シュレイド城で伝承上のモンスター、祖なるものの討伐に一人で向かっていた俺。さすがに無理があったか無残にも紅い雷に武器と防具をおじゃんにされた俺は介抱してくれた白いドレスに身を包んだ少女に助けられる。帰る手段の無い状況で少女は俺にこの廃城での生活を提案、俺はその提案にのり狩猟とは縁のない生活を送ることとなった。
「オルデンオルデン!そっちに追い込んだわよ!」
「おう、任せとけ!」
少女、ヴァイスが草食竜を俺の方へと追い込み俺はそれを剥ぎ取り用ナイフを駆使して仕留める。
「ハンターさんなのに手際が悪いのねオルデンは」
「剥ぎ取りならまだしも、息の根を止めることには使ったことないからなこのナイフ」
普段は銃槍を好んで使うため片手剣のような剥ぎ取り用ナイフは上手く扱えない。
「よっし、生肉とれたら早速焼かないとな。携帯肉焼き機はあるが火種が…どうするか」
「オルデンの武器から何か出来ないかしら…」
「俺の武器か…あれだけ原型とどめてないから少し難しいかもしれないが。銃槍の弾が無事ならなんとかなるかもしれないな…」
とても緩やかに時間が経過して行く、ハンターになってからこんなゆったりと過ごした事はなかったかもしれない。ヴァイスと居るとハンターである事を忘れそうだった。
「あっ、これ使えないかしら?」
ヴァイスは武器の残骸から辛うじて無事だった銃槍の弾を見つけ出した。
「でかしたヴァイス!」
「ふふっ当然じゃない」
思わず頭を撫でる俺と微笑みを返してくれるヴァイス。些細かもしれないけれど俺はとても幸せだった。こんな時間がいつまでも続けばいいと思った。
そんな風にヴァイスと二人の廃城生活は数日間におよんだ。
「んっしょ…とどかないわね…」
ヴァイスは上の方にある木箱を取ろうとしている。なにやら大事なものを仕舞ってあるそうなのだが…
「か、代わりに取ろうか?危ないぞ?」
ぐらぐらと揺れている足場に乗っているため非常に不安定で今にも落ちるのではないかとひやひやしている。
「ひゃわっ⁉︎」
「ほら言わんこっちゃない!」
ガラガラと足場が崩れ落ちてくるヴァイスを受け止めようとする
が
「うわっととっ…⁉︎」
受け止めた瞬間自身もバランスを崩し倒れてしまった。
「いたた…ごめんなさいオルデン、やっぱり少し無理があったみた…い…?」
目を開けたヴァイスは硬直する。落ちてきたヴァイスを抱きしめる形で転けてしまったのでお互いの顔がものすごく近い。ヴァイスの顔がみるみる赤くなって行く。
「と、とと、とにかく!助かったわ、ありがとね!」
そそくさと立ち上がると背中を向けてしまった。
しばらくそんな状態が続き、ヴァイスがゆっくりと口を開く。
「オルデンは…その、どうしてここに来たの?」
ここってのは無論シュレイド城のことだろう。
「ん?あぁいやな、むちゃくちゃ危険なモンスターがここに出るって言われてさ。まぁ、惨敗だったけど…」
俺は肩を竦めながら言った。
「も、もし、もしもね…私がその危険なモンスターだったら…オルデンはどうする?」
少し震え気味にヴァイスは切り出した。俺には信じられなかった、目の前の少女が俺の装備を焦がした伝承上のモンスターのようには到底見えなかった。そして、もしそうなら一つ疑問が残る。
「仮にヴァイスがあいつだったとしてだ、なんで今俺がこうやって生きてるんだ?あのまま俺を見殺しにも出来ただろうしその場でトドメも刺せただろ」
「わからない…わからないよ、ただ自然とそうしてたの…」
昔、ユクモの兄貴から聞いたことがある、古龍種の中には人間の姿になれるものがあると。バンギスの姉御から聞いたことがある、そういった古龍は度々人間に挑発的な態度を取り戯れに自分と戦わせることがあると。
つまり、つまりそういうことなのだろう。嘘をついているようには見えない、だからきっと、ヴァイスはあの祖なるものの人間体なんだろう。
「どうするか…か」
俺は軽くため息をついてから、おそらく俺を瀕死にまで追いやった少女を後ろから少し強く抱きしめる。
「お、オルデン…?」
ヴァイスは少し不思議そうにこちらに視線をやる。
「俺にはどうすることも出来ないと思う。命の恩人だしな、ありがとうヴァイス」
