初投稿ということもあり少々短めの物語です、前後編か前中後編といった構成になると思います。
「くそっ…なんだってこんなことに俺が…!」
俺は天から降り注ぐ紅い雷から必死に逃げ回る。紅い雷を発するモノの正体、神々しさを感じさせる純白の体毛。そこから滲み出る禍々しいオーラを纏いし龍。「祖なるもの」だとか、「全ての龍の祖」なんて大それた呼ばれ方をする伝承上のモンスター…いや、神と言った方が正しいとすらこの時は感じた。
「やべっ…!」
雷の気配を察知し俺は背中に背負う銃槍、インペリアルオルデンの盾を構える。
が
タイミングが悪かったのだろう、ガードも意味を成さず俺は紅い雷に身を焼かれた
「ちくしょう…こんなことなら、一人で来るんじゃなかったなぁ。セルタスX一式じゃ無理があったか…」
薄れゆく意識の中で俺はそんな事を考えていた。
数日前
「シュレイド城?それってあの?」
「そうなんだ、石板の詩によると近々皆既日蝕と共にシュレイド城に祖なるものが現れるらしい」
俺はドンドルマの大老殿でジャンボ村の村長から話しを聞かされていた。
【災厄、天を覆いし時 黒闇、青を呑まん
霞、古都を這いて 日輪、蝕に沈む
王亡き玉座は猟の庭 いざ顕れん祖なる者】
村長の持つ石板と、伝説の職人と呼ばれるじいさんの持つ石板を合わせるとそういった詩が書かれていたそうだ。ここまで酷い苦労を強いられたものだ。山のような量の蛇竜の討伐に戦闘街に現れた霞龍の討伐。砲術マスターのスキルを持ってる身としては巨龍砲をバンバン撃てるのは確かに楽しかった。
「そこで君にこの祖なるものの狩猟又は撃退をお願いしようと思ってる。危険な依頼だ、頼れる仲間が居るならその人達も連れて行きぜひ倒してきて欲しい」
「頼れる仲間…ねぇ」
村長に討伐を正式に依頼された俺は普段狩りを共にする仲間を呼び集めたのだが…
「すまんセルタス、俺ベリオちゃんの武器作り手伝ってあげなきゃいけないんだわ」
太刀【業物・九十九牙丸】を背中に背負うユクモ装備一式を身に纏ったユクモの兄貴は申し訳なさそうに言う。
「私もクシャナちゃんとデートが有るのよねぇ。ごめんねセルタス、また今度適当なの付き合ってあげるから」
重砲【星花火・弩首領破ッ把】を撫でるバンギスX一式を着る女性、バンギスの姉御は少し涎を垂らしながら言う。
「うーん、そのクエストも気になるけど…ナルガちゃんが緊急クエストに行きたいって言うからそっちを手伝ってあげたいんだ」
狩猟笛【プルートフルート】の最終点検を行う発掘フルフルU一式を着込んだフルフルさんは苦笑いしながら答えた。
「あー…はい、わかりました…」
他に頼れる仲間もおらず、結果単身でシュレイド城へ向かいクエストを遂行することとなった。
「ねぇ…」
「んん…?」
何者かに声をかけられ意識が少しずつ回復していく。紅い雷に焼かれたはずの身体はまだ若干の痺れと痛みを残してはいるものの命に別条はない状態まで回復しているようだった。
「ねぇったらっ」
「おわっ⁉︎」
俺に大きな声で話しかけて来たのは少女だった。真っ白なドレスを見にまとい綺麗な長い純白の髪をなびかせて居る。透き通るような肌、血を思わせるような真っ赤な瞳。全体的に白いという印象を得る可憐で儚げな白いドレスの少女がそこに居た。
「あなた、ハンターさんでしょう…?」
「え、あ、あぁ…見ての通りみっともない事に失敗してるけどな」
「ふふっ、傷の様子と着ていたものの状態を見ればわかるもの」
少女はくすくすと笑いながら丸焦げになった俺のセルタスX一式を指差した。
