GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~ 作:A-Gyou
どこにでも悪は存在している。
そして、悪があるならば、当然犠牲者も。
そして、それを野放しにしておくほど世の中は不条理では無い。
子供達が無邪気な声をあげて遊んでいる。
その様子は、まだ人類には未来が残されている、と言う象徴のように尊い。
そんな中、その尊さから少し距離を置いた場所で、トモキとノゾミは半ば絶望的な気分を味わっていた。
「最近ホームレスが増えてる。しかも、確実に僕達を狙っている。早い内に逃げた方が良いかもしれない」
「でも、次に住む場所は!? まだ決まってないでしょ!?」
「確かに決まってないけど、でもここに居続けたら、連中は確実に僕達を襲ってくる。アイツ等、多分僕達の地下室の食料の存在に気付いてる」
ノゾミも、彼が言っていることには何となく分かる部分があった。
自分の目で見える範囲で、明らかにホームレス達が増えているのだ。しかも、具体的には分からないが、何らかの共通目的を持った、集団的な動きを伴っている。
「早い内にここから逃げないと、取り返しの付かないことになる」
トモキは、ノゾミ以上にこの街が変わりつつあることを知っている。
それは、イリヤが彼らの前から姿を消した日から、徐々に、本当に少しずつ。注意していないと気付かない程度にだが、それでも確実に変わりつつある。
そして、気付いたときには、変わり果てていた。
「アイツ等、下手をしたら今夜にでも襲ってきかねないんだ。それほど血走った目をしてるんだよ! アレはヤバイ。アイツ等が動く前にどうにかしないと」
そう言って、トモキは地下室の入り口に目をやった。
「銃はある。弾もそれなりにある。食料は皆が分担して持てば良い。出来るなら、今日中にでもここを出たい」
トモキの目は本気であり、そしてその中に決して少なくない恐怖と不安の色が混じっていることを、ノゾミは見逃さなかった。
「分かった。今夜、ここを離れましょう。確か、銃は2丁だったわね? 私も持つ」
トモキは苦い顔を隠すことはしなかったが、反対もしなかった。
彼はほとんど直感的に理解していた。
逃げる途中、ホームレス達と鉢合わせになったら、間違いなくそこから殺し合いが始まってしまう。
その時、戦える人間が多ければ、子供達を危険から遠ざける力にも直結する。
「分かった。今すぐ準備を始めよう。僕はあんまり口が上手くないし……それに君みたいなカリスマ性も無い。だから、子供達は君に任せるよ。銃と弾の準備は僕に任せて、君は子供達と、食料の分配をしてくれ」
彼の声には、確かに決意が滲み出ていた。
自分が守らなければ、自分が動かなければ。
それと同時に、隠しきれない不安の色もあった。
だから彼女は。
「……大丈夫よ」
そう言って、背中から彼を抱きしめた。
「……ありがとう」
2人は、動き出した。
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フェンリル極東支部という組織は、大きく分けて2つの部署に分けられる。
対アラガミ専門の部署と、アナグラや外部居住区専門の部署だ。
特に後者に属する各組織は毎日毎日、予算問題と、現場と資料の山と、組織内の人間関係と、その他諸々のストレッサーを抱きかかえていて、ほぼ毎日がカオスである。
そうは言いつつも、カオスも慣れればただの空気である。
そして、そのカオスを1番空気にしやすい組織が、どう言う皮肉か知らないが治安維持部門だ。
この部署は字の如く、アナグラ及び外部居住区内の警備及び治安維持を専門としている部署で、毎日どこかで誰かが事件を起こしてくれるから、いち早くカオスに慣れることが出来るのだ。
そこには、少し前にイリヤを検挙した部隊の人間も所属している。
治安維持部門は、大まかに言うと各管区指揮所と配下の実働部隊によってその組織を構成している。
