遊戯王ARC-V エクシーズ・ディメンション   作:YASUT

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俺は休日二日間を素材にオーバーレイ!
だがランクアップはしない(=続きは書かない)。瑠璃喋らないかなー。
というか喋ろ。
話せ。
瑠璃ィィィィ!!!!

*アニメオリジナルカードが二枚
GXより《テイク・オーバー(ファイブ)
ARC-Vより《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》


デュエリスト養成校 その名はデュエル・アカデミア!

 ――デュエル・モンスターズ。

 プレイヤーは魔術師となり、カードに封じられたモンスターを使役し戦わせる競技(ゲーム)

 ソリッド・ビジョンによるショーとしての人気も高く、誰もが一度は目指し、そして挫折する。この狭き門をくぐり抜けた者のみが、プロとして世界に羽ばたく権利を得る。

 そう、ここまでしてようやく権利(・・)だ。実際に羽ばたけるか否かは本人次第。プロの世界は甘くなく、強者が新人を一方的に叩き潰す弱肉強食の世界。

 

 けれど、そんな彼らに全てを賭ける学び舎があった。

 通常教育に加え、デュエル・モンスターズの教育も施す特殊な機関。

 それがこの“デュエル・アカデミア”である。

 

 

 ◆

 

 

 デュエルアカデミアの門は狭くない。将来のプロ育成に力を入れているため、一般の決闘者(デュエリスト)では決して潜ることはできない。

 この学園に入学するための条件は二つ。

 一つは学生であること。

 もう一つは、デュエルにおいて突出した腕前を誇ること。

 ……これを証明する方法は何でも構わない。たとえ、根拠のない()だったとしてもだ。

 

 この学園の門を潜る方法は大きく分けて二つ。

 一つはデュエル・モンスターズの大会で入賞すること。わかりやすく結果を残せば、それだけで資格を得ることができる。

 もう一つは、毎年行われる抽選に当たること。デュエルアカデミアでは毎年、新入生入学の時期に特別な抽選を行う。一般の入学希望者の中からランダムにクジを引き、当たった者を“強運(ドロー)決闘者(デュエリスト)”として学園に迎え入れようという魂胆だ。

 抽選に当たった決闘者(デュエリスト)には、入学時にテストが課される。条件は、“専用デッキを使う教師とデュエルを行い、認められること”。

 “認められる”の基準はそれぞれだが、大雑把に言うなら勝てば入学、負ければ退学ということだ。

 強運を引き寄せる――即ち、“土壇場でカードを引き寄せる力”があっても、勝てなければ実力は認められない。

 

 ……ここまでが表向き。一般に認知されているデュエルアカデミアのシステム。たとえ一般人であってもプロになれる可能性はゼロではないという、淡くも儚い夢だ。

 実際に勝利し、デュエルアカデミアに入学できる決闘者(デュエリスト)は少ない。毎年、当選した一般の決闘者(デュエリスト)達は希望を胸に門を叩き、学園内で醜態を晒された後、涙を呑んで出て行く。それがこの学園の闇でもあり、同時にプロは甘くないことを証明している。

 

「……今年も、ついにこの時期が来てしまったノーネ」

 

 白人の教師――クロノス・デ・メディチは溜息混じりに呟いた。デュエルアカデミアの実技最高責任者である彼は、毎年抽選者と入学試験(デュエル)を行うことになっている。

 最初に明言しておくと、彼はこの抽選システムが嫌いだ。採用された当時は可能性を感じて賛同したクロノスだが、ただの見世物となってしまった今では誰よりも嫌悪している。

 

「でも、やるしかないノーネ。過ぎた情けは相手への侮辱。プロの世界の厳しさを教えてやるノーネ……セニョール“ユート”」

 

 教師用の大型デュエルディスクを抱え、デッキをセット。控え室を出た後、デュエルリングへと歩を進めた。

 周囲の観客席には予想通り、デュエルアカデミアの生徒が跋扈していた。ここに集う決闘者(デュエリスト)の殆どは、プロの世界の厳しさを身を持って知り、上を目指すことを諦めつつある決闘者(デュエリスト)だ。

 クロノスと対面しているのは紫髪の少年。物静かな雰囲気を纏っており、実年齢より少々大人びた印象を受ける。

 

