真央霊術院の最強先生 作:ザクみたいなホロウ
やあ、山本くん。
大罪人だっけ?
調べたよ。居場所見つけた。
てことで、行こう。
えっ。行けない。仕事が多すぎて無理?
うーん。結局ボク一人だけで行くの?
しょうがないか。
散歩がてらに行ってみるとするよ。
VS卯ノ花編
「へえ。調べてみるもんだなー。」
そこは、流魂街でもハズレのハズレ。等級的に言えば最低にほど近い場所である。常に世捨て人や荒くれ者、喧嘩屋に異常者がウロウロしている、血の色が濃い地獄に最も近い場所である。
そんな陰鬱とした場所は、その日は何時にも増して常軌を逸していた。
普段、この最低で最悪な場所は鈍い音や咽び声、奇声で五月蝿い。どこからともなく流れる耳障りな泣き声は止むことを知らない。そんな背筋が凍るような、鳥肌が治らないこの場所は常に誰かに悲鳴で満たされていた。
そんな場所が静まり返っている。
一切の音を許さない全くの無音。その静寂が気味が悪い。気持ち悪い。
殺気が常に漂う。
ここでは特別珍しいことではない。殺気くらいならいつも漂っていた。だが、今回ばかりはその濃さが尋常ではない。常人なら五分ともたず失神するだろう。常に喉元に今にも食いつこうとする牙が突き立てられているようだった。
「一人できちゃったけど、やっぱまずかったかな。」
そんな空気をものともせず優雅独尊とばかりに歩く男、
彼は死神ではない。
死覇装を纏っておらず、深い海のような色の鮮やかな着物を流麗に着こなし、腰まである黒髪の長髪を後ろでまとめている。似合っているという言葉が一番似合う、全体的に完成された見た目である。
ただ、その背中には通常よりも20センチほど長い斬魄刀を背負っていた。
漂う殺気は足を進めれば進めるほど強さそして凶悪さを増す。
そして、もう一つ。その道を進めば進むほど血の匂いが増していく。
近い。
もう、霊圧の探り合いなど互いに要らず。平野の顔に真面目さが宿る。それはもう確信だった。
迷わず進んだ道の先。その広くなった荒野に。
居る。
影を捉えた。
そしてそれは突然だった。
刹那。
火花が飛んだ。
不意打ちなどではない。挨拶などとうの昔に済ませている。
ここは縄張り。大きな霊力を持ち、そこに居ると知りながら、その領域に踏み込んだその時、挨拶は終わり、既に戦場と成り果てた。
互いに強者。
ならばそこに語る言葉などなく、姿見えたその時から交えるのは刃で十分。
そのまま数度、交差する牙。火花が無数に飛び散った。
ダンスのように息の合う剣戟を終え、数歩下がることで体勢を整えた。
平野は少しだけ目を細める。
そこには大量の荒くれどもの死体が転がっていた。
だが今はそんなことどうでもいい。さっさと切り替えて、目の前の女を見定めた。
「・・・。」
「・・・。」
女は、言葉が出なかった。いや、この場においては言葉など無粋だろう。
何故ならその剣筋が既に多くの言葉を雄弁に語る。
その実力の差を。
たった数度の打ち合い。されど、そのたった数度の剣戟にこそ実力が現れる。
達人ならばなおさら。
斬りかかった女、修羅道を進まんとする剣鬼となっていた卯ノ花八千流は、目の前の男に久しく感じなかった畏怖を覚えた。
これはどれほどのものか、と。
思わず、明鏡止水だった心を揺らす。感嘆せずにはいられない。
さっきの刹那の剣戟。
その一瞬の斬り合いの中、一体何度駆け引きをしただろうか。
卯ノ花は、時間が遅く感じるほどに極限まで研ぎ澄まされた感覚と引き絞られた実力を初太刀を防がれ、男が反撃した瞬間に引き出された。
それこそ、相手が強いという証明である。
もしその時、あの瞬間。
実力を発揮できていなかったら、今首と胴体がくっついてはいなかっただろうからだ。
卯ノ花の霊圧が上昇する。
負けるわけにはいかない。八千流とは数多くの剣術流派を取得したと自負して自ら名付けた。それは、自分自身に
事実、自身は誰にも負けなかった。
目の前の男を見据える。
実力はこの男のほうが格上なのだろう。剣術も霊圧も。
もしかしたら勝るものは一つもないかも知れない。
だが、―――――だからと言って負ける道理はない。
不利であるだけ、不可能ではない。
卯ノ花にとって強敵は喜ぶべきものであり、嘆くものではない。超えるべき敵がいてこその剣術というもの。
敵を超えるため、卯ノ花は強大な霊圧をまとって、その一歩踏み出した。
平野将は、余計な肩の力を抜き、体全身に意識を張っていた。
こちらもまた、敵の実力を図っていた。重み。技。速さ。
その強さはまるで友人と手合わせしているようで、ほんの少しだけ頬が緩まった。そしてその手に残る、剣戟の感触。それを思い出して、少しばかりの感傷に浸る。
現時点で自分は最強だと平野は自負している。
