GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~   作:A-Gyou

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一連の麻薬騒動から解放されたイリヤ。

さて、今日は____


こういう日もある

「っだぁ!…………きちぃな……!!」

 

イリヤは、神機使い用の戦闘訓練室に放り込まれていた。

放り込んだのはツバキ教官で、曰く「あれだけ休んでおいてただで済むわけ無かろう」とのことだった。正論である。否、ツバキが言うから全てが正論に聞こえるだけなのか。

 

正直、どっちでも構わない。

 

 

周囲はダミーアラガミで囲まれている。

 

少し気を抜いたら、さっきまで4体だったのが5体、6体と増えていく。

 

 

「あんの鬼畜年増ぁぁああっ!!!!!」

 

 

訓練内容は、単純。

 

  ・・・・        ・・

出現しているダミーアラガミを全て討伐しろ。

 

ただそれだけ。

 

ただし。

 

ダミー達は40秒ごとに1体ずつ出現する。そして、ダミーの表面の強度は本物のオウガテイルと同等の物にアップグレードされている。

 

最初に出現したのは3体だった。

 

最初の3体を駆逐した頃には、新たに3体のダミーが出現していた。その3体を駆逐した後には、4体のダミーが………と、気が付けばイリヤは終わりの見えないループにはまり込んでいた。

 

もう何体のダミーを倒したのかも分からなくなっていた。感覚で言えば、既に3桁は倒している気がするが、正確な数字は数えていない。

 

数える暇が無い。

 

「___うりゃっ!!!!」

 

しかし、何体倒したかは数える気すら失せていたが、敗北条件だけは覚えている。

 

これも単純で、死亡判定の攻撃を受けたとき、その時点でのダミーの出現数が10体を超したとき。

 

            ・・・・

腹が立つことに、イリヤはそこそこ神機使いとしても能力があるから、死亡判定の攻撃を受けることも無ければ、ダミーの数もそこまで増やさせることも無い。しかも、彼の実力だとその時点で出現しているダミー全てを撃破することもなかなか出来ない。

 

   ・・・・

何せ、そこそこの実力で止まっているから。

 

 

そして気のせいかも知れないが、ダミーの出現レートが心持ち早くなっている気がする。

 

 

「っなろぉ!!!!」

 

 

始めたばかりの時は、我武者羅にダミーへ飛び込んでいたイリヤも、今では自分から攻めるよりかは相手の攻撃に対してカウンターを決めに行く戦法に変わっていた。

 

 

呼吸が乱れ、鼓動は早く、流れる汗は既に味を失っている。肺が、痛い。

 

 

「クッソ……!!!」

 

 

イリヤが毒づいている間にも、ダミー達は無慈悲に増え続ける。

 

終わらせたくても終わらせられない。無論、わざと負けるなんてふざけた真似をするつもりも無い。どこか生真面目なイリヤの性格を逆手に取った、ある意味で究極の責め苦とも言える。

 

「こんにゃろぉ……!!!」

 

シノをガンフォームに変形させて、レザーをダミーの土手っ腹へ確実に撃ち込む。

 

7体に増えていたダミーが6体に減る。

 

さらに他のダミーにも銃撃を加えて、可能な限り数を減らす。

 

6体から5体。5体から4体。そして、弾が尽きる。すかさずブレードフォームに切り替えて、目の前のダミーに斬りかかる。消耗した身体では、充分な跳躍力も得られず、一撃目はダミーの表面を浅く削っただけに留まる。毒づきながら、更に1歩を踏み込んでシノを横薙ぎに振るう。これも、筋肉がパンパンに張った腕の力では振り切れず、刀身がダミーの身体に食い込んだ状態で止まる。

 

「っしゃらぁ!!!!!」

 

無理だと判断した瞬間に、腕の力を緩めてシノを捕食形態へ。ボディの真ん中を綺麗に喰い取られたダミーはそれで絶命。

 

残り、3体。

 