「待たせたノーネ、セニョールユート。私はクロノス・デ・メディチ。デュエルアカデミアの実技最高責任者でアーリ、今回の入学試験の試験官でもあるノーネ」

「ああ……――いや、はい」

「気張る必要はないノーネ。私の仕事は、貴方のポテンシャルを見極めること。今年も観客は多いようですガ、気にせずありのままのセニョールを見せて欲しいノーネ」

「……ああ、分かった」

 

 今のやりとりで緊張は些か解れたらしい。ユートはリラックスした表情でディスクを構え、デッキをセットした。

 少年の闘志にクロノスは頬を緩め、高らかに宣言する。

 

「これより、特別入学試験を開始するノーネ!

 セニョールユート! 貴方の入学条件はこの私を倒すこと! もしくは、そのポテンシャルを存分に魅せつけること! 遠慮は要りまセーン、存分にかかって来なサーイ!」

 

 ◆

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 ユート

 LP:4000

 

 クロノス

 LP:4000

 

「特別ルールにより、先行はチャレンジャーに与えられるノーネ。セニョールの力、見せてもらうノーネ」

「ならば行かせてもらう、俺のターン。

 ――俺は《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ》を召喚!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ》

 星3/闇属性/戦士族/攻 800/守1000

 

「更に、自分の場に《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)》が存在するとき、《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》は特殊召喚できる!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》

 星3/闇属性/戦士族/攻 200/守1200

 

 一ターン目であるにも関わらず、ユートの場に二体のモンスターが出揃った。

 どちらも亡霊を纏った遺品であり、一体一体は大した力を持たない弱小モンスターだ。だが少年のデッキは、同レベルモンスターが二体揃うことで真価を発揮する。

 

「俺は、レベル3のダスティローブとサイレントブーツでオーバーレイ!」

 

 ユートの足元に漆黒の渦が現れ、中央へと二体が吸い寄せられた。

 魂と魂が爆発を起こし、新たな武器がフィールドに降臨する。

 

「戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!

 エクシーズ召喚! 現れろ、ランク3! 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》

 ランク3/闇属性/戦士族/攻2000/守1000

 

 巨大な剣を持つ騎士。しかし剣先は欠け、頭部はない。生物と呼ぶには遅すぎた存在。

 その姿はまさに亡霊――否、幻影。死してなお倒れぬ鉄の騎士だ。

 

「……エクシーズ召喚。同レベルモンスター二体を素材に行う特殊召喚。それを一ターン目からこなすとは、中々やるノーネ」

「実力を見せろ、と言ったのは貴方だ。俺は最初から全力で行かせてもらう。カードを三枚伏せて、ターンエンドだ」

「フフン、その威勢の良さは買ってやるノーネ。私のターン、ドロー。

 《イエロー・ガジェット》を攻撃表示で召喚!」

 

 《イエロー・ガジェット》

 星4/地属性/機械族/攻1200/守1200

 

 クロノスの場に黄色の歯車モンスターが召喚された。

 ガジェット。このモンスター郡は名前・デザイン・効果、どれをとっても歯車だ。一つでも動けば、他の歯車(モンスター)達も同様に回り始める。

 

「このモンスターの召喚・特殊召喚に成功したトーキ、デッキから《グリーン・ガジェット》を一体手札に加えるノーネ。

 更に魔法(マジック)カード、《二重召喚(デュアルサモン)》! このカードを発動したターン、私は二回まで通常召喚を行うことができるノーネ。

 これにヨーリ、先程手札に加えた《グリーン・ガジェット》を召喚ナノーネ!」

 

 《グリーン・ガジェット》

 星4/地属性/機械族/攻1400/守 600

 

「《グリーン・ガジェット》の効果発動! デッキから新たに《レッド・ガジェット》を手札に加えるノーネ」

「……レベル4のモンスターが、二体」

 

 その手際の良さに、ユートは舌を巻く。

 同レベルモンスターが二体。ならば、次の手は自ずと決まってくる。

 

「エクシーズ召喚が行えるのはセニョールだけではないノーネ! 私は、二体のガジェットでオーバーレイ・ネットワークを構築!

