ダンジョンで銃を撃つのは間違っているだろうか   作:ソード.

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間が空いてしまい、申し訳ありません。

年内に最新話上げようと急いだので見落としがあるかもしれませんし、そんなに話も進んでません!


第51話 舞踏会

「どうですか? これ……変じゃないですか?」

 

 

「そんなことねぇよ。馬子にも衣装って感じだ」

 

 

「うんうん、格好いいよ、ベル君!」

 

 

今夜、アポロン・ファミリアで開催される『神の宴』は眷族を二名まで引き連れて参加することになっている。

本来、こういった宴では眷族の参加は認められていないが、今回は主催者側の要望であり、さらに神々もそれを見事に面白がって受け入れてしまった。

 

そんなわけで現在、クラウド、ベル、ヘスティアの三人は燕尾服とドレスで着飾って宴の会場を訪れていた。

 

 

「すまぬな、色々と世話になってしまって」

 

 

「あ、ありがとう。誘ってくれて……」

 

 

クラウドたちと遅れて馬車の中からミアハとナァーザが出てくる。最初はミアハも出席を渋っていたものの、ヘスティアからの説得と馬車や衣装代を肩代わりするという条件で納得してくれた。

尤も、ナァーザにしてみれば想い人と同伴できて嬉しいのだろうが。

 

 

「じゃあ、そろそろ行こうぜ」

 

 

「ああ、そうですね」

 

 

クラウドはベルに促すと、ベルはヘスティアの、ミアハはナァーザの手を取ってエスコートを始める。

クラウドはなし崩し的に両手が空いてしまったことに寂しさを感じたものの、よく考えたら彼女持ちの時点で寂しくなどないと割りきることにした。

というか、いくら宴だからといって他の女と必要以上に仲良くしていたらリューが不機嫌になるに違いない。

 

 

「ベル、ちょっといいか?」

 

 

「は、はい」

 

 

クラウドはヘスティアの手を取って歩くベルに耳打ちする。

 

 

「アポロンの連中が何をしてくるかわからない。俺はともかく、ヘスティアに危険が及ばないように注意してろよ」

 

 

「……! わかりました」

 

 

先日の酒場での一件から、クラウドたちはアポロン・ファミリアの動向に対して警戒を続けている。

今回の宴の開催時期や趣向が偶然のものであるに越したことはないが、『あのアポロン』がその程度で済ませるとはとても思えない。

 

 

そんな不安と警戒心を抱きながら、一同は館に足を踏み入れた。

 

 

「………」

 

 

館の内装は、びっくりするほど豪華だった。受付のある一階もそうだが、パーティの会場である二階のダンスホールは目が眩しくなるほど金の装飾がただっ広い空間内に無数に施されており、いくつものシャンデリア型の魔石灯が吊るされている。

 

デザインより実用性を重視してしまうクラウドからすれば「もっと他に金をかけるところがあるだろ」と考えてしまう。

だが、そんなことを大真面目に言うのは野暮というものだろう。

 

 

(人が多い……それに……)

 

 

見られている。それも一人や二人ではない。

流石に誰のものか判別はできないが、針のような無数の視線がクラウドやベルを刺しているのがわかる。

 

 

(俺の杞憂で済めばよかったのにな……これは一悶着あると思った方がいいか……)

 

 

クラウドは周囲の目を気にしながら燕尾服の下に忍ばせた拳銃を右手で握る。

が、それを見計らったように何者かがクラウドの拳銃を握る手を横から掴む。

 

 

「クーちゃん、来てたんだ。よかったぁ……」

 

 

「……レイ?」

 

 

突然の事態に同様を隠せなかったが、相手がレイシアだと気づいたことですぐに平静を取り戻す。

赤いドレスで着飾った彼女の姿は見惚れるほど美しく、ドレスとは対照的な青白い髪がより映えている。

 

 

「……こんなの持ち込んでたの? もう、物騒なんだから」

 

 

「……護身用だっての。というか、魔法が使える連中からすれば可愛いもんじゃないのか?」

 

 

「クーちゃんがそれ言う? ああ、ほら、もうアポロン様の演説が始まるよ」

 

 

レイシアが指差した方向には、端正な顔立ちのブロンド髪の男が大広間の奥で仰々しく両手を広げて演説を始めようとしている。

 

 

『諸君、今日はよく足を運んでくれた!』

 

 

「……」

 

 

