長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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file5 長門

「久しぶりだなビス子。」

 

「な、長門!?」

 

訪ねてきたのは長門だった。白い第二種軍装を着て・・・ってまだ海軍にいるの!?

 

「な、あんた、まだ海軍にいたの・・・!?」

 

「あぁそうだ。解体された後山元提督の計らいでな・・・いまは柱島泊地の提督だ。あがっていいか?」

 

「い、いいわよ?」

 

長門がドアをくぐる前に手を払うと私の死角から第一種軍装を着てサングラスを付けた長身の銀髪と少し背の低い金髪が二人、ドアの前で見張るように立った。

 

「・・・仰々しいわね。なにかあったの?」

 

「ん・・・いや、特には。あの二人は護衛だとさ。絶対付いて行くとうるさくてな・・・」

 

「あっそう・・・お茶入れるから座って待ってなさいよ。」

 

「すまんな。」

 

長門は急に何しに来たのかしら・・・今までなんにも連絡寄越さなかったのに・・・でも軍服で来るってことはソレ関係なのかしら。護衛までいるし。あの二人艦娘よね?いいのかしら。

 

「はい。ピーチティーだけど。」

 

「ずいぶん可愛らしいのを飲むんだな・・・待てよ、これは私だけで自分はビール飲む気だな?」

 

「阿呆か!!昼間っから酒なんて飲まないわよ!」

 

「むぅ・・・昔のお前なら間違いなく飲んでただろ。」

 

「もう違うのよ。」

 

「・・・そうか。」

 

ほんとなにしに来たのよ。ちゃかしに来たわけ?

 

「そういえば、他に解体されたみんなは何してるの?扶桑とか伊勢とか。」

 

「扶桑と伊勢は私と同じ提督だ。扶桑は宿毛湾泊地で。伊勢は佐伯湾泊地にいる。」

 

「ふーん・・・そういえば貴方、長門のままなの?名前もらわなかったの?」

 

「山元提督に解体された後は提督になると言っておいたから名前は変わってないよ。ただし山元性を名乗ってはいるがな。」

 

「へぇーなんか身内びいきみたいね。」

 

「別に名前くらいどうってことないだろう。」

 

「それもそうね。」

 

「マミーーーーーーー!!!」

 

「あ、帰ってきたわね。」

 

「誰だ?」

 

「マミー!玄関の前に怖い人いるヨー!マミーなにしたの?」

 

「なんで私が何かした前提なのよ!ほら、外から帰ってきたらどうするの!?」

 

「ただいまデース!」

 

「はい、おかえり。それだけじゃないでしょ?」

 

「ハンドウォッシュネー!!」

 

「うがいもするのよ!」

 

まったく・・・可奈子はお客さんがいるいない関係無しね・・・ちゃんと教えてあげないと・・・

 

「あのちびっこい金剛は・・・なるほど。テストベッドの・・・」

 

「あら知ってるの?」

 

「まぁ、な。」

 

長門がお茶を飲んでいると可奈子が洗面所から飛び出してきて・・・

 

「マミー!おやつが欲しいデース!!」

 

「はいはい・・・それより、お客さんがいるでしょ?ご挨拶は?」

 

「ヘーイ!こーんにーちはー!カーナコデース!よろしくお願いしマース!!おねーさんはフーアーユー?」

 

「私は長門。ビス子・・・君のお母さんの古い友人さ。ちょっと用事があって訪ねてきたんだが・・・」

 

「用事?それなら早くいいなさいよ。もう一般人の主婦の私に何か出来るとは思わないけど・・・」

 

「んー・・・忘れてしまった。」

 

「はぁ?」

 

「ヘーイ?物忘れは老化のはじまりって言うネー。」

 

「うぐ・・・確かに生まれた年から数えるともうおばあちゃんだけども・・・!」

 

「このバカ!失礼でしょ!」

 

「うぐぅ・・・ソーリー・・・」

 

「いいんだ・・・ま、用事は忘れてしまったし、今日はお茶飲んだら帰るよ。」

 

「ほんと何しに来たのよ・・・」

 

「友の顔を見に来るのに理由なんていらないだろう?」

 

「・・・そうね。」

 

「お茶、美味かったよ。」

 

「もう帰るの?」

 

「これでも多忙な身なんだ。」

 

長門を玄関まで送ると玄関が開いてさっきの二人が長門からカバンを受け取ってた。荷物持ちがいるなんてブルジョワか。

 

「意外と・・・お母さんが似合ってるな。ビス子。安心したよ。」

 

「余計なお世話よ。長門こそ、ちゃんと母親出来てるの?甘やかすだけじゃダメなんだから。」

 

「そうですわね。最近昔より甘やかされるようになった気がします。」

 

「このあいだ単独で偵察任務しただけで間宮券十枚もくれたっぽい。えこひいきっぽい。」

 

「!?」

 

「へぇ・・・母親としては私が上ね。」

 

「ぐぬぬ・・・」

 

ま、戦場にいるなら・・・そうよね。

 

「・・・また、遊びにくるよ。ちゃんとお土産持ってな。そうだ、鳳翔の店にも行こう。美味いぞ。」

 

「いいわね。」

 

「・・・ビス子。」

 

「ん?なに?」

 

「・・・いや、何でも無い。それじゃあまたな。」

 

「・・・ええ。」

 

玄関が閉じられて部屋に静寂が戻った・・・それも可奈子がすぐぶちこわすんだけど。

 

「マミー?あのお姉さん、病気かなにかなんですカー?」

 

「え?どうして?」

 

「ずーっと辛そうな顔してたデース。」

 

「・・・大丈夫よ。困ってたらすぐ言うから。あいつは。ほらおやつにしましょ。今日はバウムクーヘンよ。」

 

「口の中ぱっさぱさになるネー・・・」

 

「嫌なら食べなくていいのよ?」

 

「食べないなんて言ってナイネー!!!」

 

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「・・・お母様、結局、ビス子さんにはお話しなかったんですね。」

 

「ああ・・・ビス子はもう平和を手に入れている。それを私が崩してはならない。」

 

「・・・じゃあどうするっぽい?」

 

「ん・・・久しぶりに渡辺提督にでも聞いて見るよ。今軍学校で教鞭奮ってるらしいからな。良い人材の一人や二人紹介してもらおう。」

 

「渡辺提督・・・ご愁傷様っぽい。」

 

「お母様、それでは次は横浜ですか?」

 

「そうだな。運転頼むぞ翔鶴。」

 

「はい!任されました!」

 

 

 

 

 


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