ダンジョンで銃を撃つのは間違っているだろうか   作:ソード.

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はい、今回も相変わらずオリキャラ登場です。
まあ、いるはずの人が出るだけなので全く知らないというわけではないですが。
では、どうぞ。


クラウド&ベルinトレーニング
第24話 二つの再会


リリとの一件から数日。クラウドはヘスティア・ファミリアのホームである廃教会に外出から帰ってきた。

 

 

「おーい、ベル。ここにいたのか? さがし....て....」

 

 

「く、クラウドさん....これは....その、えっと......」

 

 

教会のボロボロになった扉を通ると、地下室へ続く奥の扉の前にベルが腰掛けていた。そこまではいい。

だが、ベルの右腕にはヘスティアが、左腕にはリリが抱きついていた。しかも、その2人の幼女はバチバチと火花を飛ばしている(ように見えた)。

ベルはクラウドが帰ってきたことに気づくと、苦笑いしたまま止まってしまったのだ。

 

 

「....ベル」

 

 

「は、はい?」

 

 

ベルはおそるおそるクラウドと目を合わせる。そんなクラウドの目は今までにないくらい穏やかだ。

 

 

「お前も年頃の健全な男子だから、そういうのに興味を持つのは普通だと思う。だけど、女遊びも程々にしておかないといつか見知らぬ誰かに後ろから刺されることになるかもしれないからな。十分気をつけないとダメだぞ」

 

 

「お、女遊びって! 違いますよ! 僕も何が何だかわからないんです!!」

 

 

「皆まで言うな、ハーレムを夢見る分には悪いことじゃないからな。何年か経ってそれがいい思い出になるか、忌むべき黒歴史になるかはお前次第だ」

 

 

クラウドの優しさと哀れみを込めた視線と言葉にベルは酷く狼狽してしまう。

 

 

「そうだ、丁度いい! クラウド君、このサポーター君にボクとベル君がどれだけ深い関係かを説明してやるんだ!」

 

 

「いや、お前らは普通の仲の良い関係としか言えないんだけど」

 

 

「深い関係というなら、リリだって負けてません! ベル様と一緒にダンジョンに潜り、戦いを共にしたという事実があります!」

 

 

「俺も一緒にいたけどね」

 

 

自分の過去のことを知っても以前と変わらず接してくれる彼女らには感謝しているものの、ヘスティアとリリの相当低レベルな争いに乗ってやれるよつな性格ではないのは相変わらずだ。

ヘスティア、リリ、エイナ、シルといった美少女たちを手籠めにするベルの実力には感服するが、彼の先輩として女遊び(本人に自覚があるかは知らないが)に耽るのは感心しない。

 

 

「それはともかくだな、ベル。エイナがお前のこと呼んでたぞ。ギルドに来いってさ」

 

 

「え、あ、はい! 行きます! すぐに行きます!!」

 

 

ベルは脱兎の如く両腕の幼女ホールドから抜けて走り出した。そんな彼の走っていく姿を見ながらクラウドも後を追いかけた。

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

結局、クラウドは途中でベルに追いつき、2人でギルドのロビーへと来ていた。ベルとクラウドはカウンターにエイナが立っていないことを確認すると、辺りをぐるっと見回した。

すると、奥の一角にあるソファーにエイナが座っており、彼女と向かい合うようにさらにもう1人誰かが背を向けて座っているのが見えた。

 

 

「ベル、あれじゃないのか?」

 

 

「あっ、そうですね。エイナさ....ん?」

 

 

途中でベルの言葉が詰まる。エイナの向かいに座っている人物がこちらを向いて、その顔が見えるようになったからだ。

金髪の少女――そう、アイズ・ヴァレンシュタインが、そこにいた。

 

 

「......」

 

 

「......」

 

 

ベルとアイズが見つめ合うこと数秒。ベルは簡単に折れて無言のまますたすたと早歩きで出口を目指す。

 

 

「ちょっ......ベル君!?」

 

 