ベルとヘスティアの方を見るが、特に怪訝そうな表情をしている様子はない。

特にベルはさっきまで引き締めていたであろう気配りを緩めているように見えた。

 

クラウドはレイシアと別れると、ベルたちの元に寄る。

 

 

「二人とも、これからどうする?」

 

 

「うーん……アポロンと話すのは後にしておくとして……せっかくだし、美味しい料理でも食べようぜ」

 

 

「あ、いいですね。行きましょう」

 

 

正直、今は宴を楽しむとかそんな気分じゃない。さっき注意しておけと言っておいたが、人の良いベルのことだ。優しそうな面を見せられたら警戒を解いてしまうのも無理はない。

 

念のため給仕係から受け取ったグラスの酒の匂いを嗅ぎ、軽く口をつけてみた。

 

 

(薬物が含まれているわけじゃない……問題なし、か)

 

 

「お、見知った顔がいると思ったら。クラウド君も来てたのか」

 

 

「18階層以来ですね、【銀の銃弾(シルバー・ブレット)】」

 

 

「ヘルメス、それにアスフィも」

 

 

それぞれ燕尾服とドレスに身を包んだヘルメス・ファミリアの主神とその眷族が背後から声をかけてきた。

この二人には18階層にベルたちを助けに行った際に協力してもらった関係だ。主神たるヘルメスは胡散臭いことこの上なかったが。

ヘルメスは最初はにこやかな様子だったが、悪戯っぽく笑うとクラウドの肩に手を置く。

 

 

「ダンス・パーティに来るぐらいなら構わないだろうけど、程々にしておきなよ? 他の女の子と踊ってたなんて知れたらリューちゃんの拳が飛んでくるからさ」

 

 

「お前は俺を何だと思ってんだ」

 

 

リューは基本的にそういうことで暴力を振るわない。だが、やはり彼氏として必要以上に他の女性と触れ合うのはいただけないと思うし、逆の立場になったら自分もイラッとするのも事実。

殴る蹴るは不明だが、不機嫌になるくらいは容易に想像できる。

 

 

「そもそもお前に心配されるほど危うい関係じゃないっての。リューを悲しませるようなことは絶対にしない」

 

 

「ははっ、男らしいな。キミは」

 

 

ケラケラと快活に笑うヘルメス。

 

やっぱこいつ苦手だ。何を考えてるかわからないトコが特に。

 

ヘルメスはしばらく笑っていたが、クラウドの後方に視線を移すと「おおっ」と感嘆の声を上げる。

 

 

「どうやら大物のご登場みたいだよ」

 

 

「大物?」

 

 

「ここにいるほとんどの男たちはアレが目当てだよ、ほらアレ」

 

 

ヘルメスの指差す先には、他の女性参加者より一回り豪華なドレスに身を包んだ美女――いや、あれは女神だ。

 

 

「……大物なのは否定しないけど、別に俺はアレ目当てじゃないからな」

 

 

「一途だなあ、リューちゃんに聞かせてあげなよ」

 

 

「そうだな。今度デートしたときにでも言っとくよ」

 

 

クラウドの口調が淡々としたものになっているのはヘルメスが相手だからというだけではない。

ヘルメスの言う『大物』がクラウドにとってはただの『一番会いたくない相手』だからだ。

 

背中まで流れるような長い銀髪と、ドレスで強調された抜群の身体の曲線。特筆すべき点は、女神の中でも一線を画する美貌だろう。

そう、美貌――美の神(フレイヤ)。ここに現れる可能性も考えていたが、いざ目にすると顰めっ面を隠しきれない。

 

横にいたベルもすっかりその美貌に見とれてしまっているようだ。即座にヘスティアがベルに体当たりをかまして魅了されるのを阻止する。

 

 

「ベル、あんまりヘスティアを困らせてやるなよ。それに、あの女は『美の神』だぞ」

 

 

ヘスティアに絡まれているベルに、クラウドはため息混じりに話しかけた。

 

 

「『あの』って……クラウドさんは会ったことがあるんですか?」

 

 

「ああ、見ての通り人目を引くから公の場には滅多に顔を出さないんだけどな。よほど大事な用でもあったんだろ(、、、、、、、、、、、、、、、)

 

 

理由などわかっている。クラウドとベルだ。

 

