真央霊術院の最強先生 作:ザクみたいなホロウ
大きくそびえ立つ真央霊術院は、その時大きく揺れていた。地面は悲鳴を上げて、建物は軋み上げる。
それはこの真央霊術院の修練戦闘場にいる二人が並みの隊長格以上の霊圧で戦闘を行おうとしようとしているからだ。
朽木響河は目の前にいる若そうな男、真央霊術院の教師、平野将を睨んでいた。
面識はほとんどなかった。自分が学生時代にはすれ違う程度。一度、最後に会って話した気がするがほとんど覚えていない。
だが、この教師の噂はよく聞く。とはいっても、変人という印象が強いが。
朽木響河が今ただ強く思うのは、気に食わない。という感情だろう。
どうせこの男も自分には取るに足らないだろうと。
だから手っ取り早く終わらせる。
「囁け、村正。」
溢れる霊圧が平野を取り囲む。
そして、その力は平野自身ではなく、その斬魄刀に作用する。
村正の死神の斬魄刀を操る能力。
それは持ち主の意思に反して、仲間を襲わせたり自害に追い込んで自滅に追い込む。
朽木響河は、確信していた。これで終わりだと。
自分が斬るまでもない。
だがそれは。
「ふーん。斬魄刀の意志を持ち主を殺すように仕向ける力か。」
簡単に打ち破られた。
「ボクは白時雨とそんな浅い関係じゃないし、その程度でボクが殺れるとでも思ったのかい?」
そこには無傷でなんともない、さっきと寸分変わらない平野の姿があった。
「な、に? 何故なんともない。お前何をした!」
「ん?何故って、それは斬魄刀の洗脳をどうやって開放したかってことかい?」
余裕の笑みでくったくなく何でもないように答える。
――――白時雨がオカシイと思った瞬間に精神世界に潜って洗脳といてきたんだよ。
何を言ってるんだコイツは、と朽木響河は平野を再度睨んだ。
「うんじゃあ、次はボクの番だ。よっと!」
消えた。
否、瞬歩だ。咄嗟に構えて防ぐ。刃が交差した。と思ったその瞬間、踏ん張りが全くきかずに後ろに吹っ飛ばされた。理解できない。
ただ声が聞こえる。
「一撃目は防いだか。うんうん。上等上等。そらぼさっとすんな。次行くよ。」
早々に立ち上がり声がした方を向くがそこにはもういない。
動きが目で追えない。まるで幽霊でも相手にしているようだった。
ただ、こちらを試すように時々放たれる殺気に反応して反射的に村正を振るう。我武者羅に必死に。甲高い金属音。火花。そして鍔迫り合う。
敵は、平野はまるで余裕だった。
汗一つ無く、焦りも、恐怖も、感じていないようだった。しかしその目はまるでこちらを見透かすようだった。ふつふつと苛立ちが募り、怒りがこみ上げる。
「ふざけるなぁぁ!!」
なんとか吹き飛ばそうとするが軽く流される。
それでも攻撃することを止めてはならないと直感して、崩れた体勢を無理やり起こして剣先に霊力を込めた。
「牙気烈光!!」
無数の緑色の光を放つ。その光すべてが平野に向かう。
「いい鬼道だ。けど、それ自分より速い相手に意味あんの?」
それは初めて遠目から見た敵の動きだ。
無駄のない足運び、軽やかなステップ。軽業師のような動きは本来必中の技をことごとく掻い潜る。
だが見とれてる暇はない。
次の手を打つ。
何故、朽木響河が若くして六番隊のそれも三席に選ばれたのか。それは強大な霊力や優秀な鬼道だけではない。類まれな技術の持ち主だからだ。
敵に自分の霊力を送り、五感を狂わせる。幻覚、距離感の不一致。
その技は強力である。朽木家当主、朽木銀嶺も苦戦するほどに。
対処法は一つ。心を閉ざして戦わなければならない。だがそれは全力で戦うことができないということだ。
村正の始解を破られたことは予想外だったが、所詮道具の力。結局頼れるのは自分自身の力なのだ、とさらに確信する。
そして、瞬歩で後ろに回り込みその刃を振り下ろした。
「甘い。」
簡単に受け止められる。すべて無意味。
何故なら、その力はこの平野将には、平野将に限って通用しないからだ。
「・・・。何故だ。なんだ、何なんだお前は! 一体何者なんだ!」
「何者って、知ってのとおりガッコーのセンコーだよ。全く、さっき言ったろ? 少しは余裕を持ちなよ。敵に自分の力が通じないからってそんなに取り乱しちゃあ隙だらけだよ。」
「どうして俺の力が効かない。一体どうして!」
「そうだね。しょうがない。教えてあげるよ。ボクの能力を、さ。」
平野将は年を取らなずに若いままだ。
平野将は戦闘後、霊力を使っているが無傷である。
平野将は隠密機動の毒を容易く直す。
それは全ては常時開放型の斬魄刀、白時雨が関わっている。
「ボクの斬魄刀、白時雨の基本能力はボクの身体、体調、霊力、霊圧ともに最高時の維持だ。僕の最高の状態を記憶し、何かあればその最高時の状態に戻す能力。それが常時解放されている。」
「だからボクは歳を取らない。」
「だからボクは戦闘後、霊力を消費して体を戦闘前の状態に戻すことができる。」
「だからボクは毒に侵されようと最高時の状態に戻すことで回避できる。」
だからこそ、自分がこれ以上強くなれないことを知った。
「そして、君がボクの感覚を狂わそうとした瞬間にその前の状態に戻ることができる。」
「なに!?」
「君はボクの前では無力だよ。」
ホント、最高の斬魄刀だよ。
「ならば、その斬魄刀ごと!!」
「気づかないかい?」
朽木響河は平野将をはっきりと認識することができなくなっていた。目で見た距離感と刀を振る距離感が一致しない。
「こ、れは?」
「うん。君の技をパクった。どうだい、自分の技は。」
「あぁぁぁああ。卍解。無鉤条誅村正!!」
「ちなみに、解号と名を言うのはボクの場合技でもあってね。その能力は今の状態に最高状態の能力値をプラスするものなんだ。簡単に言うとボクの力二倍になるから、『共に歩め、白時雨』。」
朽木響河は己の無力を嫌というほど知る事になる。