スピードスター森崎   作:AMDer

7 / 10
お気に入り100件突破。ありがとうございます。
それではどうぞ。


第七話 再臨

7話 再臨

 

 今日から実技の授業がはじまる。そのせいか教室内も少しざわついている。彼らは一科生として魔法科高校に入学したのだ。皆自分の実力に相応の自信を持ち、不安よりも期待の方が大きいのだろう。

 

「森崎君、今日から実技だね」

 

「ああ、とはいえ初日だから簡単な内容だろ、張り切ることもない」

 

「でも、僕の魔法、見てくれるんだろう?」

 

 こいつ、屋良内はどうやら授業よりも俺に実技を見てもらえることの方が嬉しいらしい。しかし、俺はこいつの本当の目的を知っている。

 

「それじゃ、俺たちも行くか」

 

「うん」

 

 さりとてクラス内に同性の友人?が彼しか居ないから、無暗に突き放すこともできない。やはりこいつはホモだ。しかも計算高いホモだ。だが甘い。一科には教諭がつくのだから手取り足取り教えることはできまい。

 

 

 

 

「はい、それでは二人組を作ってください」

 

 oh...、額に手を当て天を仰ぎみる。神よ、何故だ。実技初日はレクリエーション形式らしいが、本当は教諭が面倒なだけじゃないのか。

 

「といういことだから、よろしくね森崎君」

 

「…ああ」

 

 しばらくして実習が始まった。五十音順で若い方から始めるため、森崎と屋良内は後ろの方になる。内容は簡単な術式をコンパイルするだけの授業だ。

 しばらくして深雪の番となり、実習室内のざわめきが止む。どうやら皆、新入生総代の深雪の実力が気になるらしい。そんな視線などないかのように、彼女は平然と前に歩み出た。そしてCADに手をかざす。結果は230ms。平均を大きく上回る速度だ。

 

「すごい」「さすが総代だな」

 

 そんな喧噪の中も授業は次々進み、森崎の出番になった。屋良内は嬉々として見つめているが他の連中はあまり気にしていない様子だ。目立たないように今のうちにすまそう。そう思いデバイスに手をかざす。結果は175ms。圧倒的な速度に喧噪がピタリと止む。しばらくしてヒソヒソと話し声が聞こえてくる。

 

「うそ、司波さんよりも速いなんて」「でも総代は司波さんだろ?」

 

「他の項目が苦手なんじゃないか」「おつむの方が空っぽって可能性もあるぜ、なんせウィードとつるむぐらいだからな」

 

 ちらほらと聞こえてくる悪態に溜息をつく。これを聞きたくなかった。他の評価項目が苦手ってのはある意味正しい。一科平均程度だからな。しかし筆記の方を疑われるとは、そこまでできなかった覚えもないんだが

 

「流石だね、森崎君」

 

 そんな荒んだ心に清涼な言葉が沁みる。今なら…、ハッいかんいかん。

 

「次はお前だ。ここで一つアドバイスだ、屋良内。クールにな」

 

「クールって、冷静にってこと?ちょっと緊張してるんだけど」

 

「司波さんだってクールだったろ。焦ると遅くなるぞ」

 

森崎はそういうと、デバイスの前から退く。

 

 

 

 

「お兄様というものがありながら…」「どうしたの深雪?」「いえ、何でもないわ」

 

 

 

 

 放課後、教室で部活へ行く準備をしていると

 

「全校生徒の皆さん!」

 

 スピーカーから大音量が発せられる、事件か…、放送室だな。そう思い教室を駆け出す。走りながらも内容が聞こえてくる。どうやら一科と二科の差別撤廃を訴えているようだ。森崎もこの学校の一科と二科の区別について思わないことがないわけではない。

 

 まず制服に差をつけるのは劣等感を煽るだけだ。しかも校章をはずすだけとは、お前は一校生を名乗るのに値しないと言っているようなものだ。

三年間一科二科固定ってのも実力主義を標榜するわりにはやることが矛盾してる。

 

(ああ、一校のアピールポイントは実力主義ではなく充実したカウンセリング体制だったか。それもそうだろうな。)

 

 まあ自分のような名家の生まれを除けば、明確に差がつきはじめるのは本格的に魔法を学びはじめる高校入学後である。進級するごとに一科生の落ちこぼれと二科生の成績優良者を入れ替えるだけでこの問題は起こらなかったはずだ。

 そもそも一科と二科を明確に分けているのは魔法の優劣ではない。数だ。入試成績100番と101番に明確な差はないはずだが、一科と二科の肩書が彼らを分け隔ている。その理由が未だ教員不足というのも笑える。上は問題にすら思っていないのかもしれない。血統主義による寡頭制への回顧でも考えているのだろうか。いや事実、日本の魔法師社会は十師族を頂点とする寡頭制だ。

 なるほどそういうことか。魔法が技術として研究され未だ100年。現在は血統によるものとわかっているが、当時は誰もが自分が魔法を使えるかもしれない。そんな思いに駆られたはずだ。そして魔法が使えた幸運な人々は自分達に酔いしれていたに違いない。ここで一科生が優越感に浸っているように。そしてこれから増えていくであろう魔法師達のことを考え、この制度を作った。

 その時スケープコートにされた二科生は何を思うか。悔しさをばねに勉学に励むか。見込みがあるやつはそうかもしれない。だが大抵は自分達より弱者を貶して自分を慰める。その弱者とはこの場合非魔法師だ。こうした差別意識を植え付けゆくゆくは魔法師を頂点、もとい魔法の優劣をもとにカースト制でも敷こうと思っていたのかもしれない。そんな時彼らは非魔法師をなんと呼ぶかな、草花にたかる”虫”とでも呼んで蔑むのかな。

