長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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page32 私と告白

やぁ諸君・・・等と言っている場合ではないが、長門だ。挨拶は大事だ。何やら古い文献にさえ書いてあるらしい。横須賀にいた頃、夜戦のヤバイやつが言っていた。

 

「ナニガアナタヲツキウゴカスノ・・・?」

 

「さてな・・・美味い物と、楽しい話があればそれで生きていける。」

 

かれこれ・・・どれくらいたったか忘れた。昼頃に出発したのが日が傾いてくるくらいまで。辺りは深海棲艦の体液で黒くなった海、煙でふさがれた空、目の前のそして白い肌。

 

「・・・カンムス、ニンゲン・・・ドイツモコイツモ、ウミニワタシタチヲステタニクラシイ・・・」

 

私の体は所々焦げて艤装も右半分が無くなってしまった・・・だがまだ三番、四番の砲塔が残っている。体も大分不自由になってきた・・・だがもう手負いの深海棲艦と泊地水鬼の下半身に艤装は破壊した。・・・正直、あの数にやれたこと、驚いている。代償もでかかったが・・・

 

「私が聞きたいくらいだよ。その無尽蔵の憎しみはどこからわいてくるんだってな。」

 

「オシエテアゲルワ・・・アナタタチガイルカラヨ・・・」

 

「そんなに私達が憎いか・・・まぁその憎しみは私じゃない誰かに払ってもらえ・・・」

 

「フン・・・ジャアアナタヲシズメテモモンダイナイワネ。」

 

「そうだな。だが最後に立っていたのは私だ泊地水鬼。」

 

「イマイマシイナマエ・・・」

 

「さらばだ・・・む?」

 

・・・右目が見えん、視界がぶれる。左腕で艤装を構えたが陽炎のように揺れて泊地水鬼は笑っていたようだ。

 

「フ、フフフ・・・オマエモ、ゲンカイノヨウダナ・・・!フフフウフフフフフ・・・」

 

「むぅ・・・ぐ・・・」

 

「ウフフフフ・・・キナサイ!ガラクタドモ!!」

 

「なにを・・・」

 

「ウゴゴゴ・・・ギギギギギギ!!!」

 

「ギャギャギャギャ・・・」

 

「・・・!!!」

 

「ガリッ・・・ゴリッ・・・」

 

「ギャギ・・・ゴ・・・」

 

驚いた。こいつ、手負いの艦達を食ってる・・・!?冗談だろ・・・キズもふさがってるし散々徹甲弾ぶち込んで破壊した艤装まで・・・ラスボスは第二形態まであるって・・・?そういえば報告に形態変化した水鬼がいたらしいな・・・はは・・・やんなっちゃうなぁ・・・

 

「フッ……、イタイ…イタイワ……ウッフフフフフフ……!」

 

「・・・一式徹甲弾、無し。三式弾、無し。通常徹甲弾、残り8。はっはっは・・・」

 

「ナニヲ、ワラッテイルノ・・・?アナタハコレカラシズムノヨ?コワクナイノ?」

 

「・・・なに、まだ私がまだ戦えるからだ。」

 

「タタカエル?カラダノハンブンガヤケコゲテクチテ、ギソウモハンブンナイ。ナニガデキ・・・ゴガッ!?」

 

「・・・かつて私が言っていた。砲が折れれば拳で、拳が潰れれば足で、足が無くなれば噛みついて・・・すごい執念だと思わないか?」

 

一発の大戦艦本気パンチで泊地水鬼の艤装を木端微塵に吹き飛ばしてやった。だが、飛行甲板が火を噴いて、どこから取り出したのかタコヤキよりも大きい二機の黒い艦載機・・・はっはっはっは

 

「フフフフ・・・ソウデナクテハ!!!」

 

「はっはっはっは・・・はぁ・・・ふふ・・・」

 

「ウフフフフフ!!!」

 

「撃てぇーっ!!!!」

 

残った四門が火を噴く。

 

「次発装填!!!撃てぇー!!!」

 

「・・・ウフ、ナガト、サッキヨリ、イタクナイワヨ・・・?」

 

「・・・。」

 

「アラ・・・アラアラ・・・」

 

