PM 3:46
ここは喫茶翠屋。普段から多くのお客で賑わうこの喫茶店は現在、学校帰りの学生が多く、店内はそこそこ賑わっていた。
「いやぁ~最近は平和やねぇ」
「はやて、何かおばさん臭いよ?」
「う……そ、そんなこと言うたかて、ここ最近は管理局の仕事もそんなに無いし、こうして放課後にのんびりお茶なんてしてたら仕方ないやん」
「にゃはは、平和なのは良いことだよ」
その一つのテーブルでは女子中学生グループが楽しく談笑していた。
「そう言えばアリサちゃんとすずかちゃんは?」
「今日は二人共、バイオリンの稽古って言ってたの忘れたの?」
「はやてちゃん、もしかして平和ボケ?」
「あっはは、そうかもしれへんな!!」
「もう……しっかりしてよね、はやて」
「そんなに心配せんでも事件なんてそうそう起きるわけが……」
《
《It's a
はやての言葉を裏切るかのようにデバイス達が謎の魔力反応を感知する。見事なフラグ建築からの回収に、なのはとフェイトから冷たい視線が送られる。
「……はやてちゃん」
「ごめん、はやて。流石の私もこれはフォローできないよ」
「私か!?私が悪いんかッ!?」
そんな親友二人からの冷たい視線にはやては軽くショックを受ける。
「と、とにかく現場に急行や‼」
「そうだね、のんびりお茶なんてしてる場合じゃないもんね」
「そうそう、平和ボケしてる誰かさんにはしっかり働いてもらわないと」
「私が何したって言うんやぁああああああッ‼」
はやては泣き叫びながら誰よりも早く翠屋を飛び出していった。
「……ちょっとやり過ぎたかな?」
「たまにはこのくらい良いんじゃないかな?平和ボケしてたのは事実だし」
「あんまり言うとはやてが可哀想だよ」
「にゃはは……はーい、反省してまーす」
「……ほんとに反省してるの?」
「うん、してるしてる。ほら、急がないとはやてちゃんが待ってるよ‼」
「あ……待ってよなのは‼」
そんなやり取りをした後、二人は席を立つ。
「後でちゃんと謝るから。ね?フェイトちゃん」
「それなら良いけど…」
そして、はやての後を追うように二人も翠屋を飛び出していった。
◇◇------------------◇◇
一方、清麿とガッシュは人気の無い薄暗い路地裏で倒れていた。
「う………ん……ここ…は?」
清麿は目を覚ますと周囲を見回して状況を確認する。
「確か……俺とガッシュの石の欠片を合わせたら石が光り出して………えっと…それから……」
徐々に意識と記憶が鮮明になっていくと自分の傍で気を失って倒れているガッシュを気が付く。
「なっ……お、おい‼しっかりしろガッシュ‼」
「ウ……ウヌ…ゥ……清…麿?」
無事に意識を取り戻したガッシュに清麿は安堵する。
「……清麿、ここはどこなのだ?」
「さあな、俺にも分からん。どこかの路地裏ってことぐらいしか……」
改めて清麿は周囲を見渡してみるも、見覚えの無い薄暗い路地裏と言うこともあって現在地は分からなかった。
「とにかく、ここに居ても埒が明かないな。まずはこの路地を抜けるぞ」
「ウヌ」
そして、二人は路地を道に沿って歩いて行った。
◇◇------------------◇◇
ここ市街地では、すれ違う人の殆どが目を引く女子中学生が二人いた。いや、厳密に言うと注目を集めているのは片方の金髪女子中学生であった。
「ああもう!!何なのあれ!?人が折角バイオリンを習いに来てきてあげてるのに、いきなり急用ができたから今日はお休みってどうなの!?」
「ま、まあまあ落ち着いてよ、アリサちゃん。別にそんなに怒らなくても……」
その理由がこれだ。予定していた稽古を土壇場でキャンセルされ、酷くご立腹な様子のアリサは端から見ても恐怖を与えていた。
「あのね、すずか。私はね、時間を無駄にすることが嫌いなの‼急用なら急用で連絡くらいしてきなさいよね‼」
「きっと何か事情があったんだよ。だからそんなに怒らないで。ね?」
アリサの行き場の無い怒りを受け止めつつ、隣を歩くすずかは何とか宥めようとする。
「あーあ、こんな事ならなのは達と一緒にお茶しに行けば良かったわね」
