長門の視線 ー過去編開始ー   作:電動ガン

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page7 私と軽巡

やぁ諸君、長門だ。横須賀から左遷されて大湊警備府に来たら昔連合艦隊を組んでいた天龍と再開した。昔と変わらず距離の詰め方が上手で気さくでいいやつだ。少々不遜なところもあるがな。

 

「じゃあ長門さん。自己紹介をさせてもらおう。俺はここ大湊警備府で提督をしている渡辺だ。以後よろしく。」

 

「ああ、よろしく。」

 

「お、大淀です・・・先ほどは・・・長門さんの御戦友に対して、大変な失礼を・・・!」

 

「・・・気にするな。」

 

「(めっちゃ気にしてる-!?)」

 

「俺は自己紹介するまでもねーけど、天龍だ。今はここで遠征艦隊と教導の総括をしてる。長門が来てくれて嬉しいぜ。」

 

「私も知り合いがいて心強い。改めてよろしく天龍。」

 

「でも本当に天龍さんは太平洋の英雄の連合艦隊に参加してたんですねー」

 

「ははは!そこにいても大したことはしてねーよ。」

 

「何を言う天龍。お前のおかげで何度助けられたかわからんぞ。」

 

「やめろよ長門、くすぐったい。」

 

「そうだ。俺も数々の大規模作戦のあったあの大侵攻のことは記録でしか見てなくてあまり知らないんだ。天龍もあまり話してくれないしな。」

 

「ふむ、そうなのか・・・ならば私が話してやろう。あのいくつもある作戦で天龍は幾度も活躍してくれたぞ。」

 

「提督!長門もやめろよ!恥ずかしいだろ!」

 

「あれは・・・まだ寒さの残る春だったよ。深海棲艦が活発化し、劣勢に陥って大侵攻が始まった時だった。敵泊地発見の報告があってそこを強襲するために初めて艦娘での連合艦隊が組まれた作戦だ。日本中から練度の高い艦娘が集められて連合艦隊の為の訓練を受けていた・・・そこで初めて天龍に会った。」

 

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「・・・今日はここまでだ。」

 

「ああああ・・・お疲れさーん・・・」

 

私は連合艦隊旗艦、日本最高練度の艦娘として旗艦を勤めていた。高速戦艦、空母、軽空母、重巡二人の打撃艦隊、軽巡三人、駆逐艦三人の水雷戦隊で組まれた水上打撃艦隊だった。その水雷戦隊で天龍は旗艦を勤めていたんだ。

 

「くっそー・・・俺は・・・なんでこんなとこに呼ばれたんだよ・・・」

 

「・・・お前が優秀だからだ。」

 

「優秀?俺みたいな旧型艦船がか?冗談だろ?阿賀野型や川内型でも使えばいいのによ・・・」

 

「随分自己評価が低いな?天龍はもっと堂々としていると聞いたが。」

 

「・・・艦娘にも個体差があんだよ。覚えておくといいぜ?旗艦サマ?俺には実戦より遠征で資材稼いだ方が性に合うし、役に立てるんだ。」

 

「・・・そうか。だが今は水雷戦隊の旗艦だ。作戦決行まで残り時間は少ない。気を引き締めろ。」

 

「へーへー」

 

天龍は初めてあった時は他の天龍より自分をどこか冷めた目でみる感じでな?反抗こそしなかったが随分と扱いにくかったよ。そしていざ作戦決行。敵泊地目指して出発したはいいが・・・海は既に深海棲艦のものと言っていいほど制圧されており途中の戦闘の数も尋常ではなく消耗も激しかった。そして遂には敵海域のど真ん中で連合艦隊は身動きが取れなくなった。

 

「もうっ!電探がやられた!レーダーも効いてない!索敵はどうでしょうか!?」

 

「未帰還機多数!残りの艦載機も少なくなってきましたね・・・」

 

「ちっくしょお!羅針盤もダメだ!現在地不明!」

 

「長門!引き返しましょう!作戦は続行不可能よ!」

 

「却下だ。」

 

「ッ!何言ってるのよ!摩耶、高雄は中破、瑞鶴は大破して発艦不可!水雷戦隊の方も被害甚大!みんなあなたみたいに頑丈じゃないのよ!?」

 

「敵に背中を撃たれたいなら好きにしろ。」

 

「このっ!」

 

「やめてくださいビスマルクさん!味方で争っていては・・・」

 