 エクシーズ召喚! 現れるノーネ、《ギアギガント(クロス)》!」

 

 《ギアギガント(クロス)

 ランク4/地属性/機械族/攻2300/守1500

 

 二体の低級モンスターを素材に召喚されたのは、歯車を背負った機械仕掛けの男。

 その能力は外見通り。このモンスターもガジェット同様、歯車のような効果を備えている。

 

「《ギアギガント(クロス)》のモンスター効果発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使ーイ、デッキ・墓地からレベル4以下の機械族を一体、手札に加えることができるノーネ。私はデッキからレベル4モンスター《ブリキンギョ》を手札に加えるノーネ」

「レベル4……次のターン、二体目のエクシーズモンスターを召喚するつもりか」

「察しがいいノーネ。ですがそれハ、貴方に次のターンが回ってくれば話デース!

 手札から装備魔法《デーモンの斧》発動! 《ギアギガント(クロス)》に装備し、攻撃力を1000ポイントアップさせるノーネ!」

 

 《ギアギガント(クロス)

 攻2300 → 攻3300

 

「更に速攻魔法《リミッター解除》! このターンのエンドフェイズまで、機械族モンスターの攻撃力を二倍にするノーネ!」

「何っ!?」

 

 《ギアギガント(クロス)

 攻3300 → 攻6600

 

「攻撃力6600……!」

「左様。ブレイクソードの攻撃力はわずか2000。この攻撃が決まればライフはゼロ。よって、貴方の敗北ナノーネ」

「……あーあ。終わったな、これで」

 

 見学していた生徒の一人が気だるげに呟いた。

 デュエルが開始してわずか二ターン。こんな序盤で勝負が見えてしまえば、退屈なデュエルと断定するのも無理はない……が、それは、ここで勝負が決まってしまえばの話だ。

 クロノスは敢えてチャンスを与えた。本来《リミッター解除》は戦闘を行う直前に発動し、相手の不意を突く速攻魔法。バトル前に発動したのは、ユートがこの状況を乗り越える過程を見たかったからだ。

 ただし、乗り越えられないのならそれまで。その程度の実力なら、アカデミアに関わらない方がいい。

 

「覚悟するノーネ、セニョールユート! 《ギアギガント(クロス)》で《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》を攻撃!」

伏せ(リバース)カード、ダブルオープン! 速攻魔法《突進》! そして《非常食》!

 《突進》の効果により、ブレイクソードの攻撃力は700ポイントアップする!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》

 攻2000 → 攻2700

 

「更に《非常食》の効果! 発動後の《突進》を墓地に送り、ライフを1000回復する!」

 

 ユート

 LP:4000 → LP:5000

 

 《ギアギガント(クロス)》は装備された《デーモンの斧》でブレイクソードを薙ぎ払い、粉砕した。そして攻撃力の差、3900がユートのライフから削られる。

 

 ユート

 LP:5000 → LP:1100

 

「……あの新入生、思ったよりやるじゃないか」

「今のは確か、新入生テストデッキの最強攻撃パターンだったな」

「ああ。あれを一ターン目から仕掛けるクロノス教諭は流石だが、新入生も悪くはないな」

 

 外野の呟きを耳に入れつつ、クロノスはほくそ笑んだ。

 最後の最後まで何が起こるか分からない。それがデュエルの奥深さなのだ。

 

「この瞬間、ブレイクソードの効果発動! エクシーズ召喚されたこのモンスターが破壊された時、墓地の同レベルの《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)》を二体特殊召喚する!

 甦れ、《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ》! 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ》

 星3/闇属性/戦士族/攻 800/守1000

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》

 星3/闇属性/戦士族/攻 200/守1200

 

「そして、この効果で特殊召喚されたモンスターはレベルが一つ上がる」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ》

 星3 → 星4

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》

 星3 → 星4

 

「倒されてもまた復活するトーハ……全く、しぶとい亡霊どもナノーネ」

「《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)》は倒れない。何度倒されようと、俺達は必ず立ち上がる!」

「フン、強がるんじゃないノーネ。既に貴方のライフは虫の息。次のターンで決めてやるノーネ。私はカードを二枚伏せて、ターンエンドナノーネ!」

「だがこのターンのエンドフェイズ、《リミッター解除》の効果を受けた機械族モンスターは、全て破壊される」

 

