GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~   作:A-Gyou

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イリヤの周囲を取り巻く空気は、悪化の一途を辿っている。

それはとうとう、ツバキやリンドウの目にも余るほどに


判断

雨宮リンドウ。

 

フェンリル極東支部が誇る極東のエース神機使い。その戦績は、世界でも数少ない単独でのウロヴォロス討伐を始め、凄まじい、の一言に尽きるものだ。

 

そして、何よりも目を見張るべきは、彼が同行した任務は隊員の生還率が9割を超えている、そこにある。通常、どんなベテラン隊員が指揮を執っていたとしても保って1ヶ月。それまでの間に必ず隊員の内の1人は死ぬのだ。しかし、彼はその常識を唯一覆している。世界中の支部は勿論、本部ですら目を付けるほどの逸材である。

 

そんな彼は今、姉である雨宮ツバキの部屋にいる。

 

決していかがわしい理由では無いし、そもそも“そう言うこと”をするのならもう相手もいる。相手のことは、この際割愛しておく。

 

「で、姉上は一体何の用で俺を呼びつけたんですか?」

 

リンドウの、いつも通りのおどけた口調

 

「姉上でなく大尉……いや、今はそれはどうでも良いか。お前も何となく察しているだろう。例の新人のことだ」

 

今の今まで溜め込んでいた全ての陰鬱事項を晴らすかのような重たい溜息と共に、そう言った。

 

それで、リンドウはツバキが何の話を持ちかけたいのかを察した。

 

「少し前にアイツとは面談をしてみたのだが……良くない傾向だ。非常に良くない」

 

「イリヤが何か言ったのか?」

 

「私が“最近随分と戦い方が荒んでいるみたいだが、何かストレスを溜め込んでいるのか?”と訊いたら“任務に行くことである程度発散しているから問題ない”と。おおありだあの馬鹿者め……」

 

「……少し嫌な物言いだが、例えそうだとしてもアラガミをぶち殺してるならゴッドイーターとしては問題ねぇだろ」

 

「……本気で言っているのか?」

 

底冷えするような重たい声色で、睨み付ける。

 

その発言は、人事管理責任者としても一個人としても到底聞き流すことが出来るものでは無かった。

 

しかし、その怒りも次のリンドウの言葉で、アッサリと剥がし落とされる。

 

「姉上がどの立場で言っているかによるな。勿論、俺だって一人間として今のイリヤの状態を見るって話なら、非常によろしくないことくらい分かる。だが、あくまで上官として見るのなら別に問題は無い。アイツを“アラガミを殺すための駒”として見るならな」

 

衝撃を受けた。

まさか、リンドウからこんなクズの指揮官のような発言を聞くとは思っていなかったからだ。しかし、彼の言い分ももっともであり、落ち着いて受け流す。

 

「……無論前者だ。一人間としての私の意見であり、一人間としてイリヤの今の状態が良くないと言っている。これを見てみろ」

 

また溜息を吐きながら、ツバキはリンドウに薄いファイルを渡した。その中に挟まれていたのは、ここ最近のイリヤに関する戦闘成績や生活態度、健康状態を示したグラフで埋められていた。

 

「おぉ、こりゃ凄ぇな。ぐんぐん戦績が伸びてる」

 

「馬鹿者、そこも確かに目を見張るものがあるが、それが重要なわけじゃ無い。他のグラフや追記事項にも目を通してみろ」

 

リンドウは言われた通り、他の表や記載にも一通り目を通していった。

 

生活態度に関しては、概ね良好。むしろ、余りにも抑揚がなさ過ぎて逆に気味が悪いとすら言える。どんなに優秀で真面目な隊員でも、もう少し動きがある。

 

次に、健康状態。リンドウに医療関係の知識があるわけでも無いので、詳しい数値の意味などは理解できなかったが、睡眠中の脳波のグラフの形が段々変になっていっているのは何となく理解できた。健康状態も、あまりいい顔が出来る印象ではない。

 

補足事項や追記事項には、「コミュニケーションに対して消極的」、「周囲から孤立しがちの傾向あり」、「他の神機使い達からの心証が悪い」等と散々なことが書き足されていた。

 

その中でも、リンドウの目を引いたのは「任務の度に神機の破損の程度が酷くなっている」と言う記載だ。その筆跡は、彼自身もよく世話になっているリッカのものであり、ツバキの言っていた“戦い方が荒んでいる”と言う言い回しに得心いく。。

 

「……なるほど。こりゃあ、相当よろしくないな」

 

「分かるか?」

 

