遊戯王ARC-V エクシーズ・ディメンション 作:YASUT
それでいて主人公の目標は「デュエルで皆を笑顔にする」……うおおお不幸オーラが半端じゃないぞう!でもこういう主人公大好きだぞう!どう考えても無理なのにそれを目指して頑張るとか興奮するぞう!設定だけ見れば主人公力一番高いと思うぞう!ま、主人公といってもラノベとかノベルゲームとか話を一気に読めるタイプの主人公で、一週間ずつちまちま進む週刊誌やアニメには向いてなさそうだが!(偏見)
まあ、それはそれとして。
今回はエクシーズの新テーマ《
瑠璃の性格とか関係とか全然知らないけど、違っててもそれはそれでいいかな。(漫画版黒咲さんを見つつ)
「……ヒッヒッヒ」
ターン、ターンと高い音が鳴り響いた。どうやらキーボードを叩く音らしい。部屋の灯りは消されており、無人である。光といえば少年のパソコンと、それを反射する彼の眼鏡くらいだろうか。
少年は指を走らせ、一定のリズムで音を鳴らす。パソコンの画面には大小様々なウィンドウが開かれては消え、開かれては消えていく。
「ふん、他愛もないね。でもガッカリだなぁ。まさかここのセキュリティがこの程度だったなんて、さ」
ハッキング完了。プログラムをセット。あとはエンターキー一つで全てが終わる。否、始まるのだ。
「ヒヒ――こいつで終わりだよ」
少年は薄ら笑いを浮かべた後、最後にもう一度エンターキーを鳴らした。
瞬間、画面上の無数のウィンドウが消滅し、無差別に文字が流れ始める。
これを理解できるのは少年のみだ。何故ならこれは少年が独自に開発したプログラムソフト――“ウィルス”だからだ。
「……は?」
だが、少年の思い通りにはならなかった。ウィルスソフトの注入は99パーセント完了。しかし最後のセキュリティが、残りの1パーセントを阻んだ。
「これは――」
画面に現れたのは、データのカード達だった。
不自然なほどに整えられたフィールド。大量にある自分の手札、デッキ、墓地。全く削れていない相手のライフポイント。
少年にとっては見慣れたものだった。
「なるほどね。これが最後のセキュリティ、詰めデュエルか。全く、無駄なあがきだよ。こんなもの、僕の力ですぐに解い、て?」
少年の手が止まる。相手フィールドにはエクシーズモンスターが五体。
絶体絶命とも言える状況だが、これ自体は大したことじゃない。詰めデュエルは不自然な劣勢から始まるのが常であるし、何より五体中四体はオーバーレイユニットを使い果たしている。この時点で効果は無いに等しい。
――それらが、見たことのないモンスターでさえなければ。
少年はカードを確認しようとする――が、できなかった。
効果が読めない。それどころか、カード名すら読めなかった。
「なんだこのカード……本当にエクシーズモンスターなのか?」
五体の中で最も目を引くのは中央のモンスターだ。
白い翼を持つ黄金の剣士。左肩には赤い文字で、二桁の数字が刻まれている。
「ちっ……いや、所詮は詰めデュエルだ。初めから解けるように作られた問題、答えは絶対にある。他に用意されたカードから、こいつの能力は読み取れるはず……!」
少年はキーボードを打ち込み、カードの効果を確認しようとした。
――その瞬間、剣士は少年を睨みつける。
「っ――!?」
相手はたかがデータ。たとえ敵意を向けられたとしても“そういう演出”と割り切ればいい。
だが、少年にはそれができなかった。有無を言わせぬ威圧感。目を逸らすことができない。
……怒っている。このモンスターは意思を持っており、ウィルスを流そうとした自分に対して怒りを向けている……。
肩の数字が光り輝く。模様にも似たそれは“39”。
その光を最後に、パソコンは暗転した。
「はぁ!? なん――」
『侵入者発見! 侵入者発見! ただちに封鎖します!』
機械の音声が静寂を破った。真っ暗だった部屋は一転、赤い光に包まれる。耳障りなアラートが鳴り響き、扉という扉に鉄格子が下ろされた。
侵入経路、脱出経路――ありとあらゆる抜け道が閉ざされたのだ。
「な……んで」
あまりにも急すぎる展開に、少年は目を疑った。
やがて、状況を理解する。
「……なんでだよ」
自分が置かれた状況を一つ一つ理解し、溜まった靄は怒りに変わって、胸の内から吐き出された。
「なんで! どうしてこうなるんだよ!