 《ギアギガント(クロス)》が自壊し、クロノスのフィールドからモンスターが消える。

 二枚の伏せ(リバース)カードが気になるところだが、攻めるなら今がチャンスだろう。

 

「俺のターン! 俺は、レベル4となったダスティローブとサイレントブーツで、再びオーバーレイ!」

「!?」

 

 ユートが新たなエクシーズモンスターを召喚する瞬間、クロノスのデュエルディスクのランプが点滅し始めた。

 

「この反応……そうデスカ。セニョールユート……まさか貴方が――」

 

 それに気づいた者はクロノスを除いて誰一人いない。これまでに一度もなかった奇妙な反応に、クロノスは困惑し――そして、意味ありげに微笑んだ。

 

「漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ!

 エクシーズ召喚! 現れろ、ランク4! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

 ランク4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

 

 召喚されたのは、巨大な逆鱗を持つ漆黒の龍。その瞳には、強者に屈さぬ鉄の意思が垣間見える。

 

「スプレンディード。素晴らしいノーネ、セニョールユート。ですが、私とてデュエルアカデミアの教師。そう簡単にやられるわけにはいかないノーネ!

 永続(トラップ)発動、《機動砦ストロング・ホールド》! 発動後このカードはモンスターカードとナーリ、守備表示で私のフィールドに特殊召喚されるノーネ!」

 

 《機動砦ストロング・ホールド》

 星4/地属性/機械族/攻 0/守2000

 

「だがその守備力では、この攻撃を止めることはできない!

 バトルだ! 行け、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》! “反逆のライトニング・ディスオベイ”!」

 

 召喚者の命令を受け、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》は牙を立てる。

 眼光を光らせ、全身に紫電を纏い、漆黒の龍は砦を崩すべく突撃した。

 

「――何?」

 

 だが、ストロング・ホールドは崩れなかった。

 機械の両腕が牙を受け止め、(ドラゴン)の攻撃を受け止めていたのだ。

 

「爪が甘かったノーネ、セニョールユート。私は貴方が攻撃宣言した時、この永続(トラップ)を発動させたノーネ」

「……《宮廷のしきたり》、か」

「ストラーダ。この永続(トラップ)がある限り、他の永続(トラップ)は破壊されないノーネ。よって、永続(トラップ)でもあるストロング・ホールドは破壊されないノーネ」

「……これでバトルを終了する。

 俺は魔法(マジック)カード《テイク・オーバー(ファイブ)》を発動。デッキトップからカードを五枚墓地に送る。そして、このカードが墓地に存在する限り、俺はデッキからカードを墓地に送ることができない。……ターンエンドだ」

「私のターン、ドロー。私は先程手札に加えた《ブリキンギョ》を召喚するノーネ」

 

 《ブリキンギョ》

 星4/水属性/機械族/攻 800/守2000

 

「《ブリキンギョ》のモンスター効果により、手札からレベル4モンスターを一体特殊召喚できるノーネ。私は《レッド・ガジェット》を特殊召喚」

 

 《レッド・ガジェット》

 星4/地属性/機械族/攻1300/守1500

 

「《レッド・ガジェット》の効果により、デッキから《イエロー・ガジェット》を手札に加えるノーネ」

「……また、レベル4のモンスターが二体」

「ノン! 二体ではありまセーン、()()ナノーネ!」

「何!?」

「覚悟するノーネ、セニョールユート! 私はレベル4の《レッド・ガジェット》、《ブリキンギョ》、そして《機動砦ストロング・ホールド》でオーバーレイ! ナノーネ!

 運命に翻弄されし醜き勇者! 仲間の呼び掛けに応え、今こそ覚醒すルーノです!

 エクシーズ召喚! 現れるノーネ、《覚醒の勇姿ガガギゴ》!」

 

 《覚醒の勇姿ガガギゴ》

 ランク4/水属性/爬虫類族/攻2950/守2800

 

 現れたのは巨大な爬虫類族。強靭な四肢と鋼の鎧。敬遠されがちな種族だが、その風貌は勇者に相応しい。

 このモンスターは特殊効果を持たず、機械族がメインのテスト用デッキとはなんのシナジーもない。だが、ある意味ではこのモンスターこそが“エクシーズ”の象徴と言えるだろう。

 ――デッキを選ばずに投入できる。それがエクシーズ召喚の強みなのだ。

 

