長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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・・・どこかで見たことある人はおひさしぶり。

前のは上司にバレたのでアカごと消したのですわ・・・


一章 私とおやすみ
page1 私と中華鍋


「長門さん?私はどうしてこんなことになったのか聞いているのです。」

 

「むぅ・・・」

 

やぁ諸君。長門型戦艦一番艦の長門だ。いわゆる転生者というやつだ。気がついたらドックから出て来るというところだった。最初の頃は前世というものの記憶もあったが、艦娘として深海棲艦と戦ううちに忘れてしまった。確か男だった。しかし前世は前世。過ぎたことだ。それより現状、今起こってることをなんとかしなければならない。

 

「長門さん。・・・自分の過失を隠蔽しようとするなんて貴方らしくありませんよ?」

 

「ああ・・・」

 

傘を差し、鎮守府のはずれの林で向かい合う彼女は鳳翔。私は傘を差さずズブ濡れ。私の目の前には掘った穴。悲哀の視線を送る彼女はとても雨が似合う・・・いや今はそんなことは置いておこう。どうする。よりにもよって鳳翔に見られてしまった。誰もいない深夜を狙っていたというのに。

 

「長門さんっ・・・!」

 

「・・・っ」

 

穴の中の物は鳳翔にしっかり見られている。仮に鳳翔を口封じしたとしてもこれが見つかったら私がやったとすぐにバレる。

 

「大丈夫です・・・提督にお話しましょう?正直に話せば、みんなわかってくれます。」

 

「なにを・・・わかるというのだ?」

 

私はぎらりと鋭い視線を鳳翔に向ける。びくりと肩をすくめる鳳翔はちょっと可愛くてなにかに目覚めそう・・・ええいすぐ話が脱線する。これだから男というのは。恨むぞ私。怯える鳳翔にゆっくり近づいて。頭二つ分ほどある身長差のある鳳翔に言葉を刺す。

 

「私は・・・英雄になった。敵泊地を強襲して占領したこともある。南方で深海棲艦旅団を撃滅もした。アイアンボトムサウンドでは孤立して戦艦棲姫と一対一で撃破した。ミッドウェー奪還でも琿作戦でも。トラック奪還も十一号作戦もSN作戦も!!!私は太平洋の英雄と呼ばれるようになった!一度、たった一度の過ちでしでかしたこれを皆が見て、どう思う?軽蔑の視線を送るだろう。哀れみの視線かもしれない。」

 

「そんなこと・・・ッ!」

 

「ないと言い切れるか?」

 

「・・・ありません!ここにいるみんなはそんなことしません!」

 

「・・・そうか。私はそうは思わない。私は怖い。戦艦棲姫に20inch砲を向けられた時の方がまだマシだ・・・こんなに恐怖を感じたのは初めてだ。」

 

「長門さん・・・」

 

「・・・。」

 

転生者だとしても長門として長い間生きていたから誇りもある。数々の作戦に参加し武勲を手にしてきたその誇りを簡単に手放すこと等許されない。それは私もそうだし元の長門も許さないだろう。その上でのこの失敗・・・幸い鳳翔をどこかに飛ばすことは容易い。力も立場もあるからだ。しかしそれは選択肢には入らない、ありえない。鳳翔もその数々の作戦を生き抜いてきた親友だ。そんなこと出来る筈が無い。

 

「長門さん・・・大丈夫ですよ。みんなわかってくれます。だから泣かないでください。」

 

「ば、ばかな!この長門が涙など・・・」

 

「朝になったら提督のところにに行きましょう?長門さんだったらきっと許してくれますよ。」

 

「本当かな。」

 

「ええ・・・それに、私も一緒に行きます。なので・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「壊した中華鍋のこと謝りに行きましょう?」

 

「はい・・・」

 

やはり正直に言うしか道はないのか・・・なんて恥ずかしい・・・初めての始末書が中華鍋を壊したからだなんて・・・

 

「でも・・・キレイにふたつに割れてますねーどんな使い方したらこうなるんですか・・・」

 

「もうお腹が空いて、ついテンションが上がってな・・・夜だし・・・」

 

「それを埋めて隠蔽するって・・・どのみちこんな大きな中華鍋がなくなったらすぐわかりますよ?」

 

「うぐ・・・」

 

「はぁ・・・これが現代ソロモンの英雄・・・」

 

「あぁー!!ほら!鳳翔哀れみの視線した!だから隠そうとしたんだ!!ビッグセブン泣くぞ!ビッグセブン泣かせたらやばいんだからな!ドックが三つ吹き飛ぶんだからな!右手で!利き腕じゃあないんだぞ!」

 

「はいはい・・・でも中華鍋がなくてどうやって人数分のお料理しましょう・・・」

 

「あぁ・・・ご飯ないってわかったら赤城と加賀ぶちギレるだろうな・・・」

 

ああ・・・夜食は食べられないし。鍋がなかったらご飯食べられないから一航戦の二人はすごく怒るぞ・・・食べ物に関してはいつまでも怒ってるからなあの二人は。まぁ力尽くで抑えるけども。

 

「長門さんはまずお風呂に入ってきてください。ズブ濡れですと英雄でも風邪ひきますよ?それとお夜食に親子丼作っておきますから。あがったら食堂にきてくださいね。」

 

「わかった。ありがとう鳳翔。はぁー・・・」

 

「ため息ばかりついても仕方ないですよ?壊してしまったんですから。中華鍋をまっぷたつってどんなことしたら割れるんですか・・・」

 

「ノーコメントだ。」

 

私は鳳翔の傘を持ち、なんとか二人濡れないように鎮守府に戻った。やはり私が作るより鳳翔が作ったほうが安全で、親子丼は美味かった。提督に報告したら笑いながら「長門さんも以外とお茶目なところがあるんですね」なんて言われて恥ずかしかった。その日のお昼、鍋が壊れたのでオカワリ制限が付き、一航戦の悲痛な叫びが聞こえた気がした。私は風邪をひいた。

 

 

 


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