長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

11 / 46
page9 私と魚雷

や、やぁ諸君。長門だ。親子丼を作ってたら大湊の皆に驚かれたでござる。そんなに台所にいるのが似合わないのだろうか・・・しかしここで退いたら長門の名が廃る。突き進む以外の道はない。

 

「せ、戦艦長門だ!よろしく頼むz」

 

「け、敬礼ーっ!!」

 

先を越された。丁字不利だ。長良の鶴の一声で食堂に集まった皆が立ち上がって敬礼・・・うむ。よく統率が取れている。じゃないそんな堅苦しくなくていい。

 

「直れ。」

 

「先程は失礼致しました!ここ、大湊で水雷戦隊旗艦を任されている長良型一番艦の長良です!」

 

「並べ。」

 

「は?」

 

「今は飯の時間だ。そういうのは後でも出来る。訓練や遠征で疲労が溜まっているやつもいるだろう。仲間のことも考えてやるのが旗艦の努めだ。」

 

「はっ!ありがとうございます!みんな並べーっ!」

 

一糸乱れぬ動きで皆が並んだ・・・素晴らしい士気の高さだ。じゃない、いかんなどうしてもこう、敬礼されるとスイッチが入ってしまう。

 

「今日付けでここ、大湊の所属になった。元横須賀連合艦隊旗艦の長門型戦艦一番艦の長門だ。僭越ながら今日の夕げは私が拵えた。皆ゆっくり食べてくれ。」

 

「「「「「ありがとうございます!」」」」」

 

「よ、横須賀連合艦隊旗艦・・・!?た、太平洋の英雄戦艦長門!?あわわわわ、わ、私は何て人に・・・」

 

「間宮、顔が真っ青っぽい。具合悪いっぽいー?」

 

うーんこういうピリッとした空気も嫌いではないんだが・・・そんなの戦闘中だけで充分なんだ。みんなわかってくれ。

 

「・・・戦艦、しかも長門型が配備されるなんて・・・大規模作戦があるかもにゃしぃ・・・!?」

 

「睦月ちゃん!しっかりして!お箸を持つ手とお茶碗持つ手がいつもと逆よ!」

 

「ふわぁ・・・戦艦っておっきい・・・!」

 

「漣!敷波!長門さんに失礼があってはいけませんよ!大戦艦カラテで水平線の先まで吹き飛ばされてしまいます・・・長門さんにカラテ習おうかしら・・・」

 

「あーあー綾波ちゃんの戦闘狂がまたでたー」

 

「('A`)私の扱いがヒデェ」

 

「また、おっきな戦闘が・・・!」

 

「だだだ大丈夫よ阿賀野姉!こんどは阿賀野型が全員いるもの!」

 

「能代、震えすぎてコップから水が溢れている!」

 

「ぴゃー!長門さん・・・やっと会えた・・・!」

 

あああ阿鼻叫喚だ。第一印象はインパクトが大事だと言ったがインパクト強すぎてみんなブロークンハートだわこりゃ。

 

「みんな行き渡ったな!合掌!」

 

「「「「「っ!」」」」」

 

「いただきます!!」

 

「お姉さん、まだ夕立はひとりじゃ食べられないっぽいー」

 

「ん?そうか。一人で食べる練習をしないとだめだぞ。夕立の席はどこだ?」

 

「あそこっぽいーいつもは間宮が食べさせてくれるっぽい?」

 

これはもう提督と天龍になんとかしてもらうしかないな。それより夕立だ。間宮は目を回しているし、仕方ない。仕方ないのだ。

 

「よし、夕立こっちに来なさい。」

 

「ねぎはいやっぽいー」

 

「大丈夫だ。ちゃんと避けておいたぞ。よっ・・・と。」

 

夕立を子供用の背の高い椅子に座らせたが・・・これは、なるほど、娘が出来たみたいだ。

 

「あーん」

 

「はい、あーん。」

 

うむ、いい。だがそのぽむしゃぽむしゃという咀嚼音はどうやって出してるんだ。

 

「こ、こら夕立!長門さんになんてことを・・・」

 

「大丈夫だ長良。構わないさ。」

 

「すみません長門さん・・・!」

 

「もっと欲しいっぽいー」

 

「こ、こら!!」

 

「気にするな。ほれ。」

 

「んぐんぐ・・・もやこどん美味しいっぽいー」

 

「それは良かった。あと親子丼だ。」

 

近くに座った長良がそわそわしっぱなしだ。それじゃ落ち着いて食べれないだろう。

 

「・・・、・・・!」

 

「どうした長良?そわそわして。落ち着いて食べなさい。」

 

「す、すみません!えっと・・・」

 

「ん、そうか!長良もして欲しかったか。ほら、あーん。」

 

「!!??い、いや、そうでは、なくて!?」

 

「美味しくなかったか・・・?」

 

「そ、そそそ!?」

 

はっはっは!思い付きでやってみたが長良の可愛い面が見れたな。これ以上やると可愛そうだな。

 

「い、いただきますっ!」

 

引っ込めようと思った矢先、れんげに食いついた長良はもう顔を真っ赤にして今にも倒れそうだ。はっはっは。

 

「長良も夕立と一緒っぽいー」

 

「・・・!?」

 

「な、長良ちゃんが・・・!」

 

「ぴゃ~!?さ、酒匂いきます!?」

 

「ちょ!?酒匂!?」

 

うんうん。仲良く食べるのが一番だ。長良も顔は真っ赤だが満更でも無さそうだ。夕立ももう半分たいらげている。よく食べて大きくなれよ。

 

「な、長門しゃんっ!」

 

「お!おぉ!酒匂か!艦娘の姿で会うのは初めてだな!」

 

「ぴゃ!?は、はい!お久し、ぶりです!」

 

「それでどうした酒匂。」

 

「わた、わたしも!わたしも長門さんに!食べさせて欲しいです!」

 

「そうかー酒匂は甘えん坊だなぁ姉達が嫉妬しないか?」

 

「ぴゃ!?え、えっと・・・」

 

「酒匂も夕立と一緒っぽいー?」

 

ふむふむ、なんだみんな可愛いやつだな。そうか。みんな軽巡より上のお姉さんは初めてなんだな。だから緊張していたのか。なるほどなるほど。

 

「冗談だ酒匂。ほら、お椀を貸して・・・あーん。」

 

「あ、あ~ん」

 

大きな口を開けて待つ酒匂はさながらえさを待つ雛鳥のようだ。可愛いやつだなーはっはっはっはちょっとイタズラしてやろう

 

「よっ」

 

「ぴゃ!?」

 

口に近づけたれんげを手前ですっと退いたらかつんと歯が鳴る音がして・・・あ、泣きそうだ。

 

「う~」

 

「ぷふっ・・・すまん酒匂、ちょっと・・・イタズラしてみたくなった。」

 

「長門しゃん・・・」

 

「ほら今度はイタズラしないから。あーん。」

 

「あむっ・・・にへへ、美味しいですー」

 

「良かった。おかわりもあるからな。遠慮なく食べなさい。」

 

「はーい!」

 

酒匂が席に戻ったのを見ると姉妹達が心底安堵した表情をしているな・・・可愛い妹だとあとで誉めてやろう。

結局40人分用意した親子丼はものの見事30分で無くなった。自分の用意したご飯がこのように食べてもらえるのはとても気分がいいな。給糧艦に機種変換しようか。戦艦ボディなら出来ることも多いだろうしな。夕立も結局二杯もおかわりした。あの小さいからだのどこに入ったのか、艦娘の不思議が増えた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。