「今からでも遅くはないよ。ほら、なのはちゃんに電話してみよ?」
「はぁ……それもそうね」
鞄から朱色のスマートフォンを取り出すとアリサはなのはへ電話を掛ける。
「………おかしいわね。なのは、出ないわよ」
数コールほど待ってみたが、なのはが電話に出る気配が無いと感じたアリサは通話を終了させ、代わりに今度はフェイトに電話を掛ける。
「……駄目ね。フェイトも出ないわ」
「こっちもはやてちゃんに掛けてみたけど繋がらないみたい……」
三人揃って連絡が取れないことに二人は妙な胸騒ぎを感じた。
「今日って管理局のお仕事だったっけ?」
「ううん、今日は休みだから翠屋でお茶するって帰りに言ってたよ」
今日の放課後、帰り際にフェイトから聞いたことを思い出してすずかは答える。
「……もしかして誘拐?」
「まさか、あの三人に限ってそれは無いわよ。仮にもしそうだったとしても、なのはが一発デカイのお見舞いすればすぐに終わるわ」
「あはは……そ、そうだよね」
アリサのあまりに物騒な物言いにすずかは苦笑いを浮かべる。
「何か魔法関係の事件でもあったのかな?」
「やっぱりすずかもそう思う?」
「……うん」
これで、二人のこれからの行動は決まった。
「じゃあ取り敢えず翠屋に行きましょ。桃子さん達なら何か知ってるかもしれないし」
「そうだね」
そして、まさに二人が翠屋に向かおうとしたその時だった。
「きゃあああああああああッ‼」
突然、若い女性の悲鳴が聞こえた。周囲の人もその声に反応して視線を向ける。
「引ったくりよ‼誰かその男を捕まえてッ!!!」
そう女性が叫ぶと、人の群れを掻き分けてサングラスとマスクで顔を隠した男が走ってきた。
「邪魔だ、退けッ!!!」
「きゃっ……‼」
その引ったくり犯は目の前のすずかを突き飛ばして走り去っていく。
「すずか!?」
アリサはすぐに倒れたすずかに駆け寄った。
「大丈夫!?怪我とかしてない!?」
「……う、うん。全然平気だよ」
怪我が無いことにアリサは安堵すると、すぐに逃げていった引ったくり犯の背中を睨み付ける。
「あんの野郎‼すずかにこんな事して、ただじゃ置かないわよッ‼」
「えっ……アリサちゃん!?ちょっと待って‼」
鎮静した先程の怒りが再噴火したアリサは、すずかの制止も聞かずに鞄を放り出して引ったくり犯の後を追い掛けていった。
「ど、どうしよう……えっと、は、早く警察に電話しなきゃ……あ、でもアリサちゃんを放っておくわけにはいかないし……でもでも…」
そんなアリサとは対照的に、突然の出来事に頭が回らずにオロオロと混乱するすずかの足はその場から動かない。
「も、もう!!待ってよアリサちゃんッ‼」
遂には考えることを諦め、その場の空気と勢いに任せてすずかは足を動かす。そして、アリサが放り出した鞄を拾い、彼女も引ったくり犯の後を追い掛けていった。
◇◇------------------◇◇
翠屋を飛び出したなのは達は魔力反応があった場所の近くまで足を運んでいた。
「ねぇ……さっきの事は謝るから許して。ね?」
「私達が悪かったから」
なのはとフェイトは拗ねたはやての機嫌を取ろうと必死になっていた。
「ふーんだ……どうせ私は平和ボケしたおばさんですよーだ」
「もう………そんなこと言わないで。ほら、後でケーキ奢ってあげるからそれで許してよ」
「何でも好きなもの頼んで良いから。ね?」
なのはとフェイトの言葉に、はやては少し反応を示した。
「……何でもええんやな?」
「うんうん、それはもちろん」
「約束はちゃんと守るよ」
その言葉を聞いてはやては不敵な笑みを浮かべて言った。
「そう言うことなら翠屋のケーキに免じて今回のことは許したるわ」
一瞬にして機嫌を直し、はやては上機嫌で歩いて行く。そんなはやての変り身の早さに、なのはとフェイトは呆気に取られていた。
「もしかして……はやてちゃん、最初からこれが狙いだったのかな?」
「やられたね、なのは」
顔を見合わせ、二人は互いに苦笑いを浮かべる。そして、はやての将来に大きな期待と少しの不安を抱きつつ、彼女の後を追い掛けていった。