バースト状態に入ったイリヤは、またシノをガンフォームに変形させる。

 

わざわざ疲れるような真似をする必要など、無い。

 

「消えろっ」

 

銃声が轟く。

 

3発ごとにローリングで射撃位置を変える。

 

遠距離線の鉄則だ。

 

いくら疲れていようと、その鉄則だけは守る。で無ければ、死ぬ確率が上がる。

 

 

3体が2体に。2体が1体になった。

 

 

バースト状態は解かれていたが、まだOPは半分以上残っている。

 

(___とどめだっ)

 

残りのOPを全て使い尽くす勢いで銃撃を放つ。野太い尾を引いた光弾が次々とダミーに直撃する。ダミーのフェイスパーツが削れ、ボディに穴が穿たれ、足が千切れ飛び、そして駄目出しの1発がダミーをアラガミの姿から肉塊へと変貌させた。

 

 

___ダミー絶命。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ………終わっ、た……?」

 

 

 

息も絶え絶えにそうぼやいた瞬間だった。

 

 

 

視界に影が差した。

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

反射的に上を見上げると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダミーアラガミが、その大きな口を開けて上から襲いかかってきていた。

 

 

「なっ!?」

 

 

脊髄反射的な速度で防御姿勢を取る。

試作第2世代神機___シノならではの特権だ。

シノの第1の特徴は何と言っても、右側で常に展開された状態のシールドの存在なのだ。

 

 

だが、完全に消耗しきったイリヤの身体は、ガードしたときの衝撃にすら耐えられ無かった。身体のバランスを崩し、そのままダミーに組み伏せられる。

 

右肩と左腕に重みを感じるのは、そこをダミーに踏みつけられているからだ。

 

押し倒された衝撃で神機は彼の手から弾かれていた。   

 

 

 

 

 

 

そして_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『イリヤ2等兵、死亡判定___まったく、やっと死んだか。予想以上に長く保ったな』

 

 

 

 

ルーム内のスピーカーからツバキの声が響く。

 

 

 

 

 

 

 

イリヤは、青ざめた。

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ、イリヤ2等兵。私は何も聞いていなかったぞ。ああ、私は何も聞いていない。貴様がダミーとやり合っているときにどんなことを口走っていたのかなど、全く知りもしない。アラガミの出現レートだって弄っていないさ。全く、これっぽっちも!!!』

 

 

ツバキにしては珍しいくらいに大げさな抑揚のしゃべり方を耳にした瞬間、あこれは死んだ、とイリヤは本能で感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後イリヤは、本当にゲロを吐くまで、ルーム内でダミー相手にひたすらに神機を振り回す羽目になった。

 

ゲロとは言っても、ただの胃液しか出てこなかったが。それで、ようやくイリヤは鬼畜年増___もといツバキの拷問級のトレーニングから解放された。

 

イリヤは気分の悪さに耐えきれず、ルームを出てすぐのトイレへ駆け込んだ。

 

 

 

「……死ねる……体力的に……マジで…………うっ!?」   

 

 

 

死に体でそんなことをぼやいていると、また吐き気が込み上がってきた。大便器に顔を突っ込んで、胃袋からせり上がってくる“衝動”を解放する。

 

衝動がおさまる頃には、イリヤは全身がプルプルと痙攣していた。筋肉の悲鳴や、消化器系が訴える苦痛に由来している。

 

口の中に残る、胃液特有の苦酸っぱさと生臭い臭いを、水でゆすいで取り払う。

 

ついでに、少しだけ水も飲んでおく。ここでガブ飲みしたら、今度こそ倒れかねないので、量は自重する。水は何だか消毒薬の臭いがしていて、少なくとも美味しくは無かった。

 

 

ほんの少しの水分を補給した後、イリヤはトイレを出て、すぐ近くのベンチに座り込んだ。

 

 

(間違ってもあんなこと言うんじゃ無かった)

 

 

