GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~   作:A-Gyou

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イリヤの人生を語る上で、避けられない人物。

今回は、そんな人物との邂逅の話。


初めての

初陣が済んでから、数日が経過した。

 

イリヤは、1人エントランス2階のソファでぼんやりとしていた。

 

今のイリヤには、無理矢理有休が与えられていた。

 

と言うのも、初陣のときに彼が使用している神機のブレードパーツを若干破損させたので、その修理のためだからだ。

 

思い返せば、確かにむちゃくちゃな使い方だった、と自身でも思い当たる節は多々ありすぎる。

 

『君の神機は少し特殊なんだ。だから、直すのに少し時間がかかっちゃうけど、ごめんね?』

 

とは、アナグラの神機整備のプロである楠リッカの言葉だ。何でも、彼女の父親もプロの神機整備士であったそうで、そんな父親の手伝いがてらに色々と整備について学んでいたら、かなりの腕前になっていたそうだ。今では、極東支部で管理されているほとんどの神機の整備を担っているという。

 

すげぇもんだ、と思いつつ天井を見上げて溜息を吐いた。

 

非番と言われても、彼は未だに行動に普通の神機使いよりも厳しい制限が付いている。2等兵の権限でいけるところまでしか移動できず、無論外出も許可されるわけが無い。

 

そして、2等兵の権限だと対アラガミ部門以外の部署まで行こうと思うと直属の上官の許可と、相手側の許可がいるのだ。そうなってくると、未だに治安部門の方で保護されている建前の子供達にも簡単には会えない。

 

改めて、残念そうに溜息を吐いた。

 

そんなときだった。

 

「あのぉ、あんまり溜息とかしない方が良いと思うんだけど……」

 

控えめな声がした。

 

何だと思って声がした方を見ると、そこには顔しか知らない少年__藤木コウタが立っていた。

 

黄色い縞模様のニット帽。オレンジ色の髪。表裏のなさそうな明るい眼。実用性よりも見た目の方に比重を置いた、黄色っぽいイメージの服装。

 

(あ、アホそうな子だ)

 

本人には失礼だが。大変失礼極まりないのだが、イリヤは心の中でそう呼んでしまった。

 

「他の先輩達に変な目で見られちゃうよ」

 

コウタはなおも控えめな声で続け、ある1点をチラチラと確認する。何を見ているのかと思い、イリヤもその方向を見ると。

 

余りガラの良くなさそうな男性陣が固まって、こちらを見ながらひそひそと話し合っていた。

 

その内容は、大方予想が付く。

 

(どうせ、元犯罪者のくせに何チャラ、とか言ってんだろうなぁ……。あと、女顔のことも何か言ってそうだ)

 

本人には全く自覚は無いが、その3人を見るときのイリヤの目は、まるでつまらない劇を見ているような、冷たいものだった。

 

「ほら、な? 露骨な溜息はやめといた方が良いって」

 

イリヤの直感だと、あの3人以外にも自分のことで変な陰口をたたいている輩は結構いるだろうな、というところだ。不特定多数の人間と下手に対立しても何の得も無いことを理解し、ならばわざわざ相手に悪印象を与えるのもアホらしく感じる。

 

「……分かった、気を付けるよ」

 

そう返事したときだった。

 

コウタから発せられる気配が、固まった。そして、イリヤはそれを敏感に感じ取った。ただし、イリヤにはコウタをそうさせた心当たりは無い。

 

「……? 何だ?」

 

流石に不審に思い、コウタの方を見ると。

驚愕に顔面を硬直させているコウタが突っ立っていた。

 

その表情は…………どう表現したものか。

 

とりあえず、“ついさっきまで信じて疑っていなかった事柄に裏切られた”と言った感情がダダ漏れの顔だ。効果音を付け加えるとしたら『ギャーン』とか『ガーン』と言ったところか。

 

「何だ、どうした? おい」

 

不審者を見る目でコウタを見る。

 

「………ナカッタ…」

 

「ん?」

 

「イリヤ“ちゃん”じゃなくてイリヤ“君”だった!!」

 

コウタの悲鳴とも言える叫びに対して、イリヤは後生見せることが無いであろう酷い表情を顔面に貼り付けていた。

 

 