◇◇------------------◇◇
PM 4:20
三十分以上も路地を彷徨った末、清麿とガッシュの二人は市街地に出ることができた。
「ふぅ……何とか路地を抜けれたな」
「まるで迷路のようだったのだ……」
道中ではガッシュが野良犬に襲われたり、清麿が不良に絡まれそうになったりと問題が続き、二人の顔には少し疲労の色が見えていた。
「さて………路地を抜けたは良いが、ここがどこかはさっぱりだな」
「ウヌゥ……困ったのだ」
そして、行く宛も無く、完全に途方に暮れていた時にそれは起こった。
「こらぁああああ‼待ちなさぁああああいッ!!!」
そんな怒声が市街地に轟く。
「何の騒ぎだ?」
「ウヌ?」
二人が視線を向けると、そこには人相を隠して女物のバッグを抱えて走る男と、それを追い掛けるアリサの姿があった。
「あれってもしかして……」
「あの者達は鬼ごっこでもしておるのかの?」
ガッシュの無意識で絶妙なボケに、清麿は声を荒らげ、その光景を指差して言った。
「どう見ても引ったくりだろうがッ‼」
「何ッ!?そうなのか!?」
まるで危機感の無いガッシュに頭が痛くなる清麿だが、状況は差し迫っていて気付けば引ったくり犯との距離は約5メートルにまで近付く。
「ガッシュ!!」
「ウヌ‼」
「退きやがれッ‼」
全く脅しに怯まない清麿に対し、痺れを切らせた引ったくり犯は拳を乱暴に奮う。だが、清麿はその拳を寸前で躱し、彼の足を引っ掻けて一言だけ告げる。
「良い年した大人がみっともない真似してんじゃねぇよ」
「なっ……!?」
間髪入れずにガッシュは体勢を崩した引ったくり犯の懐に入り込む。
「お主は母上から泥棒は悪いことだと教えてもらわなかったのか!!」
「ちょっ……お前、何言ってやが…」
戸惑う引ったくり犯を無視してガッシュはその腕を掴む。
「ぬぉおおおりゃああああああああああッ!!!」
そして、先程の拳の勢いに乗せて一気に背負い投げた。
「がはっ……!!!」
地面に背中を強く打ち付けられた引ったくり犯はその痛みに悶えている。
「はぁ……はぁ…はぁ……どうやら鬼ごっこは終わりみたいね。さあ、観念なさい!!」
「何ッ!?ほら見ろ清磨、やはり鬼ごっこだったではないか‼」
「いや、違うからな」
そこで清麿は引ったくり犯の手から離れたバッグを拾い、汚れを手で簡単に払ってからアリサに訊ねる。
「このバッグは君の?」
「えっ……ああ、そのバッグは私のじゃないわ。私はただこいつを追い掛けて来ただけで、被害者は別の…」
そこで彼女の言葉が途切れる。
「このっ……クソガキ共が…‼」
先程まで背中の痛みに悶えていた引ったくり犯がヨロヨロと立ち上がり、ポケットからナイフを取り出す。その表情はサングラスとマスクで隠されているが、声質で苛立ちと怒りが籠っている事は明らかだった。
「ちょっと何の騒ぎ?あ、もしかして殺人事件とかかな?」
「えッ!?や、やだ、怖いからやめてよね!?」
「変質者じゃないの?」
「なぁ……誰か警察に電話しろよ」
「いやいや、流石にもう誰かがしてるっしょ」
周囲にはこの騒ぎを嗅ぎ付けた野次馬が集まり始める。
「チッ……‼」
次第に野次馬の数が増えてくると、引ったくり犯は舌打ちをして車道へ飛び出し、バッグを諦めて逃走を計る。
「あ、こらッ‼待ちなさい!!!」
それに気付いたアリサは同じく車道へ飛び出して引ったくり犯の後を追う。
「お、おいッ‼無闇に飛び出すな‼」
清麿の制止の声が届いた時には遅かった。二人が車道に飛び出した直後、一台の車が走ってくる。
「うわぁあああああああッ!?」
車道に飛び出して来た引ったくり犯に気付いた車の運転手は慌ててハンドルを切る。
「えっ……?」
だが、不運にもハンドルを切ったその先には同じく車道に飛び出していたアリサがいた。
「なッ……!?き、清麿!!」
「分かってるッ!!」
清麿の行動は早く、瞬時に赤い魔本を開いて呪文を唱えた。
「ラウザルク!!!」
空からガッシュの体に