等と考える。所詮は後の祭りであることには変わりないが、教訓にするくらいはしておかないといけない気がしたのだ。

 

 

壁に背中を預けた状態で、深く、ゆっくりと呼吸をする。すると、全身のいたる部分から軋みという名の悲鳴がイリヤの脳味噌めがけて突撃してくる。

 

熱を持った、全身の筋肉。特に、両腕と両肩、僧帽筋とももの筋肉がひどい。感覚がぼやけている。力を入れようにもなかなか入らない。例えるなら、限界まで懸垂をやった後握力がガクンと落ちているときの、あの感覚だ。

 

そこはかとなく膝にも負担が溜まっているようで、座っているにも関わらず、カタカタと脚が震えている。

 

そんな疲れ切った身体には、壁の冷たさが心地よく感じられるのも致し方ないことなのだろう。

 

イリヤはいつの間にか意識を手放して、浅く寝息を立てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____ピトッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

額に冷たさを感じて、イリヤは目を覚ました。

 

「ん……んぅ?」

 

寝起きの少ししょぼついた視界に、何かよく分からないが茶色がメインの円柱状の“何か”が映っていた。

 

 

「や。起きた?」

 

 

ぐしぐしと眠たい目をこすりながら、声の主を探す。何度かまばたきをして、焦点を合わせる。

 

クリアになった視界に入ってきたのは___

 

 

 

「…………残ねンごぉっ!?」

 

 

 

かなり強烈な衝撃がイリヤの脳天を貫いた。

 

別に何も、残念と口走ろうとしたわけでは無い。断じて違う。残念な胸、等と誰が言うものか。

 

「寝起きの一言にしては随分とケンカ売ってるね? イリヤ君?」

 

彼の目の前にたっていたのは、ある意味一番神機使いの命を握っている女神サマ___楠リッカだった。彼女の手には、何かは知らないがスチール缶が握られており、恐らくさっきの衝撃もアレでどつかれたのだろう、と容易に想像が付く。滅茶苦茶痛かったから。

 

「人が何か言いかけてるときにどつく方がよっぽどケンカ売ってるように見えるんだが、そこんところは?」

 

いまだに痛みを訴える頭頂部をさすりながら問う。リッカを見上げる視線は、少しだけ恨めしげだ。

 

「絶対その言いかけた言葉って失礼な内容だよね?」

 

「……ナンノコトダカサッパリダナ」

 

と言いながら視線を逸らす。

 

「酷い棒読みだね」

 

何故か分からないが、イリヤは、これが俗に言うデジャヴなのか、と悟った。

 

隣座るね、と言いながらリッカはイリヤの左隣に腰を下ろした。脚を伸ばしてブーツの爪先を軽く左右に振りながら、手にしていたスチール缶のタブを開ける。

 

開けた瞬間に広がった匂いを嗅いで、イリヤは酷く怪訝な表情になった。決して悪い臭いでは無い。おもむろ良い匂いとさえ言える。

 

そのはずなのだが。

 

どうしても、それを素直に受け入れることが出来ないでいた。

 

「ぷは~、美味し」

 

「美味いのか、それ?」

 

幸福そうな表情を浮かべているところに、水を差すような、何とも言えない居心地の悪さを自覚しつつも彼はやはりそう訊いてしまった。

 

「え? あぁ、うん。美味しいよ、すっごく」

 

それなのに、リッカは自信満々な様子で、嬉しそうな口調でそう返してきた。

 

「そう、か。分かった」

 

「イリヤ君も飲んでみたら? 冷やしカレードリンク。お勧めだよ」

 

イリヤは、本日2回目の衝撃を受けた。今度は直接脳味噌を揺さぶられた気分だ。

 

冷やしカレードリンク? 何ソレ? 飲み物? 本当に飲み物なの? ネーミングの時点で確実に人を選ぶような飲み物を、イリヤは無条件に信じることが出来ない。

 

そして、隣に座るリッカの眼差しは、まるで新興宗教を盲信し布教せんとする信者のそれにも似た、凄まじく期待に満ちたものだった。

 

