長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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page16 私と安心の日々

やぁ諸君。長門だ。難しい話はビス子と提督に任せた。私は夕立をお世話しないとな。泣いたまんまだとなんとも居づらいしな。大湊の警備府の中、中庭を夕立とお散歩だ。夕立は引っ付いたまんまだが。

 

「うぅー!ぐしゅー!」

 

「ごめんな夕立・・・心配をかけたな・・・」

 

「お姉さん、死んじゃったかと思ったっぽい・・・」

 

「大丈夫だ。戦艦が簡単に沈むか。」

 

「怖かったっぽい・・・」

 

「本当に、すまんな。」

 

あぁー!夕立の顔、涙でぐしゃぐしゃだけど可愛いなぁ!だけどもう二度とこんな顔をさせんぞ。絶対にだ。夕立を泣かす奴はぶちのめしてやる。今決めた。ん?今決めたから今私をぶちのめさなきゃならんか。覚悟しろ私!

 

「・・・びすこは、夕立のこと、お姉さんの娘みたいって言ってたっぽい?」

 

「ん?もうビス子と仲良くなったのか。あいつは言葉はキツイが仲間を絶対に裏切らない。約束も守る。気高く美しい奴だ。私の大切な友z」

 

「お姉さん、は夕立のママ?」

 

んはぁぁぁぁぁぁぁ!!!!長門、轟沈。ママ、か。ママ。いい。実に、良い。ママ。世のお母さん、私は元気です。

 

「ママ?」

 

「はっ!ゆゆゆゆ、夕立!もももももういっかい!」

 

「ママ!」

 

んほぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!戦艦が簡単に沈まぬと言ったな。あれは嘘だ。戦艦は沈む。しかも丘でだ。しかしこれは本望だ。良い艦娘生だった。

 

「ママは、夕立が守るっぽい。」

 

「・・・あぁ。」

 

「ママにひどいことするやつは許さないっぽい。だから夕立は強くなる。」

 

「・・・そうか!じゃあ私より強くならねばな!」

 

「ママより強く?わかったっぽい!」

 

そういえば今一瞬ぽいがなかったな。まぁいいか。

 

「あれ・・・長門さん。」

 

「ん・・・?あ、綾波・・・!」

 

中庭のベンチにいると、軍手とエプロンをしてスコップを持った綾波、私を見つけるとキッと顔を律してこっちに向かってくる・・・あわわわわやべぇよ・・・やべぇよ・・・まじおこの顔だよあれ。

 

「長門さん!」

 

「はいぃ!」

 

「もうお怪我は大丈夫なんですか!?こんなところにいて平気なんですか!?」

 

「んぇ!?は、はい!」

 

「本当に?」

 

「あぁ、ほ、本当だ!戦艦は簡単に沈まん!」

 

「馬鹿言わないでください!戦艦でも沈むんですよ!」

 

人差し指を立ててぷりぷりと怒る綾波可愛い。じゃない、妹を危険に曝してしまったんだ・・・

 

「あ、綾波・・・私は君の妹に、ひどいことをしてしまった・・・本当にすまなかった・・・」

 

「ひどいこと?」

 

「私の落ち度だ。本当にすまなかった・・・」

 

「・・・爆発のことですか?あれはビスマルクさんから聞きました。横須賀の提督が悪いって。長門さんは何も悪くないじゃないですか!」

 

「しかし・・・」

 

「もう!自分が悪くないのに謝ってしまうのは謙虚だと言われますがなんにも良いことじゃないですよ!」

 

「あ、あぁ。」

 

「夕立ちゃんは長門さんが入渠してる間ずっと泣いてたんですからね!!だから謝ることが違うんじゃないですか!?」

 

「そ、そうだな。」

 

駆逐艦とは思えぬ迫力。これが長女の貫禄か。いや、私も長女だけれども。妹がたくさんいるとこうなるのか。

 

「はい!」

 

「へ?」

 

「へ?じゃありませんよ!」

 

「あ、あぁ。綾波、心配かけてすまなかった。」

 

「えへへ、みんなほんとに心配してたんですよ。睦月ちゃんなんか、もう親子丼食べられないにゃしい!?なんて泣いちゃって。」

 

「綾波、今のにゃしいって可愛かったからもう一回。」

 

「えぇ!?もう!」

 

綾波が顔を真っ赤にしてチョップしてきた。・・・今までのどんな砲撃より効いた気がする。

 

「それなら、早くみんなにこの長門が復活したと回ってやらねばな!戦艦の有無は士気に関わる!」

 

「そうです!今ならみんな食堂でおやつの筈ですよ。私は花壇のお掃除してから行きますね。」

 

