長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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file3 避難訓練

皆さまこんにちは。鳳翔です。近年、鎮守府が襲撃されることが多くなり本営から非戦闘員と艤装未装着艦娘の避難訓練を実施するよう通達がありました。

 

「というわけで、避難訓練の監督を努めさせていただく鳳翔です。よろしくお願いします。」

 

「「「「「よろしくお願いいたします!」」」」」

 

「なぁ鳳翔、これは俺もやるのか?」

 

「もちろんです提督。非戦闘員も、とのことなので。」

 

「見たところ全員いるように見えるが。急な出撃はどうする?」

 

「ご心配なく、湾内は朝潮が、近海は金剛が警戒して上空は私が艦戦、艦爆、彩雲を使って索敵していますので。もし出撃を要することがありましたら大淀さんを旗艦に長門さんを除いた決戦艦隊が出る手はずになっていますよ?」

 

「わ、わかった。」

 

「ごほん・・・ただ避難訓練をやるのではおもしろ・・・訓練になりませんので状況をつくりました。敵戦艦フラッグシップ級深海悽艦の上陸を想定した鬼ごっこをしたいと思います。」

 

「はい!」

 

「鬼怒さん。」

 

「何故鬼ごっこを・・・?」

 

「鬼ごっこは敵を想定し、逃げる、隠れる、対抗する。避難訓練に必要なこの3つを効率良く行える最適手段です。横須賀では水雷戦隊の新人によく鬼ごっこをやらせています。どこに逃げれば安全か、敵はどう動くのかを考えさせられる戦闘の基本を学べます。」

 

「わかりました!」

 

「何か他に質問は?」

 

「・・・。」

 

「無いようですね。では、敵戦艦フラッグシップをやってもらう長門さんをご紹介します。」

 

工廠の方から重機が歩くような重厚な振動音が聞こえてくる・・・筋骨隆々な人影と女性らしいスタイルの良い人影のふたつが向かってきていた。

 

「ホウッゲーーーーキ!!ホウッゲーーーーキ!!」

 

「そうよね、戦艦の砲撃は最高よね。こっちよ姉さん。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ほ、鳳翔さん!?あ、あの筋肉達磨はいったい!?」

 

「いやですね提督、長門さんですよ。ちょっと大戦艦パワーに飲まれていますけど。」

 

「テッッッコウッッッダーーーーーーン!!!」

 

「そうよね、徹甲弾の威力は素敵よね。」

 

「陸奥さん?長門さんの様子はどうでしょう?」

 

「ひ、久しぶりだから緊張してるのかも、力が入りすぎているわ。」

 

「長門さん、元気いっぱいですね。楽しみです。」

 

「う、うわぁ」

 

「大戦艦パワー・・・すごい・・・」

 

「何をしたらあんなになるんだ・・・」

 

「長門さんに捕まったら罰ゲームとして大破します。妖精さん。」

 

鳳翔が指を鳴らすと、倉庫から跳び箱にうつぶせに縛り付けられた不知火が運ばれてくる。

 

「むー!むぐー!?」

 

「不知火ちゃん・・・?」

 

「何で跳び箱に縛り付けられてるぴょん・・・?」

 

「えーこの不知火、昨晩食堂に侵入し羊羹を食べているところを発見し捕縛しました。長門さん。」

 

「ホウッッッゲーーーーーーーキ!!!」

 

「むぐぐーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

長門が右手を振り上げて、大きな手を不知火の小ぶりな尻に振り下ろした。その場にいる艦娘全員が想像される痛みと耳を刺す破裂音に歯を食いしばり目をつぶった。

 

「「「「「・・・ッ!!!!」」」」」

 

しかし感じたのは全身に受ける風圧と、衝撃。想像した音はいつまで経っても聞こえてこない。皆はほっと一息つこうとするが、呼吸が出来なかった。あまりの緊張感に過呼吸になったのか、過呼吸は伝染するというが、違う。長門の大戦艦パワーを持って放たれた平手打ちは衝撃が音より早く飛ぶ。故にその轟々と不知火の尻が叩かれた音を伝えるはずの空気が衝撃で吹き飛ばされ、一時的に空気がない状態に陥り音が聞こえず、呼吸が出来なくなったのだ。

 

「かはぁっ!?はぁ、はぁ、い、今のはいったい!?」

 

「何が起きて・・・」

 

「あーっ!見てください!!」

 

睦月が指刺す方向には、跳び箱。ビクビクと痙攣する不知火は尻にキレイなもみじ型の痕が残り、衣服は全て弾き飛ばされボロ切れとなり散らばっている。しかし跳び箱と縛り付けているロープと猿ぐつわは無傷だった。

 

「んぁっ・・・んぐぅ・・・おほぉ・・・」

 

「ビィィィィッグッッッッッッ!!!!セブゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!」

 

「流石ですね長門さん、飲まれていても力のコントロールは完璧です。」

 