「あぁ…俺のセルタスXが…これ作るの大変だったんだぞもう…」
「アレもあなたのものじゃないの?」
少女が更に指を指した先にあったものは…
「い、インペリアルオルデンが…う、嘘だろ…俺の…」
最早原型を止めて居るとは言い難い状態になってしまっていた俺の愛用銃槍【インペリアルオルデン】が転がっていた。
「え、えっと…ハンターさん大丈夫…?」
少女が心配そうにこちらを覗き込んでくる。
「あ、あぁ…大丈夫。しかし困ったな…防具も武器も無いんじゃクエストは完全に失敗か…これじゃドンドルマにも帰れない…」
「あら、それならしばらくここで暮らせばいいじゃない。見ての通り廃城になってしまったここには、野生の生き物も豊富よ?」
ハンターとしての道具を奪われ途方に暮れている中、白い少女はこの場にとどまることを提案した。
「ここにって…そもそもここはどこなんだ?」
「ここは古に栄えし王城、伝説の邪龍により滅ぼされた王都。ハンターさんも聞いたことがあるんじゃないかしら」
「シュレイド城…か。そりゃそうだなさっきまでその戦闘街で戦ってたんだし…」
少女が俺を介抱していたのはシュレイド城の中にある一室だったようだ。
「ね?その怪我で無理に帰ろうとしても今度こそ死んでしまうかもよ…?」
少女が言うことは正しかった。持ち込んだアイテムは奇跡的に無事だったものの、今の俺には武器も防具もない。あるとするなら剥ぎ取り用のナイフだけだった。
「キミの言うことも一理ある…そういうことなら救助が来るまでお世話になろうかな」
「決まりね、ふふっ。楽しくなりそう」
心の底から楽しそうに笑うその姿はまだあどけない少女そのものだった。なぜこんなところに少女がいるのか、俺はその時疑問にも思わなかった。
「ねぇハンターさん」
「ん?どうしたの…えっと、君の名前は…?」
「私?んー…名前、か…」
名前を尋ねると少女は少し悩むような仕草をした。
「無いのか?」
「勝手に呼ばれる名前はあるけれど…これって言うものはない、かしら…」
少し寂しそうな表情がどうしても気になった。
「よっし、なら俺がつけてあげよう!」
「えぇ!?ハンターさんが…?」
少女は驚いた様子で聞き返して来た。
「なんだ、不満か?」
「い、いえ…そういうわけじゃないけど…」
俺は少々考えた後に
「ヴァイス、なんてのはどうだ?どっかの言葉で白って意味があったと思うんだ」
「白って…ふふっあまりにも率直すぎないかしら?」
再びくすくすと笑う少女。こうしてみると大人びて居るとはいえやはり年相応の笑顔を見せてくれる。その笑顔から目が離せなくなる。
「ま、待ってくれもう少し考えてみる…」
「いえ、いいわ。ヴァイス…ね、気に入ったわ」
そう言うと少女はまた笑みをみせる。
「ハンターさんは?名前はなんていうの?」
「ん?俺か…?」
普段仲間内では防具で呼び合うせいで自分自身でも本名を忘れることがある。俺は荷物の中からギルドカードを取り出し確認する。
「オルデン…だな」
「自分の名前なのに、なんでそんなに自信なさげなのかしら?」
「普段自分の名前なんか使わないから…」
首を竦めながら答える。
「まぁいいわ、行きましょうオルデン」
少女は勢い良く立ち上がりこちらに手を差し伸べる。
「行くって、どこにさ」
「お腹が空いたんだもの。狩りよ狩りっ、オルデンはハンターさんなんでしょ?」
「いや、そうなんだけど……まぁ、いいか。待ってくれよ、まだ傷が痛いんだから」
俺は軋む身体を動かしながら立ち上がり意気揚々と小走りをするヴァイスの後を追いかけた。