「わかった。」

 

「ママ、今日のおやつは杏仁豆腐っぽい。」

 

「そうか!杏仁豆腐は好きだ。」

 

「・・・へ?ママ?」

 

 

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ーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

食堂に入った瞬間、みんなから集中爆撃にあった。体はもう大丈夫なのか。心配かけて!と騒がしくなってしまった。曙は横須賀の提督に怒り心頭でファッキン提督と宥めるのが大変だった。天龍に至っては夕立より泣いてた。そのまま過呼吸になってドックに運ばれた時はも冷や汗が出た。暖かい、場所だな、と不覚にも涙が出てしまってまた騒がしくなり、おやつにありつくのは結局大分経ってからだった。

 

「ママ、強くなるにはどうしたらいいっぽい?」

 

「ママ!?」

 

「長門さん!どういうこと!阿賀野気になる!」

 

「あぁビスマルクがな、娘みたいだと言ってからこうなった。」

 

「いいなぁ阿賀野も長門さんの娘になりたい!」

 

「ちょっと阿賀野姉!ごめんなさい長門さん!」

 

「はっはっは!すまんな阿賀野、母など柄ではないから一人で勘弁してくれないか?」

 

「夕立ちゃんずるーい」

 

「えへへ夕立のママだもん!」

 

ママの件で娘候補がいっぱい出来てしまった。子沢山なのはいいことだ。だが旦那がいないな。

 

「長門ー?いるかしら?」

 

「おおビス子。話は終わったのか?」

 

「ええ。もう安心よ。」

 

「敬礼!」

 

「いいわよ阿賀野、今は。」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「ちょうどいい。ビス子、夕立が私をママと呼ぶからお前私の旦那にならんか?」

 

「ちょーっ!?ちょちょちょままま待ちなさいよ!どどどどどういな&*@§☆★#%£¢$¥!?」

 

「わはははは!冗談だ!」

 

「ししし心臓に悪いわ!」

 

「ほら、ビス子も食べろ。杏仁豆腐だそうだ。」

 

「い、いただくわ・・・」

 

「間宮!」

 

「はーい!今持って行きますね!」

 

ビス子が私の隣に座って真っ赤な顔を沈めるために手で扇いでいる・・・お前そんな顔も出来るんだな。覚えておこう。こんど何かに使えそうだ。

 

「びすこ、ママは渡さないっぽい。」

 

「いいわよ。好きなだけ持っていきなさい。」

 

ビス子の杏仁豆腐が運ばれてくるとみんなが我先にと集まってくる。二つ名こそ無いもののビス子も私と並ぶ英雄だ。みんな話を聞きたいらしい。

 

「あがの、夕立が強くなるにはどうしたらいいっぽい?」

 

「そうねーいっぱい食べていっぱい寝て。大きくならないとね。そうしたら阿賀野が訓練してあげる!」

 

「わかったっぽい。夕立、早く大きくなるっぽい!」

 

「ビスマルクさん!ビスマルクさんも魚雷が撃てるのよね!ドイツの魚雷ってどんな感じ?」

 

「そうね・・・威力は日本のに劣るけど、生産性等はこっちが上ね。帝国の科学力は伊達じゃないわ。」

 

「へー!長良型にも装備出来るかな!?」

 

「鬼怒!日本の艦娘なら日本のを使いなさいよ!」

 

「えー!五十鈴姉固いなー良い魚雷使った方が戦果もきっと出るよー?」

 

「あのねぇ・・・」

 

「私も使ってみたいかな」

 

「ちょっと!由良まで!?」

 

「いいわよ!帝国の兵器が使いたいなら武装援助出来るように計らってみるわ!」

 

「やったー!」

 

「あ、曙ちゃん、そろそろ落ち着こ?ね?」

 

「クソ・・・これだから提督ってのはクソなのよ!ぐぬぬぬ・・・」

 

「まったく、綾波を見習いなさい。」

 

「(;´_ゝ`)潮、敷波、今の曙に言葉は届かぬ。」

 

いつもの賑わいが戻って来たようで安心した。夕立も以前よりみんなの話についていけてるようで嬉しい。あぁコーヒーが美味い。

 

「ねぇ、長門?」

 

「ん、どうしたビス子。」

 

「貴方、今、幸せ?」

 

「そうだな。幸せかもしれん。これ以上を求めるのはおこがましいくらいに。」

 

「そう、なら、いいわ。」

 

「戦いすぎて、忙しすぎて忘れていたものを取り戻した気分だ。お前も幸せか?ビス子。」

 

「ええ、幸せよ。毎日が楽しいもの。」

 

「そうか。なら、良かった。」

 


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