「バトルナノーネ! 《覚醒の勇姿ガガギゴ》で、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を攻撃!」

「くっ……!」

 

 勇者の鉄拳を受け、漆黒の龍が討伐された。大型モンスター破壊の余波が召喚者を襲う。

 

 ユート

 LP:1100 → LP:650

 

「今度こそ終わりかな」

 

 ライフが四桁のボーダーを超え、どうなるか分からないと期待していた観客席に諦めと嘲笑が漂い始めた。今年も終わり。あの少年もまた、夢見がちな一般人に過ぎなかったのだと。

 

「いや……まだナノーネ」

 

 ただクロノスは、この短時間でユートの本質を見抜いていた。

 エースは倒され、手札もなく、残されたのは伏せ(リバース)カード一枚のみ。けれど、目は死んでいない。

 ならば、まだ何かが起きる。起きて欲しい。覆して欲しい。クロノスの胸中には、そんな想いが渦巻いていた。

 

「私はカードを一枚伏せてターンエンド。セニョールユート。貴方のラストターンナノーネ」

「ラストターンか。確かに、そうかもしれないな。

 ――そう。俺が勝って終わりだ」

 

 その宣言に、生徒たちは息を呑む。同時に思った。何を言っているんだコイツは。この状況で何ができるのだ、と。

 対照的に、クロノスの表情に再び笑顔が浮かぶ。このままでは終わらないと確信したからだ。

 

「宜しい、ならば全力で来るノーネ! 貴方の力、この私が裁定してあげルーノです!」

「行くぞ、俺のターン! ここで、墓地の《テイク・オーバー(ファイブ)》の効果発動! 墓地のこのカードと、手札・デッキ・墓地から同名カードを一枚除外し、もう一枚ドローする!」

 

 ドローした二枚のカードを確認し、ユートの脳内にラインが繋がる。

 それは勝利へのルート。カード達が繋げた一筋の光。

 

(トラップ)カード、《転生の予言》を発動! 墓地のモンスターカードを二体選択し、持ち主のデッキに戻す。俺は自分の墓地から《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を選択し、エクストラデッキに戻す。

 そして墓地の《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ》の効果発動。このカードを除外し、デッキからダスティローブ以外の《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)》を手札に加える。俺は《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラギッドグローブ》を手札に加え、召喚!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラギッドグローブ》

 星3/闇属性/戦士族/攻1000/守 500

 

「更に、《テイク・オーバー(ファイブ)》の効果で墓地に送られた《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》の効果発動! このカードを除外し、墓地の《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)》を特殊召喚する! 甦れ、《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》

 星3/闇属性/戦士族/攻 200/守1200

 

「レベル3のラギッドグローブとサイレントブーツでオーバーレイ!

 戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!

 エクシーズ召喚! 現れろ、ランク3! 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》

 ランク3/闇属性/戦士族/攻2000/守1000

 

「フン、なんともしぶとい剣士ナノーネ」

「ラギッドグローブのモンスター効果! このカードを素材にして闇属性エクシーズモンスターを召喚した時、攻撃力が1000アップする」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》

 攻2000 → 攻3000

 

「残念ながらそうはいかないノーネ! (トラップ)カード《奈落の落とし穴》発動! 攻撃力1500以上のモンスターが召喚・特殊召喚されたトーキ、問答無用で破壊し、除外するノーネ!」

「何っ!?」

 

 足元に落とし穴が開かれ、緑の巨人がブレイクソードを引きずり込んだ。

 穴が閉じた瞬間、断末魔と共に剣士が破壊される。

 

「だが、ブレイクソードの効果発動! 墓地の《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)》を二体、レベルを上げて特殊召喚する!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラギッドグローブ》

 星3 → 星4/闇属性/戦士族/攻1000/守 500

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》

 星3 → 星4/闇属性/戦士族/攻 200/守1200

 

「そして、レベル4となったラギッドグローブとサイレントブーツで、再びオーバーレイ!

 漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ!