以前、怪物祭(モンスターフィリア)の闘技場で遭遇したときに聞いたフレイヤの台詞は冗談めかしていたが、あの女にとっては下界の子供のことなどその程度なのだ。

相手が中堅ファミリア以下なら即行で叩き潰してやるところだが、相手はオラリオでも最上位のファミリアだ。それはほぼ不可能に近い。

 

 

「で、でも本当に綺麗ですよね。あんな(ひと)、初めて見ました」

 

 

「ま、あの見た目なら無理もないだろ。美の神だなんて呼ばれてるくらいだ」

 

 

ここで、ベルの背中に貼り付いていたヘスティアがぐぐっとツインテールをくねらせながらクラウドの方を向く。

 

 

「おいおい、クラウド君! 主神たる者、眷族の浮気はいただけないぜ」

 

 

「だから浮気してるつもりはないっての」

 

 

自信満々に返してやった。誰が浮気なんてするか。そんなものは生涯するつもりはない。

 

 

「あ、あれ? こっちに来ますよ」

 

 

ベルが慌てた様子でフレイヤの方を指差す。その先には、群がる男たちの列を潜るように歩いてくるフレイヤの姿があった。後ろには彼女の眷族であるオッタルを連れている。

 

 

「ごきげんよう。来てたのね、ヘスティア」

 

 

「あ、ああ。君こそ、ガネーシャの宴のときといい、最近はよく顔を見せるね」

 

 

ヘスティアは腕組みしながらフレイヤに返した。

よっぽどベルのことが心配なんだな。

 

 

「珍しい顔触れが揃っているようだから挨拶をしに来ただけよ」

 

 

そう言ってフレイヤはベルの頬に手を伸ばす。

 

 

「今夜、一緒に過ごして頂けないかしら?」

 

 

「……っ!」

 

 

クラウドはうっとりした表情でベルに言い寄るフレイヤの手首を掴んで無理矢理引き剥がす。

 

 

「あら?」

 

 

「ベルに何してんだ、色ボケ女神」

 

 

怒りを込めて睨んだが、フレイヤは萎縮するどころか面白そうに微笑んでみせた。

 

 

「ふふ、もしかして嫉妬? 可愛いわね」

 

 

「喧嘩を売ってんのか? 護衛一人で随分と強気だな」

 

 

主神への敵意にフレイヤの後ろに立つオッタルが反応する。しかし、フレイヤは余裕そうに片手で制す。

 

 

「心配しなくてもいいわ。貴方のことだって、同じくらい可愛がってあげる」

 

 

「お断りだな。俺にはもう生涯を一緒に過ごす相手がいる」

 

 

フレイヤは蠱惑的な笑みを浮かべて誘いの言葉を投げかけてくるが、そんなものは意にも介さない。

 

 

「面白いわね。けれど、私とその相手、どちらが貴方を満足させられるのか試してみたいと思わない?」

 

 

「試すまでもないな。俺の嫁の圧勝だ」

 

 

たとえフレイヤが美の神だろうが、世間がその美貌に骨抜きになろうが、この主張を崩す気はない。

 

リューの魅力は容姿以外にも数えきれないほどある。普段の物静かな雰囲気も、時折見せる女子らしく恥じらいを見せる面も大好きだ。毎日惚れ直すくらい好きだ。

 

 

「俺の嫁は世界一だ。俺が一番好きな女を甘く見るなよ」

 

 

「…………」

 

 

フレイヤは数秒クラウドを見つめ続けた後、「失礼するわね」とだけ言い残しその場を後にした。

 

この言い争いを観戦していた男神の連中は「シルブレ、マジかっけー!」とか「俺の嫁宣言キター!」などと盛り上がっていたが、そんなことはどうでもいい。てか、何だシルブレって。略すな人の二つ名を。別に気に入ってないが。……本当に気に入ってないからな。

 

 

「……あの、クラウドさん」

 

 

「何だ? ベル」

 

 

何故かベルが顔を赤くして尋ねてきた。何で顔を赤く?

 

 

「あの、クラウドさんって……もしかして、もう卒業しちゃったんですか?」

 

 

「……さっきの話の流れでわかるけど、一応聞いとく」

 

 

「えっと……ど、どうて」

 

 

「お前にはまだ早いから!」

 

 

全く、このマセガキめ。




それでは、2017年もよろしくお願いします。まさか私もここまで進むとは思ってなかったので正直驚いてますよ( ̄▽ ̄;)

それでは、感想、質問などありましたら感想欄に、意見や要望、アイデアなどがありましたら活動報告にどちらも遠慮なくご記入ください。

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