GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~   作:A-Gyou

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人の背後は見えにくい 後

 

イリヤとリンドウが教会前の広場を、フォーメーションを組みながら索敵前進しているときだった。

 

「ま、待って下さい!!」

 

少し息を切らせたアリサが後ろから追いかけてきた。恐らく、何かしら動物に見える雲を見つけたは良いが、合流するべき自分達がどこにいるのか分からなくてあちこち駆け回ったのだろう、とイリヤは予想する。その正否自体は彼にとってどうでも良いことだが。

 

「お、どんな雲を見つけたんだ?」

 

イリヤの内へこもっていく思考とは全く別に、リンドウが興味本位で彼らに追いついたアリサに訊ねる。

 

「えぇと、アレです……高級毛皮の穴を掘って地面で生活してる……」

 

すぐに息を整えた彼女は、次に自分が見つけた雲がどの動物に見えたのかを思い出そうと頭をひねらせる。

 

「……モグラのことか?」

 

イリヤが、アリサが口にしていたキーワードからふと思い当たった名前を何の気無しに口にすると。

 

「そう、それです!!」

 

食いつかんばかりの勢いで肯定する。

 

その勢いに若干引き気味になるイリヤであったが、不意に自身の背中に得体の知れない感覚を覚え、唐突に戦闘態勢に構える。

 

「え?」

 

イリヤの態度の急変ぶりについて行けないアリサだが、リンドウは違った。

 

「正解だ、新入り1号」

 

リンドウの眼差しも、鋭く細められている。

 

ようやく2人が敵の気配に気付いたのだとアリサは悟り、同じく神機を構える。

 

イリヤは、今はもうビリビリと殺気を感じる程に明らかになった敵の気配、その出所を探る。

 

どこにいる......? 頭の中でそう思った時。

 

不意に、周囲に影が差した。

 

誰よりも先に反応したのは、ベテランであるリンドウだった。

 

「お前ら、散れ!!」

 

イリヤとアリサは、その声に反射で反応しその場を飛び退く。

 

刹那、ズドンと言う何か大きな物が地面に打ち込まれたような震動と共に砂埃が周囲を包み込む。

 

目をこらして、砂埃の中心部を睨み付ける。

 

(出てきやがれ…...!)

 

神機の柄を握りしめる。

 

ぼんやりと黒い影が滲み出てきたときだった。

 

「!! アリサ! 避けろ!!!」

 

影が動くのとリンドウの警告はほぼ同時だった。

 

すると、掠め切られるような鋭い風と共に宙を舞う砂埃が一気に消し飛ばされる。そこから間髪いれずに、響くかん高い防御音。

 

「くぅっ……!!!」

 

衝撃の強さにアリサが呻く。

 

イリヤとリンドウは、アリサにも気を配りつつその後方で悠然と構えている敵___シユウを視線で捉える。

 

シユウは、まるでマントについたほこりを払う仕草のように大きな翼をばたつかせる。

 

「俺とイリヤが切り込む。アリサはそれをバックアップしろ。何、ヤバいと思ったら隠れりゃ良いさ」

 

リンドウが、いつもと変わらない気さくな調子で指示を飛ばす。

 

さあ来い、と言わんばかりのシユウ。

 

それを狩り殺さんと気迫を研ぎ澄ませてゆく3人。

 

熱い砂を孕んだ風が、彼我の間を吹き抜ける。

 

「......来るぞ」

 

 

 

 

何の前触れも無く、火蓋は切られた。

 

 

 

 

先手を切ったのはシユウ。遠い間合いを、滑空で一気に詰めてくる。狙われたのはイリヤ。

 

「ふんっ」

 

展開した盾に、予想できないほどの衝撃が走る。

 

防御、成功。

 

しかし、それ以上に思ったよりも大きくスタミナを削られる。

 

(クソ重てぇな、野郎ォ)

 

両腕と脚が、じんじんと痺れる。

 

盾による防御で勢いを殺されたシユウは、イリヤから6メートルほど離れた場所で体制を整えていた。

 

普通の人間にしてみれば充分に遠すぎる間合いだが、ゴッドイーターの常人を遙かに上回る身体能の前には近閒も良いところ。

 

(お返しだ!!!)

 

イリヤが斬りかかる。

 

姿勢を前傾に倒し、一気に距離を詰め、スライドステップを踏んでシユウの足下を一瞬ですり抜ける。すれ違い様に、シノのブレードパーツ“ギルティーナ”を横凪に振るい、シユウの表面を削る。

 

手応えは、やはり浅い。

 

(もういっちょ!!!)