 しかし現実はそうはならななかった。思いのほか魔法師は多くなかったのだ。自分たちも魔法を、そんなことを考え、魔法師優位をある程度容認していた一般市民も事実に気付きつつあるなか、ある人物がこの考えに待ったをかけた。最高にして最巧、”トリック・スター”九島烈である。閣下は魔法師は表社会の地位につくべきではないという訓戒を残した。つまりは魔法師は支配者とはなりえないという事実である。魔法師が圧倒的少数であるのに加え、中世ならいざ知らず、今は情報も教育も行き届いており、現に非魔法師運動なんてのが活発にもなってきている。故にそれまでも、非魔法師を差別することは魔法師にとってタブーであったが、これ以降最大の禁忌となった。

 そうであるのに未だに昔の妄想に引きすられるこの学校には虫唾すらはしる。彼らの言う待遇改善が何を言うかはわからないが、なるほど、今更だが放置していい問題でもなさそうだ。

 もっともネタは簡単にあがるだろう。これだけの差別意識があるのだ、魔法師優位を唱える過激な団体にはわんさかOBやらOGがいるに違いない。彼らのリストとこの学校の現状の密告文を添えて、煩い政治家に送ればすぐに突き上げてくるだろう。放送室を選挙している彼らはやり方を間違えたな、内からではなく、外から圧力をかけてやればコロリと行くはずだ。一般市民とはもはや別の生き物である魔法師の社会基盤とはそれほど脆いものなのだから。

 

 そんなことを考えて放送室に着くとまだ誰も来ていなかった。早とちりしたかなと思っていると凛とした長髪の女性を筆頭に次々と集まってくる。最後に達也がやってきた。達也が現状確認を行い電話をかけようとするが

 

「風紀委員長の魔法で対処できるのではないでしょうか」

 

「私の魔法?」

 

 森崎が唐突に意見を述べた。彼とて一番最初にきてぼーっと突っ立ってたわけではないのだ。

 

「はい、委員長は空気中の成分を変えガスを作る魔法が得意だと聞きました。放送室とはいえ防音設備はあっても気密ではありません。ガスを流し込み昏倒、あるいは催眠状態にして鍵を開けさせることは可能なのではないでしょうか」

 

 摩利はしばらく唖然としてから、市原、会頭と視線を交わし頷く。

 

「いいだろう、森崎、お前の案をとろう」

 

回答は会頭からだった。ナンチャッテ

 

 摩利は扉の横につくと試験官のような小さな瓶を幾つか片手に持つと、CADを操作して魔法を発動させる。しばらくして扉をノックする。

 

「…、はい」

 

「すまないがここを開けてくれないか」

 

 中からうろんとした女性の声が聞こえ、その声に対し摩利が解錠を促す。女性の声に達也が少しみじろぐ。数瞬おいてカチャリという解錠の音が聞こえる。摩利が慎重に扉を開け、中を確認しゴーサインを出す。どうやらガスの効果はもう無いらしい。中に踏み込むと幾名かの二科生が虚ろな表情をしてその場に佇んていた。

 

 あのあと拘束してる最中に会長が来ると、拘束と催眠を解くように指示された。交渉に応じるとのことだ。拘束されていた生徒は打ち合わせをするといい、そのまま生徒会長が連れて行った。そして森崎は達也と深雪と歩いていた。

 

「しかし、思い切ったな奴等」

 

「上からせっつかれたんだろう」

 

「上?」

 

森崎が疑問を投げ打つと、達也が一瞬深雪に視線をやり、深雪が頷くように目を伏せる。

 

「ブランシュだ」

 

「反魔法師組織か…、全く退屈しないぜこの学校は」

 

面白くない単語を聞き、森崎はげんなりする。

 

 

 

 

2日後、交渉は公開形式の討論となっていた。

 

「森崎は大丈夫だろうか」

 

「あいつの実力は折り紙つきですし、それに”あれ”もあります」

 

「その”あれ”が心配なんだが」

 

摩利が森崎に不信感を表し、達也が説得するが余計に不信感をつのらせる。

 

「あいつの予想が正しければ、大規模な陽動が正門から入ってくるはずです」

 

「その間に我々を身代金目的に誘拐、そして図書館の機密文書を奪取か、本当は君を図書館に配置したかったんだが」

 ここ講堂には現在、生徒会長をはじめとして名門の子女が何人もおり、一般生徒とて親も魔法師。それなりの稼ぎがあり人質としては極上といえた。とはいえ彼らの相手をテロリストが務められるとも考えづらい。それにあくまでも予測である。故にこの件はオフレコとなっていた。

 

「深雪を放ってはおけません、それにすぐに応援に行くつもりですよ」

 

 

 

 

 同じころ、森崎は校門に立っていた。

 

「おいでなすったか」

 

 けたたましいスリップ音を響かせ何台ものバンが押し寄せる。

 

「なんだあいつは!」

 

 そして運転手が叫ぶ。”風紀”と書かれたロボットじみたパワードスーツを着た森崎を見て。




え、冒頭のポエムが無くなっているって?大丈夫大丈夫、医龍だっていつのまにか医局の病巣みたいなやつ無くなってたじゃん。

さて色々すっ飛ばしてますが、次話で入学編終わらせたいと思います。

それではお読みいただきありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。