その瞳に映る世界   作:竹鶴永寿

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続けて二話も投稿します。本当はストック作って小出しにしたかったのですが、一話が短いので、二話も勢いで出します。楽しんで頂けたら幸いです


前兆

目覚めは、最悪だった。今でも朧げにだけど覚えている。5年前の大火災の日の夢。『私』が、『俺』だった時の夢。

「……最悪です」

朝から嫌な夢を見た。快眠できたという訳でも無いが、二度寝をする時間もない。今日は学校がある。取り敢えず、寝汗で貼り付く前髪の不快感を無くすため、手短にシャワーを浴びた。

「………」

脱衣所の鏡に映る自分の姿を見て、いつも顔が引き攣る。

腰まで届く黒髪。同じく黒い瞳。肌は白く、手足は華奢で、背丈も4月の身体検査の時の記録では154㎝だった。別に「私可愛い!」とか思ってベラベラと自分の容姿を語った訳ではない。私は元々『男』で、今、鏡に映るような慎ましやかな胸も無ければ、下半身にあった筈の部位が足りないなんて事も、本来ならあり得ない。

全てはあの日。5年前の『誰か』に貰った『力』とやらに起因していると思っている。必死で逃げて、次に気が付いた時には病院のベットの上で、この姿になっていた。あの時貰った『力』は、この5年間で未だに発現した事もないが、去年から私も高校生になって、今は『都立来禅高校』に2年生として通っている。

「今…… 何時でしょう?」

我に返って時計を見た。この瞬間、私の遅刻が決定した。

 

別段面白い事も無い学校が終わった。突然の空間震警報で避難した4月10日の空間震以来、学校からシェルターに行くというような事もない。思い返してみればあの日、同じクラスの男子が避難の混乱に乗じて何処かへ行くのを見た。シェルターで気になって担任の岡峰珠恵先生。通称『タマちゃん』と呼ばれるどう見ても私達と同年代にしか見えない小柄で童顔の先生に確認すると、あの時何処かへ行ってしまった生徒は、『五河士道』という生徒らしい。ちゃんとシェルターに着けたか気になって探したが、彼の姿は何処にも無かった。

あの日から、私は彼をそれとなく観察する毎日を送っている。別に惚れたなんて訳じゃない。ただ興味を持った。あの日シェルターに居なかった彼。誰にも気付かれず、気付いたら最初から居たかのように戻っていた彼。でも、私の『目』は誤魔化せない。私は彼を気付かれない様に遠くから眺めるのが癖になっていた。

 

気付いたら家の前に居た。取り敢えず家に入り、着替えて一通りの家事を片付ける。5年前の大火災の日に女になった私は、奇跡的に生き残った親や遠縁の親戚を頼ることも出来ず、施設に居たので。衣、食、住は確りあった。高校に入ると同時に今のマンションに移り、一人暮らしを始めている。家の事も、家事も終わり、後は寝るだけとなった時、私はいつも目薬を指す。最近は目が乾燥するのか、目薬を指す頻度も上がっている。特に病気という訳でもないのが、少し気持ち悪いとおもってしまう。

 

――夢を見た。

暗闇の中。誰かが私に向けてただただ、微笑みかけている夢。暗かったけれど、それが女性だということ、そして、誰かに似ていた事を覚えている。

「後少しですよ。『貴女』は『私』で『私』は『貴女』。『力』の発現はもうすぐです。…ふふっ」

そして、その女性の『瞳』は、燃えるように紅かった。

 

 




これで私のストックは無くなってしまったので、少し不定期になりますが、投稿を辞めるなんてことは無いので、今後ともよろしくお願いします。そして、三話から原作に沿っていこうと思います
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