「んっ…ありがとうオルデン…」
ゆっくりと少女の頭を撫でてやると、初めて会った時と変わらないままの笑顔を返してくれた。
ヴァイスが自身の正体を明かしてくれてから更に数日がたった。特にこれと言って二人の間に大きな変化はなかった、ただ変わったことといえば以前よりスキンシップが増えたくらいだろう。そうこうしてるうちに、俺がクエストを失敗してから一ヶ月程度が経過してしまっていた。この時俺はまだ気づいていなかった、悲しい別れが訪れることを。
「オルデンがここに来てからもうそこそこ経つのね」
「あぁ、あっという間だったな…」
寝る前の準備をしながら何気ない会話が始まる。
「ふふっ、貴方も不思議な人よね。自分を瀕死にさせた化け物と一緒に寝てるのだもの」
「まぁ、命の恩人でもあるからなぁ…」
「そうかもしれないけれど…さすがに無防備すぎないかしら?見た目は少女かもしれないけれどこう見えて結構長い間生きてるんだからっ」
ヴァイスは少し誇らしげになる。
「それも、そうだな。俺よりもいろんなものを見ていて、俺よりもいろんな世界を知ってる」
「えぇ…」
「もっといろんなことを教えてくれよな、よしっと…」
準備を終え二人で寝床に入る。
「今日もお疲れ様ヴァイス、おやすみ」
「えぇ、おやすみオルデン」
俺達は寝に入る…
「ありがとう…大好きよ、さよなら…」
意識が闇に落ちていく寸前、ヴァイスのそんな言葉が聞こえた。
翌朝のことだった、目が覚めた俺はいつものように隣に寝ているヴァイスを起こそうとしたが既にそこにヴァイスの姿は無く…
『GUaaaaaaaaaaaa』
「単発式拘束弾をつかい撃龍槍まで誘導しろ!」
外の戦闘街からはけたたましい咆哮と、大勢の怒号、激しい戦闘音が鳴り響いていた。
「ヴァイス…!?う、嘘だろ!」
俺は跳ね起きると持ち物を放置し急いで戦闘街へと向かった。そこに広がる光景は…
「怯むな!ここを踏ん張れば必ず討伐出来るぞ!」
「臆せず進め!王宮騎士団の実力を見せるのだ!」
おびただしい人数の王宮騎士と
『GUraaaaaaaaaaaa』
一ヶ月前、俺を紅い雷で焼き払った祖なるものが戦闘を行っていた。
「や、やめろ!やめてくれ…!」
俺は戦闘をやめさせようと戦場の真ん中へ向かおうと歩み出す
しかし
「その声はセルタス君!?」
フルフルさんがこっちへ走ってきた。
「よかった、無事だったんだね!装備はどうしたの…?いや、そんなことより防具がないと危ないからはやくこっちに!」
「ま、待ってくれフルフルさん俺は…!」
フルフルさんは聞く耳を持ってくれなかった。
「みなさん今吹きますね!」
フルフルさんはプルートフルートを操り戦場にいる全ての戦闘員の身体能力強化を行う。
「違うんだ…あいつは…あいつは…!」
「よかったわセルタス、無事だったのね。一ヶ月も連絡なかったから心配したのよ?」
バンギスの姉御はそう俺に一声かけると星花火・弩首領破ッ把をしゃがんで構え、火炎弾を祖なるものの頭部へと連射する。
「あ、姉御やめてくれ…!違うんだ、あいつはそんな危険な生き物じゃ…!」
「ちょっとセルタス、狙いがつけられないじゃない!どう見たって危険でしょうあんなの!」
バンギスの姉御にすがりつくも全く意味をなさなかった。
「ユクモ!さっさとキメちゃって!」
「おーよ!」
姉御の一声でユクモの兄貴が段差を利用し空高く跳躍したのちに業物・九十九牙丸で祖なるものを深々と斬り倒した。
祖なるものは一層激しい咆哮を発すると力なくその場に倒れ、周りの王宮騎士達が皆歓声を上げた。
「あ…あぁ…ヴァイス…ヴァイス…!」
俺は瀕死の状態の祖なるものへと近づきその頭部を撫でた。
「ヴァイス…なんで、どうしてこんなこと…」
『バカねオルデン…貴方はハンターで、私はモンスターだもの…こうなることは、必然だったの…』
姿は龍のままだが、俺の頭の中にはしっかりと少女の声が響いていた。
「だからって…こんなのありかよ!」
声を荒げる俺をユクモの兄貴も、バンギスの姉御も、フルフルさんも、遠くから見守っていた。
『ねぇ、オルデン…』
「な、なんだよ…」
