長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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page30 私と荒神

やぁ、諸君。長門だ。今日は挨拶をしてる暇がない。警備府の防衛中だからだ。夕立や翔鶴もよくやってくれている。

 

『港湾水鬼の混乱を確認!敵防衛艦隊の損害甚大・・・!勝てます・・・勝てますよ!』

 

「ふむ。優勢なようだな。こちらも警戒網に異常無し、だ。」

 

『了か・・・て、敵港湾水鬼の完全破壊・・・!港湾水鬼を撃破したようです!!やった・・・やりましたよ!!』

 

「本当か!!」

 

『提督は敵防衛艦隊の追撃を開始するそうです!このまま進軍して根室の分屯地に向かうみたいです!』

 

「よかった・・・大淀、こちらは警戒を継続する、こちらの報告を続けるんだ。」

 

『は、はい!』

 

水鬼級を撃破したか・・・よかった。とりあえず危機は去ったか。ならばこちらも仕事を全うしよう。

 

「こちら長門。各艦、状況を報告せよ。」

 

「翔鶴、警戒網に異常無しです。」

 

『五十鈴、ソナーに異常無し!』

 

『夕立、こちらも異常無し!』

 

「大淀、こちらは異常無しだ。」

 

『わかりました。提督に報告します。・・・待ってください。ノイズが・・・?』

 

「どうした。」

 

『いえ、少し無線にノイズが混ざっていて・・・上位深海棲艦の影響でしょうか。』

 

「わかった。こちらの警戒レベルを上げよう。翔鶴!」

 

「はい!爆戦を発艦させます!」

 

「頼む。」

 

翔鶴が追加で紫電を着艦させて、代わりに艦載機を放った。無線の異常は見逃せない。気のせいならあとで笑えばいい。警戒を厳とせよ。

 

「現在0230。あとは、北方棲姫か・・・なんとかして撃破して欲しいものだ。」

 

「上位深海棲艦というものを、見たことはありませんが。私達が束で相手にならないといけないのですね・・・」

 

「そうだ。恐るべき戦力をもっている。決して一人で立ち向かうなど馬鹿なことは考えるな・・・」

 

「はい・・・」

 

『長門さん、敵の追撃中に、金剛と不知火が大破。他連合艦隊に任せて我々の決戦艦隊は根室に直接向かうそうです。』

 

「あいつら詰めが甘いな・・・こちらも0400まで警戒を続ける。それ以降レベルを引き下げていく。」

 

『了解。』

 

このまま何事もなく、過ぎてもらいたいものだ。まだ空母水鬼も戦艦水鬼も残っている。この作戦、前線におらずとも緊張が張りつめている。気を抜くな・・・集中しろ・・・

 

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ーー

 

 

 

「現在0600。各艦、索敵終了。順次帰投せよ。」

 

『お疲れ様でしたー!』

 

『はぁ・・・全く、嫌な夜だったわ・・・』

 

『ぽぉーい・・・お腹ペコペコっぽぉーい・・・』

 

「ふぅ・・・」

 

「お疲れ翔鶴。すまないが艦載機はみんなが帰ってくるまで偵察を続けてもらえるか?私も水観は出しておく。」

 

「わ、わかりました!」

 

戦闘は帰ってきて初めて終了だ。ここで気を抜いて轟沈など目も当てられない。

 

『聞こえるか・・・こちら司令艦。』

 

「提督!大湊警備府、異常はありませんでした。」

 

『よくやった。俺はこれより根室を経由して陸路で千歳に戻る。このあとも警戒を怠らず頼む。港湾水鬼を撃破したことで味方の士気が上がっている。北方の連合艦隊はすでに空母水鬼、戦艦水鬼もかなり追い込んでAL海域に突入した。このまま北方棲姫を撃破する。』

 

『了解しました。御武運を!』

 

『あぁ、大淀も、気を付けろ。以上だ。』

 

通信が切れると安堵の息が漏れた。ひとまず何事もなかった。とりあえず夕立達を待って。食事をとろう。

 

「うーん・・・!よいしょっと!」

 

翔鶴も安心したらしい。大きく伸びをする。すると弓以外の艤装が焔のように揺らめいて消えた・・・ファッ!?