だがその他にも、自分がもう成長する見込みがないことも知っていた。完全に成長限界に到達した。斬魄刀との対話と同調、具現化と屈服。その先の最後の形態まで、成れるし、使いこなせる。その先はホロウ化において他にないだろう。だがそれは事実上不可である。
故に数百年後には自分を越えるものがいるだろうと予測も付いた。
そして恐らくそれらは真実であり、これから超えるものもいるものまた事実となるだろう。
現時点で平野将は誰よりも強い。だがそれを知っているのは、ひと握りの人間ではなく、せいぜい一撮みといったところだろう。
最強という言葉で死神たちが真っ先に思い浮かべるのは、自身の一番付き合いが長く、とても親しい友人だ。
先の剣戟で、敵と初めて戦った時の友人との姿が重なった。
その友人の名は、山本元柳斎重國。
恐らく、目の前の女は、実力的に山本元柳斎重國に少し遅れを取るくらいの実力だろう。
平野将はこう思っている。
多分だが、山本元柳斎重國はボクが持つすべての技術を教え込めば、数百年後ボクを超えるだろう。そして、多分この女も。
やはりどうしても頬が緩む。
平野には未来に強さにおいてこれ以上はない。だからどうしても先があるものを見ると鍛えたくなってしょうがない。
羨望はしない。嫉妬など昔に克服している。
残っているのは、誰かに自分の蓄えた技術を教えることだ。
思いを新たに刀を握る手に、そっと想いを乗せた。
平野は霊圧の上がった卯ノ花の剣を真正面から受け止めた。
少し下がって程度で、落ち着く。今の両者はそれほどまでの差がある。
それでも卯ノ花は諦めない。
更に霊圧を上げた。それにはたまらず、平野も吹っ飛んで後ろの岩にぶつかる。平野は油断し過ぎてた。いい加減平野も完全管理している霊圧を一段階上げた。
勝負はまだまだこれから。
切り込み、踏み出し、フェイントを混ぜる。敵の他に状況を見ながら、考えることを止めずに敵を倒す方法を探る。逸らし、弾き、切り込み、鍔迫り合う。一体いくら繰り返しただろうか。おそらく数十分程度だろう。
周りが二人の戦闘に巻き込まれ、形を変えていく。
斬り合いは様々な技の応酬だ。刃を交わす様々な状況でその卓越した技術が技となり、繰り出される。
一瞬のうちに数度交差する。火花が飛び散り、破壊音が炸裂し、地形を変える。
時間が経てば経つほど、卯ノ花の苛烈さと残虐性が増していく。
平野は卯ノ花の実力を、奥の奥にある心理を読み取りながら、その力を上手く引き出していく。
平野は山本にいま対峙している大罪人を調べるよう頼まれていた。正しくは、
ホント、面倒な仕事であった。
卯ノ花はこの戦闘にかつてない悦びを感じていた。
どれだけ自分の全力を出しても、どれだけ体得した技を繰り出そうと、簡単にあしらわれてしまうほどの強敵。その苦戦が心地いい。
この戦いが何時までも続けばいいとすら思える。
卯ノ花は満たされていく感覚に溺れるために斬り合いを喜んで挑んだ。
平野は思う。
この女は狂っている。それも超ド級の狂人だ。
どんなに冷徹な目だろうと、どんなに無表情だろうと、その目の奥のにある妖しい光。
平野はそれが見えている。
その光は、狂気そのものだ。
斬っても斬られてもそれを愉しみ悦んで戦う。純粋で生粋の戦闘狂。
戦うことにこそ存在意義を得る、大罪人と呼ばれるに相応しい人間性だ。
命の奪い合いの今こそが至福のひととき。その刃に血を染みこませることが楽しみで肉を断つことこそが最高の快感。殺し合いこそが自身が満たされる最高の時間なのだ。
それからしばらく、斬り合う。
もはやこれを戦闘と呼ぶことすら生易しい。これこそが魂の削り合い、闘争本能が赴くままの殺し合いと言えるだろう。
惜しい。
彼女をここで失うのは本当に惜しい。
人間性こそ最悪そのものだが、今の護廷十三隊には彼女は最高の人物だ。
平野は殺すことを止めた。
そして、
決着はあっさりついた。
無数に繰り出される剣戟の中、平野は卯ノ花の癖を見つけ出し、そのわずかな隙を突いて刀をはじき飛ばしたのだった。
首に刃を当てる。
「まっ、こんなもんだ。ボクの勝ち。」
「ええ、私の負けです。」
「ボクは平野将。君の名は?」
「卯ノ花八千流です。」
えー。うそーん。
マジかよ。原作キャラじゃん。気がつかなかった。
うん。そもそも覚えてなかったよ。そうゆう設定。
まあ、いーや。どうせ俺が居る時点で影響受けるだろうし、どっかで歴史的修正かかんだろ。
山本に頼まれた仕事しよ。
「・・・そうか。君さ。護廷十三隊に入らない?」
「うん。ていうか、拒否権なしね。勝者に従え。」
ふふ、山本のやつ。
ボクをどこかの隊長に仕立て上げるつもりだろうけど、意地の張った上級貴族とか、卯ノ花ちゃんとか利用して隊長席埋めてやるぜ。