 

すぐに反転して、再度シユウへ急接近。

 

1擊目と同じ要領で、シユウに切り込む。

 

シユウの注意が、イリヤに張り付く。

 

イリヤは、背中に感じる殺気の強さで自身が狙われていることを悟る。

 

 

                      

しかし、それは彼にとっては多少問題があっても彼等にとってはむしろ思惑通りの展開だ。

 

 

 

「おら! 背中がガラ空きだっ!!」

 

シユウの死角に入り込み続けていたリンドウが、ここぞとばかりに飛びかかる。

 

その手に握るのは、ブラッドサージ。

 

獲物の血を潤滑油とする、神を喰らうチェーンソー。

 

その刃が、シユウの翼の付け根を深く切り裂く。

 

アラガミの体液が弾けるように咲き、リンドウを赤黒く濡らす。

 

着地と同時に、更にシユウの脚の裏側を切り刻んでいく。金属板を切りつけるような手応えが、柄を通してリンドウに伝わる。

 

だが、彼は手を緩めない。

 

むしろ、切りつける速度を増していきシユウをその場に釘付けにする。

 

「オラオラオラァァア!!!!」

 

手応えの中に、肉を断ち切る感触が混ざり出す。

 

「イリヤ、やれ!!」

 

リンドウはそう叫ぶと同時にシユウから一瞬で距離をとる。そして瞬きの間も無く、イリヤがシノを振りかぶりボロボロに崩壊したシユウの脚部にとどめを刺す。

 

破壊音。

 

シユウ、ダウン状態。

 

片膝立ちの状態で蹲るシユウを、彼等が何もせずに眺めているわけも無く。

 

「アリサ、イリヤ!! ぶっ放せ!!!」

 

リンドウがすかさず2人に指示を出す。

 

がなり立てる銃声。

 

アリサのアヴェンジャー、イリヤのオーカ・ニエーバから数多の殺意を乗せた光が吐き出される。

 

それらは、1つも外れること無くシユウへと吸い込まれる。削られる、敵の表層。確実に減じていく敵の体力。

 

イリヤの頭の中で、そろそろ弾切れになると、感覚が警告を出す。

 

考える間もなく、ガンフォームからブレードフォームに切り替えてシユウへ肉迫する。

 

突然射線上に躍り出たイリヤにアリサは、動揺しつつも射撃を中断。舌打ちをしつつも、同時に彼が何をしようとしているのかを悟り、彼女も神機を変形させる。

 

 

 

イリヤは、ホールドトラップを構えていた。

 

 

 

「……死ぬまで痺れとけ」

 

未だ蹲ったままのシユウに冷たく言い放つ。

 

刹那、シユウの身体に稲妻が走りそして痙攣を起こす。

 

それを確認した瞬間、3人は一気にシユウに取り付き有機的な連携を以てその身体を切り刻んでいく。

 

赤黒い飛沫が舞い、刃にこびりついた肉片が飛び散り、確実にシユウの生命を刈り取っていく。

 

 

 

「これで終いだ!」

 

 

とどめの一撃は、リンドウによる捕食だった。

 

ことごとく剥がされたシユウの表面装甲は、肉の中に埋まるコアを守ることも叶わず、結果呆気なくリンドウによって抜き取られてしまった。

 

コア___シユウをシユウたらしめていた核が無くなり、抜け殻は風化した砂の城のように輪郭を崩していく。

 

彼等に与えられた任務は、達成された。

 

イリヤは、青い空を見上げつつ深呼吸をする。

 

(今日はよく動けた方、だよな...)

 

心の中で、そう呟く。

 

その時だった。

 

「イリヤさん」

 

背後からアリサの声。

 

「あ?」

 

振り向くと同時に。

 

乾いた音と、少し遅れて右頬に痛み。アリサに頬を張られたのだと理解するのに、数秒を要した。

 

「少しはまともな神機使いだと期待していたのですが、全く失望しました。あなた、旧型使い以上に足手まといです」

 

本気で冷たく言い放たれると、そもそも言葉に温度すら感じなくなるのだとこのときイリヤは初めて知った。

 

遠くに、迎えのヘリのローター音が聞こえたが、イリヤには更に遠くのように聞こえていた。

 

 

 




何とか書けた…

キャラクターシート残しといて良かったと、今痛感しておりますww

うーん、それにしてもこれからどんな風に話が転がっていくのやら......
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