「ねぇ、響。昨日は夜中に何をやってたの?」
「え、いや、未来?その、近いんだけど……」
「ねぇ、響……」
「お、落ち着いて……は、話すから落ち着いて顔離して。キスしちゃいそうなほど近いから…………あと怖い……」
武装集団フィーネの宣戦布告があった翌日。響は軽くピンチにあっていた。先日、家に帰った時に未来はまだ帰ってきて居らず、居ないんならと翼とクリスと共にカラオケに行ったのだが、何も言わずに出ていったのがマズかったらしい。
深夜近くまでカラオケに居たからか帰ってきた時に響の親友でありソウルメイトの小日向未来は寝ていた。故に、昨日は何をやっていたのかと問いただされている。壁ドンされて顔をキスまで数ミリまで近づけて。しかも目に光が無い気もする。
ノイズとの死闘に加えてフィーネとの戦い、そのフィーネが引き起こした月の欠片一本背負いを何とかするためになんやかんやで宇宙まで行ったルナアタックを経験した響でさえ震えていた。と、言うか漏らしそうだった。割とマジで。
「あ、あのですね……その、帰ってきた時に未来が帰ってきてなかったからカラオケ行ったらつい時間を忘れちゃって……いつの間にか深夜になってまして……」
「……それだけ?」
「うんうんうん!それだけそれだけ!ワタシウソツカナイ」
初めてノイズと戦った時並に怖かったと後に響は語る。
「……よかった。何かあったらあの二人を殺……オハナシしてたところだったよ」
「い、今殺すって……」
「なぁに?」
「いえ何も!」
幾らOTONAの特訓により世紀末ボディを手に入れた響でもガチギレ(?)した親友には到底勝てないらしい。そして未来が呟いたことは聞かなかった事にした。じゃないと精神衛生上よくないと判断した。
その後は嘘のようにいつも通りになった未来と共に登校をした。途中、クリスを見かけたが横にいる未来からの謎の威圧感により話し掛けることが出来なかった。フィーネを目の前にした時よりも恐怖した。
何だかルナアタックが終わってから未来がよくくっついて来たり甘えてきたり一緒にお風呂に入ったりする事が多くなった。ついこの間は深夜に少しだけ目が覚めた時、布団の中でゴソゴソと響の名前を呼びながらなにかしていた。確実に何かした場合の響を仕留めるためのイメージトレーニングだと思考が行き着いた響は何も言わずに再び夢の世界へ旅たった。じゃないと口封じに記憶を飛ばされそうだったから。
最近、ギアの外見がXDモードを一度経験した事により変わった時を境目に歌う歌が変わったが、その時に未来への恐れからかそれを題材にした歌が流れそうにもなった。勿論、それは気合でなんとかして以前のようにカッコイイ歌になったが。そろそろ腹を割って話すべきかもしれないと響は考えている。
「はぁ……」
教室についてから響は窓の外を見て溜め息をついた。その理由は昨日戦った(圭)としか言えないスーツか何かよくわからない物を身にまとった少女とクリスと戦っていた砲撃を撃ってた少女、それと翼が戦っていたマリアの事だ。
彼女達は言葉を解せないノイズではなく、人間だ。話せば分かり合えるかもしれない。昨日はつい世紀末ボディでぶん殴ってしまったが。でも、殴り合い宇宙という言葉があるくらいだ。一回ぐらい誤差だろう。
「それにしても響。どうかしたの?何か考えてるようだけど」
と、考えていたら未来が声をかけてきた。忍者みたいに完全に気配を消しながら背後にやって来て。
「ヒッ……み、未来?」
思わず短い悲鳴が出たが、相手が未来だと分かって一応安心した。が、何故かあまり安心できてなかった。自問自答しても特に答えは出なかったため、いつも通り接する事にした。
「で、どうかしたの?」
「あ、うん……昨日戦った子達がね……」
「昨日?それって、マリア・カデンツヴァナ・イヴさんの事?」
「うん、それもあるんだけど、他にも二人いたみたいで……」
「へぇ……」
響は調と戦った訳だが、彼女の『目』を見ることが出来なかった。それはかつてのクリスのように自分の中の正義を貫くためにやっている事なのか、仕方なくやってる事なのか、それともただテロを起こし人が恐れ逃げ惑う姿が見たくてやっている正真正銘の悪なのか。それが分からなかった。
だが、昨日言葉を交えた時はかなりキツイ事を言われたのは覚えている。「偽善者」、「貴方のような甘い人間が多すぎる」、「綺麗事で戦う奴」。様々な罵倒をあの少女から受けた。確かに、響は理想を信じ、その手に掴み取るため戦っていると言ってもいい。自らの正義を信じている。故に、言葉が通じる相手とは戦いたくはない。話し合いで解決したい。
「何か言われたの?響がそんなに考え込むなんて」
「それ、なんか端的にお馬鹿って言われてる気がしないでもないんだけど…………話し合いで解決したいって言ったら偽善者とか言われちゃってね。それで」
「へぇ……響にそんな暴言を……」
あ、やっちまったと思ったのはここら辺だった。未来の瞳から光が消えてどこから取り出したのかカッターナイフを手に持っている。
「ちょっと用事思い出したから行ってくるね」
「ちょっ、ちょっ、未来!?今から授業だし刃を全開まで剥き出しにしたカッターナイフを使う校外での用事ってどんな物騒な事!?それになんか殺すとか呪詛吐いてるように聞こえるよ!?これは私の問題だから落ち着いて、ホントお願い!!」