エイナが座ったまま呼び止めるが、それも聞き入れず足を早める。が、しかしその肩を誰かがガシッ、と掴む。

 

 

「ダメだろ、ベル。話も聞かずに逃げたりしたら、さあ?」

 

 

「は......はい......すいません」

 

 

クラウドの笑顔(威圧)にベルはすっかり萎縮してしまい、へなへなと抵抗する力をなくした。そのままズルズルと引きずられ、件の少女の眼前へと差し出される。

 

 

「あ、あの一体何の......ご用で?」

 

 

「これ、君が落としたものだと思って帰しに来たの」

 

 

アイズはソファーに置いていたエメラルド色のプロテクターをベルに手渡した。

このプロテクターはリリとの一件があった日にベルが失くしたものだ。すぐにリリを追いかけなければならなかったので、回収もできずにそのままにしていたのだ。

 

 

「ありがとうございます......よかったぁ、見つかって」

 

 

「エイナからのプレゼントなんだから大切にしとけよ、ベル」

 

 

ベルの肩をポンポンと叩いて言ってやると、嬉しそうに頬を掻いていた。

 

 

「それと、2人に言わないといけないことがあって......」

 

 

アイズはプロテクターを渡すと、思いつめたように顔を曇らせる。何だろうと2人とも首をかしげていると、アイズは両手を身体の前に持ってきて頭を下げた。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

「え?」「は?」

 

 

ベルとクラウドが同時に素頓狂な声を出してしまう。アイズに何か謝られるようなことをした覚えもされた覚えもないはずなのだが、どういうことだろうか。

 

 

「私が取り逃がしたミノタウロスのせいで迷惑をかけて......それに、あの酒場でも酷いこと言われてしまったから......」

 

 

「ちっ、違います!」

 

 

アイズの謝罪の言葉をベルは必死に遮った。アイズはキョトンとした顔で頭を上げる。

 

 

「謝らないといけないのは僕の方で......なのにお礼も言わずにずっと逃げ続けて......だから、その、ありがとうございました!」

 

 

今度はベルがアイズに頭を下げてお礼の言葉を述べた。クラウドはそんな後輩たちの姿に微笑ましさを感じて、向かい合う2人の横に立って右手でアイズの、左手でベルの頭を撫でる。

 

 

「え....あ....」

 

 

「く....クラウドっ....」

 

 

「お互いにちゃんと話せてよかったな。ほらほら、仲直り」

 

 

「よーしよーし」と子供を可愛がるように笑顔で撫でてやると、ベルは苦笑い、アイズは顔を赤くして俯いてしまった。

 

 

「そうだ、アイズ。俺から頼みごと、というか提案があるんだけど、いいか?」

 

 

「何? 何でも言って」

 

 

「......ベルに稽古をつけてやってほしい」

 

 

真剣そうにアイズと顔を合わせてそう言った。アイズは呆けたような顔で固まり、瞬きを繰り返す。横のベルも同じようなリアクションをしている。

 

 

「ベルは素質もあるし、順調に成長もしてる。だけど、如何せん技術面で劣る部分が見えてきたからな。そろそろ誰かに鍛練してもらった方がいいと思ったんだ」

 

 

「いいけど、どうして? クラウドが教えようとは思わないの?」

 

 

アイズの意見も尤もだった。クラウドは14年前から冒険者として生きている。少なくともアイズより経験は上のはずだ。ましてや、クラウドとベルは同じファミリアという理由もある。

 

 

「最初はそれも考えたが、やっぱり無理だ。冒険者としての基礎的な技能は教えたけど、それ以上は教えられない。

お前ならわかるだろ(、、、、、、、、、)?」

 

 

クラウドは少し残念そうな顔でそう答える。アイズも何か察することがあったのか、しぶしぶ了承した。

 

 

「......わかった。君はどう?」

 

 

「じゃあ、その......よろしくお願いします!」

 

 

ベルが深く頭を下げるとアイズはニッコリと笑った。2人の仲が進展したなぁとクラウドも満足して「じゃあまたな」とその場から立ち去ろうとする、しかしそこでアイズに声をかけられた。

