長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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page11 私と新任務

やぁ諸君、長門だ。部屋について夕立を寝かせようと思ったのだが布団に寝かせた瞬間ぐずりだしてしまって大変だった。世の母とはこんな苦労を毎日しているのか・・・大変だなぁ。そして再び寝かしつけた後の天使の寝顔を毎日見ているのか羨ましい。というか夕立は自分でご飯が食べられなかったり見た目よりもさらに幼い感じがする。これはなぜだ。

 

「ふぅ、一息付けたな。」

 

「ありがとうございます長門さん。」

 

「今まで面倒は長良が見ていたと言っていたな・・・大変だったろう。」

 

「いえ、それほどでも。それに長門さんにすごくなついているみたいで私も嬉しいです。それに、教練の為に来ていただけたんですよね?お暇があれば是非とも新人だけではなく私達にも御指導御鞭撻お願いしたいです。」

 

「全然構わんよ。しかし、夕立はどうしてこんな幼い姿なんだ?」

 

「それが、よくわかってないんです。」

 

「うん、だろうな。私も長いこと艦娘やってるがこんな状態は初めてみた。」

 

「そもそもこの夕立の生い立ちも不思議なことばかりなんです。大湊の湾内に入り込んできたロ級深海悽艦を撃破したらなんと、残骸の中に浮かんでいたんです・・・!」

 

「なるほど、ドロップ艦か・・・!」

 

艦娘は通常建造で顕現する。この建造は船魂という艦娘の魂が関係しており、この船魂をドックで呼び出すか海域で発見したものを持って帰り建造する。艦娘が体を得るにはドックで建造してもらうほかない。しかし極稀に、深海悽艦を撃破したときに艦娘が建造された状態で現れることがある。これをドロップ艦という。

 

「ど、どろっぷかん、ですか?」

 

「そうだ。たまに深海悽艦を倒した時に船魂を見かけるだろう?それが船魂ではなく、艦娘そのものが現れる場合があるんだ。」

 

「そんなことが・・・」

 

「最近報告されたことらしいがな。しかしそうか、夕立がドロップ艦・・・それでこのような異常が起きているのだな。」

 

「うっ・・・うっ・・・うぇぇーん!」

 

「ど、どうした!?」

 

「夕立ちゃんは結構夜泣きしちゃうんです!」

 

「そうなのか・・・よっ、と。ほらほら夕立、私はここにいるぞービッグセブンだぞー」

 

「ひっぐ・・・えっぐ・・・」

 

「いつも何度も夜泣きしていまして、私は夜戦で馴れてるからいいんですけど夕立が辛そうで・・・」

 

「よしよし、ふむ、そうか。夜泣きが・・・ならばここはこの長門に任せてもらおう。長良、お前はもう休め。」

 

「そ、そんな!長門さんに子守りみたいな真似をさせられませんよ!」

 

「いいんだ。たまにはこういうのも、良い。」

 

長良だって明日訓練があるだろう。予定を聞いていないからわからんが。夕立も早く寝かしつけてあげた方が苦しくないだろうし。それにビッグセブンがいれば不安要素などなくなるだろう。 

 

「うぅ・・・お姉さん・・・?」

 

「あぁ、そうだ。傍にいるぞ。ゆっくり眠るといい。」

 

「このままだっこ、して欲しいっぽい・・・」

 

「あぁ、わかった。よしよし。」

 

「な、長門さん、手慣れてますね。」

 

「は、初めてだったが、ビッグセブンに不可能はない。」

 

そうだビッグセブンに護衛されるなんてすごいぞーそれにしても夕立可愛いなー私にも娘が出来たらこんな感じなのか。いや、艦娘だから子供も何もあったもんじゃないが。

 

「・・・すぅ・・・すぅ」

 

「ね、寝た・・・!」

 

「ふぅー・・・」

 

「長良、私はこのまま夕立の様子を見ているから戻っていいぞ。」

 

「え、でも。」

 

「大丈夫だ。」

 

「・・・わかりました。長門さん、ありがとうございます。今日は、すみませんでした。みんな戦艦を見るの初めてでして、緊張してしまって・・・これからよろしくお願いいたします。」

 

「長良・・・ああ!よろしくな!」

 

「ふぅぅえぇーん・・・」

 

「あわわわご、ごめんな夕立声が大きかったな!よしよしよし・・・」

 

「ご、ごめんなさい!私もう行きますね!」

 

ぐずる夕立をなだめながら長良を見送る。長良よ。これからはこの長門に任せろ。よしよし泣き止んでくれ夕立!よく寝ないと大きくなれないぞ~!夕立~!あ、そうだ。

 

「~♪」

 

「ひっぐ・・・ひっぐ・・・ぽい?」

 

これは遠い、ホントに遠い記憶にある、母と思われる人物が歌ってくれた歌だ。艦娘に母はいない。すると間違いなく前世だ。・・・うむ。何故か私まで泣いてしまいそうになった。

 

「ぽい・・・すぅ・・・すぅ・・・」

 

「ふぅ・・・私も夜泣きが激しかったようだな。困りながらも嬉しそうな顔を思い出す。記憶の彼方にあるこの人が誰なのかはもうわからない。恐らく、恐らく母なのだろう。この慈愛に満ちた表情は、きっとそうなのだろう。」

 

「ぽい~・・・むに~・・・」

 

「お休み、夕立。また明日、だ。」

 


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