長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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page15 私と超爆発

やぁ諸君。おはよう。何故おはようかと言うと今私は入渠ドックにいるからだ。今目が覚めた。確か私は天龍達と夕立の戦闘力試験を行っていたはずだ。それがどうして入渠ドックにいるんだ・・・?

 

「ふむ・・・体に異常は・・・腕は二本ある。足も二本ある。両目も見える、声もでる・・・はて・・・?」

 

思い出せない・・・確かチーム分けをして提督の開始の合図を聞いた。夕立の目がやる気に溢れて焔の様に輝いていたのも覚えている。いったい何が・・・まさか、深海悽艦の急襲か?私が気を失ってしまうほどの戦いが?強力な深海悽艦が!?

 

「こ、こうしてはおれん!!みんなは!!!」

 

「( ; ゜Д゜)( ; ゜Д゜)( ; ゜Д゜)」

 

「む!妖精さん!状況は!?」

 

「(。´Д⊂)(。´Д⊂)(。´Д⊂)」

 

「なに?無事でよかった?艤装が爆発?事故?」

 

「d=(^o^)=bd=(^o^)=bd=(^o^)=b」

 

「提督を呼ぶ・・・わかった。危機的な状況ではないのだな?」

 

「(^o^;)(^o^;)(^o^;)」

 

「なに・・・三日も意識が戻らなかった。そうか。」

 

ドックの妖精さんの話を聞く限り深海悽艦の攻撃ではないらしい。事故だったとか。艤装が爆発なんていう物騒なことが聞こえたが詳しくは提督に聞くことにしよう。

 

「ん・・・んぅ・・・」

 

「・・・朧?」

 

「ふぁれ・・・長門さん?」

 

「朧!大丈夫か!?何があったかわかるか?!」

 

「えっと・・・すみません、何がなんだか・・・」

 

「あぁ・・・す、すまん起きたばかりなのに・・・」

 

「いえ・・・試験開始して、突然吹き飛ばされたまでは覚えているんですが・・・」

 

「妖精さんが言うには、私の艤装が爆発したらしい・・・」

 

「え、どうして!」

 

「すまない・・・異常に気づかなかった私のミスだ・・・」

 

「そ、そんな、長門さんのせいではありませんよ。きっと何か理由があるはずです・・・」

 

「すまない・・・本当に・・・」

 

ドックの外にばたばたと大勢集まってきたようだ。わーわーと何か揉めているような声も聞こえる。なんだ、何かトラブルか?

 

「おーい!提督だ!入っても大丈夫か?」

 

「大丈・・・」

 

「わわわ!待ってくださーい!長門さん!タオルタオル!」

 

「ん?あぁすまん。」

 

「ふぅ・・・大丈夫でーす!」

 

ドックの扉が開くと提督が滑り込みながら土下座をかましてきて私と朧の前にキレイに止まった。こやつ、慣れているな・・・

 

「ほんっとーに申し訳なーーい!!」

 

「ま、待て提督!いきなり謝られてもわからない。妖精さんからは艤装が爆発したとしか聞いていなくてな・・・」

 

「それなんだが・・・」

 

「長門さん、朧ちゃん、御体に異常ないですか?」

 

「大淀、あぁ問題ない。」

 

「私もなんともないです。」

 

「良かった・・・提督は私がきつーく叱っておいたので!」

 

「あぁ・・・して、何があった?」

 

「まずはこれを見てください。」

 

んん?大淀の、たぶれっとというやつか。時代は変わったなぁ。どれどれ

 

「これはあの戦闘力試験の映像です。長門さんのここに注目してください。」

 

「・・・第三スロット、第三砲塔から火が!?なんだこれは!」

 

映像にはちろちろと根元が燃える第三砲塔。その火を夕立がじーっと見つめている。

 

「うわぁ・・・整備不良・・・?」

 

次にことが起きたのは開始の合図がされて動き出した瞬間だった。一気に火が吹き出し、第一砲塔に砲の代わりに積んだ電探、第四砲塔のカタパルトを燃やし、朧を巻き込んで私が大爆発を起こした。なるほど、夕立の目が輝いて見えたのは私の艤装から出る火を見ていたからなのだな。幼い夕立に報告やらなにやらしろというのは無理だろう。映像で固まっているのを見るとてんぱっているようだ。

 

「・・・妖精さんは整備不良なんて起こさない、原因はいったい・・・?」

 

「私のミスだ・・・」

 