ちなみに、イリヤをしばいた部隊は「治安維持部門A管区第8中隊」に所属する小隊だ。
その小隊の長、米田タカオは件のイリヤの検挙作戦の時以来、何故かあの居住区の空気が気になって仕方なかった。
巡回の報告によれば、ホームレスが増加し続けているみたいだ。
そして、ごくたまにだが、担当した人間の誤認の可能性も多分にある内容だが「子供がいた」と言う報告も上がっている。
(フム、気になる。と言うよりも、無視をするにしきれない)
小隊長専用のデスクで、両肘をつき手を組み、考え込む。
それまでの巡回の報告は、常に異常なし、だった。
いい加減な仕事をしたら、彼自身がその鉄拳を以て制裁する指導体制を築いてきたので、手抜き報告では無い。
そして、今日の巡回が帰ってきた。
慎重と体格のいい男性隊員と胸以外は高評価の女性隊員が歩いてくる。
「米田少尉。巡回要員、相羽軍曹及び笠原兵長。巡回任務を完遂し、報告に参りました」
敬礼を交わして、報告を促す。
「やはり、今日もホームレス達の動きが妙でした。何か目的があるようで、動きが集団的なものであった印象が強いです。監視は厳重にしておいて損は無い、と思います」
「監視についてはこっちでどうにかする。監視カメラ程度じゃ流石に不安なのは、俺も同意見だしな。それは上にも話通しておくさ」
「……あの居住区、何て言うんでしょうか。凄く、悪意みたいなのを感じました」
唐突に、笠原が静に口を開いた。
「? どういうことだ? 説明しろ、兵長」
「はい。私が小さい頃に住んでた居住区でも、何度かホームレスを主体とした暴動が起きたことがありました。あのときのホームレスの雰囲気と、あの居住区のホームレスの雰囲気が凄く似ているんです」
「小隊長、こいつの第6感的な意見はかなり正確です」
「それは俺も薄々感じてたさ。分かった兵長。お前の所感も判断材料に入れておく。下がって良いぞ」
そう言うと、2人はきれいな回れ右をしてそれぞれのデスクに戻っていった。
「相羽、笠原! 巡回様装備はちゃんと戻してんのか!?」
2人が無言で立ち上がって、小隊の事務室を慌てて出て行く。
その様子を見て、苦笑しながら。
「警戒態勢を1級に上げとくかね……」
静にそう呟いた。
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その晩、カズキの予想は見事に的中していた。
夕方になる前に、彼ら13人は工場を立ち去って、街から逃げ出す道を辿っていた。
何を狙っていたのかは知らないが、ホームレス達がほんの少し前まで自分達が住んでいた場所を蹂躙していく。
その様子を見ていると、無性に悔しくて、そして殺してやりたいとすら思っているカズキがいた。
だが、彼は理性でそれを抑える。
彼が手にしている銃は、旧時代に設計されたAKM-47と言う小銃で、作動性は良いが命中精度はお世辞にも良いとは言えない代物だ。
そして、こんなところで銃声が響けば、たちまち自分達の居場所がバレてしまう。
2重の意味で、彼は自分の衝動を抑える必要があった。
「……ほら、前を見て。危ないから。ケンタ、ちゃんと僕の背中を見て歩くんだ」
「うん……」
眠たいのもあるだろうし、そもそも不安で不安で仕方ないのだろう。ケンタの声は弱々しい。
しかし、だからといって彼を甘やかして移動を止めるわけにもいかない。
トモキに出来るのは、せいぜい歩くスピードを落として後ろに続いている子供達やノゾミの負担を軽減することだけだ。
そして、その速度の遅さが、彼らにとって致命的な結果をもたらす。
「いたぞ、ガキ共だ!!」
「こっちだ! 早く来い!!」
見つかってしまった。
しかも、ホームレス達も木の棒や石などを手にしていて、少なくとも穏便で事を済ませる道は閉ざされている状態。
ここに来て、少年は最大の選択を迫られる。
人を殺して退路を拓くか。