 エクシーズ召喚! 現れろ、ランク4! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

 ランク4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

 

 龍は翼を広げ咆哮する。

 眼前には標的(ガガギゴ)。巨大な逆鱗を持つこのドラゴンは、強力なモンスターに追い詰められた状況でこそ真の力を発揮する。

 

「ラギッドグローブの効果は一ターンに一度のみ。既にブレイクソードに使ってしまった以上、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力は2500のまま。それでは私のガガギゴは倒せないノーネ」

「それはどうかな。ここで俺は、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の効果発動! オーバーレイ・ユニットを二つ使い、相手モンスター一体の攻撃力を半分にし、その数値分をダーク・リベリオンの攻撃力に加える! “トリーズン・ディスチャージ”!」

 

 翼から電撃が発せられ、ガガギゴに直撃した。敵モンスターの攻撃力を吸収し、逆鱗の龍は更なる力を得る。

 

 《覚醒の勇姿ガガギゴ》

 攻2950 → 攻1475

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

 攻2500 → 攻3975

 

「マンマミーヤ!? ガガギゴの攻撃力が!?」

「まだだ! 《テイク・オーバー(ファイブ)》で墓地に送った《オーバーレイ・イーター》の効果発動! このカードを除外し、相手のオーバーレイ・ユニットを一つ奪う!

 更に魔法(マジック)カード《オーバーレイ・キャプチャー》! 相手のエクシーズモンスターのオーバーレイ・ユニットを全て取り除く! その後、このカードは自分のエクシーズモンスターのオーバーレイ・ユニットとなる!」

「なんデスート!?」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の周囲に、新たなオーバーレイ・ユニットが二つチャージされる。

 ――これにて、第二弾が装填された。

 

「《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の効果を再び発動! “トリーズン・ディスチャージ”!」

 

 《覚醒の勇姿ガガギゴ》

 攻1475 → 攻738

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

 攻3975 → 攻4713

 

「そして、装備魔法《ファイティング・スピリッツ》! 装備モンスターの攻撃力は、相手モンスター一体につき300アップする。よって、ダーク・リベリオンの攻撃力は――!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

 攻4713 → 攻5013

 

「攻撃力5013ポインツ!? もう何が何だか分からないノーネ!」

「バトルだ! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で、《覚醒の勇姿ガガギゴ》を攻撃! “反逆のライトニング・ディスオベイ”!」

「ペーペロンチィィィーノ!!」

 

 クロノス

 LP:4000 → LP:0

 

 紫電の牙がガガギゴの胴体を貫き、決着する。クロノスはというと、奇妙な絶叫と共に派手に吹っ飛ばれていた。

 

 その光景に、アカデミアの生徒達は驚愕した。

 抽選で選ばれた新入生(一般人)が、特別入学テストに合格した。そして何より、最後の攻撃が一撃死(ワンショット・キル)だったのだから。

 

 この日を堺に、少年の運命は劇的に変化する。

 けれど、今はただ祝福を。プロへの道は長く険しく、だからこそ得がたいものになると信じて。

 

 

 ◆

 

 

「手続きはこれにて完了ナノーネ。お疲れ様ナノーネ、セニョールユート」

「いえ、俺は別に。先生の方こそお疲れ様です」

「これくらい何でもないノーネ。さあ、今日はもう帰っていいノーネ。セニョールはこれからの日々に胸を躍らせながら、ゆっくり休むノーネ」

「はい……ありがとうございました」

「お大事にー、ナノーネ」

 

 クロノスはヒラヒラと手を振り、ユートの姿が見えなくなるまで見送った。

 どれだけデュエルが強かろうと、所詮はまだ子供。その背中は余りにも小さい。

 そんな彼らを人として、決闘者(デュエリスト)として一人前に育てるのが教師の役割である。

 

「……彼はどうでしたか。クロノス教諭」

 

 クロノスに話しかけたのは一人の教師。

 専用の制服に立派なおヒゲ。そしてつるっとした頭が特徴的だ。

 

「鮫島校長、お疲れ様ナノーネ」

「クロノス教諭こそ。それより彼は……ユート、でしたかな」

「はい――ようやく見つかったノーネ」

「見つかった? ということはまさか……」

「そうナノーネ」

 

 クロノスはうんと大きく頷いた後、

 

「彼こそがこの次元の希望。我々ハグレモノの手で、大切に育てなければならないノーネ」

 

 ありったけの願いを込め、光り輝く次元の未来を見据えて、そう誓った。

 




後々設定集的なものを書くかもしれないし、書かないかもしれない。
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