 

 

「待って、クラウド。最後に1つだけ」

 

 

「何だ?」

 

 

「クラウドに会いたいっていう人がいて......今すぐホームに来られる?」

 

 

「会いたい人? 誰だよ?」

 

 

クラウドの問いにアイズはしばらく黙ってしまい、なかなか言い出さない。言いにくい人物なのだろうか、と考えるがそんな奴がホームにいるのも結構想像しにくかった。

 

 

逸愧(いつき)さんが、さっき帰ってきてて」

 

 

「わかったすぐに行く!!」

 

 

最後まで聞かずに銀髪のハーフエルフは風のように走っていった。

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

よりにもよって「あの人」が帰ってくるだなんて、頼むから冗談と言ってほしかった。

クラウドは道行く人を器用にかわしながら、走る。

ロキ・ファミリアのホーム『黄昏の館』が見えてきた。館の前いる門番を無視して扉を乱暴に開け放つ。

 

 

「はぁ......はぁ......やっと、着いたぞ」

 

 

「早かったじゃねぇか。あと5分はかかると思ってたんだが、低く見積もりすぎたか?」

 

 

息を切らしながら扉の前に立つクラウドに軽薄そうな声がかかる。クラウドよりいくらか年上の男の声だ。

声の方向を見ると、黒髪の男が椅子にどっしりと座り背を向けているのがわかった。

 

 

「何で他の団員がいないんだ? それにロキまで」

 

 

「ちょろっと人払いをさせてもらったんだよ。俺たちが会ったら周りにどんな被害が出るかわかったもんじゃねぇ」

 

 

結局振り返らないまま男は天を仰ぐように椅子にもたれ掛かる。そんな態度に若干イライラしてしまい、クラウドは頭を掻いて話を続ける。

 

 

「アンタが帰ってきたって親切な義妹から聞いてな。それと、俺の心のオアシスにちょっかいをかけるんじゃないかと心配にもなったぜ」

 

 

「何だ? 俺と8年会ってねぇ内にちゃっかり妹と娘ができたのかよ。

あの生意気なガキがとんだ女誑しになったもんだな。ああ、今でも十分ガキか」

 

 

ビュンッ! その場に旋風が走ったかの如き風が吹いた。クラウドの右足による回転蹴りが座っている男の側頭部に叩き込まれる。

男の身体はその勢いで椅子から転げ落ち、全く動かなくなった。

 

 

「人を遊び呆けてるクズ野郎みたいに言うのはやめてくれ。あと、俺はもうガキだなんて言われる歳じゃない」

 

 

横に倒れたまま動かない男を見下ろしながら言うと、「はっはっは」とさっきと同じ楽しそうな笑い声が天井から(、、、、)聞こえた。

 

 

「ハリボテ......」

 

 

「その通りだ、騙されたな。まあ、本当のこと言われてあからさまに怒ってるようじゃ、お前はいつまで経ってもガキだよ。バカ弟子が」

 

 

その男は天井にめり込ませた指を抜いて、床に着地する。ゆっくりと立ち上がった彼の姿は、あの【猛者】オッタルに並ぶほどの2M(メドル)を越える長身に半袖の黒シャツに腕当て、金属製のブーツ。

腕から見える筋肉は丸太のように太く鋼のように鍛え上げられている。外見は20代後半程度だが、漂う雰囲気は歴戦の戦士を思わせる。

 

 

「それなら、人の悪いとこしか見つけられないアンタはいつまで経っても中年だよ。シオミ師匠」

 

 

クラウドとラストルの師匠であり、元アポフィス・ファミリア団長を務めていた男。

もう1人のオラリオ最強。

もう1人のLv.7。

シオミ・逸愧(イツキ)




はい。師匠の登場です。ずっと出したかったなー、と思ってたのでようやく登場させられてよかったです。
ちなみにクラウドは師匠のことが嫌いなわけではないです。ただ、まあありきたりな師弟関係です。今後はそれも書いていこうと思っています。

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