 

「しょしょしょ翔鶴!?おままま艤装は!?」

 

「はい?弓は出してあるので艦載機は扱えるので大丈夫です!」

 

「いやいやいや!艤装どこいったんた!?甲板は!?」

 

「・・・?格納しただけですけど・・・」

 

あれか、夕立と同じやつか。でも夕立はドロップ艦で、建造された翔鶴にこんな共通点があるなんて・・・?

 

「どうなっているんだ・・・?艦娘にも変化が・・・深海棲艦にも新型航空機、新上位種・・・まさか、それで大湊が狙われているのか?」

 

「お母様、偵察機より報告。津軽海峡、日本海、異常無し!です!」

 

「あ、あぁ、わかった。私は先に工廠に戻る・・・全機戻ってきたら艤装を片付けて・・・」

 

「はい!」

 

まぁこういうのを、考えるのは、天龍じゃないが、学者がすればいい・・・あとで明石が驚けばいいんだ。

 

「明石ー!艤装を頼む!」

 

「あ、長門さん。長門さんは外した時のフィードバックがこわいので機関部だけは残しておきますよ。提督にも報告済みです。」

 

「ん?そうなのか・・・じゃあまぁ頼むよ。」

 

「ふむ・・・燃料の補給だけで良さそうですね。弾薬は未使用ですし。ご苦労様でした。」

 

「うむ。」

 

疲れた・・・わけではないがこう戦闘体制を解いたり構えたりはなかなか来るものがあるな。それに翔鶴の衝撃の事実・・・あぁやっぱり疲れた。

 

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「五十鈴、さっきのファイルはどこだ?」

 

「これよ。」

 

「ありがとう。・・・よし。まとめたから頼む。」

 

「長門さん!提督からの戦況報告です!」

 

「わかった。こちらに。五十鈴、被害状況まとめてくれ。」

 

「はい、以前の被害状況のファイルはどこ?」

 

「あ、執務室だ・・・」

 

私は大淀、五十鈴と地下司令部で戦況をまとめていた。千歳から送られてくる情報、こちらでの対空警戒の結果もまとめていた。

 

「ふぅ・・・大淀、少し休憩したら?」

 

「そう、ですね。長門さんも休憩しましょう?」

 

「あぁ。」

 

「私、間宮さんのところにいってお茶とお菓子もらってくるわ。」

 

「あ、いいですねぇ」

 

五十鈴が出ていくと司令部が静寂に沈む。私は被害状況に目をとおしながら考え込む。撃沈された艦が多くなる一方でAL海域に追い詰め全力出撃の報があったにも関わらず水鬼達や北方棲姫の撃破報告はない。

 

「長門さん、大丈夫ですか?」

 

「あぁ・・・やはり私が行ければ少しでも沈む艦を減らせたのでは、と思ってしまってな。」

 

「・・・悲しいですが、命令です。私も行けたら役にたてるとではとも思いましたが・・・」

 

『き・・・ガーガーガー・・・けて・・・』

 

不意に無線が何かを受信した。現在千歳からの連絡しかない状況で他からの受信となると緊急しかない。

 

「!!!大淀!」

 

「はい!こちら大湊警備府!こちら大湊警備府!どうしました!こちら大湊警備府の大淀!」

 

『あ・・・ガーーーけピーーー・・・』

 

「よく聞こえない!どうしました!?」

 

『しゅ・・・うは・・・ピーーーガーーーこれで・・・ザーーーーーガーーーーあああっ!!青葉ぁあああ!!!このおおおおお!!!』

 

「どうしたました!!こちら大湊警備府の大淀!!!聞こえますか!!!」

 

『うっ・・・ひっぐ・・・私は舞鶴鎮守府の、生き残りの衣笠です、舞鶴が、襲撃されて、壊滅、救出にきた、呉の艦隊も、返り討ちに・・・ドゴーーーーーーンっぁあああ!!!ちっくしょおおおおお!!!ドォン!ドォン!ドォン!』