「ホウゲキッ!」

 

不知火は妖精の手によって運ばれていった。恐らく入渠ドックにいくのだろう。

 

「このように、長門さんにつかまった場合、その場でおしりぺんぺん10回です。不知火さんは一回も耐えられない未熟者だったので私が鍛え直しておきます。」

 

「ひゃーすっげぇ長門前よりしあがってんなぁ・・・」

 

「知っているんですか天龍さん・・・」

 

「そうだぜ阿武隈、あれはソロモン攻略作戦に向けての演習、中・・・あ、ああ・・・あああ・・・」

 

「て、天龍さん!?」

 

「龍田ぁ・・・あやまるから・・・あやまるから身代わりにするのはやめてくれよぉ・・・あああああ・・・・けつが割れる・・・」

 

「天龍さん!おしりは既に割れてます!?」

 

トラウマを呼び起こす者、恐怖に震える者、姉妹艦で固まる者、様々な反応が有る中、ただ一人してはいけないことをした者がいた。

 

「(;゚д゚)ウワアアアアアアアモンスタアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

「ちょ、漣!どこいくのよ!待ちなさい!!」

 

「あら、まだ始まっていないのに逃げるのは感心しませんね。」

 

鳳翔が再び指を鳴らすと上空からエンジン音が聞こえ、彗星が漣の頭に黒光りする爆弾を落とす。

 

「(;゚д゚)こ、こんなことやってられっか!私は自分の部屋に・・・ん?」

 

爆音と共に炎に包まれる漣。唖然とする他の艦娘。爆心地にには横たわる漣・・・

 

「ヤム・・・さざなみぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

「朧、あんたもノリノリね。」

 

漣は不知火同様どこからともなく現れた妖精に運ばれていった。ナムサン。

 

「安心してください。演習弾です。いけませんね、敵前逃亡は銃殺ですよ?皆さんいいですか?これからルールの説明をします。」

 

「「「「「「は、はいっ!!!」」」」」」

 

「私の開始の合図と共に皆さんはこの警備府の中を逃げ回ってください。開始の合図の三分後、長門さんが動き始めます。終了条件は艦娘の全滅、提督の死亡判定、給糧艦間宮の轟沈判定、工作艦明石の轟沈判定、長門さんの撃破です。行動範囲は大湊警備府内のみです。湾内に出てはいけません。終了時間はヒトキューマルマルです。頑張ってくださいね。」

 

「ええっ!?私も、おしりぺんぺんされちゃうんですかぁ!?」

 

「自分で自分を修理するなんてことしたくないわね・・・」

 

「もちろんです。あ、長門さんを撃破するための艤装ですが出撃ドッグに全員分用意してもらいました。ドックに取りに行くか、隠れるか、どちらを優先するかは自由です。」

 

「ママを撃破するのは大変っぽい・・・?」

 

「いや、夕立、我々単艦では非力でも数がいればなんとかなるかもしれぬ。」

 

「菊月ちゃん、じゃあ僕たちで艤装を取りにいこうよ!ほら望月もやる気出して!」

 

「私も、あのおしりぺんぺんは嫌だ・・・」

 

「長月も同行しよう。」

 

「ど、どうしよう三日月ちゃん・・・」

 

「私達は隠れよう文月・・・」

 

「あ、言い忘れました。長門さんを撃破出来た時は長門さんがなんでも言うこと聞いてくれるそうです。」

 

「な、なんでも!阿賀野何お願いしようかなぁ・・・」

 

「ちょ、阿賀野姉!もう倒す前提なの!?」

 

「あの気迫は・・・撃破出来るのか・・・?」

 

「ぴゃあ・・・長門さんと一緒にお出かけしたいなぁ・・・」

 

「酒匂まで・・・」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!!俺すごく不利じゃないか!?艦娘に身体能力で勝てるわけが・・・」

 

「はい。なので提督は守ってもらってくださいね。」

 

「は、はぁ・・・」

 

「さて、では。」

 

あっというまにざわつく広場で鳳翔が鏑矢を放つ、あまりの至近距離での音に皆が耳を塞いだ。

 

「び、びっくりしたぁ・・・なになに?」

 

「長良!大変!驚いて名取が気絶したわ!!」

 

「五十鈴、背負ってあげて・・・あの!すみません鳳翔さ・・・」

 

「何をしてるんですか?はじまりましたよ?訓練。」

 

「へ?」

 

「いいんですか?長門さんが動くまであと二分三十秒ですよ?」

 

長良はちらりと長門に視線を向ける、まるで火力発電所のように鼻と口から煙を吹き出す様子はもう化け物としか言い表せない。長良の顔から血の気が引き、後ろを向いていつもの如く旗艦として指示を出す。

 

「みんなぁぁぁぁぁ!!!!逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

長良の一声ですばやく行動を開始した。いつもより三倍早かったと、後に長良は語ってくれた。早きこと島風の如し。

 

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