GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~   作:A-Gyou

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ピジョンズ・ベル児童園でアツミゲシを見つけてしまったイリヤ。

彼はその存在を黙認したのだが___


付け込む者、付け込まれる者

 

(……解せねぇ)

 

イリヤは支部に戻ってから、つい先ほど浮上してきた1つの疑問に対して、考え込んでいた。自室の中で考え込んでいるので、いくらでも溜息が吐ける。吐けるが、いくら溜息を吐いても、一向に納得のいく答えどころか、仮説すら出てこない。

 

ここまで彼を考え込ませている疑問。

 

 

 

それは___

 

 

 

(何であの長瀬って人はフェンリル嫌いなんだ?)

 

 

 

 

自分でもアホくさい疑問だと思う。だが、コレがどうにも引っかかって仕方が無いのだ。

 

 

外部居住区で生活するほとんどの人間は、フェンリルのことを、少なくとも快くは思っていない。身内にフェンリル関係者がいれば話は別だが、そんなもの外部居住区民全体の5%かそこらだ。そして、残りの95%前後の住民はフェンリルのことを好いていない。

 

理由は様々だ。

 

そこはかとない弱者切り捨ての被害を受けていたり、高い所得税が気に食わなかったり、治安部隊との折り合いの悪さだったり…………見つけようと思えばいくらでも見つけられる。フェンリルとはそう言う組織だ。

 

 

(あくまで“人類”を守っつってるだけで、“弱者”を守るとは一言も言ってねぇしな)

 

 

見捨てられた人々、切り捨て台の上に打ち上げられた人々がフェンリルを憎むのは、イリヤとしては凄く理解できる。かつて自分もそこにいたから。

 

 

だが、あの孤児院はどうだろう?

 

 

外部居住区の中で最も安全とされている保護特区に建てられている。これだけでも充分に恵まれている、と言える。あの地域は特に治安維持部門も目を光らせている場所で、精鋭部隊であるA管区隊第1中隊が警備を担当している。先の5%の住民がそこで生活しているからだ。フェンリル的にはそこは何としても守りたいのだ。防衛班のメイン出撃ゲートもこの地域にダイレクトに繋がるような場所に設けられているほどだ。感謝しろとは言わないが、そんな恵まれた環境の中にいてどうしてフェンリルを嫌うのか。

 

 

(フェンリルの目が光っているから?)

 

 

イリヤはピジョンズ・ベル児童園の花壇の中にそこはかとなく植えられていたアツミゲシを思い出して内心で鼻で嗤う。いくら警備を厳重にしている、と言い張っていてもあの程度を見逃すようでは精鋭の名が廃るというものだ。

 

だが、長瀬がそのことを警戒しているならばフェンリルを嫌っているのも辻褄は合う。いつ違法植物栽培取り締まりの罪で治安部隊に捕まるのか、それを怖れているならば。

 

 

だが、違和感がある。それが何に由来しているのかは分からないが、とにかく納得ができない。

 

 

(ん~、何か気持ち悪ぃ)

 

 

そこで、イリヤはあることに気になった。

 

 

 

ベッドから起き上がってノルンを開く。

 

 

 

(……まさかなぁ)

 

 

 

ここ数年間で、極東支部の中で起きた事件らしい事件を全て調べていく。

 

 

(………当たってたらやだなぁ)

 

 

調べ上げた事件は総じて12200件弱の12172件。年間3000から4000件の発生率だ。最後に更新された事件は、ホームレスの暴動事案だった。発生した場所がB管区内だったので、彼の家族が被害に遭ったアレでは無い。ちなみに、イリヤが捕まえられたあの事件は12121件目だった。この短い期間で良くもまぁこれほど更新されたものだ、と居住区の治安の悪さに逆に感心する。

 

 

(さて、あるかどうか………)

 

 

出来れば、1件でも良いからあって欲しい、と願いつつ暴動事案意外の事件を確認していく。

 

 

組織内での収賄、内外問わず詐欺、同じく性犯罪、内部で起きた殺人………

 

 

居住区暴動事案以外の事件5263件を全て調べても、とうとう彼があって欲しいと願っていた事案は見つからなかった。

 

 

(………おかしい)

 

 

彼の頭の中で浮かんできたキーワード達が、おぼろげに繋がっていく。

 

