GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~   作:A-Gyou

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イリヤは死を覚悟せざるを得なかった。

そこまで追い詰められていた。


そして____



愚衆醜悪 中

(あんなの勝てる分けねぇだろ、クソッタレが……)

 

イリヤは今、廃寺エリアの中を文字通り逃げ回っていた。物陰に隠れ、上がった息を何とか落ち着かせようとする。

 

身体は傷だらけ、神機もほとんど使い物にならなくなっていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「………ヴァジュラか」

 

 

突如、イリヤ達の目の前に現れたヴァジュラ。

 

その姿を見た瞬間に、撤退の2文字が浮かんだ。

 

とてもじゃないが、今の自分とコウタだけでは勝ち目が無いどころか逆に喰われる。

 

“目”を見た瞬間にそう悟ったのだ。

 

「コウタ、逃げるぞ!」

 

迷う暇を与えずに判断し、行動に移そうとしたとき。

 

コウタは固まっていた。

 

「どういうことだよ、話が違うじゃんか……」

 

うわごとのようにそう呟く姿は、目の前にいる恐怖で固まっているそれでは無い。

 

「ちっ…!」

 

コウタの腕を掴んで、走り出す。

 

アイツ約束守る気なんか無かったんだ、これじゃあ死ねって言ってるようなもんじゃねえか、等と力の抜けた声で呟き続けている。

 

気になる内容だが、今のイリヤにとってはどうでも良い。それよりも先に逃げることが先決なのだ。

 

逃げ回りながら、ヘリに救援要請を送る。

 

「こちらイリヤ2等兵! 任務中にアクシデント発生!! 救援をよこしてくれ!!」

 

『了解。すぐにヘリを出す』

 

「早くしてくれ、相手は……どわぁっ!?」

 

追いついてきたヴァジュラの攻撃で無線機を壊された。

 

ヤバいヤバいヤバい!!!! 背後に迫るヴァジュラの気配に全身が警鐘を打ち鳴らす。

 

「これでも喰らえ!!!」

 

ポーチからスタングレネードを取り出し、ヴァジュラに向かって投げつける。

 

その効果が発動されたかを確認することも無く、さらに走り出す。

 

後ろから破裂音とヴァジュラの悲鳴が聞こえる。どうやら効果を発揮したようだ。これで少しの間時間を稼げる。

 

だが。

 

時間を稼ぐだけでは何の解決にもならない。

 

それは理解している。

 

だからこその判断であった。

 

「コウタ、ここから先はお前1人で逃げろ。エリアの離脱ルートは分かるだろ? ヘリも呼んだ。任務中断時用の回収ポイントだ、分かるな? 早く行け!」

 

「え、あ、でも」

 

生気を失った目と声で、無理だ、と訴えかけてくる。

 

「良いから行け! 手前ぇ男だろうが!!!」

 

イリヤの、恐らく彼は初めて聞くであろう怒声に、ようやく正気を取り戻した。

 

「……絶対死ぬんじゃねぇぞ!! 絶対だからな!!」

 

「分かってる! さっさと行け」

 

ちゃんと心配してくれる仲間がいたことに、場違いながら胸が熱くなる思いだった。

 

イリヤは、コウタに背を向けてヴァジュラがいるであろうポイントへと走った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その結果、満身創痍で逃げ回っているイリヤがいる。

 

奇襲的に何度か攻撃をしかけたが、斬撃はろくに通らない、銃撃も充分なダメージが期待出来ない、盾はその前に自分でぶっ壊した、と話にならない結果である。 

 

(遺書なんて書いてねぇぞおい)

 

本当に、本当に死ぬかも知れない。そう思う。

 

弱気な考えでは無く、事実として勝算が無いのだ。コンマ数パーセントの話になれば別だが、今はそんな奇跡的な確率論にすがれる状況では無い。

 

コウタを逃がしてから、少なくとも3時間以上は経過していた。

 

(救援は来ねぇのか? あぁ来るわけねぇか。俺嫌われてんだった)

 

肩に積もる雪が、体温を奪っていく。

 

(死にたくはねぇが……やりようがねぇしな) 

 

披露と消耗でろくに身体を動かすことも出来ず、思考でさえ正常かどうかが怪しい。とにかく、身体が重たい。思考も、そんなに長く続かない。

 

(とりあえず……場所を変えるか)

 

せめて、これ以上体力を奪われないために、彼はエリアの一番奥にある境内を目指した。

 