完璧だった! 完璧だったはずだ! 僕のプログラムに、間違いはなかったはずだろう!!」
少年は自分の実力に絶対の自信を持っていた。
華々しい栄光の数々と、辿ってきた勝利の軌跡。それが彼の自慢であり、自信の源だった。
「もう一度プレイさせろ! 詰めデュエルならきちんとやったらどうなんだ! 正々堂々僕と勝負しろ! “デュエルアカデミア”ァァ!!」
……その慟哭を聞く者は誰一人とていない。何故なら今日は休日。時間も遅い。少年は閉じ込められたが、実際に捕まるのは数時間後だろう。
所詮はちっぽけな一個人。どれほど優秀であろうと、世界は――デュエルアカデミアは、彼のことなど眼中にないのだ。
『――それが、お前の心の闇か』
「……え?」
黒く低い声が、少年の懐から発せられた。
懐……デッキだ。少年は声の発生源たるカードを手に取る。そのカードには黒い霧のような、“闇”が渦巻いていた。
詰めデュエルのモンスターと同じだ。名前が読めない。効果が読めない。そして、モンスターの体には数字が刻まれている。
「……なんだ、これ」
『ナンバーズ。願いを叶える
◆
「――――――なんだ、これは」
眼前の光景に、ユートは圧倒されていた。
デュエルアカデミア。プロデュエリスト育成に重点を置いたデュエル専門の学び舎。その規模はハートランド最大であり、知名度も他の学校より頭一つ抜けている。
本来なら今日は休講だ。入学シーズンなだけあって、教師はともかく学生は休日が非常に多い。入学が決まり特にやることがなかったユートは、なんとなく、気まぐれに、母校となるアカデミアに寄ってみたのだった。
……その学校が、一部破壊されていた。物理的に。それはもう、テロに遭ったとしか思えないほどに。
当然ながら入口には“立ち入り禁止”のテープがこれでもかと貼られており、周囲にはカメラを持ったマスコミ達が――
「……まずいな。とにかく、ここは逃げ――」
「失礼ですが貴方はデュエルアカデミアの生徒ですか!?」
ユート は 逃げ出した。
しかし 回り込まれて しまった。
……そして、囲まれた。あれよあれよという間に、退路は絶たれたのだった。
「もう一度お尋ねしますが、貴方はデュエルアカデミアの生徒ですか!?」
「え、あ、はい」
「この学園の惨状はどういうことでしょう!?」
「いや、俺は何も――」
「何も!? ご存知ないということでしょうか!?」
「では、貴方の担任の方は!? 連絡をとることはできますか!?」
「鮫島校長の話を!」
「クロノス・デ・メディチ教諭とはどうでしょう!?」
「…………」
絶え間なく撃たれるマシンガントークに、ユートは辟易した。
いや、マシンガンというのは間違いか。とにかく数が多いのだ。一人一言しか話していなくても、十人いれば別次元だ。
「話は聞かせてもらったノーネ、シニョールユート!」
「こ、この声は!?」
最も速く反応したのはユートではなくマスコミの女性。その特徴のある話し方は、一度聞いたら忘れられないだろう。
「クロノス・デ・メディチ教諭!」
「先生……俺は何も話してないが」
「細かいことは気にしないノーネ! とにかく、ワタクシが来たからにはもう大丈夫デスーノ! 安心してくだサーイ!