イリヤは、少しと言わず、割とマジで退いた。

 

だが、是非、と本当に善意しか含んでいないその眼差しをぶった切れるほどイリヤは冷淡になれなかった。

 

イリヤという男は、純粋な眼差しと、無邪気な押し、この2つにはとことん弱いのだ。

 

 

相手が誰であろうと。

 

 

仕方ねぇ、と半ば諦めた心持ちでベンチから腰を上げて近くの自動販売機のもとへ。神機使い専用のIDカードを使って、以外と高価だった140fcと引き替えに冷やしカレードリンクを購入。

 

ゴトン、と音を立てて落ちてきたスチール缶を取り出して、ベンチに戻る。

 

ベンチでは、期待に輝いた眼差しを維持し続けていたリッカが、まだかまだかと言わんばかりに待っていた。

 

さっきと同じ場所に座り、そして握っている茶色がメインカラーのスチール缶___冷やしカレードリンクを睨み付ける。気分としては、勝てるかどうか分からない相手にステゴロで挑むときのような感じだ。

 

えぇいままよ! 

 

ガラにも無く半ばやけくそになってタブを開けて、冷やしカレードリンクを一気に煽った___

 

 

 

 

「! ………?」

 

 

 

 

 

どうかな、と言いたげな瞳のリッカ。

だが、イリヤはどうとも言うことが出来なかった。不味くは無いのだ。間違いなく。だが、美味いと言うにも抵抗がある。

 

強いて言うならば。

 

 

「この味で、温かかったらな……」

 

 

そう、冷たいから抵抗があるのであって、これが普通にコーヒーみたいな温度だったら文句が無いのだ。何度も言う、冷たくなければいけるのだ。

 

 

「今までの中でキミが1番冷やしカレードリンクのことに理解を示してくれたよ……」

 

 

そう話すリッカの口調は、どこか沈んだものだ。彼女は言外にこう言っているのだ。イリヤ以外の全員がこの飲み物に対して拒否を示したのだ、と。

 

 

「たまに飲むくらいならいけるな、コレは。だが、いっぺんにガンガン行くのは流石に無理だな」

 

 

とりあえず、正直な感想を言っておくことにする。ちなみに、ガンガン行ったら胃もたれを起こしそうな予感がするのだ。何せカレーだ。イリヤの予感もあながち間違いでは無い。

 

 

「冷えているからこその冷やしカレードリンクなのになぁ……」

 

 

少しつまらなさそうな口調で呟きながら、何かを期待するようにチラチラとイリヤに視線を送るリッカ。

 

「…………」

 

イリヤにしてみれば、凄く居心地が悪い。悪いことは何一つしていないはずなのに、何故か罪悪感を感じてしまうのだ。

 

そして彼は、とうとうそのプレッシャーに負けてしまった。故に___

 

 

「ま、まぁ、飲んでいる内にクセになるだろうな。あぁ、そんな気がする」

 

 

と口にせざるを得なかった。

 

それを言ったときの、隣に座るリッカの嬉しそうな表情に、まぁ良いか、と思ってしまうのはイリヤが優しいからなのかそれともヘタレなだけなのか。

 

 

そのまま2人は少しの間、世間話___という名の神機に関するうんちくをお互いに交わすのだった。

 

イリヤという男は、若干の神機ヲタクなのだ。     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばさ」

 

「何だ?」

 

「さっきツバキ大尉と擦れ違ったんだけど、あの人、ほうれい線がどうだの目尻がどうだのって呟いてたんだけど、イリヤ君何か心当たりある?」

 

「………シラナイナアソンナコト」

 

(あ、何か言ったんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ちなみに、これが後にイリヤの人生を大きく変える出逢いであるが、それはまた別の話~

 

 

 

 

 




ネタの振り方があざとい感じがする……

もっと技術を磨かねば………

頑張ります!!!!
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