運良く、ヴァジュラや他のアラガミと遭遇することも無く中に入り込めた。

 

(身を隠せる場所は……)

 

壁に開いた穴を見つけ、その中に入り込む。

 

(ここで凌ぐしかねぇな)

 

肩に積もっていた雪に今更気付き、払い落とす。

 

彼は壁にもたれかかったまま、ズルズルと滑りその場に座り込んだ。

 

(助けてくれ……誰か……)

 

 

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______寒いよ……痛いよ

 

 

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「どうなっているっ!?」

 

ツバキはデスクを叩きつけるなりそう怒鳴った。

 

「いえ、確かに任務受注はされているんです!」

 

オペレーター___武内ヒバリはそんなツバキに怯まず、確かな事実を述べる。

 

「そんな馬鹿な話があるか! あのエリア付近の任務は軍曹以上の隊員しか受注できないはずだ!」

 

それでも、ツバキにはヒバリの言っていることがにわかには信じられなかった。

 

廃寺エリアは、現在ヴァジュラが確認されておりその排除が確認されるまでは任務受注に規制がかけられている。曹長以上の階級の隊員をリーダーとした軍曹以上の隊員による3名以上の部隊の編成をもって出撃を許可。

 

それなのに、新兵2人のチームで出撃など、普通ならあり得ない話だ。絶対に差し止められる。

 

そこまで考えが追いついた瞬間、ツバキは青ざめた。

 

(____まさか!?)

 

 

        

        意図的に仕組まれた?

 

 

 

 

そんな馬鹿な、とそれこそ笑い飛ばしたい。しかし、1度浮かんでしまったその予想は、あまりにも現実味を帯びていて、逆に決定的な否定が出来ない。

 

(いや、今はそれを考えるな。それよりも、救出が先だ)

 

出口の無い思考に陥りかけたところで、自分にブレーキをかけて冷静にさせる。

 

(現在救出に回せる部隊は……第5、6部隊。しかし、どちらの部隊も根本的に人員が足りていないし、そもそも到底ヴァジュラにかなうような部隊じゃ無い。やはり第1部隊の任務を中断させて救出に回すか……?)

 

「ツバキ大尉」

 

唐突に、呼び止められた。

 

そこにいたのは______

 

「ミコ……羽黒曹長か。何だ?」

 

「イリヤ2等兵の救出要員に加えて下さい」

 

「……駄目だ」

 

「何故ですか?」

 

「お前では力不足だからだ」

 

「誰も、ヴァジュラを討伐するとは言っていません。イリヤ2等兵を救出するだけなら問題ないはずですが?」

 

「そもそも、貴様に部隊を統率する能力があるのか?」

 

汚い。自分でもそう思う。

ミコトも、そろ言葉に何も言い返せない。何故言い返せないのか、何故言い返さないのか、その理由はお互いに知っている。

 

 

ミコトは他の神機使いから好かれていない。

 

 

本人のプライベートにまで関わるようなことを引き合いに出すことが、どれだけ卑怯なのかはツバキもよく知っている。

 

しかし、現実問題としてミコトには荷が重い。それも確かな事実であり、だからこそ行かせるわけにいかない。

 

(どうする? どうしたら良い!?)

 

徐々に混乱していく思考。

 

正常な判断を下せない。

 

その時だった。

 

「え? 何これ……?」

 

ヒバリの声だった。それは、自分の理解が及ばない範囲の出来事に困惑している声。

 

「どうした!?」

 

「輸送ヘリが1機出撃しました……進路は廃寺エリアです」

 

「何だと? 馬鹿な!? 今出撃できる神機使いはいないはずだ!!!」

 

 

意味不明の事態の連続に、アナグラの中に混乱が渦巻く。

その中で、ただ1人____百田ゲンだけが落ち着きを払っていた。

 

(……多分、アイツだな)

 

 

 

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ヘリのローターが大気を切り裂く。

 

「久々の外出かと思ってたんだがな……」

 

(あんな必死にせがまれちゃあなぁ……断れねぇな)

 

男は、ヘリポートで出会った初対面の少年に泣きつかれた瞬間のことを思い出した。何故か断れなかった。

 

しかし、彼にとってはどうでも良いことだ。

 

(久々に聞いた名前だったなぁ……)

 

ヘリのローターが大気を切り裂く。

 

クヒヒヒ、と耳障りな笑い声を載せて_____    

 

 

 

               ~続く~

 




何か自己満足の真っ最中です。

頑張ります!!

応援よろしくお願いします!!!
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