外に出ていこうとする未来とその腰にしがみついて何とかその場に留める響。シンフォギアを纏わないと完全に止めれそうにない未来が止まったのは先生が教室に入ってきてからだった。
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「それでデスね、可笑しいのはそれをザバーっとご飯にかけたことなんデスよ!」
「よくそれ聞くけど、結局ご飯にザバーっとかけるものって何……?ふりかけ?」
「調、これは一生の謎なのデス」
「いや、きりちゃんから言ったことなんだけど……」
場所は変わって一週間後の武装組織フィーネ(構成員一桁)のアジト、の中のシャワールーム。二人は並んでシャワーを浴びながらそんな他愛もない会話をしていた。調が血走った目で何処ぞのSAKIMORIより少し大きい切歌の胸を凝視していたりするがそれは些細な事だ。口癖が「くっ……」なアイドルでマスターやってる青い人と同じ胸囲の調はそんな切歌(の胸)が羨ましかった。寄せて上げる程もないのだから。
「それにしても調……さっきから元気無いデスよ?私の胸凝視してきたりしてますけど……やっぱりあの筋肉ムキムキマッチョウーメンの事デスか?」
「大体あってるからツッコミはしないけど……あんな口先だけでやってる事世紀末な奴が英雄なんて……私は認めない」
「いや、やってる事世紀末だからその過程でルナアタック成功したんじゃ……」
「困ってる人を助けたいって言うのならどうして……」
切歌のツッコミを一切合切無視して無理矢理話を進める調。壁を殴ろうとしたら切歌の乳をガッチリ掴んでるのも些細な事だろう。
切歌が苦笑いしながら調の手をそっと「そうだね、本当にやらなきゃならないなら例え悪いと分かっててもやらなきゃならない事だって……」と言いながら退かそうとするが、なかなか離れない。どれだけ自分の胸にコンプレックス持ってるんだこの子は。
切歌が痛い痛いと言いながら調の手を何とか離そうとしてる時、マリアがそれを見ないようにしながら入ってきてシャワーを浴び始めた。
「それでも、私たちは私たちの正義とよろしくやっていくしかない。迷って振り返ってる時間なんてもう無いんだから……」
「調、ほんとに痛いデス!もげますから!!」
「巨乳なんて皆もげてしまえ!」
「なんか怒りの矛先変わってます!!」
「あの世紀末女とSAKIMORI女すらあるのになんで私だけまな板なの!!」
「知らないデスよ!!」
マリアのいい言葉も(一方的に)乳こねくりあってる人には届かなかった。
ちょっとイラッとしたので壁ドンしたら手を痛めたのはちょっとしたお茶目だろう。
だが、その瞬間、けたたましく警報が鳴り響き、シャワールームの外からガシャンガシャンと隔壁が下がる音が響いた。ここでやっと調は切歌の胸から手を離し、さっさと服を着て自分達のマム、ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤの元へと走り出した。その間、切歌は胸を抑えたままだった。
そして一方、件のナスターシャは万能車椅子に座りながらモニターを確認していた。そこには、オレンジ色のラインが入った図鑑になんて絶対に載ってない生物を見ていた。
(共食いすら厭わない飢餓衝動を持つ怪物、ネフィリム……やはりいささか人の身には過ぎた……)
片目で見るモニターに映るネフィリムは何かを捕食しているようだった。バリバリと嫌な音も響いてくる。
「ネフィリムが人の身に余る先史文明期の遺産……だ、なんて考えないでくださいよ?」
そこに入ってきたのは白い髪に白衣を着たメガネの真っ白な男。一週間前のあの戦いの数時間前、響とクリスに救出された男。
「Dr.ウェル……」
本名、ジョン・ウェイン・ヴェルキングクリクス。如何にも怪しい科学者という雰囲気を醸し出す男だ。
「例え、人の身に余っていたとしても、英雄の身の丈に合っていればそれだけでいいじゃないですか」
こんな物が英雄の身の丈に合うものなのかは怪しい物だが、ナスターシャが何かをいう前にマリア達が入ってきた。
「マム!今の警報は!?」
敵襲かとマリア達は疑っていたが、そうではなかった。
「次の花はまだ蕾が故、大切に扱いたい物です」
「謎ポエム乙……」
「ア゛ァ!!?今言ったの誰だ!!」
「心配してくれたのね、でも大丈夫。ネフィリムが少し暴れただけ。隔壁を下ろして餌を与えたから時期に収まるわ」
「無視か!?この僕を無視するのか!?」
「それよりも、そろそろフロンティアへの視察の時間ね。ここは大丈夫かしら?」
グチグチと文句を言う男らしくないウェル博士にナスターシャは言った。
「くっ……こっちは留守番ついでに食料調達の算段でもしておきますよ」
「では、調、切歌、留守番を頼みますよ」
「どうせならそちらに戦力を集中させた方がよいのでは?」
軽くぶっきらぼうにウェル博士は言うが、スルーして早めに帰ってくる事だけを伝える。
その後、二人は出ていった。
「さて、撒いた餌に獲物は掛かってくれるでしょうか……」
ウェル博士は一人呟いた。
393はレズ。はっきりわかんだね。そして響は脳筋。はっきりわかんだね
そして調ちゃんは自分の72な胸にコンプレックスを持ってるようです。そんな彼女もきっと石村なら大活躍してたのでしょうね
このSSは不定期にこんな感じでシリアル一割シリアル二割寒いギャグ七割でお届けいたします
ウェル博士の本気はもうすぐ出ます