その瞳に映る世界   作:竹鶴永寿

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長くなると言ったのですが、取り敢えずきりが良かったので、投稿します。お楽しみ下さい


自称精霊転校生

6月5日、月曜日の朝。

「………」

私は朝から少々苛立っていた。最近、寝付けないのだ。理由の7割程は最近よく見る夢の内容だった。別段悪夢という訳ではない。ただ、毎回同じ夢であることが、不気味だった。大抵は毎回同じ女性が私に微笑みかけ、一方的に何かを言って終わるのだ。ただ、一度だけ少し夢の内容が変わった時がある。暗闇の中、女性が現れ、微笑みかける。ここまでは同じ。本来ならここで夢は覚めるのがいつものパターンだった。だが、そのまま夢は続き、女性が近くに歩いてくる。そのまま、右手で私の頬を包み、頬をなぞるようにその細い指を這わせた後、手品のように、私の『瞳』を『取り出した』。痛みは無くて、ただ、何事もなくその光景を私は眺めた。その女性は、自分の右の紅い『瞳』も同様に取り出し、私の『瞳』を嵌め込んで、数秒ほど瞼を閉じると、私の『瞳』は定着したようだった。女性は私を見て微笑み、自分の紅い『瞳』を、私の右目に同様に嵌め込んで、そのまま消えた。その夢を見た日から、時々右目が痛む。夜を徹して踞り、痛みに堪え、眠れない。それが残りの3割だった。苛立っていることが周りに伝わっているのか、私の近くの席の者は皆、SHRの直前に帰ってきた。だからだろうか、私が『それ』を知ったのはSHR時、担任の岡峰先生が転校生が来たことを伝えたときだった。

 

「わたくし、精霊ですのよ」

この瞬間。教室から一瞬、音が消えた。転校生が女と知り、舞い上がって歓声を上げていた男子も、それを呆れと侮蔑の入り交じった目で見つめる女子も、皆一様に怪訝な顔を浮かべていた。無論、私もその皆の例に漏れず、あぁ、ちょっとイタい子なんだ。と、思った。黒髪を二つに結わえ、肌は真珠のように白く滑らかで、襟元から覗く首は、少し力を入れて握れば折れてしまうのではないか、と思える程に細い。顔は恐ろしく端整な顔立ちをしている。しかし、前髪が異様に長く、顔の左半分を覆い隠してしまっている。私は転校生を見るのを止め、黒板に視線を移した。そこには、白いチョークで彼女の名前が書かれている。

『時崎狂三』。とても綺麗で、魅惑的な、少しイタい子。

ふと、五河士道君が、どんなリアクションをしているのか気になった。彼は私の学園生活において、退屈を忘れさせてくれる。最近では、周りに転校生の『夜刀神十香』、優等生の『鳶一折紙』が居るため、横目で少し観察しようにも、鳶一さんが私が見るとすぐに此方を向くので、まともに観察出来ないのだ。しかし、横目で恐る恐る見ると、三人とも固まっていた。女子の二人はそれでも割と普段通りに見えるのたが、中心の五河士道だけが、冷や汗を流し、肩が震えていた。

「え……ええと……はい!とっても個性的な自己紹介でしたね!」

時崎さんがそれ以上何も言わないのを確認し、岡峰先生は終了を示した。

「それじゃあ時崎さん、空いている席に座ってくれますか?」

「ええ。でも、その前に、一つお願いがあるのですけれど」

「ん?なんですか?」

岡峰先生がそう言うと、時崎さんは指を一本立ててあごに当てた。

「わたくし、転校してきたばかりでこの学校のことがよくわかりませんの。放課後にでも構いませんから、誰かに案内していただきたいのですけれど」

「あ、なるほど。そうですねぇ……じゃあクラス委員の――」

時崎さんは先生の言葉の途中で歩きだし、五河士道の席の前で止まった。

「ねぇ――お願いできませんこと?士道さん」

「お、俺……?ていうかなんで名前を――」

「駄目ですの……?」

時崎さんはさも悲しそうな顔をした。あぁ、あれは断れないだろうなぁ…と、私でも思った。

「い、いや、そんなことは……」

「じゃあ決まりですわね。よろしくお願いしますわ、士道さん」

私は思った。

――あぁ、彼女は男を手玉にとる悪女だろう、と。

時崎さんは微笑むと、クラスメートの視線の中、軽やかな足取りで指定された席に歩いていった。

――私の隣の席に。

 

別段その日は転校生が来たことを除けば何か有るわけではなく、時崎さんは転校生らしく、休み時間、昼休みの両方の時間をクラスの質問攻めにあっていた。だから、私は話していない。朝の発言には、少なからず興味を引かれるので個人的に話してみたいのだが、別段今聞く事でもない。

 

帰りのホームルーム中。岡峰先生の連絡事項を伝える合間、時崎さんは隙をついて五河君に視線を送り、小さく手を振っている。五河君も五河君で、両隣の二人からの冷たい視線を受けながら、苦笑混じりに律儀に振り返している。割と本気で彼の胃に穴があくのではないかと思っていると、岡峰先生の話が終わった。

「連絡事項はこんなところですかね。――あ、それと、最近この周辺で、失踪事件が頻発しているそうです。皆さん、出来るだけ複数人で、暗くなる前におうちに帰るようにしてくださいね」

今朝のニュースで聞いていた。天宮市の名前が出ていたので、男だった自分ならまだしも、女になった自分では、拐われても何も出来ないかもしれないと思い、朝から気分が沈んだのを覚えている。

 

下校時刻。私はやることがない。部活をしている訳ではないので、少し五河君と時崎さんを追いかけるのも良いかもしれない。そう思って、五河君の方を見ると、何かを耳に入れるような動作をしている。少し、気になった。

 

時崎さんが五河君の肩をつついて五河君が驚き声を上げた。その声以外は、私の席では聞き取り難いので、先に教室を出ておいた。暫くすると、二人が出てきた。さて、耳に何を入れたのかだけでも、確認しましょうか。

 

 

 

 

 

 

 




二千文字って……ごめんなさい。やはり文字数が私から見ても少ない感じがします。まだまだ原作に突入して全然話的には進んでませんが、これからも頑張ります。読んでいただきありがとうございます。
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