長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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外章 艦隊これくしょん
file4 ビス子


Guten Tag 私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルク。と、言っても元だけど。艦娘運用システムが一新されてから私は解体を申し出て、退職金をもらって艦娘を引退した。今は呉の港町でそこそこいいマンションを買った。

 

「マミー!!!おやつはまだデースカー!」

 

「こら!!手は洗ったの!?うがいは!?」

 

「したデース!」

 

「じゃあ大人しく待ってなさい!今シュトーレン出すから・・・」

 

「マミーのシュトーレンは大好きネー」

 

引退した艦娘には新しい名前が与えられる。私は美代子だった。日本語はまだ難しいが、『美』という漢字は『び』とも読めるらしい。元ビスマルクだから『美』という漢字を使い美代子という名前になった。

 

「はい、どうぞ。紅茶も淹れるから、お湯が沸くまでもう少し待って。」

 

「いただきマース」

 

「こら!ちゃんとフォークで切り分けて食べなさい!あーあー食べかすが・・・」

 

「美味しいネー!」

 

「・・・そう?良かった。」

 

このちっさい子は元金剛。名前は可奈子となった。『金』という漢字は『かな』と読めるから・・・と山元提督が言っていた。というか艦娘の新しい名前の命名はだいたい山元提督が付けている。・・・本来、解体されると艦娘の姿が著しく変わるというのはありえないが、この子は特別だ。新解体システムのテストベッドとなった艦娘だ。私がとある方法で匿っていた金剛を差し出したのだ。山元提督は渋い顔をしたが・・・どうしても救いたいと言ったら許してくれた。

 

「ほら、紅茶。ピーチティーよ。可奈子好きでしょ?」

 

「もぐもぐもぐ!」

 

「口にいれたまま喋らないの・・・」

 

テストは半分成功と言った感じ。武装解除には成功、だけど体が幼く記憶も幼子同然になり、私はその金剛を引き取った。今では娘として暮らしている。

 

「はぁー紅茶美味しいデース。」

 

「そういえばアッサムの茶葉が切れてたわね。可奈子?おつかい行ってきてくれる?」

 

「オッケーデース!」

 

「ほら、ちゃんとコート着なさい!お金、無くさないようにちゃんとカバンに入れるのよ。知らない人に付いていっちゃダメよ。」

 

「ハーイ!」

 

「ふぅ・・・」

 

他のみんながどうなったかはわからない。基本的に解体された後の情報はプライバシーがどうたらということで教えてはもらえなかった。解体されたことまで知っているのは何人かいるが、どこに行ったかはわからない・・・

 

「長門・・・扶桑・・・伊勢・・・天龍・・・今どこで何してるのかしら。」

 

「コート着たヨー!」

 

「ボタン掛け違えてるじゃないの・・・ほらこっち来なさい。」

 

「ハーイ。」

 

「・・・はい、いってらっしゃい。」

 

「行ってきまーす!」

 

可奈子が飛び出していく・・・この光景は何度も見た。ってまた開けっ放し!!

 

「こらー!開けたら閉めなさいって言ってるでしょぉー!」

 

「ソーーーリーーー!!」

 

「まったく・・・」

 

「うふふ、可奈子ちゃん元気ねぇ」

 

「あ、管理人さん・・・すみません騒がしくて・・・」

 

「大丈夫よぉ。これ、あたしの田舎でとれた林檎。お裾分けよ。」

 

「そんな、申し訳ないです。」

 

「いいのよぉいっぱいあるからみんなに配ってるの。美味しいわよ?」

 

「・・・いただきます。」

 

「うふふ正直な子は好きよぉ?親一人で大変みたいだけど、頑張ってね。」

 

「ありがとうございます。」

 

「それじゃぁね。」

 

マンションの中でもご近所付き合いなどは良好だ。私が元艦娘でも暖かく迎えてくれた。むしろ英雄のいるマンションとして有名になったと管理人さんが喜んでいた・・・

 

「林檎・・・いっぱいもらっちゃった・・・ふふふ」

 

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テレビでは輸送艦隊が襲撃されたとか、南西で大勝利を収めたとか様々な情報が流れている・・・別なちゃんねるにすれば二人組の警察が暴れるドラマやジェネラルが大暴れするドラマの再放送をしている。もう何度も見た。

 

「ひまねー・・・」

 

可奈子は学校だ。小学五年生。転入もさくっと終わった。ちょっと数字以外の勉強は苦手な様だが友達も多くて困ったことは無さそうだ。

 

「あぁー・・・長門とか扶桑とか・・・今何してるのかしら・・・」

 

セーターがしわになるのも気にしない。そのままソファーに転がって・・・あぁー・・・

 

「うーん・・・買い物・・・別に必要なものも無いし・・・」

 

そういえば私には趣味らしい趣味がない。引退したときもまだ金剛の記憶が抜けきっていない不安定な可奈子の面倒をみることで精一杯だったから自分のことなんて二の次だった。

 

「んー・・・いつも暇してるとプリンツがやってきたのは・・・そういうことだったのかんぁ・・・」

 

そんな感じでだらだらしていると呼び鈴がなって・・・宅急便とか頼んだかしら。それにしてもこの通話モニターって便利よね。

 

「はーい」

 

『久しぶりだなビス子』

 

「え!?長門!?」

 


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