『貴方の大事な武器と防具…ダメにしちゃってごめんね…』
「バカやろう…そんなん…今謝られたって…」
『だからね、オルデン…私の、私の身体を使って…?』
俺は一瞬、ヴァイスの言っていることが理解できなかった。
『私の身体をね、使って…新しい武器と防具を作って欲しいの…そうすれば、ずっと一緒にいられるでしょう…?』
「ば、ばか言うんじゃねぇよ…そんなのまるで、お前が死ぬみたいな言い方…」
俺はヴァイスの…祖なるものの頭を撫でながら必死に声をかけ続けた。少女の声は最後の一言を放ち
『楽しかったわオルデン…大好き…』
力尽きた。
祖なるものの、太古より災厄を振りまいて来たといわれる伝承上の龍の、体温が一気に下がって行くのを感じた俺は…
「あぁああああああああ!!!」
絶叫した、開くことの無くなった真紅の瞳が宿る大きな頭を胸に抱きしめながら大きく絶叫した。認めたくなかった、つい数時間前まで一緒に居た少女が二度と自分のために微笑んでくれなくなった事実を認められなかった。
その時
「へへっこんだけの素材がありゃ大層なもんが作れ方だな」
王宮騎士の一人がヴァイスの亡骸に触れた瞬間だった。
「がぁああああああああ!!!」
強く感電したのか一瞬で黒焦げになり絶命した。辺りがざわつき始めた頃、ユクモの兄貴が俺に近づいてきた。
「セルタス、その祖龍と何かあったのか…?」
「言ったところで信じてもらえるとは思いません…ですが…」
俺はヴァイスに目をやり涙を拭った。
「祖龍は最後に一言、自分の素材を使って最高の武器と防具を身に纏え…と」
「じゃあ早くドンドルマに帰ってさ、作ってもらいましょうよ!これからはセルタスじゃなくてルーツって呼ばないとかしら?」
バンギスの姉御は何かを察したのか俺を引っ張り立ち上がらせた。
「これから忙しくなるよ、セルタス君。いや、ルーツ君かな?」
フルフルさんは俺の肩をバシバシと叩いてくれた。彼なりに励ましてくれてるのだろう。
その後、俺はヴァイス…祖龍の素材を剥ぎ取り、シュレイド城の一角に弔った後。ドンドルマへ戻り、装備一式を仕立ててもらった。
「いやいや、よくにあってるよ。大変だったろうけどお疲れ様」
俺は再び大老殿にてジャンボ村の村長に呼ばれていた。
「本当に報酬金はいらないのかい?」
「えぇ、もっと大切なもの、もらえましたから」
「なら良いんだが…」
腑に落ちない表情をする村長の肩に手を置き
「すみません、これから後輩の手伝いなので。また何かあったらお声掛けください」
クエスト出発口へ向かう。
「もー、ルーツ先輩遅いですよーう」
「すまんすまん、俺にも俺の仕事があってな」
ヴァイスからはとても大切なものをもらった。もちろん装備だけではない。あの時の木箱の中身は結局なんだったのか今となってはわからなかった。
「さって…そんじゃま、一狩り行きますか!」
俺は新しく出来た後輩や、いつものみんなと狩りへ出かける。新しい装備を身に纏って。
俺が後に【祖龍の加護を受けし者】なんていう大それた二つ名で呼ばれるようになるのは、また別のお話し。
THE END
とりあえず白光の少女は終わりです。とても短く狩猟のない話でしたが某モンハン動画で白いドレスの少女はミラルーツなのでは…?といった話しを聞きハンターと人間になった古龍の恋愛モノって面白いんじゃ無いのかなと思って書きました。上手くかけてると良いんだけどなぁ…
この先は別の主人公、ユクモの兄貴かもしれないし、バンギスの姉御かもしれないし、フルフルさんかもしれないし。はたまたまたセルタスくん改めルーツくんが主人公かもしれない。何かいい話しが書けそうならその時はお願いしまーす。
ちなみにユクモの兄貴、バンギスの姉御、フルフルさんは自分のTwitterのフォロワーさんから好きな装備一式を聞いてできあがったキャラクターです。
ユクモの兄貴、正直フルフル男爵にしようかと思ったけどバンギスの姉御が薄い本展開になりそうだったので自粛しました。
セルタスX一式にインペリアルオルデン、完全に自分の趣味です。ネタバレすると後輩はザザミZ一式のザザミちゃんです。ザザミZ一式可愛いよね。
それではまたいつか!