「どういうことだ?」

 

「私が、艤装の確認を書類でしかしなかった。結論から言うと横須賀から送られてきた長門型の艤装は、長門さんのものではなく、横須賀の陸奥さんのものだった。」

 

「・・・は?」

 

「間違って送られてきたんだ。私が最終確認として妖精さんとの立ち会い確認をしていれば回避出来た事故だった・・・長門さん、朧、本当に申し訳ない・・・」

 

「・・・。」

 

なんとも、間抜けなミスで声も出ない。一歩間違えば私だけではなく、朧まで轟沈していた。

 

「あのクソババァ・・・バカも過ぎるぞ・・・」

 

「もちろん抗議文を送ってある、横須賀から謝罪に挨拶も来ると連絡が来た。今日辺り来るそうだ。後は私が本営からの処罰を待てば・・・」

 

「ならん!!!提督!今回の事故、全て横須賀の老害が悪い!提督、私が取り次いでやる。貴様が罰を受ける必要などない。太平洋の英雄長門が保障する。あのバカを提督の座から引きずり降ろしてくれる・・・!」

 

「ま、待て長門さん!あまりことを荒げては・・・」

 

「何を言う!私だけなら老朽艦が沈むだけで済むものの!新進気鋭の水雷戦隊の一人が失われかけたのだ!!これを怒らず抑えろという方が無理だろう!!」

 

「お、落ち着いてくれ長門さん!」

 

「どけ提督!私が直接本営と掛け合う!なに!奴を叩きのめすだけの材料は既に揃っている!取り返しのつかないことが起こる前に・・・」

 

「貴女が動く必要はないわ、長門。」

 

「誰だ!」

 

ドックの入り口で声が聞こえて振り向けば、大湊の艦娘に囲まれ、涙でぐずぐずになった夕立を抱いた旧友が立っているではないか。頭に登った血がどんどん収まっていく。

 

「び、ビス子!?」

 

「久しぶり・・・っていうほどじゃないわね。グーテンターク長門。」

 

「何故ここに・・・」

 

「うちの提督が迷惑をかけたからね・・・代理で来たわ。」

 

「代理だと!?直接来いと言ってやれ!」

 

「それは無理ね。なんてったってもう本営に召喚されているもの。」

 

「なに・・・?」

 

ーーーーーーーー

 

ーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

「はい、長門さん。お茶です。」

 

「あぁありがとう大淀。」

 

「ビスマルクさんにはコーヒーを。」

 

「ダンケ、大淀。」

 

場所を執務室隣の客室に移し、提督、大淀、ビスマルク、私と会談だ。あ、夕立は私に引っ付いてずっとすんすん言っている。すごいちからだ。大戦艦パワーでも引き剥がせなかった。それにこの方が頭に血が上らなくて済む。熱くなると夕立が泣くからな。

 

「じゃあ改めて。横須賀、第一戦略艦隊旗艦ビスマルクです。本日は県三奈子准将の代理で来ました。」

 

「大湊警備府提督、渡辺博則だ。」

 

「この度は、こちらの不手際により多大なご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。損害はこちらより全て補填致します。」

 

「承知した。」

 

「・・・まったく、大侵攻の叩き上げはこれだから困るわ。優秀な作戦立てるだけで提督になれるくらいなら私がやってやるわよ。」

 

「教え子なだけに、なんとも複雑です。」

 

「ぶっちゃけ、どうだった?あいつの教練は?」

 

「はは、現場に出て学んだ物の方が多いです。」

 

「でしょうね。バカだもの。あいつは。」

 

「夕立~泣き止んでくれー!ほら、ドーナツだぞ~」

 

「いばばいっぼい゙ぃ゙~」

 

「夕立~!」

 

全然泣き止んでくれない・・・話はビス子がつけているみたいだし、私はこっちに専念するでいいか。ドーナツがダメなら何がある・・・?

