長門の視線と銘打ってるのであまり番外編とかは考えてなかったけど、こういうのもいいだろうか。
あと金剛嫁の人達はすまない・・・私も金剛大好きd(バーニングラブ
「プリンツ、レーベ、マックス、拘束したやつらはどんな感じ?」
「今のところ大人しくはしていますお姉様。」
「思想に同調したからなんて聞いてたけど、大したことなかったね。マックスと二人で全員捕まえられたよ。」
「でもちょっと不気味ね。イメージというか先入観があったから。」
「そう、ユーは?」
「引き続き潜ってもらっていますお姉様。」
「そう、あいつの性格上、そんなに多く艦娘は抱えてないと思うから。様子を見て戻ってくるように言って。」
「はい。」
「それじゃ案内してちょうだい。」
横須賀のどこか・・・地下か。ドイツ艦が勢揃いしている。四人が進むと金属の艤装の靴音がよく響く。
「ここです。ちょっと不気味ですが、実力は大したことありません。お姉様なら素手でも制圧できます。」
「わかった。開けなさい。」
重く暗い扉を開けると鎖に繋がれ吊り下げられた、四つの同じ顔。本来のその艦娘に見られる快活さ、明るさは見る影もない。
「グーテンターク、金剛達?」
「・・・。」
四人の金剛のうち一人が顔を上げるが、何も物言わない。
「あら、どうしたの暗い顔して。」
「日本は、もう終わり、あの狂暴な戦艦をのさばらせて、日本は艦娘に滅ぼされる。」
「ふんっ!」
「ぐぎゃああああ!」
「あーあ。余計なこと言わなきゃいいのに。」
金剛の一人が口を開いたらビスマルクが拳を顔面に叩き込む。マックスは以前見たマンガで顔を殴られ前が見えねえという台詞を言うシーンを思い出した。だがあれはギャグマンガ、こちらは現実である。
「こいつは会話できないわね。次。」
「・・・。」
「起きなさいよボンクラ!」
「ひっ・・・ぐ、ぎ・・・!」
「プリンツ、やりすぎ。四人しかいないんだから。」
「ごめんなさいお姉様。」
「ぐ・・・狂暴な戦艦の仲間も、また、狂犬か・・・」
「ふんっ!!!」
「ぎぃ!?」
もう一人、前が見えなくなった。
「あーあー友人と同じ顔を殴るっていうのは気が引けるわね。」
「お姉様、こいつらはあいつの思想に同調、いえ、あいつに洗脳されて建造されたので私達に良くしてくれている金剛さんとは違うものですのでご心配なく。」
「あらそう。いいことを聞いたわ。」
かつかつと金属音を響かせ、三人目の元へ近づく四人。
「さて、貴方はお話できるかしら?」
「これ以上何を話せというの・・・仲間はもういない。提督は逮捕された。何も残ってないわ。」
「そうね・・・何が聞きたいレーベ?」
「あいつがなぜ金剛を四人も建造するなんて頭のおかしいことをしたのか聞きたいな。」
「だ、そうよ。」
「提督は、建造されてすぐに、提督に愛情を向ける私達が扱い安かったんじゃないの?」
「だと思った。面白くない答えだね。」
「そういえば、あいつは将来艦娘を完全駆逐するって考えがあったみたいなんだけど、貴方達は艦娘を始末するために建造されたんでしょ?自分も艦娘なのに。」
「別に、最後に一人始末する艦娘が一人増えるだけよ。」
「あ、そう。如何にも自分に酔った考えでつまらない。やっぱりもう聞くことはないわね。」
「お姉様、もう終わりにしちゃうんですか?まだ本当に仲間がいないのかはっきりしていませんのに。」
「いいわよ。どうせあいつのガバガバな計画だし。元々あいつは艦娘を信頼するなんてことしなかった筈だしバカだから人望もなくて人間の仲間も少ないだろうしね。艦娘金剛の提督に対する愛を利用するクズババアだし。あんた達も生まれた世を怨むのね。」
「ぐ・・・」
「ぎ・・・あぁ・・・」
「やはり、艦娘は道具でなければならない・・・こんなことが・・・」
「・・・。」
「解体すると足が着くわね。本営のおじいちゃんに頼みましょうか。今度スイスの高級ヨーグルト送っときましょう。あーでもそうしても足が着くかなぁ・・・」
「まぁ私は賛成です!お姉様いいお考えです!」
「ビス、私もヨーグルト欲しい。」
「私も。」
「こんな、こんなことが!!!」
鎖を引きちぎらんばかりに三人目が目を見開いてビスマルクに迫った。しかし届かず、弱った足がもつれて転がってしまう。
「艦娘は!!提督の兵器でなければ!!!道具でなければならないのに!!!お前達のようなロートルが!!!蔓延っていては日本に未来はッ・・・ぐぎゃ!?」
ビスマルクの鉄拳が三人目の顔面に力強く叩き込まれ、壁がひび割れるほどの勢いで衝突し、動かなくなる。
「艦娘はね、道具よ。今も昔も、そしてこれからも。でも道具にも愛情もって丁寧に扱ってやらなきゃね。それが出来ないやつは総じてろくでなしよ。あんた達の提督ってやつは道具扱いも出来ないバカだった。」
靴音を響かせて座って項垂れたまま動かない四人目の元へ行く。
「・・・。」
「ひっ・・・ひっぐ・・・私の行くヴァルハラでは誰も・・・誰も待っていてくれないデス・・・ひっぐ・・・そもそも私は・・・ヴァルハラに行けるのデスか・・・提督・・・私は・・・提督に・・・ひっぐ・・・愛して欲しかった・・・だけなのに・・・」
「・・・。」
「こいつは、洗脳が薄い・・・?」
「・・・。」
「お姉様どうしますか?」
「この子は、洗脳が解けるか、やってみましょうか。私が面倒を見る。」
「お姉様・・・!」
「うーん・・・?金剛が二人っていうのは面倒なことになりそうだし。そういえばおじいちゃんに艦娘の完全武装解除って聞いたことあるわね。それ頼んでみましょうか。」
「お姉様!流石お優しい!」
ビスマルクが腕の鎖をひとつ外すと、四人目を立ち上がらせる。
「聞きなさい、金剛。これから私があなたのお姉様よ。それを理解して、そうして生きていくのを受け入れるならここから出して、許してあげる。あの提督のことは忘れなさい。新たな提督と、素敵な出会いをするの。いい?」
「・・・。」
小さく頷いた四人目の金剛は鎖を外されプリンツに連れられていった。残ったビスマルク、レーベ、マックスは暗い室内を見渡しながら一考する。
「ねぇビス。」
「なにマックス。」
「こいつらは私達に任せてもらってもいい?」
「ダメよ。」
「えぇ・・・」
「こいつらは恐らく実戦経験はおろか、艦娘基礎訓練もしていない。何もしなくたって、そのうちここはただのオイルにまみれた部屋になるわ。」
「そうか、黒い海・・・」
「よく知ってるわね。レーベ。」
「そりゃビスのことだからね。調べたよ。」
「黒い海?黒海のこと?」
「ふふ、マックスは調べておくことね。」
「仲間外れ・・・」
「マックスが不勉強なのが悪いよ。」
「ぐぬぬ・・・レーベ!」
三人も部屋を後にして、靴音を響かせて遠ざかっていった。暗闇に包まれた部屋でばしゃりと静かに一回水音が響いた。