殺さずに、無理矢理道を拓くか。
だが、そんな選択肢を浮かべる辞典で自分が甘すぎたと言うことを次の瞬間悟る。
「きゃあっ!!」
後ろから、少女の悲鳴。
それは目で見て確認するまでも無く。
「ノゾミ!!」
その瞬間、彼は。
大切な者を守るために。
血の道に足を踏み入れた。
正面に迫っていた男達を、掃射によって薙ぎ倒し、振り返ってノゾミを拘束している男に狙いをつける。
「皆その場に伏せて!!」
子供達にそう叫び、更に正確に狙いを定める。
「___その子を離せ」
怒りと殺意がごちゃ混ぜになった感情の中で絞り出した、最後の相手に対する譲歩。
そして、それが、本当の隙を生んでしまった。
「! カズキ、後ろっ!!!」
その瞬間、カズキの後頭部に鈍痛が襲いかかった。
揺れ、歪みだす視界。
徐々に黒く染められてゆく視界。
(ちく、しょ…お)
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「__まさか今日どんぴしゃで暴れ出すとはな」
苦々しい口調でそう吐き捨てるのは、米田。
中隊の第2会議室に臨時の指揮所を起き、できうる限り多くの情報を集めているという現状。
現在分かっているのは、人質13名、内1名の少年は集団リンチにあっていて、生死不明の状態。尚、人質となっている13名は全員、フェンリルの市民登録リストに載っていない。
敵勢力はA08居住区にある工場を拠点としてテロまがいの活動を継続中。尚、敵勢力に関しては現在確認できる内でも、30名以上。
通信機が、震える。
「もし、こちらマザー。現状送れ」
『もし、こちらハウンド。現状。人質の中に13~18歳程度の少女を確認。……早く動かないと、あの子が色々と危ない。! 加えて報告。リンチにあっていた少年だが、まだ生きている!』
オープンにしているゆえに、会議室内に緊張と安堵の両方の空気が生まれる。
「こちら米田、他の人質達の安否は?」
『工場の南側の壁に集められています……ほとんどが子供じゃ無いか!』
「了解した。引き続き監視を続行、何かあればすぐに報告しろ。終わり」
米田はマイクから離れて、ホワイトボードまで移動して、おもむろに何かを書き始めた。
そして。
「作戦概要を伝達する。小隊メンバーをここに集めろ!」
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「各パッケージの配置と、現状分かっている敵の配置だ」
そう言って示したのは、居住区と敵、人質の大まかな配置だった。
「トラックで部隊を送るのは機動力に欠ける。そこで、今回の作戦では、狙撃による支援の下、ヘリボーンによる電撃的な襲撃の敵拠点の制圧。人質を確保して、車両によって人質を脱出させ、残った隊員によって敵勢力を制圧。なお、本作戦においては射殺許可も出ている。まぁ、可能な限りは生きて捕まえて、無理なら“殺せ”。なお、ヘリボーンチームは第2、3分隊が担当。パッケージ回収部隊は第1分隊。作戦支援は第4分隊が担当しろ。以上、質問は?」
緊張に静まりかえるなか、静に手が挙がった。
「……笠原か。何だ?」
「狙撃ポイントの選定は?」
「それはお前に一任する。ただし、最大射程を500メートル以内にしろ。笠原は狙撃装備を準備し次第すぐに行け」
「了解!」
そう言って、彼女は会議室を出て行った。
「他は?」
この場において沈黙は、何も無い、と言う意味を示す。
「よし、各員市街地武装に装備して出動態勢! 笠原が場所を決めた瞬間に、作戦を開始する!! 2、3分隊は速やかにヘリポートへ移動しろ!!」
闘いが、始まる。
GE本編とはほとんど関係なしっ!
主人公はやっと、本編のスタートラインに立てた、かな?
後半は、人対人の闘いがメインになっちゃいました。悔いは無いキリッ
次回は思いっきり治安部隊と悪いホームレス軍団の対決になりますねw
楽しみにしていて下さい!!