ファイナルファンタジーX 鎖の名を持つ少女 作:わっふるなごみん
原作はかなり前に5~6回プレイしたくらい。
あまり長いとエタリそうだから短めの予定。だから展開早くても許して。
原作キャラと被らないようにしようとしたら銀髪ボクっ子になった。
辺りで一番高い建物の最上部から飛び出しているオブジェクトに座りながら下を見れば、夜だというのに人工的な明かりで昼のように明るい街が見える。
毎日スタジアムでブリッツボールの試合が行われ、眠らない街ザナルカンド。
今ボク達がいる建物の隣の建物には大型ディスプレイが取り付けられており、かつて共にスピラを旅したジェクトが映し出されていた。
「一口でいいからちょうだい」
「…………」
後ろから飛んでくる徳利をキャッチして栓を抜いて中に入っている物を飲んでいく。
何のお酒かはわからないけれど、アーロンの持っているお酒は他の物とは比べ物にならない程おいしい。
ごくごく、と一気飲みをし、中身が空っぽになった徳利を手に持って俯きながら、後ろにいる人物へ話しかける。
「おかわりほしいな」
「…………」
最初の頃は結構怒られていたけれど、今ではもういつもの事で今ではもう怒られない。
怒られることはなくなったけれど、その代わりに最近はいつも無言になって話しかけても返事が返ってこない、言葉のキャッチボールができないなんて、悲しいね……。
この十年の間に飲み干した回数は四桁を超えているだろうし、仕方がないのかも。
「始まるね」
「……そうだな」
ボクがふざけた雰囲気から真面目な雰囲気に変わったのがわかったのか、ジェクトの方へ目を向けたままつぶやいた言葉に、ブラスカ、ジェクトと同じくスピラを共に旅したアーロンが答えた。
そして、【シン】もボクの言葉に答えるように、このザナルカンドへ姿を現した。
その姿はまさに山のように大きく、わかりやすく例えるならばクジラに似ているかもしれない。ただし、多くの目とヒレがあってホラーなクジラだけど。
海から姿を現した【シン】の体から何かが飛び出し、建物に当たると爆発し、次々とザナルカンドを破壊していく。
ザナルカンドの人たちは最初何が起きたのかわからず呆けていたけれど、すぐに危険だということは理解し、我先にと逃げ出し始める。ブリッツというユニークなスポーツの試合が行われており盛り上がっていた先ほどとは違い、地獄絵図。
「いくぞ」
「はーい」
返事を聞くと同時に外付けの階段を降りて行くアーロンを追いかける。
アーロンと倒壊したスタジアムの入口である人物を待ち続け、目的の人物が現れたのは数分後のことだった。
「アーロン!」
金髪青目で肌はそこそこ焼けていて小麦色。皮製のオーバーオールと上は黄色の上着のみ。上着には白いフードがついていて、手には革手袋。左腕だけ何故か篭手みたいなものを装備している。
そしてちょっと気になるのが、左右非対称のオーバーオールの裾の長さ。右はすね辺りなのに対し、左は膝上までしかない。
黄色いショートブーツ履いているし、黄色が好きなのかな?