……では頼むノーネ、シニョール黒咲」
「え?」
バキ、と破壊音が鳴った。何事かと視線を向けると、カメラが破壊されていた。
「えぇ!? カメ――」
バキン、と再び破壊音。今度はマイクだ。
かくして、一瞬で片はついた。
「今デスーノ、シニョールユート! 入口に向かって走るノーネ!」
「……あ、はい!」
……眼前の光景に、ユートは再び圧倒されていた。圧倒されながらも、彼はデュエルアカデミアへ走り出す。
合図でも送ったのか、ゲートは既に開いていた。僅かに開いた小さな入口から、一人の女の子が顔を出す。
「速く! 急いで!」
「っ……!」
「あじゃじゃじゃじゃじゃ――!!」
ユートとクロノスがデュエルアカデミアの中に滑り込んだ後、少女は急いでゲートを閉め、鍵をかけた。これでもうマスコミに捕まることはないだろう。
ただ――
「カメラとマイク弁償しろぉーー!」
一人の女性の悲痛な叫びが、門の外でこだましていた。
◆
「事態は一刻を争うノーネ! デュエルアカデミアを襲った謎のテロリストを、なんとしても捕まえるノーネ!」
教壇の前で、クロノスが机を叩きながら力説した。
集まっている生徒は僅か三名。ユートと黒髪の女子生徒が最前列。そして、離れた席にもう一人。カメラとマイクを破壊した男である。
その中の一人、女子生徒が質問した。
「捕まえるって、何か宛があるんですか?」
「それについてはモーマンタイナノーネ。ワタクシが独自に調査を行った結果、我が校のセキュリティにハッキングの形跡が見られたノーネ。おそらく犯人は、近いうちに再びアクションを起こすはずデス!
……そう。確かに彼は、そういう生徒だったノーネ」
「彼? 先生は、犯人について何かご存知なのですか?」
「ニョ!? いや、何でもないノーネ! ワタクシ、犯人については全く心当たりがアリマセーン!」
「…………」
じっ……、と少女はクロノスを見つめる。
クロノス・デ・メディチは、良くも悪くも分かりやすい人間である。表情が豊か、それでいて隠し事が顔に出る。
つまり、クロノスは犯人に心当たりがあるのだ。
「とにかく! 今、アカデミアの教員は各所への対応で忙しいノーネ! 事件の解決は我が校の生徒達、つまりあなた方にかかっているノーネ!」
「他の生徒達に連絡は取ったのですか?」
「勿論取ったノーネ。……しかし正直な所、彼らの力だけではとても不安なノーネ。めっちゃ不安なノーネ。プロを目指す彼らはプライドが高い。もし犯人を見つけたら、一対一でデュエルを挑む可能性が高いノーネ。そうなったら、返り討ちになってしまうかもしれないナノーネ。
そこで! 新入生にして特待生、入学テストで見事ワタクシを打ち負かしたシニョールユート!
天才的なカードセンスを持つ紅一点、同じく新入生のシニョーラ黒咲!
そして、シニョーラ黒咲の兄にして、我が校のエース! シニョール黒咲!