「ぬ…ぉ……おおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
車は徐々にスピードを落とし、やがてはエンジンから白い小さな煙を出して停車した。
「はぁ……はぁ……と、止まったのだ…」
そうガッシュが安堵の声を零した直後、ラウザルクの効果は消える。
「ふぅ……よくやったぞ、ガッシュ」
「ウヌ‼」
清麿はガッシュの頭に手を置いて今の頑張りを誉めると、ガッシュも嬉しそうに応える。
「な、何なの……今の…」
その場で座り込み、半ば放心状態でアリサはその光景を見詰めていた。
「えっと……君、怪我とかしてないか?」
「……へ?あ、ああ……うん、大丈夫……大丈夫なんだけど…」
「……けど?」
清麿の問いに彼女は言葉を濁すが、最後には観念したかのように少し頬を赤らめて言った。
「……腰、抜けた…」
「ぷっ……あはは、何だよそう言うことか」
「な、何よッ‼笑うこと無いじゃない!!」
「ああ、ごめんごめん」
今度は耳まで赤くして怒鳴る彼女に清麿は軽く謝罪すると、そっと手を差し伸べる。
「ほら、掴まれよ」
「……ふん」
沸き上がる羞恥心を必死に堪えて彼女は素直に清麿の手を取って立ち上がる。
「ねぇ……今の見た?」
「う、ううん……よく見えなかった…」
「でも凄い雷が落ちたよね?」
「ああ、それは俺も見たぞ」
「何だ?落雷事故か?」
野次馬が口々に騒ぎ出し始め、さらにはどこからかパトカーのサイレンの音まで聞こえて来る。
「……まずいな、野次馬が騒ぎ出し始めた。警察が来る前にここを離れないと…」
魔物絡みで起きた出来事に一般人は巻き込むことはできない。故に清麿達は早々にこの場を離れる必要があった。
「それじゃあ俺達はこれで失礼して……」
「はあッ!?ちょっ……待ちなさいよ‼まだこれから事情聴取とか事後処理とか色々あるでしょ!?」
「いや、えっと……そ、そうだ。俺達、ちょっと急用を思い出してさ、だから後は任せたッ!!」
そう一方的に用件を伝えると清麿はガッシュを小脇に抱えてその場から逃走し、二人の姿はあっという間に野次馬の群れの中に消えて行った。
「……行っちゃった」
残された彼女はまるで幻でも見ていたかのような感覚に包まれ、ただその場で呆然と立ち尽くすだけだった。
◇◇------------------◇◇
なのは達が魔力反応があった場所に辿り着くと、そこは何の変哲もないただの路地裏だった。
「ここ……だよね?」
「その筈なんだけど……」
突然の魔力反応にかなり警戒していたが、目の前に広がるその光景になのはとフェイトは拍子抜けする。
「まあ言うてても何も始まらんし、日が暮れる前に調べてみよか」
そして、なのは達は手分けして周辺の捜索を始めた。無論、魔法を使用して徹底的に調べる。
「……どう?何か見付かった?」
「ううん、特に変わった様子は無いよ」
「こっちも収穫無しや」
だが、特に異常は無く、手掛かり一つ掴めずになのは達は頭を悩ませる。
「そもそも魔力反応があったのに、その痕跡すら無いってどういう事や?」
「そうだよね、魔法を使ったのなら少なからず魔力残滓が残る筈なんだけど……」
「うーん……レイジングハート、本当にここで間違いないの?」
《
そんな僅かな可能性も、レイジングハートの一言で敢えなく打ち砕かれる。
《
その時、ここからそう遠くない場所でレイジングハートは新たに魔力反応を感知した。
「え?そこって確か…」
なのはが記憶を掘り返すよりも早く、はやてが声を荒らげて言う。
「ア、アカン、その辺りは市街地や‼もし何かあったらどんな被害が出るか分からんでッ‼」
最悪の事態を想像した時、全員の表情から余裕は消え、逆に緊張と焦りが見えていた。
「こんな事してる場合やない。すぐに市街地に向かうで、二人とも‼」
「う、うん‼」
言うが早いか、はやては市街地に向かって駆け出し、そんな彼女に続くようになのはもその後を追う。
「……あれ?」
フェイトもそれに続こうとすると、彼女は自分の視界の端で何かが光るのを捉えた。
「今、何か光ったような……」