「お前を待っていた」
アーロンはそれだけ言うと【シン】がいる場所へ向かって歩き出す。
「どこに行くんだよっ! それにその子は誰なんだよ!」
目の前の金髪君、名前は確かティーダ。ティーダ君はそう言いながらも訳がわからないと言った様子だがしぶしぶアーロンについていき、ボクはそのティーダ君に並ぶようにして歩く。
「ボクはリアン。よろしくね、君のことはジェクトから耳を塞ぎたくなるほど聞いてるよ」
【シン】から逃げている周りの人とは反対方向にボク達は進んでいく。
そう【シン】に会うために。
本当は十年前に終わらせようとしたけれどボクには無理だった。ジェクトの息子であるティーダ君達には永遠のナギ節で平和に過ごしてもらいたかったんだけどね。
現代日本で暮らしていた頃に見たことのある高速道路に似た場所を歩いていく。
とは言っても、逃げる人達が乗り捨てた車や、車で逃げる人は全く見かけないけれど。高速道路のバージョン歩行者天国といった感じかな。
ティーダ君が必死にアーロンに話しかけるものの全て無視され少し可哀想な気もするけれど見ていて面白いしそのまま眺める。
何故かボクには話しかけて来ない、お姉さん寂しいよ。
歩き始めてしばらくして、【シン】から種みたいな形をしたものが射出され、ボクたちの目の前に突き刺さる。
「う、うわっ!」
驚いたティーダ君は尻餅をつく。
それは、【シン】の体の一部が切り離されたもので、【シン】のコケラと呼ばれるもの。
【シン】のコケラは動き出し、卵から生物が生まれるように、種状の一番外側はそのまま二つに裂け羽となる。
よくわかんないけど、エイリアン風の蚊みたいな感じかなぁ……。大きさも一メートルくらいでそれっぽい感じだし。
「これで身を守れ、ジェクトの土産だ……」
アーロンは虚空からジェクトがお土産として買った腹がワインレッドの剣を取り出し、ティーダの目の前の地面に突き刺す。
「お、……オヤジの土産ッ?!」
土産の剣を手にとったティーダをアーロンは片手で引っ張り立たせる。
「戦いは俺とリアンに任せておけ、今はな」
「そういうこと」
アーロンの言葉に同意の言葉を返すと共に、ボクは【シン】のコケラとの距離を詰め、虚空から取り出した大剣で横になぎ払う。
刀身が黒く、赤いイルカをモチーフにした紋章が掘られており、剣先がイカの頭のようになっている少し変わった形状の大剣。
そう、ブラスカとザナルカンドへ向かって旅をしていた時にジェクトが使っていた大剣である。
重量がものすごく、アーロンは使いにくいといっていたし、この大剣を使うのはボクとジェクトくらいかもしれない。
ただ、ボクは永遠の十七歳でか弱い女の子。普通なら持つことすらできないだろう。
けれど、ボクはスフィア盤で強化済み。
このスフィア盤、原作では主人公のティーダ君やヒロインのユウナちゃんを始めパーティー全員が使えていたのだが、この世界では存在すら知られていないらしい。
しかし、何故かボクはそのスフィア盤が使える。
敵を倒せば移動できる数が増えていくのは原作通り、ただし習得時にパワースフィアやアビリティスフィアが必要といったことはなくスフィア盤で移動させすれば勝手に習得していってくれる。
故に扱える。軽々と振り回し、思う通りに動かせる。
ボクが両断した【シン】のコケラから幻光虫が外に流れ出ていき、次第に【シン】のコケラは透き通り、最後には霧散する。
ボクに続くようにアーロンも太刀の【正宗】で目の前の【シン】のコケラをなぎ払い、倒していく。
「ついてこい」
その言葉と共に、ボクとアーロンは進んでいく。
「おい! 待てっての!」
ティーダは慌てて走って追いかけてきて、ボクの横に並ぶと話しかけてきた。
「な、なぁ、オヤジの事知ってるみたいだけど、な――――――」
漸く話しかけてきてくれたティーダ君の話を遮るように、先の【シン】のコケラとは大きさが違う【シン】のコケラが、ボク達の道を塞ぐように突き刺さった。
わかりやすくするためにボクは大きさや強さなどによって階級分けをしている。
さっきの小型に分類され、数も多い【シン】のコケラは兵士クラス。
現在目の前に立ちふさがる五メートルくらいはありそうなちょっとイソギンチャク風で上のニョキニョキが八本程度の【シン】のコケラは隊長クラス。
戦場で隊長一人のみということはなく、大体はなにか事情がない限り、そのお供として、兵士がいる。
隊長クラスに少し遅れながら、兵士クラスの【シン】のコケラが立ちふさがる。
ちゃんとした名前があったような気もするけれど、覚えてないしいいや。
「やばいって、あんなでかいやつ無理だって!」
「お前はそこで見ていろ。リアン、周りは任せる」
「はいな」
返事をすると同時に走り出し、隊長クラスのコケラとの間にいる邪魔なコケラのみをなぎ払い、道を作る。直ぐに隊長クラスのコケラが兵士クラスの補充を行おうとするが、アーロンがこの機会を逃すはずがなく、隊長クラスとの距離を詰め精錬された動きを見せ、一撃で葬り去る。
「ティーダ君、走るから付いて来てね」