「じゃあどうすんのよ鳳翔!燃料ももうないじゃないの!!通信も途絶えてるし、野垂れ死ねっていうわけ!?」

 

「帰れないならば進むしかないだろう。違うか?ビスマルク。」

 

「あんたねぇ・・・!」

 

「現在地ならわかるぜ。」

 

「・・・天龍?」

 

「・・・どういうこと?貴方の艤装はボロボロで推進機しか機能してないじゃないの。」

 

「ここは以前に遠征で何度も通った。深海棲艦に制圧されてからは見てないが・・・星の位置でだいたいわかる。方角はこっちが北、あっちが南、だとすると本部の方向は向こうだ。距離もだいたい1200キロくらいじゃねぇかなぁ?」

 

「ほんとなの、それ?でかしたわ天龍!」

 

「・・・。」

 

「なぁ旗艦サマよぉ?ここはいったん退かねぇか?補給も十分じゃねぇ満身創痍の状況で敵につっこんでもそれはただのバカだろ?帰り道もわかった。ほぼ安全な航路もわかる。また・・・」

 

「また来ればいい・・・か。」

 

「そういうこった。ま、でも連合艦隊の旗艦はあんただ。最終的にはあんたに任せるぜ。」

 

「・・・全艦撤退用意、動けぬ者は曳航してもらえ。」

 

「ほっ・・・」

 

「はぁ・・・生きた心地がしないぜ・・・くそっ・・・」

 

「長門さん・・・」

 

「・・・。」

 

天龍は度重なる遠征であらゆる海域を知り尽くしていた。海図も頭にしっかり入っていたんだろう。撤退中の航路では一回も敵に遭遇することなく鎮守府に帰ることが出来た。そして何度も撤退を繰り返し、激闘の末に敵泊地を完全破壊。再び満身創痍で帰る時も天龍の知識で帰路を見いだしなんとか撤退した。大侵攻最初の作戦は、天龍のおかげで無事成功し、生還出来たといっても過言ではない。あの時天龍がいなかったらと思うと今でも足が震えるよ。

 

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「そ、そんなことがあったんですね・・・!」

 

「ああ。だから、大湊の天龍は私の命の恩人と言ってもいい。」

 

「や、やめろよぉ・・・」

 

「大侵攻を生き抜いた艦娘だとしか聞いていなかったが・・・まるで生ける伝説だな。俺も鼻が高いよ。」

 

「だから私だけが英雄と呼ばれているのは少々気にくわないのだ。」

 

「いいんだよぉ・・・バカスカ殴り合ったのはほとんど長門だったんだからよぉ・・・俺は道案内しかしてないじゃないか・・・」

 

電探まで真っ赤になってうつむく天龍はなかなかかわいいものだ。にしても・・・昔の大侵攻を生き抜いた艦娘はほんとに少ない。艦娘は建造された時期が大侵攻前か後かで第一期、第二期艦娘と別れている。おおまかな違いはないが戦闘に意欲的かどうか等の違いが生まれていると噂されている。格差が生まれている・・・などとは思いたくないが、第一期艦娘は練度査定などで計れない強さの差が出てきているのも確かだ。

 

「思いがけない話を聞けたよ。ありがとう長門さん。」

 

「こちらこそ。友人を自慢出来て良かった。」

 

「恥ずかしいよぉ・・・」

 

「よし、じゃあ大淀、長門さんに中を案内してやってくれ。それが終わったらちょうど昼食の時間になるだろうし、間宮が用意してくれているだろう。長門さんの仕事についてはこの警備府に慣れたら、また後日ってことで。」

 

「わかりました。長門さん大丈夫ですか?」

 

「私はいいが・・・大丈夫か天龍?」

 

「もう昔の話をするのはやめてくれよう・・・」

 

「わ、わかった・・・後で食堂でな・・・」

 

「おぅ・・・」

 

湯気が出そうなくらい真っ赤だ。天龍は提督に任せて、案内してもらうとしよう。それにどうやら食堂には間宮がいるらしい。これは・・・これは親子丼の味を期待してもいいかもしれない。昂ぶってきた。後でマイ箸を取りにもどろう。他の鎮守府の味というのは実に興味深い、それに食堂ならば他の艦娘もいるだろうし。仲良くなれたらいいなぁ・・・あ、大淀が何もないところでこけた。ドジっ娘属性を追加だ。

 


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