 

「衣笠さん!返事をしてください!!」

 

「まさか、北方海域のやつは囮・・・!?本土攻撃が狙いか!?」

 

『はぁ・・・はぁ・・・ザザ・・・大淀さん・・・ごめん・・私だめです・・・』

 

「長門さん!翔鶴さんに航空機を!!」

 

「だめだ・・・間に合わない・・・」

 

『現在・・・秋田沖・・・はぁはぁ・・・謎の敵球状航空機と無数の艦隊に、追われてます・・ドゴーーーーーーンぐああザーーーーー』

 

「長門さん!横須賀と佐世保に連絡して舞鶴の救援要請を!!」

 

「わかった!」

 

『敵は・・・佐渡、から・・・はぁ・・・来てる、みたいで・・・ザーーーーー・・・ドゴーーーーーーン・・・深海棲艦・・・はぁ、はぁ・・・見たことないやつが・・・ザーーーーー・・・ドゴーーーーーーン・・・基地型に追われていて・・・ドゴーーーーーーン・・・ぎゃあああっ!!ザーーーーーーーーーーー・・・ガッ』

 

「衣笠!衣笠ぁーーーーーっ!!!くそぉっ!!」

 

「基地型・・・まさか、新たな水鬼級・・・!長門さん!!救援要請をこっちにしてください!千歳にも緊急連絡!」

 

「佐世保から救援艦隊が出たが舞鶴沖で深海棲艦と交戦、身動きが取れないらしい。横須賀は舞鶴の救援に向かって陸路を移動中。舞鶴、呉は壊滅、提督も、行方不明らしい。よって救援は出せるところはない・・・」

 

「そ、そんな・・・!ち、千歳からも入電!うそ・・・AL海域で空母水鬼、戦艦水鬼が形態変化・・・連合艦隊に損害・・・」

 

「敵の作戦通りか・・・!!日本海側に上位深海棲艦が発現するなど・・・」

 

『こちら千歳!渡部だ!何があった!!』

 

「提督!佐渡に敵上位深海棲艦が出現し北上!舞鶴の衣笠さんが報告してくれました・・・球状航空機を使っているらしく、目標は、ここかと・・・」

 

『うそ・・・だろ・・・すぐ救援に艦隊を・・・』

 

『ならん!渡部君、今残る艦隊は連合艦隊を回収する艦隊だ・・・大湊の救援に出したら連行艦隊をALに取り残すことになる。』

 

『や、山元元帥・・・し、しかしそれならば私の艦隊に大湊で死ねと言うのですか!!!』

 

『逃げることは許されない・・・逃げればむつの街は深海棲艦の手に落ちる。』

 

『元帥!ならば、ならば非戦闘艦だけでも!』

 

「提督!私達に長門さんや五十鈴さんを置いて逃げろというんですか!?」

 

『ぐ・・・!ならば・・・』

 

『長門。』

 

「はい。山元提督。」

 

『長門、私はお前を本当の娘のように思っている。妻も扶桑、伊勢共にとても可愛がっていた。その娘のようなお前にこんな、こんなことを命令したくなかった。』

 

「山元提督、私はそれ以前に艦娘です。ご命令を。」

 

『山元元帥・・・!!』

 

「長門さん!いやです!!そんな命令聞かないでください!!」

 

『大湊所属長門型超弩級戦艦一番艦長門、帝国海軍元帥が命じる。大湊を脱出する艦隊を援護し、むつの街を守れ。』

 

「了解。長門、承った。」

 

「い、いやです!長門さん!逃げましょう、一緒に、一緒に逃げましょうよ!」

 

『長門、さん・・・っぐぅ・・・!』

 

「泣くな提督。娘二人を頼むぞ。」

 

『長門、すまん・・・すまんなぁ・・・』

 

「そうだ山元提督。ひとつ聞きたいことがある。」

 

『なんじゃ?なんでも聞け。』

 

「こういうときに言ってみたい台詞だったんだが・・・別に、敵を全部倒しても構わんのだろう?」

 


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