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無言でコウタの頬をつねり上げて、ズルズルと引きずりながら向かった先。

 

「……まぁ、かなりかいつまんでるが。そう言うわけで、残念ながら俺はお前が夢見た“胸が残念な外人美女”じゃねぇぞ、と。分かったか?」

 

新人フロアにの自販機のそばのベンチ。

 

半泣きで頬をさするコウタに向かって、イリヤはそう言い放った。

 

現実を受け止めきれない少年は、ただショックと絶望感を滲ませた表情でだまり続けている。

 

 

そして、2人はまだ知らない。

本当に“胸が残念な外人美女”が極東支部にいることを。

だが、それはまた別の話だ。

 

 

グスグスと情け無く、落ち込んでいるコウタ。自分に責任は無いはずだが、何故か悪いことをしたような気分になるイリヤ。

 

(何だこのカオスは……)

 

「……痛ぇ」

 

「てめぇ男だろうが」

 

「っ!?」

 

メソメソするコウタに、軽いげんこつを見舞う。

 

しばらくすると、コウタが静になった。

 

「でも良かったよ」

 

「変態か?」

 

最悪の返答。しかも即答。

 

いや、仕方ないと言えば仕方ない。何の脈絡も無く、唐突に“良かった”と言われても、イリヤ本人としては頬をつねり上げた記憶しか無い。それが良かったと言われていると誤解してしまうのは、仕方ない………はずである。きっと。

 

「違ぇよ! 何で変態なんだよ、おい!?」

 

「じゃあ何が良かったんだよ」

 

「いや、さ。オレ、イリヤと面識はあったけどお前のこと何にも知らなかったからさ。極東支部で今期の神機使いがオレとお前だけで、しかもイリヤは何か別枠みたいな扱い受けてたから、結局オレだけみたいな状況なのかなって思ってたからさ。だから、ちゃんと入隊同期のヤツのことを知ることが出来て良かったなってこと」

 

あぁなるほどな。

 

コウタの話を聞いて、イリヤはそう思った。

 

確かに、事実としてイリヤとコウタが入隊同期であることには間違いは無い。しかし、お互いにほとんど顔を合わせる機会も無く、お互いに全く別のカリキュラムをこなしていくうちに、コウタの方は不安が積み重なっていたのだろう。

 

イリヤは、最初から自分がまともな待遇を受けられないと構えていたので、他の神機使い達からどんな目で見られても気にもならなかったし、彼自身それに対して不便も感じていなかったのもあり、結局不安を感じることは無かった。

 

しかし、コウタはただゴッドイーターとしての適正があっただけであり、元々は何の変哲も無い明るい少年だったのだ。それなのに、いざ入隊すれば、身近に頼れるのは入隊同期だけなのに、コウタには事実上それに当たる人間がいなかったのだ。

 

軽率が過ぎた発言に、恥を感じる。

 

「悪かったな、変態呼ばわりして」

 

ただ不安だっただけの少年に向かって言うことではなかった、と己の中で反省する。

 

「良いって別に。気にすんなよ」

 

そう言ってニカッと笑うコウタの笑顔は、明るく純粋なものだった。

 

「じゃあ、まぁ改めて。俺はイリヤ。イリヤ・アクロワ。ここに来る前は、居住区の方で少し暴れてた。色々と訳があって、今は神機使いをしている」

 

「オレは藤木コウタ! 好きなもの、妹のノゾミとアニメのバガラリー!! よろしくな、イリヤ」

 

「あぁ、よろしくな」

 

「今からオレ達は親友だ!! 一緒に頑張ってこーぜ!!」

 

コウタから差し出されたてをイリヤはしっかりと掴み返すことで返事とした。

 

「なぁ、ところでバガラリーって何だ」

 

「えっ!? 知らねぇのか、イリヤ? バガラリーってのはなぁ……」

 

しまった。気付いたときにはもう遅い。コウタのバガラリーに向ける熱意を理解し、それを布教しようとする心意気まで察してしまう。長い熱弁になりそうだ。

 

そんな空気に飲まれて。

 

これが親友なのか、と何故か不安になるイリヤだった。

 




コウタ君の味が出せない……

これかはどんどんと出てくるので、その中でコウタの持ち味を出せればなぁ、とか思います。

頑張ります、はい。

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