 

「お、大淀、他に御菓子はあるか・・・?夕立が好きそうなものを、」

 

「だめです!みんなに心配かけたんですから!しばらく引っ付かれててください!」

 

「お、大淀ぉ~!」

 

「後でみんなも待ち構えてますからね。」

 

「・・・ビス子ぉ」

 

「知らないわよ。私はその子の好みなんてわからないし。」

 

「しょ、しょんなぁ・・・」

 

「ははは・・・ビスマルクさん、あなたの大切な御友人を傷つけてしまい、こちらこそ大変申し訳ない・・・」

 

「いいのよ。今回は全面的にこちらが悪い。陸奥なんかは卒倒して艤装もないのに爆発したわ。」

 

「なにぃ!?む、陸奥は無事なのか!?」

 

「大丈夫よ。心配いらないわ。起きたらあいつを張り飛ばしたし。」

 

「むむむ・・・そんな暴力的な子に育てた覚えはないのだが・・・」

 

「ぼぉーい゙ぃー!」

 

「あわわわす、すまん夕立!」

 

あわわわわすごい拗ねてるぞ。こりゃしばらくこのままだなぁ・・・

 

「渡辺提督?そちらでの長門はどう?」

 

「長門さんは、みんなに良くしてくれています。長門さんが来てから、俺に長門さんの教練はいつ始まるんだ、自分は見てもらえるのか、長門さんの好きなものはなんだとうちの子はひっきりなしです。うちの警備府はさらに明るくなりました。」

 

「そう・・・横須賀はね、昔の長門を実際に知っている人が多いから怖がって近寄らない人が多いわ。極一部の人しか関わりを持とうともしなかった。大湊に行く少し前くらいから長門がみんなに歩みより始めたから少し解消したけど。それまでは長門自身も暗かったしね。」

 

「そうでしたか。」

 

「此方に来て様子を見たけど、長門はほんと幸せそう。いつのまにか娘みたいなのもいるみたいだしね。」

 

「ぼぉーいぃー!!ぼぉーいぃぃー!!!うあぁぁぁーーーん!!!」

 

「あわわわわ!て、提督!ビス子!すまん!少し出る!夕立が本格的に泣き出した!」

 

「あぁ、もう下がっていいよ。」

 

「私も、気にしなくていいわよ。」

 

「恩に着る!よぉしよし!夕立ぃ!お散歩行こうなー!」

 

「びゃあぁぁぁん!!」

 

これ以上邪魔したらいかん!当事者がいないのもあれだが、今は夕立だ。夕立の如く涙流されたらたまらん!いい子だから泣き止んでくれー!

 

「あんな長門を見れるなんて思いもしなかったわ。」

 

「楽しい人ですよ。ほんとに。」

 

「あいつも、好かれてはいなかったわ。一生懸命だったことだけは評価するけど。もともと提督に向いてなかったのよ。運が悪かったのね。」

 

「バァちゃんも歳が歳だったしね。引退するにはちょうど良かったのかなぁ・・・」

 

「行くのは牢獄だけどね。」

 

「は?」

 

「今頃裁判よ。罪状は国家反逆罪。」

 

「なに・・・?!」

 

「あいつは特に長門を怖がってたわ。艦娘が力を持ちすぎることを危険視していた。今回の艤装の取り違え、あいつが長門を始末するためにわざとやったのよ。気づいた時には遅かった。そんな大胆に始末しようとするなんて思わなかったし・・・日本の英雄を謀殺し、日本を混乱に陥れようとしたから国家反逆罪。」

 

「・・・!?」

 

「そしてあいつの元で健造された艦娘のいくらかはあいつの思想に染まってる。大侵攻を生き抜いた艦娘を始末しようとしていたみたい。」

 

「それでは・・・!」

 

「それももう平気よ。私の仲間が片付けてくれてる。大侵攻を生き抜いた艦娘っていうのは普通の艦娘とはひと味もふた味もちがうのよ?」

 

「そう、ですか・・・良かった。」

 

「貴方のことも調べてある。あいつの教え子だからもしかしたら、と思ってね。」

 

「そ、それは・・・俺がバァちゃんと共謀していると・・・!?それはありえない!俺はどんな艦娘でもその子の幸せを・・・」

 

「あぁ、安心して。教え子達は利口みたいだし、あいつバカだから人望もなかったのね。一人でやろうとしてたみたいよ。こっちも安心してるわ。」

 

「・・・そうでしたか、怒鳴って申し訳ない。」

 

「こちらこそ、失礼なこと言ってごめんなさい・・・」

 

「いや、そう思うのももっともだ。」

 

「・・・私が、私達がこうして動くのはね。理由はひとつだけ。」

 

「・・・。」

 

「長門を、幸せにしてあげたい、それだけよ。」

 

「・・・わかりました。」

 

「長門が望まぬ戦いに赴いた時、貴方も覚悟しなさい。」

 

「誓いましょう。決してそのようなことはしない。」

 

「ありがとう・・・それだけ聞けただけでも充分だわ。」

 


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