「さっき姉上が言っていたイリヤの話も、何となく意味が分かった。まぁ間違いなくアイツは…」

「任務に行くことで溜め込んでいるストレスを発散している。それも、徐々にエスカレートしている。それは、リッカの書き足しを見れば分かる」

 

「流石姉上」

 

感嘆の溜息と共に、懐のタバコに手を伸ばす。

 

「この部屋は禁煙だ。私がいる空間は全て禁煙だ」

 

「うへぇ、そりゃないぜ……。にしても、アイツが相当ストレス溜めてるのは分かった。だが、何で俺だ?」

 

「貴様、タバコと酒の配給を差し止めにするぞ」

 

「……悪いが姉上。俺が面倒を見切れるのは、あくまで一神機使いとしてのイリヤまでだ。そこから先は俺には手を出し切れん。それ以上のことは、隊長の仕事というよりカウンセラーの仕事だ」

 

「……あのことを引きずっているのか?」

 

「まぁ、それもあるっちゃある」

 

「……確かに教育期間の時点で私もアイツの扱い方……接し方や待遇を間違えたのも多分に影響しているんだろうな」

 

「……姉上。何が言いたい。アンタにしては珍しく歯切れの悪い物言いだぜ?」

 

「……」

 

ジッと、心の底を見抜くような鋭い視線に、ツバキは口を噤む。

 

「アイツが心配なのは分かる。俺だってイリヤのことは1人の部下として心配だ。できる限り守ってやりたい。だが、俺に出来るのは精々アイツのガーゼになることまでだ。それ以上に踏み込もうとすれば、あいつ個人だけじゃなく、アナグラ全体として拙い状態に陥りかねない」

 

「……変わったな、お前も」

 

「独善だけで動けば別なところで厄介ごとを招く。それで人が死ぬのなら、尚避けるべきだ……そう考える時点で、俺も相当冷たいな」

 

自嘲的な笑みを浮かべるリンドウ。

 

やはり癒えるものでは無いか、かつてのリンドウからはかけ離れた冷静で冷徹な態度に姉として悔しさを覚える。

 

「……あと、愚痴のついでに言っておくか」

 

「……何だ?」

 

「姉上がよく“上官として云々”って個人のトラブルに積極的に関わろうとしないがな、俺だってその言い訳は使えるんだぜ?」

 

「……皮肉か?」

 

苦しいことを言われた、その思いと一緒に重く苦々しくそう吐き捨てる。

 

彼女も理解しているのだ。自身の干渉で部隊の運用に支障を出すわけには行かない、その言い訳で自分の身を守り、下の者に嫌な役を押しつけていることを。

 

「愚痴のついでっつったろ。ただの独り言だ」

 

ばつの悪そうな口調でリンドウがそう付け足す。

 

(お前は根が優しいままなんだな、リンドウ)

 

今で尚変わっていないリンドウの根の優しさが、彼を苦しめていることをツバキは何となく察していた。

 

優しさが故に人を傷つけ取り返しのつかない事態に陥った。だから、その優しさから極力目を逸らすようになってしまった。そして、優しさを捨てきることが出来なかったからこそ、今も迷ってあるのだ。かつての出来事にも、今目の前にある問題にも。

 

「……ミコトは立ち直ったぞ?」

 

本当に自分は汚い。自己嫌悪に耐えながらも、その名前を出してしまう。

 

「……俺はアイツほど強くねぇってだけだろ。あと、ミコトを引き合いに出すのは卑怯だぞ姉上」

 

「っ……」

 

これ以上は、お互いの精神衛生上良くない。

 

「すまなかった。手間を取らせて悪かったな、戻って良いぞ」

 

沈んだ声のままツバキはそう言って、リンドウを開放した。

 

「……」

 

リンドウは、何かを言おうとして、それを言い淀んだまま部屋を後にした。

 

「……クソッ!!」

 

やり場のない苛立ちを、ファイルを床に叩きつけることでどうにか消化する。

 

叩きつけられたファイルは、イリヤに関する周囲からの所見が書き連ねられているページが開いていた。

 

そこには_____

 

 

 

“人殺しのゴッドイーターとは任務に行きたくない”

“殺人犯が何故? 信用できない”

“上層部の判断を疑う。どうして犯罪者を神機使いにしたのか? 他にも適合者はいただろうに”

“気味が悪い人間。どうして神機使いになれた?”

 

 

 

 

 

 

      

       “ここにいて欲しくない”

 




少し視点を変えてみました。

久々にシリアスな感じ……と言うよりやや鬱?

とりあえず頑張ってみます!!!

応援、コメントなどよろしくです!!!

楽しみにしていて下さいm(_ _)m
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