光ったのは一瞬のことだったので、その位置を見失ってしまったフェイトは光の出所を探す。
「フェイトちゃん、何してるんや!?」
「急がないと街が大変なことになるかもしれないよ!?」
すると、はやてとなのはが痺れを切らせて声を上げる。
「ご、ごめん!!すぐ行くから‼」
そう言ってフェイトはもう一度だけ周辺を見渡すが、何も光ることは無かった。
「気のせい……だったのかな?」
そう自分に言い聞かせてフェイトもその場を後にした。
◇◇------------------◇◇
PM 4:53
警察が来て暫くしてアリサは事情聴取から解放され、疲れた様子で野次馬の中から出てきた。
「アリサちゃん‼」
そこに、野次馬の群れの外で待っていたすずかが不安の表情を浮かべてやって来る。
「もう、心配したんだからね‼」
「ああ、うん……ごめんごめん」
すずかの心配を他所に、アリサはどこか上の空で返事も生返事だった。
「どうしたの?何かあった?」
「………正直、今になって夢でも見てたんじゃないかって思えてきたのよね」
未だに起きた出来事への実感が湧かず、アリサは物思いに
「でも、あれは確かに現実だった。どうせすずかも見てたんでしょ?」
「……うん。かなり遠目からだったけど、確かに見たよ」
「そう、なら話が早いわね。さっきのあれ、すずかはどう思う?」
「あんまり魔法に詳しくないから断言はできないけど、魔法……だと思う」
「そうね、私も同意見よ。ただ……魔法は魔法でも、なのは達が使う魔法とは違うけどね」
間近で見ていただけに、すずかと同様に魔法に詳しくないアリサでもそれが自分達が知る魔法とは違うことに気が付いていた。
「確か魔法にはミッド式とベルカ式の二つの術式があるけど、見た限りさっきのあれはそのどちらでも無い全くの別物よ」
「じゃあ魔導師や騎士とは違うってこと?」
「うーん……私もそこまでは分からないけど、少なくとも未知の魔法であることは間違い無いわ」
そこからさらにアリサの推理は続く。
「恐らくさっきの二人はなのは達と同じ管理局の魔導師か、この街に逃げてきた次元犯罪者ってところかしらね」
「あ、たぶんそれは無いと思うよ」
その推理にすずかは控えめに異議を唱えた。
「ちょっ……は?それは無いって……何でそう言い切れるのよ」
「えっと……まず前者なら、この世界では魔法が秘匿されてることを知ってる筈だよね。仮に管理局の人だったとしたら、いくら緊急事態だったとしてもあんな目立つような魔法は使わないんじゃないかな」
「うぐっ……」
「次に後者だけど、こっちは単純に自分が追われてる立場なのに人助けなんてする人間はほとんどいないでしょ?」
「た、確かにそうね…」
見事に論破されて項垂れるアリサ。そんな彼女の様子を見て、すずかは苦笑いを浮かべて言葉を続ける。
「それにさっきは危ないところを助けてくれたんだし、私は悪い人達ではないと思うよ?」
「それはまあ……助けられたのは事実だけど、それとこれとは話が…」
「違うの?」
「……違いません」
返す言葉が無く、アリサは素直にすずかの言い分を認める。
「はぁ……その様子じゃお礼もちゃんと言えてないんでしょ?」
「し、失礼ね!!私だってお礼ぐらい……ッ!!」
そこまで言いかけてアリサは言葉に詰まる。改めて記憶を遡ってもそのような記憶は皆無だった。
「……い、言ってない……かも…」
「……………………」
すずかの冷たい視線が突き刺さる。
「だ、だってアイツらいきなりどっかに行っちゃうんだもん‼仕方ないじゃないッ‼」
「……………………」
「うっ……わ、分かったわよ‼行けば良いんでしょ行けばッ‼要はさっきの二人を探してちゃんとお礼を言えば良いんでしょ!?」
「……最初から素直にそう言えば良いのに」
「うるさいッ!!!」
そして、アリサとすずかは夕日に照らされ赤く染まる市街地を突き進むのだった。
To Be Continued.
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