GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~ 作:A-Gyou
揃ったピースはあるべき形を目指して動き出す
それが例えどんな過程であろうとも
形をなすその日まで、ずっと____
不穏な噂を耳にした数日後の朝だった。
「本日付でこちらに所属することになりました。アリサ・イリニーチナ・アミエーラです」
イリヤを始め、ツバキによりエントランスロビーに集合させられた第1部隊のメンバーの目の前には、そう名乗る少女が立っていた。
青く冷たい瞳。肩まで伸びた銀色の髪。ともすれば無機質にも見える色素の薄い白い肌。
一言で言えば、美しい方の少女だ。
「女の子ならいつでも大歓迎だよ!」
コウタが、恐らく本音半分相手の緊張を解く心意気半分のいつもよりも更にやや明るめの口調でそう言う。
本音は下心に塗れているが、それでも相手を気遣う優しさが半分も入り交じるあたりが、コウタという少年の無邪気な優しさだ。
___だが
「………良くそんな浮ついた考えで、今まで生き残れてきましたね」
一瞬、場の空気が凍り付く。
侮蔑の色を濃密に含んだ、相手の神経を逆なでするくらいの冷たい声。それも、自分は正しいと本気で信じている類いの、芯の通った声だ。
そんな中。彼女のその傲慢とも言える物言いに、イリヤは密かに眉をよせた。それは、勿論その態度に対する苛立ちも含まれている。だが、それだけでは無かった。彼の中で、何かが引っかかるのだ。
頭の中によぎる思いは、“そんなことを言うような奴じゃ無いのに”と言う、何故か彼女を知っている体の変な直感じみたものだ。
事実、イリヤは彼女を知っている気がしているのだ。それも、過去にどこかで会ったことがあるとかそう言うのでは無く、もっと身近な存在として知っていた気がする、と言うスッキリしない宙ぶらりんのもの。
しかし、彼の記憶の限りでは、彼女に会ったことなど一度も無い。
「彼女は、実戦経験こそ少ないが演習などでは優秀な成績を修めている。各人、くれぐれも抜かれることの無いように精進しろ。アリサはしばらくの間リンドウの指揮下に入れ___それから、イリヤ2等兵」
ツバキの自分の名を呼ぶ声に、イリヤは現実に意識を引き戻された。無論、それを悟らせるようなことはしない。
「はい、イリヤ2等兵」
「貴様は、極東支部において唯一新型の先輩だ。彼女をサポートしてやれ」
「……了解」
面倒臭ぇ、と本心では思うものの。それでも、何故か拒否するという選択肢は出てこなかった。それが上官の命令だから、なのかそれともごくごく個人的な感情に由来しているのかは、イリヤ自身にも分からないが。
ただ、どっちにしろ彼女を放っておけない、と言う感情が介入してきたことには変わらない。
その後、命令下達が終わり場は解散となった。
イリヤとアリサはリンドウの指揮下で任務へ出撃。コウタは防衛班と合流して、巡回任務。サクヤ、ソーマは即応大樹要員に指定。
「イリヤ、先に任務受注手続き済ませといてくれ。名義は俺の名前で良い」
俺はちょっと用事済ませてから合流だ、とリンドウは言い残してその場を後にした。
「___あなたが極東唯一の新型の人ですか?」
いつの間にか周囲の人間がどこかへと消え、2人きりになったとき、彼女___アリサが話しかけてきた。
「……ああ。つっても、俺が使ってるのは正統派じゃねぇがな」
「あのコウタとか言う人よりかは真面目そうで良かったです。……あの、名前は?」
「イリヤ。イリヤ・アクロワ。アンタと同じロシア人だ。呼ぶときはイリヤで構わねぇ。よろしくな」
彼が自分の名を名乗ったとき、アリサは怪訝な顔をした。それに気付かないようなイリヤでは無く、どうかしたか、と表情と仕草で訊く。
「いえ、あの……あなたは男の方、ですよね?」
「……俺が女に見えるか?」
「黙っていれば割と見えなくも無いです」
その評価に、イリヤは少し不愉快になるがそれはこの際置いておく。それよりも、どうしてそんなことを訊いたのか。彼はそっちの方が気になった。
「いえ、その……何だかとても女性的な雰囲気だったので、つい……変なことを訊いてすみません」
ぺこりと頭を下げる彼女に対して。
咄嗟に気にするな、とは言えなかった。
「………とりあえずよろしくな」
その場しのぎのために、無理矢理話を切り落とす。脈絡も無く、唐突に手を差し出す。
「……新型同士とは言えあまり気安い態度を取らないで下さい」
思いの外はっきりとした拒否。結局、ぎこちなく差し出した手は握り返されることも無く不格好に引っ込めることとなった。
(……感じ悪ぃな)
流石のイリヤも、正直にそう感ぜざるを得なかった。アリサという少女は、それほどに無差別に棘を突きだしているのだ。
それでも。
敵じゃねぇなら構わねぇか、とばっさりと切り捨てられるあたりがイリヤの冷たさであり、そして強さでもある。今回もその彼の強みをいかんなく発揮することで、アリサに対する関心を必要最低限に削る。
今までもそうして、自分を守ってきた。
そして、イリヤとアリサの間にほんの僅かな壁が張り巡らされる。それは、きっとイリヤにしか気づけないほどに薄く、そしてやたらに強固な壁だ。
(ま、任務中は変なこともしねぇだろ)
気まずい沈黙の中で、イリヤはそう願っていた。
本当にお久しぶりです。
生きてましたよ、生きてましたとも!
ここ最近、仕事が過剰に忙しすぎて全然執筆すら出来ませんでした(TOT)
次の更新は出来るだけ早めになるように努力します