのけ立ち上がる。

 

「風紀委員だ!ゴクッゲホゲホッそこの男子生徒動くな!」

 

 今日は達也も委員会に呼ばれていた。勧誘週間の報告書作成にヘルプとして呼ばれたのだ。雑談をしながら作業を進めていると森崎が一人の男子生徒を頭にCADをつきつけながら連れてきた。

 

「森崎、違反者か」

 

「いいえ犯罪者です」

 

 ただならぬ雰囲気に摩利も眉をひそめる。厳密に言えば生徒会の仕事だが切り離せるものでもない。

 

「罪状は?」

 

「1-Aにて、とある女子生徒の席で猥褻行為に及んでいました」

 

 そこで達也が作業をやめ、森崎に質問する。

 

「誰の席だ?」

 

「……」

 

「森崎、答えろ」

 

 森崎はたまりかねたように頭を振りながら答えた。

 

「……司波さんの席だ」

 

 達也から殺気が漂う。見目麗しい妹の周りにはこういった輩が絶えないが達也は一度も容赦したことはない。

 

「そいつの調書は俺がとろう」

 

「森崎、君は上から真由美を呼んできてくれ」

 

「了解しました」

 

 それから数日たって、達也と取り締まりをしていた。あの日の後のことは知らない。知りたくもない。

 

「なるほど、取り締まりってこうやるのか」

 

「今まで何やってたんだ」

 

「段ボールに隠れて網はってた」

 

 合理的な達也の取り締まりに感心していたら、呆れたように尋ねられ、その答えにさらに呆れられた。

 

「ところで達也」

 

「なんだ」

 

「少し手伝ってほしいことがあるんだが」




この話がやりたかった……。満足。
2話に分けて思ったこと。冒頭の文は先に中身書いてた方が書きやすい。必要ないんですけどね。

それではお読みいただきありがとうございます。
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