 

 

(………ありえねぇ)

 

 

 

何度見ても“ソレ”は見つからない。

 

 

 

(………ど畜生が)

 

 

 

彼が探していた事件。

 

 

 

それは____

 

 

 

 

 

 

___麻薬取り締まり事案が1つも無い。

 

 

 

 

 

 

ここで、1つの矛盾が出てくる。

それは、保護特区に精鋭を置きながらも、あのアツミゲシを見つけ出せなかったこと。調べた事案の中には、保護特区で起きたものもあった。そして、治安維持部門はそれらに対してはどこの管区隊よりも迅速かつ完璧に対処解決してきた。そこまでの実力がありながら、どうしてそんなことを見落とすのか。

 

 

 

 

考えられる可能性は、フェンリルの黙認。

 

 

 

 

そう考えると、数年間のうちに麻薬取り締まり事件が発生していない理由もわかる。つまり、もみけしだ。

 

 

 

 

思い返せば、イリヤもかつてそれに呑まれかけた時期があったのだ。それにも関わらず、事案になっていないことそのものがおかしいのだ。

 

 

(………リアルに嫌な感じだな)

 

 

ある程度キーワードが固まってきたところで、少し情報を整理してみる。

 

ピジョンズ・ベル児童園はアツミゲシを栽培していた。そして、長瀬はアツミゲシの存在がバレたとき、明らかに動揺していた。つまり、自分がやっていることが悪いことであると自覚しているのだ。

何故ソレが悪いと思うのか? アツミゲシはアヘンの原料であるから。そして長瀬の態度は、ソレを買い取る存在、つまり麻薬使用者がいるということを示唆している。イリヤ本人、ソレが世の中に出回っていることをその身で体験したから、間違いない。

 

次に、麻薬取り締まり事件が発生していない。必ずどこかにいるはずなのに、一切検挙できていない。栽培している場所の一部も、支部のお膝元にあるにも関わらず、だ。それに、他の居住区に行けば麻薬中毒者の死体も見つけようと思えば見つけられる。特に、風俗街に行けば。それなのに、治安維持部門は一切手を出そうとしていない。

何故? 検挙することによって、内部にとっても何かしら不都合なことが起きるから。

 

 

(となると、だ)

 

 

彼の考えはあるところに行き着く。

 

 

(アヘンに限らず、何かしらの麻薬がフェンリル内部にも出回っている……?)

 

 

そう考えると、長瀬がフェンリルを嫌っている___と言うよりかは警戒している理由も何となく見えてくる。

 

 

もとより、あの孤児院でアツミゲシが栽培されているのを支部___否、内部の一部は知っている。そして、アツミゲシからアヘンを生産し、ソレを売る利益の1部を孤児院に流す。その実態を知っている人物達は、バレたら拙いことになるのは分かっている。だから、関係のある者に釘を刺す。それも、かなり危険な釘だ。

 

『お前等、絶対に悟られるなよ? 消すぞ?』

 

 

そう考えると、あの時長瀬が動揺した理由も分かる。イリヤがアツミゲシの存在を明かせば、あの女が消される。彼女はそれを怖れたのだ、となると綺麗に納得できる。

 

 

 

(ん……? いや待て)

 

 

 

イリヤは、もう1つの可能性を見つけた。可能性を見つけ、そしてそれを前提にキーワードを繋げていくと。

 

 

(………なるほど)

 

 

新しい、そしてより悪質な仮説が出来上がってしまった。

おもむろ、こっちの方が可能性は高く、そして全体的に見ても合理的だ。

 

 

 

(………仮にそうだとしたらウチはかなり腐った組織ってことになるな)

 

 

 

イリヤはふぅ、と溜息を吐いて閲覧しているファイルを閉じて、ノルンから離れ、再びベッドに仰向けに倒れ込んだ。

 

 

 

 

右手を天井に向けて突き上げる。

 

 

 

 

(さぁて、どうしたものか)

 

 

 

 

イリヤは赤黒く光る腕輪を睨み付けて、好戦的な笑みを口元に浮かべていた。

 

 





何で少し推理ものになってるんだ?

極東支部の犯罪件数と言うか犯罪密度が高いのは気にしないで下さい(-_-;) むしろ、それほどに腐敗した社会だという設定なので

次はどうなる!?
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