はっはっはっは・・・空が高いな。弾薬無し、機関停止、竜骨損傷、半身焼失・・・左舷傾斜、水没・・・浸水・・・はっはっはっは、自分の砲撃がトドメになるとは・・・せめて敵の攻撃で沈みたかったが、贅沢は言えんか。

 

「ジブンカラシズムナンテユルサナイワァ・・・クライナサイ。」

 

「・・・フッ・・・んがっ!」

 

「ウワァッ!?」

 

ぬけぬけと20インチ砲を向けて来たから噛みついて投げ飛ばしてやった。・・・あのマヌケ面、笑えたな・・・

 

「オノレ、ナガト・・・ウフフフ・・・ソウヨネ、ハデニヤラナイトネ。ヒトツ、オモシロイモノヲミセテアゲル!!!」

 

「・・・ほぉ・・・らしくないな、褒美か?」

 

「ソウネ、ジゴクヘノオミヤゲヨ。」

 

・・・なんだ?汚れた海から・・・?デカイしっぽに黒いパーカーの、深海棲艦?しかし、なんだこいつ!!顔が、無い・・・!?

 

「・・・ナンドツクッテモ、ウマクイカナクテネ?」

 

「・・・なん、だ、こ、いつ!!!!」

 

「・・・。」

 

「アナタノトコロニアッタ、アレ、ホシカッタナァ・・・」

 

「・・・。」

 

謎の深海棲艦は尾にある口から魚雷、背に三連装砲、怪しく黄金に光るヒトデ艦載機が

生えてきた・・・うわぁ・・・気持ち悪いなぁ・・・

 

「・・・。」

 

「っぐ!?」

 

「アラ、キニイラレタノネ?」

 

こいつの腕、イカの足じゃないか!?腕なのに足とはこれ如何に!!!イカだけに!!うわ巻き付いてきて・・・私を持ち上げるなんてなんて力だ。

 

「・・・!」

 

「うわーっ!?」

 

「アララ・・・」

 

投げ飛ばされ、水面に叩きつけられた私は・・・艤装が弾け、体の中で三式弾の弾けた様な音がした。するとどうだ。視界が闇に染まって、急に音が遠くなった。体も動かない・・・これは竜骨が完全に折れたか。体と艤装を繋ぐ竜骨・・・これが折れてしまってはぁ・・・ははは、もぉダメだな・・・

 

「ア・・・ガト・・・モウ・・・?」

 

「・・・。」

 

「ダ・・・ナイ・・・パリ、ツクリ・・・スシカ・・・クライ・・・サイ!」

 

「ギギィィィィィ・・・・ゴボ・・・ゴボボボ・・・」

 

「・・・。」

 

「フフ・・・コレ・・・ワタ・・・ノヨ?」

 

「・・・。」

 

「シズメ。」

 

はっきりと聞こえた死の宣告。ゴツリと額に何かが触れる感覚。20インチ砲か。まぶたは閉じているのかどうかはわからない。しかし見えてくる。鳳翔の親子丼、カウンターの向こうから優しい笑顔でどんぶりを出してくれた。朝潮の万年筆、持って来てしまったよ・・・置いてくれば良かったな。不知火、正直、そんな子だとは思わなかった。だが私はいつでもウェルカムだ。ビス子・・・一緒に初めていったファミレス、たくさんの仲間に囲まれてご飯を食べた。楽しかったなぁ。陸奥・・・お前少しは友達増やす努力をしろ。大淀・・・結婚、良かったなぁ。でも湯飲みに紅茶淹れるのは勘弁な。金剛が泣く。間宮・・・すまんな。親子丼、食えそうにない。夕立、もっといろんな姿を見たかった。強くなった姿も。可愛い姿も・・・もっと。翔鶴・・・せっかく会えたのにお前とももっと思い出を作りたかった。美味しい物も食べたかった。可愛い服を着せたかった。私の友に、紹介したかった。提督・・・轟沈者を出して、すまなかった。クリーンな提督にさせてやれなくてすまない。悪気はなかったんだ。

 

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「司令、大湊防衛に出た、長門さんの艤装、反応消えました・・・ロストです。」

 

「長門さん・・・っぐぅぅ!!!」

 

「・・・うそっぽい。」

 

「・・・お母、様?」

 


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