あなた方は
「断る」
「オー、ディーオ!?」
クロノスの提案を断ったのは、沈黙を守っていた黒咲(兄)だった。
「ど、どうしてナノーネ、シニョール隼」
「俺はプロデュエリストになるためにこの学園に来た。この学園のデュエリストは仲間ではなく敵だ。馴れ合うつもりはない」
「ちょっと、そんな言い方はないでしょう?」
「瑠璃、言っておくがお前の出番はない。事件は俺が解決する。お前はここで大人しくしていろ」
そう言い残し、黒咲(兄)は教室を出て行った。
……アカデミアはマスコミに包囲されているが、彼なら容易に突破できるだろう。
「はぁ……もう。えっと、ごめんね。兄さん、昔からあの調子で」
「仲が悪い……のか?」
「ううん、そういうわけじゃないんだけど。兄さんは、とにかく不器用なの」
「全くナノーネ。実力はあるだけに、余計に面倒ナノーネ」
「そうか……よく分からないな。兄妹っていうのは」
教室に残されたのはユート、黒咲瑠璃、クロノス。三人は黒咲(兄)のような身体能力はない。よって、犯人が何かアクションを起こさない限り、ひたすらアカデミアに篭城するしかないのだった。
「……そういえば、先生。先ほど仰ってましたね」
「犯人については心当たりがないノーネ! ホントナノーネ! 信じてほしいノーネェェ……」
「いえ、そうではなくて」
瑠璃が何かを聞き出す前に、クロノスは土下座した。若干引きつつ、瑠璃は訂正する。
「ニョ? では、何ナノーネ。ワタクシ、何か怪しいことを言ってしまったノーネ?」
「はい。返り討ちになってしまうかもしれない、と。それはもしかして、兄もですか?」
「…………」
一瞬の無言。
その後、クロノスは立ち上がり、険しい顔で言う。
「……ワタクシは、貴女の兄のことを信じてるノーネ。彼ならば、シニョール隼ならば簡単に負けはしないと。……ですが、それでも。可能性はゼロではないノーネ」
クロノスが教壇に備えられたボタンを押すと、背後に巨大な電子黒板が現れた。普段はこれを使って授業を行うらしい。
……画面に表示されたのは、見たことがないカード。白き翼を持つ、黄金の剣士。
「先生、これは?」
「《
「ナンバーズ?」
「数字を持つモンスターエクシーズ。それがナンバーズと呼ばれるカード達ナノーネ。初めに言っておくと、我々は全ては把握しているわけではないノーネ。このカードについてはまだまだ研究途中であり、分からないことがまだまだいーっぱいあるノーネ。
ですがこのカード、
「分かりました、じゃあ行こう!」
「え? ちょ――」
瑠璃は跳ねるように立ち上がり、ユートの腕を引いてそのまま教室の外へ飛び出した。
「んな!? 待ちなさいシニョーラ! 話はまだ終わってませンーノ!」
「先生、マスコミの手が回ってない非常出口を教えてください!」
「それなら地下にあるノーネ!」
「ありがとうございます!」
「――ハッ!? そうじゃないノーネ、待つノーネ!!」
瑠璃が先導し、後ろにユートが続く。いかにクロノス教諭といえど、若さ・無鉄砲さには敵わない。二人との距離は自ずと離れていき、やがて見えなくなった。
「……これが兄妹か」
「ん? 何か言った?」
「いや、なんでもない。それより先生の話、聞かなくてよかったのか?」
「危険ってことが分かったら十分よ。スタートが遅れたから、何とか取り戻さないと」
「取り戻すって、競争じゃあるまいし」
「……いいえ。これは、競争よ。犯人が次に行動を起こす前に、私達が捕まえないと」
彼女の目に迷いはなかった。黒咲(兄)ですら敗北の可能性がある。その時点で相手がどれほど強いか察せるだろう。
それでもなお、前を見つめている。力の差を恐れず、自分が信じるやり方を貫こうとしている。
「――。ああ、そうだな」
ユートの口元に笑みが浮かぶ。いい目をしている、と思ったのだ。
「ユートだ」
「え?」
「自己紹介がまだだったろう。俺はユート。君は?」
「……あっはは」
「む……なぜ笑う」
「いや、だってさ。こんなときに自己紹介なんて」
「いいだろう、別に」
「そうだね。
――私の名前は、黒咲瑠璃。君と同じ一年生。よろしくね、ユート」
超量が登場した時はヒーロー物が大好きな友人キャラが暴走して~な話を書こうと思ったが、友人になるまでの過程を書くのが面倒だったので断念。
その点デジタル・バグは楽だった。とりあえずハッキングさせとけばなんかそれっぽくなる。
ナンバーズは手頃な敵役として凄い便利だったので名前だけ拝借。ZEXALとは特に関係ない。